建国のアルトラ ~魔界の天使 (?)の国造り奮闘譚~

ヒロノF

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第4章 アルトラの受難編

第92話 コンクリート固めは専門家に任せ、アルトラは村へ

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「それで、資材はどうするつもりだ? お前さんが資材は調達してくれるって言うから、俺たちは道具以外は何も持ってきてないぞ?」
 ヘパイトスさんから質問が飛ぶ。

「問題ありません、ここに用意出来ています」
 セメント、砂、砂利を取り出す。一応袋にパッケージングしてある。

「どこで調達したんだ?」
「私から都合の良い物が出てきても『そういうものだ』と思ってくれるとありがたいです」
「………………あんた、ホントに細かい物を作ること以外は何でも出来そうだな」
 川の堤防の固めに必要であろうと、全て昨日『アクアマリンの腕輪』を作りに、我が家に帰った時にオルシンジテンでついでに調べて作っておいたもの。
 とりあえず、初日の作業に必要な分ぐらいはあるはずだ。

「あんたなら川の底石を全部宝石にすることもできそうだな」
 それは面白い発想ね、やってみようかしら? もしかしたら名所になるかも?
 ………………いや、きっと泥棒ばかりが増えて、治安が悪くなるだけだ、面倒の方が増えそうだしやめておこう。それに、宝石の価値が暴落しそうだ。

「しかし、これだけだとコンクリートを作ることができないぞ? 水が無い」
「ちょっと待ってください」
 水道管のような筒を付けた蛇口を亜空間収納ポケットから取り出した。
 こんなこともあろうかと作っておいた。

「蛇口? そんなもの取り出してどうするんだ?」
 次に地面に土台を作り、そこに蛇口付き筒を突き立てた。

「はい、どうぞ」
「『はい、どうぞ』って……地面に蛇口を突き立てたからって何だって言うんだ?」
「ひねってみてください」
「あん? 水なんか出るわけないだろ、下に水道があるわけでもないのに……」
 ヘパイトスさんは疑念を抱きながらも、蛇口をひねる。
 すると――

 水がドバドバと出てくる。
「嘘だろ!? どういう仕組みだ? 手品か?」
「いえ、本物ですよ。空間魔法で一時的に潤いの木の水源の底と繋げました。私が解除するまでは蛇口をひねれば水が出てきます」
「何でもありだな……規格外過ぎて恐ろしいよ……」
「人に直接被害を与えるようなものを作るつもりはないので安心してください」
「まあ、これでコンクリートも作れるな。だが、まだ整地が終わってないから、そちらが先だな」

「これをもっと前に作っておいてくだされば……」
「わざわざ水を補給しに村へ帰ってたんですよ?」
「あ……」
 しまった……水分補給のことまで頭が回ってなかった……

「ごめんね、そこまで気付かなかった……」
 今後はもうちょっと注意を払おう。

「その掘ったところを、段が出来るように整地してくれ。整地出来たところからコンクリートで固めていく。親方連中と、その部下で腕の良いやつらは俺に付いてやり方を覚えてくれ。70kmもあったら人手がいくらあっても足りん!」

 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

 堤防に当たるところが徐々に整地されていく。
 私が日本で見覚えある光景が出来てきた。

「さてアルトラよ、いよいよコンクリートで固めるわけだが……しかしなぁ……これだけ広範囲だとまだ足りないものがあるんだよな」
「何ですか?」
「こういう細い棒状の鉄なんだが……」
 ああ、鉄筋か。
 そういえば強度を補うために使うってオルシンジテンが言ってたな。出し忘れてた。

「用意してあります」
「さすが! 用意が良いな!」
 鉄筋を出す。

「よし、じゃあ準備はOKだ。あとは現場の作業員に任せておいてくれ! おい、そこのお前たち、その箱の中でこれを混ぜてくれ。あ、ゴム手袋これを付けろ。そのままやると手が荒れるぞ。分量は――」
 近くに居たトロルたちにゴム手袋を渡して、コンクリートを作るための指示をし、ゼメント、砂、砂利と水を混ぜさせる。

「上手い具合に混ざったら、こっちへ寄越してくれ」
 コンクリートを練っている間、鉄筋を敷き詰め、メッシュを作っている。
 あそこを後々コンクリートで固めるのかな?

 そういえば、いつの間にかリディアがいない!
 どこへ行ったのか探したところ、先頭の掘削組と一緒に掘削作業を手伝っていた。

「イカ状態になってる……」
 あの状態の方が力が出るから、掘った土を外へ運ぶ役を担ってるみたいだ。
 フレアハルトはもちろん、トロルたちも特に気にもしていないようだ。ちょっと不安視してたけど、放っておいても大丈夫そうかな。
 彼女は私の家に居候させるつもりだから、今日の作業終了辺りになったら迎えに来よう。

「アリサ、ちょっとちょっと」
「はい? いかが致しましたか?」
「リディアがこの村に一生懸命馴染もうとしてるから、ここに置いて行こうと思う。私は集落の方に用事があるから、様子見お願いできる?」
「はい、ですが小さい子の扱いはレイアの方が向いているかもしれません」
「それでレイアは?」
「あそこでリディア様と一緒になって掘削作業してますね」
「楽しそうに見えるし、任せておけば良いかな?」
「そうですね、わたくしも一応注意を払っておきます」
「あの子は優しいから暴れたりすることはないと思うけど、まだ幼いし何かのきっかけで暴走してしまうって可能性はゼロではないから、万が一そんな事態になった時には超音波飛ばして呼んでもらえる? 私は集落にいるから」
「かしこまりました」
「じゃあ、作業終了辺りになったら迎えに来るからお願いね」

 さて、もうここで私がやれることは無さそうだから、私は私の役割をしよう。
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