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第3章 水の国アクアリヴィア探訪編
第78話 vsクラーケン
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と言うわけで、リナさんにドワーフ商会まで連れて来てもら……ってない。
「それで、ここどこかしら?」
「あれー? おかしいなぁ……こっちだったと思ったんですけど……」
結局のところ、小さい頃に親と兄と来ただけで、その後はパトロールで何となく来ただけだからしっかりと覚えていないようだ。
いや、それよりも私には彼女が方向音痴にしか見えないが……
あ、でもホテルには案内してくれたし、完全にそうというわけではないのか。
「アハハ……すみません……」
彼女にはここに来てお世話になりっ放しだから、この程度の失敗は些末なことだ。
「うんうん、大丈夫、失敗は誰にもあることだから」
私の失敗 (集落水没)に比べれば些末些末!
海に近い方に来てたらしい。潮の香が強くなり、倉庫が立ち並んでいる。
この世界に来て、初めて海を見る。
『おおおおぉぉぉお!!』
海の方から沢山の大声が聞こえた。
「何か騒がしいですね」
「何だろう? 行ってみようか」
何か面倒事の匂いもするけど……
しばらく歩いたら海岸に出た。人が沢山集まっている。
海がある方向を見ると――
「でっかいイカね!」
巨大なイカが海岸に出没していた。
フレアハルトくらいの大きさがあるから、脚の分抜きにして多分体高4~5mの間くらいかな?
「リナさん、アレなに!?」
「ああ、クラーケンですね。ここ数ヵ月、たまにこの海岸に来るらしいですよ」
「危険なヤツ?」
「それが何ともわからないんですよね……漁船は襲うんですが壊すわけじゃない上に、亜人は襲わないんですよ。それどころか溺れてる亜人を助けたことがあるとか。ただ漁船にとってはかなり邪魔なので居座られると困るんですけど……」
「アイツ……魔王とまではいかないけど、相当強い魔力持ってるね。暴れ出したら危ないくらいの」
「いつもは女王様が来て追い払ってくれます。私も一度だけ見たことがありますが、なぜか女王様にだけは敵意むき出しでしたね」
「やっぱりあの大きさだとそれ相応の力が無いと追い払うことも出来ないのね」
「今回はご多忙ですので、中々来られないかもしれませんね。昨夜も随分お疲れのようでしたし」
確かになぁ……私の目の前で寝落ちするくらい疲れてるみたいだしね……
「もうちょっと近くで見よう!」
あんなでっかいイカ見たことないし!
追い払うにしても、水の中じゃ私が何とかするのも難しいな。流石に水中の動きはそれほど上手くはない。相手がイカでは不利な条件が多過ぎる。
魔法を当てて追い払うことくらいはできるか。住民に危害がありそうな時は雷魔法で脅かしてみるか。
ん? なぜか……上陸してきた……?
水中という有利な条件を捨てて、自ら陸に上がってきた!? おバカなのかな?
海岸に引き上げられた地引網の中身を貪り食い始めた。
私たちは海岸に着き、砂浜にいた野次馬の群衆に紛れる。
と思ったら食べるのを止めた。
こっちを見た? 目が合ったような気がする……
食べながらも私から目を反らさない。何か……明確に標的として見定められてるように見えるんだけど……?
こちらへ向き直った!
なんかヤバイ! 多分攻撃される!
今からここを離れても間に合わなそうだ。このままだと野次馬もろとも攻撃されるかもしれない!
風魔法で私の周りから野次馬を吹き飛ばし、私の周りに人がいない状態にする。吹き飛ばした時に擦り傷くらいの怪我は負ってしまうかもしれないけど、野次馬のみんなごめん!
「『風の衝撃波』」
「うわ?」
「キャッ!」
「何だこの突風!?」
同時に急いで水属性吸収の防御魔法を自分にかける。
その直後に水流のレーザーが私を襲う。
「アルトラ様!!」
「痛たたたたたたた……」
この水痛い!
水吸収の魔法かかってるはずなのに!
火Lv11の次は、水Lv11か!?
耐えてられない……
ドゴーーーン
海岸の岩壁まで吹き飛ばされた。
「痛たた……」
「アルトラ様! 大丈夫ですか!?」
「な、なんとか……」
「アルトラ様をここまで吹き飛ばすなんて、許せません!」
「いや、手を出さない方が良い、今の喰らったら普通の亜人だと死んじゃうかもしれない」
「そ、そこまでの攻撃なんですか!? 私にはただの水流に見えたんですが……」
「多分私以外が喰らったら穴が開く」
「嘘ですよね?」
「まあ穴が開くは大袈裟かもしれないけど、骨くらいは折れるかも。当たり所が悪ければ十分死ぬよ」
何で今私が狙われた?
リナさんに「人には危害を加えない」って聞いたけど……
この街の住人じゃないから? それともフレアハルトのように魔力感知の力が強いから、私に対して危機感を覚えた? さっき女王には敵意むき出しって言ってたな、後者の可能性が高い気がする。
怪我は……幸いにも少しの痛みで済んでいる。あのまま耐え続けたら骨までイってたかも。
「みなさん! ここは危険です! クラーケンから離れてください!」
リナさんが、避難の先導をしてくれる。人払いをしてくれるのは助かる。
クラーケンは邪魔者を排除したからか、また海産物を食べている。
この距離だと全く意に介さずに食べ続ける。
少し近付いてみるか。
距離が目測で30mを越えたくらいで、食べながらも警戒し始めた。
これは……やっぱりさっきのは明らかに私を意識した攻撃みたいだ。脅威と感じて排除しようとしたってところかな。
多分レヴィアタンに何度も海に追い返されてるから魔力が高い私を警戒しているんだ。
25mを越えたら食べるのを止めて凝視してきた。
20mで触手を二本振り上げて臨戦態勢になった。これ以上近付くとまたさっきのをやられそうだ。
対して、私以外の他人が20m以内に入っていても、全く意に介していなかった。あくまで警戒対象は私らしい。
雷魔法を使ってしまえば楽だけど、亜人を助けたって言うくらいだから、それほど悪い魔物ではないのかもしれない。出来ることなら痛みを与えずに追い払いたい。
いつもはレヴィアタンが追い返してるってことは、多分水魔法を使って海へ押し返してるとかなんだろう。
水魔法の水圧は発射距離が近ければ近いほど強い。この距離だとまだまだ遠すぎて、あの巨体を遠くの海へ押し出せるかわからない。最低でも10m、欲を言うなら5m未満まで近付きたい。
もう周りに人はいない。全員リナさんが高台に避難させてくれた。水流レーザーを乱射されても大丈夫そうだ。
走って一気に距離を詰める。
さっきの水流のレーザーを放って来たが避ける。連発してきたからそれも避けた。
よし、もうすぐ10メート……ル?
急に自身が大きい影の中に入った。
「なになに!? 何なのあの大波!?」
ザパーーー
………………
…………
……
押し流された……またクラーケンから離れてしまった……
今の波もコイツの魔法かな?
「アルトラ様ーー! 大丈夫ですかーー!」
高台からリナさんの声が聞こえる。
砂浜に顔が埋まったまま、左手でグッドサインを出す。
クラーケンは今食べていた地引網が流されてしまったのか、今度は港の方に移動しだした。
私、もしかしてかなり舐められてない? 警戒してたんじゃないの?
仕方ない、雷魔法で終わらせるか、この距離でも届くはずだ。
体力ありそうだからちょっと強めのやつで行くか。
「集束する稲妻!!」
いくつもの雷の帯がクラーケンに降り注ぐ。
「ギニャアァァ!!」
雷を喰らったクラーケンの身体から湯気が出ている。
まずい……体力ありそうだからちょっと強めにと思ったけど……ちょっと強過ぎたか……
「ギ……ギギ……」
とは言え、再び動かれる前に拘束しておこう。
「麻痺拘束」
あと、拘束してる間に魔法も使えないように。
「魔法封印」
よし、これであとは船に乗せて海へ返すだけだ。
「おお! やった! あのお嬢さんクラーケンを捕まえたぞ!」
「すげぇ嬢ちゃんだ!」
「今日はイカ料理かな、じゅる」
高台の方では大騒ぎね……
「……け……て……」
ん? 何か聞こえる。
近寄って耳を澄ませてみると――
「それで、ここどこかしら?」
「あれー? おかしいなぁ……こっちだったと思ったんですけど……」
結局のところ、小さい頃に親と兄と来ただけで、その後はパトロールで何となく来ただけだからしっかりと覚えていないようだ。
いや、それよりも私には彼女が方向音痴にしか見えないが……
あ、でもホテルには案内してくれたし、完全にそうというわけではないのか。
「アハハ……すみません……」
彼女にはここに来てお世話になりっ放しだから、この程度の失敗は些末なことだ。
「うんうん、大丈夫、失敗は誰にもあることだから」
私の失敗 (集落水没)に比べれば些末些末!
海に近い方に来てたらしい。潮の香が強くなり、倉庫が立ち並んでいる。
この世界に来て、初めて海を見る。
『おおおおぉぉぉお!!』
海の方から沢山の大声が聞こえた。
「何か騒がしいですね」
「何だろう? 行ってみようか」
何か面倒事の匂いもするけど……
しばらく歩いたら海岸に出た。人が沢山集まっている。
海がある方向を見ると――
「でっかいイカね!」
巨大なイカが海岸に出没していた。
フレアハルトくらいの大きさがあるから、脚の分抜きにして多分体高4~5mの間くらいかな?
「リナさん、アレなに!?」
「ああ、クラーケンですね。ここ数ヵ月、たまにこの海岸に来るらしいですよ」
「危険なヤツ?」
「それが何ともわからないんですよね……漁船は襲うんですが壊すわけじゃない上に、亜人は襲わないんですよ。それどころか溺れてる亜人を助けたことがあるとか。ただ漁船にとってはかなり邪魔なので居座られると困るんですけど……」
「アイツ……魔王とまではいかないけど、相当強い魔力持ってるね。暴れ出したら危ないくらいの」
「いつもは女王様が来て追い払ってくれます。私も一度だけ見たことがありますが、なぜか女王様にだけは敵意むき出しでしたね」
「やっぱりあの大きさだとそれ相応の力が無いと追い払うことも出来ないのね」
「今回はご多忙ですので、中々来られないかもしれませんね。昨夜も随分お疲れのようでしたし」
確かになぁ……私の目の前で寝落ちするくらい疲れてるみたいだしね……
「もうちょっと近くで見よう!」
あんなでっかいイカ見たことないし!
追い払うにしても、水の中じゃ私が何とかするのも難しいな。流石に水中の動きはそれほど上手くはない。相手がイカでは不利な条件が多過ぎる。
魔法を当てて追い払うことくらいはできるか。住民に危害がありそうな時は雷魔法で脅かしてみるか。
ん? なぜか……上陸してきた……?
水中という有利な条件を捨てて、自ら陸に上がってきた!? おバカなのかな?
海岸に引き上げられた地引網の中身を貪り食い始めた。
私たちは海岸に着き、砂浜にいた野次馬の群衆に紛れる。
と思ったら食べるのを止めた。
こっちを見た? 目が合ったような気がする……
食べながらも私から目を反らさない。何か……明確に標的として見定められてるように見えるんだけど……?
こちらへ向き直った!
なんかヤバイ! 多分攻撃される!
今からここを離れても間に合わなそうだ。このままだと野次馬もろとも攻撃されるかもしれない!
風魔法で私の周りから野次馬を吹き飛ばし、私の周りに人がいない状態にする。吹き飛ばした時に擦り傷くらいの怪我は負ってしまうかもしれないけど、野次馬のみんなごめん!
「『風の衝撃波』」
「うわ?」
「キャッ!」
「何だこの突風!?」
同時に急いで水属性吸収の防御魔法を自分にかける。
その直後に水流のレーザーが私を襲う。
「アルトラ様!!」
「痛たたたたたたた……」
この水痛い!
水吸収の魔法かかってるはずなのに!
火Lv11の次は、水Lv11か!?
耐えてられない……
ドゴーーーン
海岸の岩壁まで吹き飛ばされた。
「痛たた……」
「アルトラ様! 大丈夫ですか!?」
「な、なんとか……」
「アルトラ様をここまで吹き飛ばすなんて、許せません!」
「いや、手を出さない方が良い、今の喰らったら普通の亜人だと死んじゃうかもしれない」
「そ、そこまでの攻撃なんですか!? 私にはただの水流に見えたんですが……」
「多分私以外が喰らったら穴が開く」
「嘘ですよね?」
「まあ穴が開くは大袈裟かもしれないけど、骨くらいは折れるかも。当たり所が悪ければ十分死ぬよ」
何で今私が狙われた?
リナさんに「人には危害を加えない」って聞いたけど……
この街の住人じゃないから? それともフレアハルトのように魔力感知の力が強いから、私に対して危機感を覚えた? さっき女王には敵意むき出しって言ってたな、後者の可能性が高い気がする。
怪我は……幸いにも少しの痛みで済んでいる。あのまま耐え続けたら骨までイってたかも。
「みなさん! ここは危険です! クラーケンから離れてください!」
リナさんが、避難の先導をしてくれる。人払いをしてくれるのは助かる。
クラーケンは邪魔者を排除したからか、また海産物を食べている。
この距離だと全く意に介さずに食べ続ける。
少し近付いてみるか。
距離が目測で30mを越えたくらいで、食べながらも警戒し始めた。
これは……やっぱりさっきのは明らかに私を意識した攻撃みたいだ。脅威と感じて排除しようとしたってところかな。
多分レヴィアタンに何度も海に追い返されてるから魔力が高い私を警戒しているんだ。
25mを越えたら食べるのを止めて凝視してきた。
20mで触手を二本振り上げて臨戦態勢になった。これ以上近付くとまたさっきのをやられそうだ。
対して、私以外の他人が20m以内に入っていても、全く意に介していなかった。あくまで警戒対象は私らしい。
雷魔法を使ってしまえば楽だけど、亜人を助けたって言うくらいだから、それほど悪い魔物ではないのかもしれない。出来ることなら痛みを与えずに追い払いたい。
いつもはレヴィアタンが追い返してるってことは、多分水魔法を使って海へ押し返してるとかなんだろう。
水魔法の水圧は発射距離が近ければ近いほど強い。この距離だとまだまだ遠すぎて、あの巨体を遠くの海へ押し出せるかわからない。最低でも10m、欲を言うなら5m未満まで近付きたい。
もう周りに人はいない。全員リナさんが高台に避難させてくれた。水流レーザーを乱射されても大丈夫そうだ。
走って一気に距離を詰める。
さっきの水流のレーザーを放って来たが避ける。連発してきたからそれも避けた。
よし、もうすぐ10メート……ル?
急に自身が大きい影の中に入った。
「なになに!? 何なのあの大波!?」
ザパーーー
………………
…………
……
押し流された……またクラーケンから離れてしまった……
今の波もコイツの魔法かな?
「アルトラ様ーー! 大丈夫ですかーー!」
高台からリナさんの声が聞こえる。
砂浜に顔が埋まったまま、左手でグッドサインを出す。
クラーケンは今食べていた地引網が流されてしまったのか、今度は港の方に移動しだした。
私、もしかしてかなり舐められてない? 警戒してたんじゃないの?
仕方ない、雷魔法で終わらせるか、この距離でも届くはずだ。
体力ありそうだからちょっと強めのやつで行くか。
「集束する稲妻!!」
いくつもの雷の帯がクラーケンに降り注ぐ。
「ギニャアァァ!!」
雷を喰らったクラーケンの身体から湯気が出ている。
まずい……体力ありそうだからちょっと強めにと思ったけど……ちょっと強過ぎたか……
「ギ……ギギ……」
とは言え、再び動かれる前に拘束しておこう。
「麻痺拘束」
あと、拘束してる間に魔法も使えないように。
「魔法封印」
よし、これであとは船に乗せて海へ返すだけだ。
「おお! やった! あのお嬢さんクラーケンを捕まえたぞ!」
「すげぇ嬢ちゃんだ!」
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