上 下
118 / 535
第5章 雷の国エレアースモの異常事態編

第117話 雷の国へ行こう!

しおりを挟む
「ところで女王が二人して来て、護衛はどうしてるの?」
「今回はちゃんとした公務だからね、周囲にいるよ」

 窓から外を覗くも――

「誰もいないじゃない……」
「窓から見えないところに待機してもらってるの。護衛抜きの三人で話したかったからね。こういう場で国同士の情報交換もするのよ」
 なるほど、国同士が仲が良いとこういう時便利ね。

「さて、じゃあ早速雷の国へ行こうか」
 その前に先にリーヴァントに公務だってことを言っておかないとね。

「ちょっと待ってて、外出の断りを入れてくるから」
 日帰りで帰ってくるつもりだけど、一応念のためコンクリ組のところに数日分の資材を卸しておかないと。

 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

「今度は雷の国に行かれるのですか?」
「女王様直々にお願いされちゃってね」
「いつお願いされたのですか?」
「今しがただけど、それがどうかした?」
「いえ、村には入口が二つしかないのに、村の者に気付かれずにいつアルトラ邸へ行ったのかなと思いまして」
「空間魔法で直接来たみたいだから、村の中は通過してないんじゃない? 今私の家にいるから会ってみる?」

 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

「おぉ! あなたが雷の国の女王様ですか! わたくしこの村でリーダーの任を仰せつかっておりますリーヴァントと申します。以後お見知りおきを。それにしてもお美しい」
 美しい? どちらかと言ったら可愛いが合う気がするけど……リーヴァントにはそう見えてるのか?
 めっちゃ握手してる……
 完全に魅了されちゃってるね……

「……悪いけど、ベルゼ借りてくね……」
「ベルゼとは……どなたですか……?」
 アスモが私を指さす。

「ええ、どうぞどうぞ! こき使ってやってください!」
 おいぃぃ! 領主に対する口の利き方じゃないぞ!

 バシィッ!!
「痛っ!」
 リーヴァントの腰を平手打ちした。

「目、覚めた?」
「え、あ? はい……私は一体?」
「この子の自動発動能力でちょっとおかしくなってたみたいだから、引っぱたいた」
「そ、そんな能力があるんですね……私今失礼なこと言いましたよね?」
「…………言ってたね……」
「失礼しました! 気を付けて行って来てください!」
「帰って来た時にはもっと村が発展するかもしれないから期待してて! じゃあ今まで通り村の運営をお願いね」
「わかりました、お気を付けて」

 今思ったことだけど、いつもリーヴァントに行き先告げても、全く心配されないな……
 領主が自らどこかへ赴くのだから少しくらい心配されてもおかしくないと思うんだけど……
 最近対応がかなり淡泊な気がする……もう私の振舞いに慣れてしまったからかな。
 以前はもうちょっと大げさに喜んでくれたりビックリしてくれたりしたんだけどな……

 次にコンクリ組のところに数日分の資材を卸す。

「何か量多くないか?」
「ちょっと雷の国へ出かける用事ができてしまったので、念のため三日分くらいの量を……」
「そうか、気を付けて行って来いよ!」
「お土産よろしくッス!」

 さて、資材も搬入したし、断りも入れたし、雷の国へ行くか。

「アルトラ、どこか行くのカ?」
「雷の国へ出張してくる」
「私も行って良いカ?」
 チラっとアスモを見ると、頷いた。

「アスモも頷いてるし、危険は無いだろうから良いよ。多分すぐ帰ってくると思うけど……今日はお友達は良いの?」
「今から雷の国へ行くって言ってくるかラ、ちょっと待ってテ!」
 友達の家へ走って行った。

「じゃあ、リディアも行くみたいだし、カイベルも付いて来てくれる?」
「わかりました」
 今回は全員でお出かけか。
 誰も勝手に我が家に入ることはないと思うけど、一応鍵かけて行くか。

「ケルベロス~」
「ワゥッ!」
「みんなでお出かけするから、家の番をお願いね」
「アォウッ!」
 「ワォウッ!」
  「ウォウッ!」
 文字通りの番犬だ。地獄ではないが。

 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

「お待たセ!」
「じゃあ行こうか、それでどうやって行くの?」
「それはわたくしがお送りいたします」
 突然登場した男性。
 と、護衛複数人。アスモの国の騎士団かしら?
 あと、レヴィ側の騎士団も登場。今までどこにいたんだ?

「わたくし雷の国の空間術師アルフと申します」

「じゃあ、私はベルゼへの橋渡しが終わったから帰るね」
「……うん、ありがと……」
 公務って、私とアスモを会わせることか。確かに別の国の女王同士の橋渡しだから外交に当たるのか。

「雷の国へはわたくしがお送りいたします」
 そう言うとアルフさんは空間魔法を使う。

「さあ、どうぞ」
 ゲートをくぐってみると――

 そこは岩山の上。
 事前に聞いてた通り雷が凄い……
 雨がパラついてる。雷の国だから必然的に雨とも関りがあるのかな。
 と思ったらすぐに止んだ。地面を見てもあまり雨が降ってるようには見えない。雨多いんじゃないの? どういうこと?

 そして、ここは疑似太陽が無いから暗い。
 が、常に雷鳴が鳴ってるから、雷の光で地面がずっと照らされ続けている。暗い光ではあるが、光魔法を使わなくても十分周囲が見えそうだ。

 ゴオォォン!!

「雷怖イィ!!」
 そういえばリディアを捕まえた時使った魔法は雷だったっけ。

「リディアうち帰る?」
「イイ! 我慢すル! でもリディアに雷落ちないようにしておいテ!」
 雷無効のバリアでもかけておくか。

全体的雷無効インバリド・サンダー・オール
 これで私たちに万が一雷が落ちても大丈夫だろう。

「ここが雷の国・エレアースモ?」
「……そうだけど……ここは首都から大分離れてる……」
 アスモが指さす方向を見ると、遠くにちいさ~~く街らしきものが煌々と輝いて見える。

「……アルフ何でこんなところに来たの……?」
「い、いえ、わかりません。何でこんなところに来たのでしょう……?」
 アスモお抱えの空間術師なのに、自分が指定したポイントに行けないのか?

「申し訳ありません、今一度……」
 再度ゲートを開く。

「今度こそ首都へ繋がっているはずです」
 しかし、くぐってみると――

 別の岩山?
 ここからさっき出現したらしき岩山が遠くに見える。

「……どうなってるの……?」
「わかりません……こんなことは初めてで……」

 その後更に空間魔法で移動しようとするも、平原に出たり、森に出たりと、一向に首都に近付かない。

「はぁはぁ……申し訳ありません……はぁ……もう魔力切れです……」
 まだ十回くらいしか移動してないけど……普通の亜人ひとが使うと十回程度が限界なのか。

「ちょっと待って、もしかしてこれって……アスモ、この周辺の地図ってある?」
「……誰か地図持ってる……?」
「ここに」
 護衛の一人が地図を出してくれる。

「今までの出現ポイントが大体どの辺りか分かる?」
「……首都の見える感じから考えると……ここと、ここと、ここと…………!?……」
 やっぱり……

「……ほぼ首都を中心に、その外側に円状に出現してる……? 空間魔法が弾かれてる……?」
 空間魔法を弾かれてると言うよりは、出現ポイントを歪められてるって言い方が正しいかも。

「何らかの力で空間魔法が歪んでるんじゃないかな。私の予想だと、雷……とか」
 強力な電磁波で、空間が歪むって話は色んな漫画や映画で見たことがある。

「……それはおかしい……今までも空間魔法で移動してきたけど、こんなことは経験が無い……」
「今の今までこんなことは無かったの?」
「……無い……ベルゼに会いに行く前だって、公務で移動に使ってたけど、こんなことは一度も無かった……」
「それって国外に出た時の話?」
「……違う……全部首都内だった……」
「首都外に出たことは?」
「……最近だと今日以外は出てない……最後に出たのは……もう何ヶ月も前になると思う……今回のお願いのことでベルゼに取り次いでもらう目的でレヴィのところに行った時もこんな不具合は起きなかった……」

 ってことは、首都内⇒首都内、首都内⇒首都外は大丈夫で、首都外⇒首都内の場合のみこんな現象が起こってるってことかな。

「……そもそもここは雷の国……昔からずっと頻繁に雷が落ちるから、昔も空間魔法使用に異常が無いとおかしい……」
 それもそうか。
 と言うことは……ここ数ヵ月の間に異常が起きてるってことなのね。
 とは言え、現状では原因の特定は出来ないから、とりあえず街に着いて、落ち着いて原因が何かを考えたいところね。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?

あくの
ファンタジー
 15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。 加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。 また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。 長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。 リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!

いきなり結婚しろと言われても、相手は7才の王子だなんて冗談はよしてください

シンさん
恋愛
金貸しから追われる、靴職人のドロシー。 ある日突然、7才のアイザック王子にプロポーズされたんだけど、本当は20才の王太子様…。 こんな事になったのは、王家に伝わる魔術の7つ道具の1つ『子供に戻る靴』を履いてしまったから。 …何でそんな靴を履いたのか、本人でさえわからない。けど王太子が靴を履いた事には理由があった。 子供になってしまった20才の王太子と、靴職人ドロシーの恋愛ストーリー ストーリーは完結していますので、毎日更新です。 表紙はぷりりん様に描いていただきました(゜▽゜*)

私は既にフラれましたので。

椎茸
恋愛
子爵令嬢ルフェルニア・シラーは、国一番の美貌を持つ幼馴染の公爵令息ユリウス・ミネルウァへの想いを断ち切るため、告白をする。ルフェルニアは、予想どおりフラれると、元来の深く悩まない性格ゆえか、気持ちを切り替えて、仕事と婚活に邁進しようとする。一方、仕事一筋で自身の感情にも恋愛事情にも疎かったユリウスは、ずっと一緒に居てくれたルフェルニアに距離を置かれたことで、感情の蓋が外れてルフェルニアの言動に一喜一憂するように…? ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

モブ令嬢はモブとして生きる~周回を極めた私がこっそり国を救います!~

片海 鏡
ファンタジー
――――主人公の為に世界は回っていない。私はやりたい様にエンディングを目指す RPG顔負けのやり込み要素満載な恋愛ゲーム《アルカディアの戦姫》の世界へと転生をした男爵令嬢《ミューゼリア》 最初はヒロインの行動を先読みしてラストバトルに備えようと思ったが、私は私だと自覚して大好きな家族を守る為にも違う方法を探そうと決心する。そんなある日、屋敷の敷地にある小さな泉から精霊が現れる。 ヒーロー候補との恋愛はしない。学園生活は行事を除くの全イベントガン無視。聖なるアイテムの捜索はヒロインにおまかせ。ダンジョン攻略よりも、生態調査。ヒロインとは違う行動をしてこそ、掴める勝利がある!

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

処理中です...