建国のアルトラ ~魔界の天使 (?)の国造り奮闘譚~

ヒロノF

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第3章 水の国アクアリヴィア探訪編

第74話 vs無敵の超巨大スライム

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「いきなりの『カトブレパスの瞳』ドーーン!」
 これでコイツの全体を見渡してしまえばもうミッションコンプリートよ!

 ピキキッ……パラパラパラ……

「あれ? 石化しないな?」
 もう一回。

 ピキキッ……パラパラパラ……

 ………………もしかして……効かない?

「どうされましたか?」
「………………もう人質もいないから、雷魔法でドーーンと行こうか! 過包囲雷撃球エクサス・ケージ・プラズマ!!」

 爆散を防ぐため、無数の雷撃球体でドーム状に包囲して攻撃する。
 かなり強力な雷魔法をお見舞いしてやった。水に近い性質のスライムなら跡形もないはず。
 地下水路に轟音が響く。
 ……
 …………
 ………………
 無傷? 爆散したりもしない。水路の床面だけちょっとえぐれて焦げ付いてしまった……黒い球体状の焦げが無数に……

「ど、どうされましたか!?」
「さっき倒したやつに使った攻撃が二つとも全く効き目が無い……」

 人間より水分量が多い生物なのに雷が効かないってあり得るの? 予測でしかないけど多分99.99%くらいは水よね?
 無効化・学習されてる?
 じゃあ、炎で蒸発だ、これはまだ一度も使ってない。
 周囲に影響を出さないように結界で囲む。

結界内爆炎バリアレンジ・フレア!!」

 爆音の反響が凄い……
 流石にこれならもう跡形も無いでしょ。
 結界内の煙が晴れてきた。

 まだ居るな……半分くらいの大きさになったけど。
 じゃあ、あと一発、いや念のため二発同じの食らわせれば終わりかな。

「もう二発行くから耳塞いでて! 結界内爆炎バリアレンジ・フレア×2!!」
 爆音で耳が潰れそうだ……
 きっと地上では軽く騒ぎになってるんじゃないかしら?

「よ、容赦無いですね……」
「まあ、人の害になることを考えると、ね」
 前の広間あっちに食べられた人の頭蓋骨が転がってたし……

 煙が晴れてきた。
 あれ? おかしいな、さっきと大きさが全く変わってない気がする……
 まさか、これも一発目で学習された?

「スライムって学習能力高いの? もう雷と火、それと石化攻撃が無効化されてるみたいなんだけど……」
「いえ! そんなの聞いたことないですよ!」

 そういえばさっき、最初の結界内爆炎バリアレンジ・フレアの直後、巨大スライムの中で六つ何かが光ってて、その後光が一つ消えたように見えた。
 あの時に火属性が無効化されたのかもしれない。

「もしかして、核の数の分だけ無効化できる……とか?」
「核が二個以上あるスライムは稀なので、そんな特徴があるとは知りませんでした……」
「アイツに最初に遭遇した時に雷と石化はもう効かなかった、今火が効かなくなったから、アイツは核を七個持ってたってことになるね」

 ヤバイな、分体が四体いたってことは、それプラス四個?
 今までのも含めて合計十一個もあったら致命的なダメージを与えるのが難しくなる。

「何かちょっと対策考えようか」
「ここでですか!?」
「アイツの時間を止めておく、時間停止タイムストップ
 時間魔法に耐性が無いやつと、私と同等かそれ以上の強さのやつ以外はこれで時間を停止させられるはずだ。

「え? えーーー!!!? アルトラ様! 時間魔法も使えるんですか!?」
「うん、まあ全属性使えるから……」
「凄いです!! そんな人がこの世界に存在するなんて!!」
 また尊敬圧が強くなったな……

 さて、どうしよう、分体と触手で繋がってるから、分体の方に攻撃加えられたら、こっちのやつが学習してしまうかもしれない。
 騎士団の出動は控えてもらった方が良いかも。

「リナさん、騎士団には出動しないように要請して、ここ以外で学習されて、多分もっと倒し辛くなると思う」
「わっかりました!!」
 通信機で連絡を入れてもらう。
 さて、どうしようかな。
 時間停止しているスライムを見ると――
 スライムの中心付近に光る五つの玉? 一つ光が消えた。その次の瞬間――

 スライムが……動きだした!?

うっそでしょ!!?」
 まさか、時間停止まで無効化するの!?
 まずい、リナさんは通信中でまだ気付いてない! 火も雷も無効化された今、触手に絡めとられたらまずい!

「リナさん、危ない!」
 リナさんを突き飛ばして、自分が触手に巻かれる。

「アルトラ様!」
「リナさんはこの部屋の入り口まで離れて! 今度絡まれたら助けられないかもしれない!!」

 闇魔法で触手を腐食させて脱出した。これでもう闇も通じなくなっただろう。
 あと、脱出に使えそうなのは光で吹き飛ばすか、凍らせて砕くか。竜巻を作って分散させようか?
 氷で完全に凍らせて砕いてしまえば倒せるかもしれないけど、さっきから見てるとコイツの学習速度が異常に早過ぎるから、砕く前に無効化されてしまうことも十分に考えられる。
 竜巻使おうにも、この狭い空間ではここから分散させられるほど大きい竜巻になるとは思えない。飛び散らせたところで一瞬で集まって元通りになるのが想像できる、そして風属性は無効化されて脱出にすら使えなくなる。

 そうだ! 空間魔法で別の空間に捨ててしまえば良いんだ!

強制転移フォースド・ゲート

 球体のゲートで包み込み、強制的に別空間へ飛ばす。

「ふぅ……」
「や、やりましたか?」
「流石にこれは対処できないでしょ」
「恐ろしいスライムでしたね……」
「もう二度と戦いたくないわ……」

 ホントに二度と戦いたくない……

「さあ、子供達を迎えに行こうか」
「はい」

 !?
 突然今別空間に送ったスライムの魔力を感知した。

「甘かった……まだ終わってないみたい……」
「えぇっ!?」

 今強制転移フォースド・ゲートを使った地点の空間に裂け目が!
 中からスライムがこぼれ出る。

「まさか……ここまでとは……」
「ななな、何なんですかこの生物は!?」

 無理矢理空間の裂け目をこじ開けてきた。まさか自力で別空間から戻ってくるとは……
 これもう魔王より強いんじゃない?
 核が三つ光って、そのうちの一つが消えた。
 これで空間魔法耐性が出来てしまったってことか。
 帰って来て、空間魔法で分断されていた分体と再び繋がった。分体のも含めてあと五つ。

 今まで学習された属性は、火、雷、闇、空間、時間、あと石化がもしかしたら土扱いかもしれない。
 まだ学習されてない属性は、氷、風、光。
 物質属性と樹属性は物理的なものだから最初から効かない可能性が高い。
 水属性も、水に近いスライムにはそもそも最初から効かない可能性が高い。
 こっちはあと三属性しか手札が無い、対して向こうは生存を考えるならあと四回無効化できる。結果核は二個残る。
 仮に石化と土属性を別物と考えても核は一個残る。

 ………………これ、もう倒せないんじゃね?
 『究極の生命体アルティミット・シイングスライムの誕生』なんじゃね?

 物理的な力で核を壊せば倒せるって話だったから、外側から槍とかで壊すことができれば倒すことができるかもしれない。
 でも、核が全く見えないこの茶色の中、ピンポイントで核だけ攻撃できるだろうか?
 スライム質の身体は弾力性が強い上、この巨大スライムは厚みが凄い。普通の攻撃なんて届かない可能性が極めて高い。
 更に、絡めとられたらもうスライムから離れることができなくなるから、チャンスは実質最初の攻撃だけに限定される。核の場所を読んで、スライム質の身体を押しのけて、一発で破壊しなければならない。それこそ『ラッキーメン』くらいの運の良さが無ければピンポイントで破壊など出来ない。
 それに、核まで届かない可能性すらあるこの厚みなのに、核を破壊できるほどの勢いが出せるだろうか?

 魔法は効かなくなった、物理は届かない、核の位置まで不明瞭、しかも残ると予想される核は二つ……
 これもう積んでね? 無理ゲーじゃね?

「ア、アルトラ様……? アルトラ様!!」

 思案を重ねすぎて、気付かぬうちに無数の触手に絡めとられた。
 もう何回目だ、この状態にされるの……
 もう倒す方法も無い……
 このままだと溶かされてしまう……でも私再生能力バカ高いから、コイツに絡めとられたら、この動けない状態のまま永遠に生き続けなきゃならないかもしれない……しかも、コイツは私から養分吸い続けて、どんどん肥大化するかもしれない……
 しかし、きったない触手だなぁ……せっかく買ってくれたドレスがドロドロで真っ黒だ……

 そういえば、スライムって単細胞生物なんだっけ……
 単細胞生物って、単一の細胞で構成された生物だったんだっけ……?
 脳とか無いんだなぁ……
 脳が……無い? 脳に当たる器官が無い?
 これって、創成魔法の適用範囲なんじゃ……?
 ………………ってことは、創成魔法で作り変えられる!

 私はスライムに引きずり込まれながらも、創成魔法を発動。
 作り変える条件は、
 『亜人を襲わない・亜人を消化できなくなる』
 『核を三つ以上所持できない』
 『常に身体内を清潔に保つ・核の数の分相応の綺麗な身体の形を保つ』
 『他のスライムと融合した時に学習・無効化した属性耐性が半分以下に薄まる』
 『スライム同士で融合した時と分体を生み出した時にこの条件を遺伝させる』
 トイレのバクテリア作りの時に散々失敗したから、条件を組み込むイメージはしっかりできている。
 この五つの条件をイメージして、巨大スライムを作り変える。

 触手が繋がっていたスライムの分体にもこの特徴が遺伝。
 茶色く汚かったスライムが浄化され、透明に近い白の状態に変化した。無駄な細胞をそぎ落として小さくなっていく。
 核からそぎ落とされた無駄な細胞部分は水路の水へ溶けていった。

「ふぅ……」
「アルトラ様! 大丈夫ですか!?」
「何とか……」
「あの透明になったスライムは?」
「無害化させた……もう亜人を襲うことはないと思う」
「どこかへ行ってしまいますよ? 放っておいても良いんですか?」
「うん、むしろ放っておいて、あれの特徴を全スライムに遺伝させてもらった方が良い。そうすればもうスライムが亜人を食べることはなくなるから」
 今まで戦ったのはフレアハルトが一番だったけど、比べ物にならないくらい疲れたわ。
 もう絶対に! 二度と戦いたくない! 二度と!!

「あーー! 疲れたーー! クタクタだ……」
「お疲れ様でした」
「……さあ、子供達を地上へ送り届けようか……あと、この前の部屋にあった頭蓋骨もとむらってあげて……」
「わかりました」
「後処理は騎士団の方々にお任せして良いかな?」
「はい! お任せください!! 連絡を入れておきます!」

 子供達を迎えに行き、連れて地下水路入り口へ戻る。
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