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第4章 アルトラの受難編
第104話 ブチギレのアルトラ
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「ふぅ……穏便に済むかと思って、痛いのを我慢して条件を呑んだけど……約束を反故にして実力行使で来るなら、こっちも多少痛めつけても良いかしら……?」
こんなようなことを言ってたらしいけど、そんなことを言った覚えはない。
多分この時すでに意識が無かったんだと思う。
「な、なにを!?」
で、この時に羽根を使って空中に浮かび、空中で制止して、白い魔力をまき散らした後、怒りで回復力が上がったのか、両手の指が完全に回復したとか。
我ながら凄い回復力ね。
「炭化した指が一瞬で!? そ、そやつは危険だ!! 殺しても構わぬ!! 全員でそやつを攻撃しろ!!」
「父上!! おやめください!!」
その場で儀式を見張っていたレッドドラゴン全員が私に向かって炎を吐きかけたらしいけど、『多頭龍の業火』ってのを使って全ての炎を押し返した後、空中でクルクル回りながら雷の球体を四方八方に飛ばして儀式場を大穴と瓦礫の山にしたらしい。
この時、普段使わない悪魔の方の羽根を出して魔法を使ってたとか。ツノも少し伸びてたらしい。
悪魔の羽根、見た目がもう如何にも悪いって感じだから使ったことないのよね……私ブチギレたら悪魔の羽根使うのね……魔力が上がるのかしら?
「ば、化け物か!? フレイムハルト! 我らも攻撃する! 全力を尽くせ!!」
「はっ! 父上!!」
族長、フレイムハルト共にレッドドラゴン形態になって、ダブルで『インフェルノブレス』を使ったらしいけど、私に届く前に『凍結する北風』って魔法でかき消したらしい。
「なにっ!?」
「な、何なのだこの亜人は!?」
「ち、父上! そのアルトラこそ『終末の神水』を喚んだ者ですぞ!!」
「何だと!? あの『終末の神水』を!?」
「『氷結の領域』!」
で、最後にこの場の全員、いや、正確にはフレアハルトたちを除いた儀式場全体を氷漬けにして意識が戻ったらしい。
ここまで全部『とか』とか『らしい』としか説明できなくて、そんなことやった実感は全く無いけど……
ただ、『殺さない』というところだけはちゃんと理性が働いてたらしく、氷漬けになった者全員が軽傷で済んでいたのは幸いだった。
それで、これは更に後からレイアに聞いた話だけど、フレアハルトとレイア、アリサの三人とも濡れた子犬のような顔で震えながら見てたとか。
フレイムハルトは震えながら「これからはアルトラを怒らせないようにしよう……」とか小声で言ってたとかなんとか。
フフ……これはフレアハルト本人からは聞けない話だわ
この間、大体5分くらいの間。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
で、現在に至る。
「それで、どういう風に話を付けてくれるのかしら?」
今私は、族長の玉座に険しい顔で、肩ひじ付いて足を組みながら偉そうな態度で座っている。
私の前には、跪いた族長と以下レッドドラゴンの配下が多数。
フレアハルトと側近二人は私の横に座っている。
「はい……貴女様の軍門に降ります。如何様にもしていただきたい」
「わかりました。じゃあ、フレアハルトの処遇は?」
「はい、幽閉を解きます」
フレアハルトをチラッと見て――
「好きにすると良い」
「ありがとうございます! 父上!」
「じゃあ、これで終わりということで、え~と――」
フレアハルト八世の父だから、『フレアハルト七世』なのかな?
「フレアハルト七世、あなたには今まで通り変わらず種族の営みをお願いします」
「は? 我々はあなたの奴隷になるのでは?」
「奴隷なんかいりません。今後取るつもりもありません。ただフレアハルトのようにもっと亜人を知ってください、理解してください。危害を加えないなら私の村でも歓迎します。わだかまりも作りたくないので、フレアハルトの件、隷属の件、儀式場を壊してしまった件、その他諸々不問にしていただきたいと思います」
「我々は貴女に完敗したのに、その程度の要求でよいのですか?」
「私としてはフレアハルトの意思だけ通してもらえるなら、それで良いと思っています。ただ……願わくばもし万が一私の村が危機に瀕するようなことがあった場合には救援をお願いできるとありがたく思います」
「わかりました。お約束しましょう」
あと……これを言うのはかなり心苦しい、下手したら今この時点から恨まれてしまうことになるが……
「それと……一つ謝らなければならないことがあります。フレアハルトはもう知っていることですが……以前大洪水を起こして、あなた方の住処を沢山奪ってしまったのは私です。知らなかったこととは言え、申し訳ありません」
玉座から降り、今度は私が土下座して深々と頭を下げる。
「貴女が『終末の神水』を喚んだ者だとフレアハルトから知らされました。あの時、この最も高い山のみ水没から免れたため、みなここに避難して死者はおりません」
ホッ、それなら一応一安心。
でも……『終末の神水』なんて呼び方されてたのか……仰々しいな……
まあ、今まで天から降ってくる雨を見たこともない人たちのところに、突然大量の水が落ちてきたら『終末』とも思うかもしれない。
「顔をお上げください。貴女は我々に勝利したのです。そのことについて咎めることも致しません、それが弱肉強食の掟です」
ここで咎められないのは、ある意味では『武力至上主義』ってところに助けられてる感じがする。『強い者が絶対的な正義!』みたいな考え方。
それでも、誰も死者が出なかったとは言え、住処の大部分を奪ってしまったのは変わらないので、私の心は「良かった」と素直に喜ぶことはできないが……
横を見ると――
「あなた、さっきの祭司の一人?」
「はい、フレアハルトの弟のフレイムハルトと申します」
「あなたがよく出来た弟さん? あなたの炎凄かった。もしあれがもし『インフェルノブレス』だったら、私は耐えることができなかったと思う」
「ありがとうございます、今後も兄をよろしくお願いします」
何とか一件落着。
今回は史上最もダメージを受けたイベントだったな……
疲れる度合いがどんどん更新されている気がする。
『初遭遇時のフレアハルト < 無敵の超巨大スライム < 聖炎耐火の儀』という感じに……
さて、フレアハルトの幽閉も解けたし、我が家へ帰ろうかな。
「じゃあ、私は帰るよ」
「こんなところへ呼び立ててしまって、すまなかったな……」
珍しくしおらしいな。ブチギレ状態の私を目の当たりにしたからか?
「では、一週間前の約束、食堂へ行ってメシを食おうか」
……そうでもなかった。
「川の掘削に貢献した我を労え!」
「それは最早私のセリフだよ。指無くなっても逃げなかった私を労え!」
「ふふ……」
「ワッハッハッハッハ!!」
この後、約束通り食堂でご飯を……と思ったが当日では予約が取れなかったので、後日食べた。
アクアリヴィアの食材を卸したことで、メニューが増え、フレアハルトも満足していた。
こんなようなことを言ってたらしいけど、そんなことを言った覚えはない。
多分この時すでに意識が無かったんだと思う。
「な、なにを!?」
で、この時に羽根を使って空中に浮かび、空中で制止して、白い魔力をまき散らした後、怒りで回復力が上がったのか、両手の指が完全に回復したとか。
我ながら凄い回復力ね。
「炭化した指が一瞬で!? そ、そやつは危険だ!! 殺しても構わぬ!! 全員でそやつを攻撃しろ!!」
「父上!! おやめください!!」
その場で儀式を見張っていたレッドドラゴン全員が私に向かって炎を吐きかけたらしいけど、『多頭龍の業火』ってのを使って全ての炎を押し返した後、空中でクルクル回りながら雷の球体を四方八方に飛ばして儀式場を大穴と瓦礫の山にしたらしい。
この時、普段使わない悪魔の方の羽根を出して魔法を使ってたとか。ツノも少し伸びてたらしい。
悪魔の羽根、見た目がもう如何にも悪いって感じだから使ったことないのよね……私ブチギレたら悪魔の羽根使うのね……魔力が上がるのかしら?
「ば、化け物か!? フレイムハルト! 我らも攻撃する! 全力を尽くせ!!」
「はっ! 父上!!」
族長、フレイムハルト共にレッドドラゴン形態になって、ダブルで『インフェルノブレス』を使ったらしいけど、私に届く前に『凍結する北風』って魔法でかき消したらしい。
「なにっ!?」
「な、何なのだこの亜人は!?」
「ち、父上! そのアルトラこそ『終末の神水』を喚んだ者ですぞ!!」
「何だと!? あの『終末の神水』を!?」
「『氷結の領域』!」
で、最後にこの場の全員、いや、正確にはフレアハルトたちを除いた儀式場全体を氷漬けにして意識が戻ったらしい。
ここまで全部『とか』とか『らしい』としか説明できなくて、そんなことやった実感は全く無いけど……
ただ、『殺さない』というところだけはちゃんと理性が働いてたらしく、氷漬けになった者全員が軽傷で済んでいたのは幸いだった。
それで、これは更に後からレイアに聞いた話だけど、フレアハルトとレイア、アリサの三人とも濡れた子犬のような顔で震えながら見てたとか。
フレイムハルトは震えながら「これからはアルトラを怒らせないようにしよう……」とか小声で言ってたとかなんとか。
フフ……これはフレアハルト本人からは聞けない話だわ
この間、大体5分くらいの間。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
で、現在に至る。
「それで、どういう風に話を付けてくれるのかしら?」
今私は、族長の玉座に険しい顔で、肩ひじ付いて足を組みながら偉そうな態度で座っている。
私の前には、跪いた族長と以下レッドドラゴンの配下が多数。
フレアハルトと側近二人は私の横に座っている。
「はい……貴女様の軍門に降ります。如何様にもしていただきたい」
「わかりました。じゃあ、フレアハルトの処遇は?」
「はい、幽閉を解きます」
フレアハルトをチラッと見て――
「好きにすると良い」
「ありがとうございます! 父上!」
「じゃあ、これで終わりということで、え~と――」
フレアハルト八世の父だから、『フレアハルト七世』なのかな?
「フレアハルト七世、あなたには今まで通り変わらず種族の営みをお願いします」
「は? 我々はあなたの奴隷になるのでは?」
「奴隷なんかいりません。今後取るつもりもありません。ただフレアハルトのようにもっと亜人を知ってください、理解してください。危害を加えないなら私の村でも歓迎します。わだかまりも作りたくないので、フレアハルトの件、隷属の件、儀式場を壊してしまった件、その他諸々不問にしていただきたいと思います」
「我々は貴女に完敗したのに、その程度の要求でよいのですか?」
「私としてはフレアハルトの意思だけ通してもらえるなら、それで良いと思っています。ただ……願わくばもし万が一私の村が危機に瀕するようなことがあった場合には救援をお願いできるとありがたく思います」
「わかりました。お約束しましょう」
あと……これを言うのはかなり心苦しい、下手したら今この時点から恨まれてしまうことになるが……
「それと……一つ謝らなければならないことがあります。フレアハルトはもう知っていることですが……以前大洪水を起こして、あなた方の住処を沢山奪ってしまったのは私です。知らなかったこととは言え、申し訳ありません」
玉座から降り、今度は私が土下座して深々と頭を下げる。
「貴女が『終末の神水』を喚んだ者だとフレアハルトから知らされました。あの時、この最も高い山のみ水没から免れたため、みなここに避難して死者はおりません」
ホッ、それなら一応一安心。
でも……『終末の神水』なんて呼び方されてたのか……仰々しいな……
まあ、今まで天から降ってくる雨を見たこともない人たちのところに、突然大量の水が落ちてきたら『終末』とも思うかもしれない。
「顔をお上げください。貴女は我々に勝利したのです。そのことについて咎めることも致しません、それが弱肉強食の掟です」
ここで咎められないのは、ある意味では『武力至上主義』ってところに助けられてる感じがする。『強い者が絶対的な正義!』みたいな考え方。
それでも、誰も死者が出なかったとは言え、住処の大部分を奪ってしまったのは変わらないので、私の心は「良かった」と素直に喜ぶことはできないが……
横を見ると――
「あなた、さっきの祭司の一人?」
「はい、フレアハルトの弟のフレイムハルトと申します」
「あなたがよく出来た弟さん? あなたの炎凄かった。もしあれがもし『インフェルノブレス』だったら、私は耐えることができなかったと思う」
「ありがとうございます、今後も兄をよろしくお願いします」
何とか一件落着。
今回は史上最もダメージを受けたイベントだったな……
疲れる度合いがどんどん更新されている気がする。
『初遭遇時のフレアハルト < 無敵の超巨大スライム < 聖炎耐火の儀』という感じに……
さて、フレアハルトの幽閉も解けたし、我が家へ帰ろうかな。
「じゃあ、私は帰るよ」
「こんなところへ呼び立ててしまって、すまなかったな……」
珍しくしおらしいな。ブチギレ状態の私を目の当たりにしたからか?
「では、一週間前の約束、食堂へ行ってメシを食おうか」
……そうでもなかった。
「川の掘削に貢献した我を労え!」
「それは最早私のセリフだよ。指無くなっても逃げなかった私を労え!」
「ふふ……」
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