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第3章 水の国アクアリヴィア探訪編
第77話 悪戯閃いた
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コンコンコン
「おはようございま~す! アルトラ様~! 朝ですよ~!」
ガチャ
「うわっ! ちょっと何で床で寝てるんですか!?」
いつの間にか寝落ちしていた。
しかも、自分でも気付かぬうちに床に寝ていた。どうやら落下したらしい。
「いや、落ちたことに全く気付かなかった……おはよう」
ダメージが無いから床に落ちても気付かなかったのかな? いや、でも落下した時に音がするし通常状態なら起きないはずがないし……
「昨日のスライムが大変な敵だったから疲れてたんですかね? 昨日ホテルでも床でゴロゴロしてらしたので、一瞬床で寝る方が好みなのかと思いましたよ」
「あはは、流石にベッドがあれば、床では寝ないよ」
「朝食が出来てますよ」
「え!? 朝食まで頂いちゃって良いの?」
食堂に行ってみると、五人のメイドさんが食事を並べている最中。
「あ、ちょっと早く来過ぎてしまいましたね」
「おはようございます、リナ様、アルトラ様」
「おはようございます、ルイーズさん」
昨日の夜に対応してくれたメイドさんだ。
「すぐ出来ますので、もう少々お待ちいただけますか?」
「あ、はい、お構いなく」
「今日はどうしますか?」
「とりあえず、昨日レヴィアタンに教えてもらったドワーフ商会に行ってみようかな。女王様が話を通してくれたんなら、協力とまではいかなくとも、相談くらいは聞いてくれると思うし」
「ドワーフ商会に何を頼みに行くんですか?」
「今私たち川を作っててね、そのアドバイスを貰えれば良いなと思って。このまま私が作ると工期が物凄いことになっちゃいそうで……」
川の筋道つくるだけで1400日って、流石にかかりすぎ……
「確かに水を扱うこの国のドワーフなら打ってつけの相談相手ですね」
「リナ様、アルトラ様、お食事の用意が整いました」
ルイーズさんが迎えにきてくれた。
気を利かせてくれたのか、二人で食事できるように手配してくれた。
おお……これはテレビやアニメで見たことがある、貴族の食事だ。
ここは水産資源が多いのか、食卓にはエビや魚類、貝類が多い。ソーセージやハムなどの肉も乗っている。ご飯が欲しいところだけど、主食はパンだ。
「では、いただきます!」
「アルトラ様の地域では食べる前にそう言うんですか?」
「うん、まあ転生前の地球に居た頃の風習だけどね。命を頂くから『いただきます』って感謝を捧げるのだとか」
「へぇ~、じゃあ私も、いただきます」
食事をしながら話の続きを切り出す。
「さっきの続き、レヴィアタンに地図を貰ったから、目的地の名前はわかってるんだけども……」
リナさんに地図を見せる。
「これ……宮殿とドワーフ商会の間が空白だらけで道まではわかりませんね……って言うか……下手……」
「これ女王が直接書いてくれたものだけど……それ女王様に聞かれたらヤバいやつなんじゃないの?」
「えっ!? 女王様がお書きになったものなんですか!? それは是非ともご内密に!」
「あはは、別に言ったりしないよ」
苦笑しながら話す。
「まあ女王様は懐が広い方なので、こんな程度ならお咎めも無いと思いますけど」
でも、これは私も思ってた……道順がちゃんと分かってないなら、別に地図にしてくれなくても良かったんだけど……
「私も同行するのでお任せください!」
「場所わかるの?」
「ええまあ、生まれた時から住んでますし、今は騎士団でパトロールとかもしてますしね」
「それは助かったわ! でも昨日も今日も私に付いてて良いの? 騎士団の仕事は?」
「団長からアルトラ様の護衛をするように命令されてますので。お帰りになる時まで護衛させていただきますよ! では朝食が終わったら早速ドワーフ商会を訪ねましょう」
昨日使わせてもらった部屋は、メイドさんが片付けるということで、そのままにしておいて良いと言われた。
アクアリヴィアの税金で買ってもらったフォーマルドレスと下着については、あまりにも汚れ過ぎていて、廃棄するしかないとのこと、凄く残念。今後も何かあれば使おうと思ってたのに……
そういうわけで、また闇のドレスに逆戻りだ。
下着だけでもスペアを買っておいたのは幸いだった。
今はドワーフ商会まで案内してくれるってことで、リナさんが屋敷の外で待っていてくれる。
そこで、ちょっと閃いてしまった。
昨日会得したスキルを使った悪戯を……
「お待たせ~」
「あ、そうかまた闇のドレスなんですね、服を一着お譲りしましょうか?」
「いや、良いよ、そんなところまでお世話になるわけにはいかない」
「では、ドワーフ商会へ参りましょう!」
ドワーフ商会へ出発しようとしたその時――
「お待たせ~」
別の方向から私の声がした。
やってきたのは二人目のアルトラ。
「え!? 私!? あなた誰!?」
と言いつつ、私はこの二人目のアルトラが何なのかわかっている。
巨大スライムから会得した、スキル『分身体』の能力で出来た、私の分身。
悪戯心に火が着いて、リナさんに試してみたくなった。
「え? え!? アルトラ様が二人!?」
この場に二人のアルトラが出現した。
リナさんが激しく狼狽えて、私と分身体の方を何度も交互に見る。
「偽物! 正体を現せ!」
「偽物はそっちでしょ!」
本体と分身体が取っ組み合いになってグルグル回る。
「ど、どっちが本物なんですか!? ど、どうしましょう? 私にはどっちが本物なのか……」
本気でどっちに味方しようか考えてるみたいだ。
そこで、グルグルを止め、ピタッと止まって――
「さて、 (本物は)どーっちだ?」
生前に見てたお笑い番組で、『ザ・たっちんぐ』という双子芸人がやってたネタだ。
この他にも幽体離脱とか、アジの開きというネタがある。どれも双子ならではのネタで面白い。
「は? えっと……どういうことですか?」
「あはは、ごめんね、昨日スライムから分身する能力を得たから悪戯してみたくなっちゃってね」
分身体の方を消し去る。
「ビ、ビックリしました、アルトラ様を陥れようとする者がアルトラ様に扮して襲撃しに来たのかと……」
現時点では襲撃されるような恨みを買った覚えは無いけど……
「それにしても凄い能力ですね。分身って……アルトラ様が何かする度に驚かされます。具体的にどのような能力なんですか?」
「基本的に私と同じ思考回路の分身が出来る。でも衝撃に弱くてせいぜい二、三発、多くて五発くらい攻撃を喰らうと消えちゃうみたい」
『MARUTO』の影分身みたいなもんかな。あんなに便利ではないけど……
現在わかってることは、現時点で出せるのは一体だけ、今後練習次第で出せる数が増えるかどうかはわからない。
分身体が見た情報の共有は可能。ただし、スライムから得た能力なので『MARUTO』の影分身とは違って消えた時にフィードバックされるわけではなく、戻って来た分身体を再度取り込む必要がある。
攻撃を受けて消滅した場合、水のように破裂して消える。分身を構成しているものは全体の99%が水分。ほぼ水と言っても過言ではない。
出現させていられる距離はまだ検証してないからわからない。
「さ、悪戯も済んだし、ドワーフ商会に案内してもらえるかしら?」
「ちょっと、待ってください。あまりにもドッキリし過ぎて、身体がこわばってしまいました。ちょっとだけ休ませてください」
そ、そんなに驚かしちゃったかしら……確かに一人しかいないと思ってた人が二人に増えたら驚くかもしれないけど。
私も『実は双子でした~』ってドッキリ、一度味わってみたいわ。
「もう大丈夫です、では参りましょうか」
「おはようございま~す! アルトラ様~! 朝ですよ~!」
ガチャ
「うわっ! ちょっと何で床で寝てるんですか!?」
いつの間にか寝落ちしていた。
しかも、自分でも気付かぬうちに床に寝ていた。どうやら落下したらしい。
「いや、落ちたことに全く気付かなかった……おはよう」
ダメージが無いから床に落ちても気付かなかったのかな? いや、でも落下した時に音がするし通常状態なら起きないはずがないし……
「昨日のスライムが大変な敵だったから疲れてたんですかね? 昨日ホテルでも床でゴロゴロしてらしたので、一瞬床で寝る方が好みなのかと思いましたよ」
「あはは、流石にベッドがあれば、床では寝ないよ」
「朝食が出来てますよ」
「え!? 朝食まで頂いちゃって良いの?」
食堂に行ってみると、五人のメイドさんが食事を並べている最中。
「あ、ちょっと早く来過ぎてしまいましたね」
「おはようございます、リナ様、アルトラ様」
「おはようございます、ルイーズさん」
昨日の夜に対応してくれたメイドさんだ。
「すぐ出来ますので、もう少々お待ちいただけますか?」
「あ、はい、お構いなく」
「今日はどうしますか?」
「とりあえず、昨日レヴィアタンに教えてもらったドワーフ商会に行ってみようかな。女王様が話を通してくれたんなら、協力とまではいかなくとも、相談くらいは聞いてくれると思うし」
「ドワーフ商会に何を頼みに行くんですか?」
「今私たち川を作っててね、そのアドバイスを貰えれば良いなと思って。このまま私が作ると工期が物凄いことになっちゃいそうで……」
川の筋道つくるだけで1400日って、流石にかかりすぎ……
「確かに水を扱うこの国のドワーフなら打ってつけの相談相手ですね」
「リナ様、アルトラ様、お食事の用意が整いました」
ルイーズさんが迎えにきてくれた。
気を利かせてくれたのか、二人で食事できるように手配してくれた。
おお……これはテレビやアニメで見たことがある、貴族の食事だ。
ここは水産資源が多いのか、食卓にはエビや魚類、貝類が多い。ソーセージやハムなどの肉も乗っている。ご飯が欲しいところだけど、主食はパンだ。
「では、いただきます!」
「アルトラ様の地域では食べる前にそう言うんですか?」
「うん、まあ転生前の地球に居た頃の風習だけどね。命を頂くから『いただきます』って感謝を捧げるのだとか」
「へぇ~、じゃあ私も、いただきます」
食事をしながら話の続きを切り出す。
「さっきの続き、レヴィアタンに地図を貰ったから、目的地の名前はわかってるんだけども……」
リナさんに地図を見せる。
「これ……宮殿とドワーフ商会の間が空白だらけで道まではわかりませんね……って言うか……下手……」
「これ女王が直接書いてくれたものだけど……それ女王様に聞かれたらヤバいやつなんじゃないの?」
「えっ!? 女王様がお書きになったものなんですか!? それは是非ともご内密に!」
「あはは、別に言ったりしないよ」
苦笑しながら話す。
「まあ女王様は懐が広い方なので、こんな程度ならお咎めも無いと思いますけど」
でも、これは私も思ってた……道順がちゃんと分かってないなら、別に地図にしてくれなくても良かったんだけど……
「私も同行するのでお任せください!」
「場所わかるの?」
「ええまあ、生まれた時から住んでますし、今は騎士団でパトロールとかもしてますしね」
「それは助かったわ! でも昨日も今日も私に付いてて良いの? 騎士団の仕事は?」
「団長からアルトラ様の護衛をするように命令されてますので。お帰りになる時まで護衛させていただきますよ! では朝食が終わったら早速ドワーフ商会を訪ねましょう」
昨日使わせてもらった部屋は、メイドさんが片付けるということで、そのままにしておいて良いと言われた。
アクアリヴィアの税金で買ってもらったフォーマルドレスと下着については、あまりにも汚れ過ぎていて、廃棄するしかないとのこと、凄く残念。今後も何かあれば使おうと思ってたのに……
そういうわけで、また闇のドレスに逆戻りだ。
下着だけでもスペアを買っておいたのは幸いだった。
今はドワーフ商会まで案内してくれるってことで、リナさんが屋敷の外で待っていてくれる。
そこで、ちょっと閃いてしまった。
昨日会得したスキルを使った悪戯を……
「お待たせ~」
「あ、そうかまた闇のドレスなんですね、服を一着お譲りしましょうか?」
「いや、良いよ、そんなところまでお世話になるわけにはいかない」
「では、ドワーフ商会へ参りましょう!」
ドワーフ商会へ出発しようとしたその時――
「お待たせ~」
別の方向から私の声がした。
やってきたのは二人目のアルトラ。
「え!? 私!? あなた誰!?」
と言いつつ、私はこの二人目のアルトラが何なのかわかっている。
巨大スライムから会得した、スキル『分身体』の能力で出来た、私の分身。
悪戯心に火が着いて、リナさんに試してみたくなった。
「え? え!? アルトラ様が二人!?」
この場に二人のアルトラが出現した。
リナさんが激しく狼狽えて、私と分身体の方を何度も交互に見る。
「偽物! 正体を現せ!」
「偽物はそっちでしょ!」
本体と分身体が取っ組み合いになってグルグル回る。
「ど、どっちが本物なんですか!? ど、どうしましょう? 私にはどっちが本物なのか……」
本気でどっちに味方しようか考えてるみたいだ。
そこで、グルグルを止め、ピタッと止まって――
「さて、 (本物は)どーっちだ?」
生前に見てたお笑い番組で、『ザ・たっちんぐ』という双子芸人がやってたネタだ。
この他にも幽体離脱とか、アジの開きというネタがある。どれも双子ならではのネタで面白い。
「は? えっと……どういうことですか?」
「あはは、ごめんね、昨日スライムから分身する能力を得たから悪戯してみたくなっちゃってね」
分身体の方を消し去る。
「ビ、ビックリしました、アルトラ様を陥れようとする者がアルトラ様に扮して襲撃しに来たのかと……」
現時点では襲撃されるような恨みを買った覚えは無いけど……
「それにしても凄い能力ですね。分身って……アルトラ様が何かする度に驚かされます。具体的にどのような能力なんですか?」
「基本的に私と同じ思考回路の分身が出来る。でも衝撃に弱くてせいぜい二、三発、多くて五発くらい攻撃を喰らうと消えちゃうみたい」
『MARUTO』の影分身みたいなもんかな。あんなに便利ではないけど……
現在わかってることは、現時点で出せるのは一体だけ、今後練習次第で出せる数が増えるかどうかはわからない。
分身体が見た情報の共有は可能。ただし、スライムから得た能力なので『MARUTO』の影分身とは違って消えた時にフィードバックされるわけではなく、戻って来た分身体を再度取り込む必要がある。
攻撃を受けて消滅した場合、水のように破裂して消える。分身を構成しているものは全体の99%が水分。ほぼ水と言っても過言ではない。
出現させていられる距離はまだ検証してないからわからない。
「さ、悪戯も済んだし、ドワーフ商会に案内してもらえるかしら?」
「ちょっと、待ってください。あまりにもドッキリし過ぎて、身体がこわばってしまいました。ちょっとだけ休ませてください」
そ、そんなに驚かしちゃったかしら……確かに一人しかいないと思ってた人が二人に増えたら驚くかもしれないけど。
私も『実は双子でした~』ってドッキリ、一度味わってみたいわ。
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