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第5章 雷の国エレアースモの異常事態編
第133話 画期的な回復術の指導
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「改めて、質問がある方いますか?」
「はい!」
「はい、そこの方」
「その回復方法は痛みを伴わないというのは本当ですか?」
「痛み?」
「急激に大怪我を回復させると、それに比例した痛みを伴いますよね? 今回の魔法災害では大怪我の方が多かったので、腕を生えさせるほどの回復をすると泣き叫んでしまうほど痛いらしく、見ていて可哀想でした」
「えっ!?」
慌てて口をつむぐ。
思わず「そうなの!?」と言いかけた。余計なことを口走る前に口を閉じられて良かった……
もし、それを言ってしまったら、この回復方法の存在すら危うくなる。
エキスパートと紹介されたにも関わらず、そんな基礎的なことすら知らないのかと。
誰にも聞けないので、後でカイベルに聞いた話によると――
実はこの世界の回復魔法は、突然回復させるものではなく、自己再生能力を急激に高めて再生を促すもの。
細胞の組成を促し、急激な成長をさせると考えてもらえるとわかりやすい。イメージ的には思春期の成長痛を超激痛にした感じ……かな?
そのため、大怪我であれば大怪我であるほど、それを急激に回復させた時にその怪我の大きさに比例した痛みを伴うのだという。
今まで私が『回復魔法』を使う状況だった時は、大した怪我ではなかったため、回復時の痛みが発生していることに気付いていなかったらしい。
腕や脚を生えさせるほどの急激な回復をすると、一瞬だけではあるものの、泣き叫びたくなるほどの激痛を感じるとのこと。
この話を聞いてから、今後はよほどの極限状態でない限り、無闇に『回復魔法 (極大)』を使わないようにしようと決意した。
「コホン、徐々に回復していくため、痛みはほとんど無いのではないかと思います。多少傷口がチリチリしますが」
実体験だけど……
「確かに……痛みはほとんど無くなりましたが、傷口がチリチリと疼きます」
今治療した男性が助け舟を出してくれる。
「徐々に再生しているため小さな疼きがあるのだと思います。要するに回復している証拠と言えるのではないでしょうか? 他にありますか?」
「はい! ただの『自己再生魔法』ではダメなのですか?」
「全身的な怪我なら自己再生魔法でも良いのですが、腕や脚を生えさせるほどの回復力は出せないため、水球に閉じ込めて限定的、集中的に回復を促す必要があります」
「『MPドレイン』を付与する意味は何ですか?」
「水球と自己再生魔法だけでは、魔力切れで消えてしまう可能性もあるため、MPドレインを付与して、負傷者自身の魔力で再生時間を補ってもらいます。魔力は寝ていれば回復する上、MPドレインで吸われる魔力も微々たるものなので、完治するまでに時間はかかりますが、治療者、負傷者ともにメリットのある魔法だと思います」
「「「おお~~!!」」」
「痛みもほとんど無いなんて、画期的な方法じゃないですか!」
「あの……傷が皮膚で覆われてしまっている方はどうしたら良いんですか? そのまま『癒しの水球』を使えば良いんですか?」
「いえ、その場合は再度傷を付けて、骨を露出させてやる必要があります。その場合は麻酔や昏睡魔法などで、痛みを感じない状態にしてから傷を付けた上で再度回復を行ってください。もちろん負傷者の同意を得たうえで」
「わかりました」
「では方法もわかったと思いますので、申し訳ないですがここに来ていただいている負傷者の方で実践練習をさせていただきたいと思います。コツを掴めたら現場へお願いします」
前半組への治療方法の伝授を終え、すぐに現場で治療に当たってもらった。
続いて後半組へ同じ方法を教え、私も現場の方へ参加。
その参加している最中一人の男性に声をかけられた。
「昨日、私の腕を回復してくださった方ですよね?」
あ、確かに見覚えある。私が治療した男性だ。
「い、いえ、違うと思います」
「そ、そうですか、似ているような気がしたので、すみません」
しどろもどろしながら否定していると――
「あ、あなた昨日私の脚を治療してくれた方ですよね!」
あ、この人も見覚えある。
「あ、やっぱり? あなたもそう思いますか?」
「金髪でユラユラ動く黒い服を着てた方ですよね?」
「ち、違うと思います」
否定するとどんどん増える。
この場は一旦離れた方が良いか?
「あ、あの次の方の治療がありますので、これで」
「あー! あなた昨日アスモデウス様と一緒に正門付近にいた人ですよね?」
人の目って凄いな……絶対に否定できないようにどんどん外堀が埋まっていく……
ホテル帰るまでに五十人くらい治療したしな……眼帯付けた程度じゃ隠し通せないか……
「あ、あんた、昨日空行って、巨大な鳥を捕えて来たアスモデウス様の相棒の謎の少女じゃないか?」
決定的なやつキタ!
もう仕方ないか……
「う……じ、実はそうです」
「その眼帯どうされたんですか!? まさか怪我でも?」
「い、いえ……はい……」
最初は否定しようと思ったけど、顔を隠すために付けて来たとは恥ずかしくて言えない……
「やっぱり! あなたのお蔭で今までと変わらない生活をすることができています、ありがとうございました!」
「応援することぐらいしかできませんが、がんばってくださいね!」
特に騒ぎにはならなかったから助かった……
何とか大怪我した負傷者千八百五人の治療を終えることができた。
しかし、千八百六人って聞いてたはずだけど……
残りの一人は?
「……ベルゼ、お疲れ様。でももう一人だけ回復してもらいたい……怪我の大きさが大きさだけにあなたに頼みたい……」
その負傷者は、胴体で切断されてしまったという一人の男性。
今まで意識が無かったため、病院には入院させたものの、酷な話だが、死に向かうと思われていたため後回しにされたらしい。トリアージで言うところの赤ではあるものの、限りなく黒に近い人ってところか。
サントラル公園広場での治療の終わり頃になって、その人の意識が戻ったため、急ぎ回復してほしいとのこと。
「はい!」
「はい、そこの方」
「その回復方法は痛みを伴わないというのは本当ですか?」
「痛み?」
「急激に大怪我を回復させると、それに比例した痛みを伴いますよね? 今回の魔法災害では大怪我の方が多かったので、腕を生えさせるほどの回復をすると泣き叫んでしまうほど痛いらしく、見ていて可哀想でした」
「えっ!?」
慌てて口をつむぐ。
思わず「そうなの!?」と言いかけた。余計なことを口走る前に口を閉じられて良かった……
もし、それを言ってしまったら、この回復方法の存在すら危うくなる。
エキスパートと紹介されたにも関わらず、そんな基礎的なことすら知らないのかと。
誰にも聞けないので、後でカイベルに聞いた話によると――
実はこの世界の回復魔法は、突然回復させるものではなく、自己再生能力を急激に高めて再生を促すもの。
細胞の組成を促し、急激な成長をさせると考えてもらえるとわかりやすい。イメージ的には思春期の成長痛を超激痛にした感じ……かな?
そのため、大怪我であれば大怪我であるほど、それを急激に回復させた時にその怪我の大きさに比例した痛みを伴うのだという。
今まで私が『回復魔法』を使う状況だった時は、大した怪我ではなかったため、回復時の痛みが発生していることに気付いていなかったらしい。
腕や脚を生えさせるほどの急激な回復をすると、一瞬だけではあるものの、泣き叫びたくなるほどの激痛を感じるとのこと。
この話を聞いてから、今後はよほどの極限状態でない限り、無闇に『回復魔法 (極大)』を使わないようにしようと決意した。
「コホン、徐々に回復していくため、痛みはほとんど無いのではないかと思います。多少傷口がチリチリしますが」
実体験だけど……
「確かに……痛みはほとんど無くなりましたが、傷口がチリチリと疼きます」
今治療した男性が助け舟を出してくれる。
「徐々に再生しているため小さな疼きがあるのだと思います。要するに回復している証拠と言えるのではないでしょうか? 他にありますか?」
「はい! ただの『自己再生魔法』ではダメなのですか?」
「全身的な怪我なら自己再生魔法でも良いのですが、腕や脚を生えさせるほどの回復力は出せないため、水球に閉じ込めて限定的、集中的に回復を促す必要があります」
「『MPドレイン』を付与する意味は何ですか?」
「水球と自己再生魔法だけでは、魔力切れで消えてしまう可能性もあるため、MPドレインを付与して、負傷者自身の魔力で再生時間を補ってもらいます。魔力は寝ていれば回復する上、MPドレインで吸われる魔力も微々たるものなので、完治するまでに時間はかかりますが、治療者、負傷者ともにメリットのある魔法だと思います」
「「「おお~~!!」」」
「痛みもほとんど無いなんて、画期的な方法じゃないですか!」
「あの……傷が皮膚で覆われてしまっている方はどうしたら良いんですか? そのまま『癒しの水球』を使えば良いんですか?」
「いえ、その場合は再度傷を付けて、骨を露出させてやる必要があります。その場合は麻酔や昏睡魔法などで、痛みを感じない状態にしてから傷を付けた上で再度回復を行ってください。もちろん負傷者の同意を得たうえで」
「わかりました」
「では方法もわかったと思いますので、申し訳ないですがここに来ていただいている負傷者の方で実践練習をさせていただきたいと思います。コツを掴めたら現場へお願いします」
前半組への治療方法の伝授を終え、すぐに現場で治療に当たってもらった。
続いて後半組へ同じ方法を教え、私も現場の方へ参加。
その参加している最中一人の男性に声をかけられた。
「昨日、私の腕を回復してくださった方ですよね?」
あ、確かに見覚えある。私が治療した男性だ。
「い、いえ、違うと思います」
「そ、そうですか、似ているような気がしたので、すみません」
しどろもどろしながら否定していると――
「あ、あなた昨日私の脚を治療してくれた方ですよね!」
あ、この人も見覚えある。
「あ、やっぱり? あなたもそう思いますか?」
「金髪でユラユラ動く黒い服を着てた方ですよね?」
「ち、違うと思います」
否定するとどんどん増える。
この場は一旦離れた方が良いか?
「あ、あの次の方の治療がありますので、これで」
「あー! あなた昨日アスモデウス様と一緒に正門付近にいた人ですよね?」
人の目って凄いな……絶対に否定できないようにどんどん外堀が埋まっていく……
ホテル帰るまでに五十人くらい治療したしな……眼帯付けた程度じゃ隠し通せないか……
「あ、あんた、昨日空行って、巨大な鳥を捕えて来たアスモデウス様の相棒の謎の少女じゃないか?」
決定的なやつキタ!
もう仕方ないか……
「う……じ、実はそうです」
「その眼帯どうされたんですか!? まさか怪我でも?」
「い、いえ……はい……」
最初は否定しようと思ったけど、顔を隠すために付けて来たとは恥ずかしくて言えない……
「やっぱり! あなたのお蔭で今までと変わらない生活をすることができています、ありがとうございました!」
「応援することぐらいしかできませんが、がんばってくださいね!」
特に騒ぎにはならなかったから助かった……
何とか大怪我した負傷者千八百五人の治療を終えることができた。
しかし、千八百六人って聞いてたはずだけど……
残りの一人は?
「……ベルゼ、お疲れ様。でももう一人だけ回復してもらいたい……怪我の大きさが大きさだけにあなたに頼みたい……」
その負傷者は、胴体で切断されてしまったという一人の男性。
今まで意識が無かったため、病院には入院させたものの、酷な話だが、死に向かうと思われていたため後回しにされたらしい。トリアージで言うところの赤ではあるものの、限りなく黒に近い人ってところか。
サントラル公園広場での治療の終わり頃になって、その人の意識が戻ったため、急ぎ回復してほしいとのこと。
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