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第5章 雷の国エレアースモの異常事態編
第134話 下半身が無くなった人の回復
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と言うわけで、アスモに聞いてその病院を訪れた。
多分私のような得体の知れない小娘が行ったところで、門前払いされるだろうと思い、アスモに相談したら書状を持たせてくれた。この書状があれば負傷者のところへ通してもらえるだろうとのこと。
「ここに胴体を分断されてしまった亜人が入院しているという話を聞きました」
「……失礼ですが家族の方ですか?」
「いえ、全く関りはありませんが、その方の治療をしに来ました」
『怪しい~……』という目で見られた……
こんな見た目の小娘が治療しに来たなんて言えば、そりゃそういう反応をされる。
「今負傷者の方は命の危機的な状況ですので、面会は出来ません。お帰りください」
ごっこ遊びなら帰れとでも言いたげな表情だ。手でしっしってやられた……
「…………女王アスモデウスから面会の許可をするようにとの書状をいただいています」
「…………女王様ですか!? なぜ女王様が!?」
書状を渡す。
少し読み込んだ後に――
「た……確かにこの押印は女王陛下のものですが……しょ、少々お待ちください!」
奥へ引っ込んで行った。多分自分だけでは判断できないと思い、上司にどういう対処をするか伺いに行ったのだろう。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
「本当にあそこまでの大怪我を治すことができるのですか?」
上司らしき亜人が出てきた。
「出来ると思います、会わせていただけますか?」
その後は、少し疑われながらも割とすんなり通してもらった。
女王の書状凄い!
「入院してる方の名前は何と言うのですか?」
「フレデリックさんと言います」
集中治療室のフレデリックさんの部屋まで通してもらった。
「こんにちはフレデリックさん」
耳が長い、エルフの男性かな?
せっかくの綺麗なお顔が疲弊により台無しだ……顔色も真っ青……
肩から上は布団から出ている。上半身部分は布団が盛り上がっているからそこに存在しているのが分かるが、下半身部分は布団がぺったりしていて、あるはずの盛り上がりが無い。
幸運にも意識は戻ったようだ。酸素マスクこそしているものの、目が虚ろながらこちらを向いている。
…………いや、この状態で意識が戻っているのは「不幸にも」と言った方が適切かもしれない……
点滴が複数付けられている、見たところ栄養剤と血液と……麻酔の類……かな?
私にはどれが何かはわからないが、管の類も沢山付けられている。
憔悴し切って見るからに辛そうだけど……怪我の大きさほどの痛みを訴えていないところを見るとかなり強めの麻酔が効いているのかもしれない。
フレデリックさんが気力を振り絞って、か細い声で話しかけてきた。
「あなたが……治して……くれるんですか……? 治せるなら……早く、今すぐに……お願いします……麻酔が切れた瞬間……ホントに痛くて……痛くて堪らないんです……治療出来ないのならいっそすぐにでも殺してほしい……」
事前に医者の先生から私が治療に来たのを聞き及んでいるのか、この見た目でもすんなり受け入れられた。
悲痛な表情だ……切羽詰まってるのが見て取れる……
「……失礼しますね」
身体に被さっている布団をめくる。
うわ……応急処置されているとはいえ、これは酷いな……
包帯がぐるぐる巻きにされ、多少の止血はされているようだけど、未だ血が流れ続けている。
そりゃ、この怪我では麻酔効いてても痛いよね……
そして聞いていたよりも状態が酷い……
胴体の切断だけかと思ったら、腕も片方肘辺りから無いじゃないか……
こんな状況で漫画で例えるのは非常識かもしれないけど、『ドラゴンボーノレ』のナツメグ星編のフリザー様の最期の時みたいな見た目だ……
この状態で生きて、意識を保っているのが不思議なくらい……
魔力にはまだまだ余裕があるけど……
さっき聞いた話を考えると、『回復魔法 (極大)』で瞬時に回復すると、この傷の大きさだと再生する時に物凄い痛みを伴いそうだ。 これだけ広範囲の極大回復となると、その再生時に発する痛みも尋常ではないと思う。
切断された腕を再生させる程度ならまだしも、下半身丸々作るような急激な回復を促せばそれこそショック死するかもしれない。
やっぱり時間がかかっても『癒しの水球』の方が良いだろう。
この感じからすると……再生まで一週間から二週間ってところかな。
二週間で下半身が再生するんなら、十分早いだろう。二週間不便だろうけど、それくらいは我慢をしてもらおう。
早速回復魔法をかけよう。
「癒しの水球! 腕の方にももう一つ」
胴体の断面を全て覆うように癒しの水球を作り、腕にも作った。
二つ体制で回復を促す。消費される魔力は倍だけど微量だから問題無いでしょ。
脚が生えて来た時のために、胴体の方は分化するように設定。
「はぁ……痛みが……無くなりました……ありがとうございます……」
麻酔が効いてるから、効果はわからないが、怪我の範囲が大きすぎるから完全に痛みが無くなることは恐らく無いと思う。まあそれは仕方ないよね……
それでもかなりの緩和はしてくれるだろうから。
「終わりました」
「えっ!? これだけですか!?」
「はい、多分一週間、遅くても二週間以内で完全に回復すると思います」
「傷が塞がるということですか?」
「いえ、内蔵骨血管筋肉その他諸々と脚もちゃんと生え、爪まできちんと再生されるはずです」
「嘘ですよね?」
「こんな酷い嘘言ったらフレデリックさんが可哀想じゃないですか、では私は帰りますので。後のことをよろしくお願いします。脚まで再生するとは言ってもその後のリハビリは必要でしょうから、そちらはお任せします。神経まで回復するので訓練次第で歩けるようになると思います。あと私への治療費は要りません、入院費とリハビリ料金は病院側で受け取ってください。それでは」
必要なことは伝えてその場を後にした。
「キミ! その水球は大丈夫なのか!?」
「はい……傷がチリチリと疼きますが、痛みも緩和され、むしろ心地良いくらいです……これなら……ようやく……眠れそうです……」
「彼女は、い、一体何だったんだ? 急に来て女王の使いだと言われ、患者のところへ通したら、治療して嵐のように去って行った……」
「ほ、本当にこれで脚が再生されるんでしょうか? この水の球、割れませんかね?」
「わからん……わからんが……患者が痛みを訴えなくなったのは事実だ。しばらく様子を見よう。彼女の言い分だと、一週間から二週間で完全回復するらしいから、一日経てばなんらかの変化が現れるだろう」
「な、名前すら名乗らずに去りましたけど、何と言う方だったのでしょう?」
「………………すぐに追いかけろ!」
多分私のような得体の知れない小娘が行ったところで、門前払いされるだろうと思い、アスモに相談したら書状を持たせてくれた。この書状があれば負傷者のところへ通してもらえるだろうとのこと。
「ここに胴体を分断されてしまった亜人が入院しているという話を聞きました」
「……失礼ですが家族の方ですか?」
「いえ、全く関りはありませんが、その方の治療をしに来ました」
『怪しい~……』という目で見られた……
こんな見た目の小娘が治療しに来たなんて言えば、そりゃそういう反応をされる。
「今負傷者の方は命の危機的な状況ですので、面会は出来ません。お帰りください」
ごっこ遊びなら帰れとでも言いたげな表情だ。手でしっしってやられた……
「…………女王アスモデウスから面会の許可をするようにとの書状をいただいています」
「…………女王様ですか!? なぜ女王様が!?」
書状を渡す。
少し読み込んだ後に――
「た……確かにこの押印は女王陛下のものですが……しょ、少々お待ちください!」
奥へ引っ込んで行った。多分自分だけでは判断できないと思い、上司にどういう対処をするか伺いに行ったのだろう。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
「本当にあそこまでの大怪我を治すことができるのですか?」
上司らしき亜人が出てきた。
「出来ると思います、会わせていただけますか?」
その後は、少し疑われながらも割とすんなり通してもらった。
女王の書状凄い!
「入院してる方の名前は何と言うのですか?」
「フレデリックさんと言います」
集中治療室のフレデリックさんの部屋まで通してもらった。
「こんにちはフレデリックさん」
耳が長い、エルフの男性かな?
せっかくの綺麗なお顔が疲弊により台無しだ……顔色も真っ青……
肩から上は布団から出ている。上半身部分は布団が盛り上がっているからそこに存在しているのが分かるが、下半身部分は布団がぺったりしていて、あるはずの盛り上がりが無い。
幸運にも意識は戻ったようだ。酸素マスクこそしているものの、目が虚ろながらこちらを向いている。
…………いや、この状態で意識が戻っているのは「不幸にも」と言った方が適切かもしれない……
点滴が複数付けられている、見たところ栄養剤と血液と……麻酔の類……かな?
私にはどれが何かはわからないが、管の類も沢山付けられている。
憔悴し切って見るからに辛そうだけど……怪我の大きさほどの痛みを訴えていないところを見るとかなり強めの麻酔が効いているのかもしれない。
フレデリックさんが気力を振り絞って、か細い声で話しかけてきた。
「あなたが……治して……くれるんですか……? 治せるなら……早く、今すぐに……お願いします……麻酔が切れた瞬間……ホントに痛くて……痛くて堪らないんです……治療出来ないのならいっそすぐにでも殺してほしい……」
事前に医者の先生から私が治療に来たのを聞き及んでいるのか、この見た目でもすんなり受け入れられた。
悲痛な表情だ……切羽詰まってるのが見て取れる……
「……失礼しますね」
身体に被さっている布団をめくる。
うわ……応急処置されているとはいえ、これは酷いな……
包帯がぐるぐる巻きにされ、多少の止血はされているようだけど、未だ血が流れ続けている。
そりゃ、この怪我では麻酔効いてても痛いよね……
そして聞いていたよりも状態が酷い……
胴体の切断だけかと思ったら、腕も片方肘辺りから無いじゃないか……
こんな状況で漫画で例えるのは非常識かもしれないけど、『ドラゴンボーノレ』のナツメグ星編のフリザー様の最期の時みたいな見た目だ……
この状態で生きて、意識を保っているのが不思議なくらい……
魔力にはまだまだ余裕があるけど……
さっき聞いた話を考えると、『回復魔法 (極大)』で瞬時に回復すると、この傷の大きさだと再生する時に物凄い痛みを伴いそうだ。 これだけ広範囲の極大回復となると、その再生時に発する痛みも尋常ではないと思う。
切断された腕を再生させる程度ならまだしも、下半身丸々作るような急激な回復を促せばそれこそショック死するかもしれない。
やっぱり時間がかかっても『癒しの水球』の方が良いだろう。
この感じからすると……再生まで一週間から二週間ってところかな。
二週間で下半身が再生するんなら、十分早いだろう。二週間不便だろうけど、それくらいは我慢をしてもらおう。
早速回復魔法をかけよう。
「癒しの水球! 腕の方にももう一つ」
胴体の断面を全て覆うように癒しの水球を作り、腕にも作った。
二つ体制で回復を促す。消費される魔力は倍だけど微量だから問題無いでしょ。
脚が生えて来た時のために、胴体の方は分化するように設定。
「はぁ……痛みが……無くなりました……ありがとうございます……」
麻酔が効いてるから、効果はわからないが、怪我の範囲が大きすぎるから完全に痛みが無くなることは恐らく無いと思う。まあそれは仕方ないよね……
それでもかなりの緩和はしてくれるだろうから。
「終わりました」
「えっ!? これだけですか!?」
「はい、多分一週間、遅くても二週間以内で完全に回復すると思います」
「傷が塞がるということですか?」
「いえ、内蔵骨血管筋肉その他諸々と脚もちゃんと生え、爪まできちんと再生されるはずです」
「嘘ですよね?」
「こんな酷い嘘言ったらフレデリックさんが可哀想じゃないですか、では私は帰りますので。後のことをよろしくお願いします。脚まで再生するとは言ってもその後のリハビリは必要でしょうから、そちらはお任せします。神経まで回復するので訓練次第で歩けるようになると思います。あと私への治療費は要りません、入院費とリハビリ料金は病院側で受け取ってください。それでは」
必要なことは伝えてその場を後にした。
「キミ! その水球は大丈夫なのか!?」
「はい……傷がチリチリと疼きますが、痛みも緩和され、むしろ心地良いくらいです……これなら……ようやく……眠れそうです……」
「彼女は、い、一体何だったんだ? 急に来て女王の使いだと言われ、患者のところへ通したら、治療して嵐のように去って行った……」
「ほ、本当にこれで脚が再生されるんでしょうか? この水の球、割れませんかね?」
「わからん……わからんが……患者が痛みを訴えなくなったのは事実だ。しばらく様子を見よう。彼女の言い分だと、一週間から二週間で完全回復するらしいから、一日経てばなんらかの変化が現れるだろう」
「な、名前すら名乗らずに去りましたけど、何と言う方だったのでしょう?」
「………………すぐに追いかけろ!」
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