100 / 486
第4章 アルトラの受難編
第99話 お風呂が小さくてもリディアは泳ぎたい
しおりを挟む
ご飯も食べたし、お風呂にするか。
「リディア、お風呂入っちゃって」
「一緒に入らないのカ? じゃあカイベル一緒に入るカ?」
「うちのお風呂、二人入れるほど広くないから」
まあ以前アリサとレイアが二人で入ってたから、私とリディアの子供体型二人なら入れるかもしれないが。
あと、カイベルはまだあの場所がどうなってるか確認が済んでないから、風呂に誘われると困る。
それを聞いたリディアが風呂場の扉を開く。
「狭いナ……これじゃ泳げる気がしなイ……」
いや、絶対泳げないよ! うちの風呂釜2m無いからね!
「でも泳ぎたイ! 小さくしてくレ! 百分の一くらいニ!」
十分の一はまだしも、百分の一にすると危険度が激増するのよね……
130cmの身体が1.3cm、イカ状態になったとしても5cmくらいまで小さくなるから、大地が冷えて最近その辺を飛ぶようになってきた虫にすら勝てないかもしれないし。もしかしたら風呂の中のバクテリアや微生物が肉眼で見えるかもしれない。それらが攻撃してくるとも限らない。
だとしたら、縮小魔法はかけない方が無難。
「………………う~ん、ダメだね。危険過ぎる。村にプール作ってもらうように呼び掛けてみるから、今日のところはお風呂で我慢して」
「えー、入りたイ! 入りたイ! 泳ぎたイ!」
「湯舟に沈むだけじゃダメなの?」
「………………う~ん………………仕方なイ、それで良しとすル……」
スケール10%で小さくして、イカ形態になる。
風呂に入ったらその場でしばらく浮かんでた。
が、やっぱり物足りないのか、風呂の四隅を移動し始めた。
まあ村にプールを作るまで少しの間我慢してもらおう。
いや、そういえばメリルたちが勝手に作ってた水浴び場があったな。あそこなら泳げるかもしれない。今度連れて行くか。
(第36話参照)
ちょっと不満げに見えるけど、まあ水に入ってるのは同じだし、一応泳げてるみたいだし良いだろう。
リディアをその場に放置して風呂場を出た。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
しばらく寝室兼リビングでくつろいでいると――
「アルトラ~、やっぱり泳ぎたイ~」
風呂場からイカ形態のまま身体を拭かずに出てきた。
「うわぁぁ、濡れたまま出てこないで!」
しかも、イカ形態だから触手があちこちに水を飛び散らす。
そういえば、リナさんの家ではリディアはのぼせてたり疲れて半分寝てたりで、身体拭くのを全部私がやったから、『身体を拭く』という概念自体がまだ無いのかもしれない。
お風呂入ったら「身体拭く」ということを教えておかないといけないな!
カイベルに床を拭いてもらおうかと思ったけど、カイベルは……まだ食後の片づけをしている。
自分で拭くか……
雑巾を用意して床を拭きながら、リディアの話を聞く。
「やっぱり小さくなって泳ぎたイ!」
これは泳ぐまで言うこと聞きそうにないな……
普段の聞き分けは割と良い方なんだけど、子供特有のわがままな部分は亜人じゃなくても存在するようだ。
「う~ん……わかったよ……試してみるか、異常があったらすぐに超音波出して、声だと聞こえないかもしれないから」
「わかっタ!」
「縮小魔法スケール1%!」
みるみるうちに小さくなる。5cmちっさ! 目離したらどこへ行ったかわからなくなるかもしれない。
手の平に乗せて。水面に近付けると。
「うわぁぁっ! なんかウジャウジャいル!!」
予想通り雑菌とか見えちゃうのね……
「うわぁぁっ!! でっかいクモいルゥゥゥ!!」
リディアの視線の先を見るとハエトリグモ。
なんだ、ただのハエトリグモか、あんなの人間界ならどこにでもいるけど、今のリディアの大きさには巨大に見えるのね。
「うわぁ!! 血を吸う虫がいルッ!! でかイィィ!!」
ああ……蚊まで発生する環境になってきたか……
人間時代は毎夜に渡りコイツに苦しめられたから殺意沸くわぁ……
「もうイイ! 入るの止めルゥゥゥ!! うわぁあああ!!」
泣き出しちゃったよ……
「早く大きくしテェェェ!!」
縮小スケールを10%に引き上げた。
「うわぁあああぁあああ!!!」
しばらく私に抱き着いて泣き止まなかった……
その後、リディアが落ち着いた後に私もお風呂に入った。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
さて、お風呂も入ったし寝るか。
と、その前に――
「リディア、これプレゼント」
昨日作った、『リディア専用パジャマ』をプレゼントした。
「おぉ! くれるのか!?」
「今日からはこれを着て寝て」
「良いナ! こういうの着てみたかったんダ! リディアずっと自分の身体のパーツだけで服作ってたからナ!」
水族館で買って来たサメの抱き枕も寝床に置いてと――
「それじゃあ、おやすみ」
次の日朝。
リディアを起こしに行くと、案の定イカ状態。
予想通り、パジャマは上だけ触手が通ってるだけで、下は八本の足が丸出し。下のパジャマは完全に脱げてしまっている。
う~ん……やっぱり二本足用じゃ八本の足は収まらなかったか。
上だけで機能するようにしておいて良かった。今度は私の家を壊されるところだった。
「リディア、朝だよ」
「う~ん……もうちょっと寝たイ……」
イカって海中でこんなに寝ないはずだけどな……陸上で安心して寝れるから二度寝したくなるのかな?
しかし毎朝ケルベロスに会いに来ている子供の声で、リディアの目が覚めた。
「あれ誰ダ?」
「毎日ケルベロスに会いに来る子たちよ」
「ちょっと行ってくル!」
「その前に着替えと歯磨きと洗顔! あとイカの状態で出歩かない!」
「ウウ~~」
「1時間くらいはあそこにいるから大丈夫よ」
「すぐ支度してくル!」
洗顔と歯磨きをしにいった。
「行ってくル!」
早いな……ちゃんと歯磨いて、顔洗ったのかしら?
窓から覗いてると、挨拶してる。その後程なくして三人で飛び跳ねたり、喜んだりしてる。
どんな会話をしてるかは聞こえないけど、問題無く村に馴染めそうだ。
あ、帰って来た。
「アルトラ! ラナとリアの家に遊びに行ってくル!」
もう友達になったのか。
あの毎朝来る子、ラナとリアって言うのね。
「良いけど、無闇にクラーケンの姿になっちゃダメよ? 一応これ腕に付けて行って!」
リディア専用パジャマと同じ機能の腕輪を渡す。こんなこともあろうかと一緒に作っておいた。
「何だこレ?」
「大きくならないようにするための腕輪。一応付けて行って。もし危険があった時には外せば巨大化できるから」
「わかっタ! じゃあ行ってくル!」
リディアは遊びに出た。
さて、じゃあ私はフレアハルトを迎えに行くお昼まで時間を潰すか。
後日談だけど――
「リディア、お風呂は?」
「ヤダ! コワイ!! 入らなイ!!」
その後、あの一件がよほどトラウマだったのか、しばらく風呂に入れるのに難儀した。
「リディア、お風呂入っちゃって」
「一緒に入らないのカ? じゃあカイベル一緒に入るカ?」
「うちのお風呂、二人入れるほど広くないから」
まあ以前アリサとレイアが二人で入ってたから、私とリディアの子供体型二人なら入れるかもしれないが。
あと、カイベルはまだあの場所がどうなってるか確認が済んでないから、風呂に誘われると困る。
それを聞いたリディアが風呂場の扉を開く。
「狭いナ……これじゃ泳げる気がしなイ……」
いや、絶対泳げないよ! うちの風呂釜2m無いからね!
「でも泳ぎたイ! 小さくしてくレ! 百分の一くらいニ!」
十分の一はまだしも、百分の一にすると危険度が激増するのよね……
130cmの身体が1.3cm、イカ状態になったとしても5cmくらいまで小さくなるから、大地が冷えて最近その辺を飛ぶようになってきた虫にすら勝てないかもしれないし。もしかしたら風呂の中のバクテリアや微生物が肉眼で見えるかもしれない。それらが攻撃してくるとも限らない。
だとしたら、縮小魔法はかけない方が無難。
「………………う~ん、ダメだね。危険過ぎる。村にプール作ってもらうように呼び掛けてみるから、今日のところはお風呂で我慢して」
「えー、入りたイ! 入りたイ! 泳ぎたイ!」
「湯舟に沈むだけじゃダメなの?」
「………………う~ん………………仕方なイ、それで良しとすル……」
スケール10%で小さくして、イカ形態になる。
風呂に入ったらその場でしばらく浮かんでた。
が、やっぱり物足りないのか、風呂の四隅を移動し始めた。
まあ村にプールを作るまで少しの間我慢してもらおう。
いや、そういえばメリルたちが勝手に作ってた水浴び場があったな。あそこなら泳げるかもしれない。今度連れて行くか。
(第36話参照)
ちょっと不満げに見えるけど、まあ水に入ってるのは同じだし、一応泳げてるみたいだし良いだろう。
リディアをその場に放置して風呂場を出た。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
しばらく寝室兼リビングでくつろいでいると――
「アルトラ~、やっぱり泳ぎたイ~」
風呂場からイカ形態のまま身体を拭かずに出てきた。
「うわぁぁ、濡れたまま出てこないで!」
しかも、イカ形態だから触手があちこちに水を飛び散らす。
そういえば、リナさんの家ではリディアはのぼせてたり疲れて半分寝てたりで、身体拭くのを全部私がやったから、『身体を拭く』という概念自体がまだ無いのかもしれない。
お風呂入ったら「身体拭く」ということを教えておかないといけないな!
カイベルに床を拭いてもらおうかと思ったけど、カイベルは……まだ食後の片づけをしている。
自分で拭くか……
雑巾を用意して床を拭きながら、リディアの話を聞く。
「やっぱり小さくなって泳ぎたイ!」
これは泳ぐまで言うこと聞きそうにないな……
普段の聞き分けは割と良い方なんだけど、子供特有のわがままな部分は亜人じゃなくても存在するようだ。
「う~ん……わかったよ……試してみるか、異常があったらすぐに超音波出して、声だと聞こえないかもしれないから」
「わかっタ!」
「縮小魔法スケール1%!」
みるみるうちに小さくなる。5cmちっさ! 目離したらどこへ行ったかわからなくなるかもしれない。
手の平に乗せて。水面に近付けると。
「うわぁぁっ! なんかウジャウジャいル!!」
予想通り雑菌とか見えちゃうのね……
「うわぁぁっ!! でっかいクモいルゥゥゥ!!」
リディアの視線の先を見るとハエトリグモ。
なんだ、ただのハエトリグモか、あんなの人間界ならどこにでもいるけど、今のリディアの大きさには巨大に見えるのね。
「うわぁ!! 血を吸う虫がいルッ!! でかイィィ!!」
ああ……蚊まで発生する環境になってきたか……
人間時代は毎夜に渡りコイツに苦しめられたから殺意沸くわぁ……
「もうイイ! 入るの止めルゥゥゥ!! うわぁあああ!!」
泣き出しちゃったよ……
「早く大きくしテェェェ!!」
縮小スケールを10%に引き上げた。
「うわぁあああぁあああ!!!」
しばらく私に抱き着いて泣き止まなかった……
その後、リディアが落ち着いた後に私もお風呂に入った。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
さて、お風呂も入ったし寝るか。
と、その前に――
「リディア、これプレゼント」
昨日作った、『リディア専用パジャマ』をプレゼントした。
「おぉ! くれるのか!?」
「今日からはこれを着て寝て」
「良いナ! こういうの着てみたかったんダ! リディアずっと自分の身体のパーツだけで服作ってたからナ!」
水族館で買って来たサメの抱き枕も寝床に置いてと――
「それじゃあ、おやすみ」
次の日朝。
リディアを起こしに行くと、案の定イカ状態。
予想通り、パジャマは上だけ触手が通ってるだけで、下は八本の足が丸出し。下のパジャマは完全に脱げてしまっている。
う~ん……やっぱり二本足用じゃ八本の足は収まらなかったか。
上だけで機能するようにしておいて良かった。今度は私の家を壊されるところだった。
「リディア、朝だよ」
「う~ん……もうちょっと寝たイ……」
イカって海中でこんなに寝ないはずだけどな……陸上で安心して寝れるから二度寝したくなるのかな?
しかし毎朝ケルベロスに会いに来ている子供の声で、リディアの目が覚めた。
「あれ誰ダ?」
「毎日ケルベロスに会いに来る子たちよ」
「ちょっと行ってくル!」
「その前に着替えと歯磨きと洗顔! あとイカの状態で出歩かない!」
「ウウ~~」
「1時間くらいはあそこにいるから大丈夫よ」
「すぐ支度してくル!」
洗顔と歯磨きをしにいった。
「行ってくル!」
早いな……ちゃんと歯磨いて、顔洗ったのかしら?
窓から覗いてると、挨拶してる。その後程なくして三人で飛び跳ねたり、喜んだりしてる。
どんな会話をしてるかは聞こえないけど、問題無く村に馴染めそうだ。
あ、帰って来た。
「アルトラ! ラナとリアの家に遊びに行ってくル!」
もう友達になったのか。
あの毎朝来る子、ラナとリアって言うのね。
「良いけど、無闇にクラーケンの姿になっちゃダメよ? 一応これ腕に付けて行って!」
リディア専用パジャマと同じ機能の腕輪を渡す。こんなこともあろうかと一緒に作っておいた。
「何だこレ?」
「大きくならないようにするための腕輪。一応付けて行って。もし危険があった時には外せば巨大化できるから」
「わかっタ! じゃあ行ってくル!」
リディアは遊びに出た。
さて、じゃあ私はフレアハルトを迎えに行くお昼まで時間を潰すか。
後日談だけど――
「リディア、お風呂は?」
「ヤダ! コワイ!! 入らなイ!!」
その後、あの一件がよほどトラウマだったのか、しばらく風呂に入れるのに難儀した。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
63
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる