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第3章 水の国アクアリヴィア探訪編
第73話 倒した巨大スライムは分体だった!
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「う……」
「あ、気が付いた?」
意識を失っていたリナさんが目を覚ました。
「子供達は!?」
「大丈夫、もう助け出したから」
「良かった……私どれくらい気絶してました?」
「2~3分ってところじゃないかな」
「スライムはどうなりました?」
無言で指し示す。
「巨大な石? 何でこんなところに? さっきあんなものありましたっけ?」
「それがさっきスライムだったものだよ」
「あれが!? どういう原理ですか?」
「私の会得した能力の一つで石化させた。でも、あのままだとまだ生きてるから、あとで粉々に砕いておく」
「良かった、もう終わったんですね……」
「いや、まだ終わってないみたいね、多分今倒したのは分体だよ、この奥に少なくとももう一体いる」
「え!? あんな巨大なのがまだいるんですか!?」
「いや、もしかしたらさっきのの数倍大きいかも……そこに石化させたやつに繋がってた触手がまだ残ってる、奥へ続いてるよ」
「ホントだ……あんなのが何体もいるのでは、街の人たちの安全が脅かされてしまいますね」
「スライムはエコーロケーションに引っ掛からないから、あとどれくらいいるのかわからないね……とりあえず出来る限り駆除しておこうか」
早めに駆除しておかないと、もしかしたら手を着けられなくなるかもしれない。
あのスライムには、以前私が作った魔界全土を喰い尽くしかねない失敗作のバクテリアと同じく、危険な匂いを感じる。
「子供達はどうしましょうか?」
「ここに置いて行く、ここから先もっと危ない気がするから」
「しかし、子供達だけを置いていくのも危険なのでは?」
「防御結界をかけておく。スライム程度の攻撃ならびくともしないから大丈夫」
子供達も五人中、三人が目を覚ましている。
救出時、全員裸だったから、今は創成魔法で布を作って巻いてある。
皮膚を溶かされる段階まで進んでなかったのは幸いだった。
五人のうち男の子二人は肌が浅青いから多分サハギンかな? 女の子二人ともう一人男の子がいるけど、この三人は何だろう……見た目は人間に見えるけど……魔界に人間の子供っているのかしら? これも何かの亜人なのかな? 人魚は陸に上がると足に変化するのを見たし、人魚の可能性も?
しゃがんで子供達に話しかける。
「ごめんね、もう少しだけ待ってて、この奥にもう一体いるみたいだから、それを倒しておかないと、この街の人が食べられちゃうかもしれないから」
余程恐かったのだろう、一言も発しようとしない。何度も素早く頷いている。
危険が無いように子供達の周りに防御結界を張っておく。
「その中にいれば大丈夫だから何があっても絶対にそこから動かないで。奥の魔物を倒したら迎えに来るから、もう少しだけ待っててね」
この部屋に残っていた触手を手掛かりに、奥へと向かう。
「スライムは、元々はそれほど害の無いどころか、水路を掃除してくれる有益なモンスターなのですが……」
「有害物質を食べてるうちに、亜人の死体を一緒に食べて味を覚えてしまったって感じかしらね? この奥に何かよくわからない物体を感知してたからそれが巨大スライムの可能性が高いね。最初は大き目のゴミか何かかと思ったんだけど、もしかしたら未消化のゴミに超音波が当たってエコーロケーションに引っ掛かったのかもしれない」
進む度に臭いが酷くなる。
「この臭いはキツイわね……」
「身体に染み付いてしまいそうですね……」
ホントキツイわ……ウプッ……吐き気が込み上げてくる……
今日は忙しく動いてたから、ご飯食べてなくて良かった……
隣のリナさんを見ると、もうちょっとグロッキー状態だ。
口と鼻を押えつつ、しばらく進んだところ、大広間に出た。
この水路でもっとも臭いの強い場所みたいだ。
空気も淀んでいるのがよくわかる。何だか生暖かい。
「居たね……」
「居ましたね……」
さっきのとは比べ物にならない大きさのスライムがいる。見た目だけで考えると五倍以上ありそうだ。高さだけでも2~3倍ある。天井に身体の一部が張り付いている。木とか鉄クズとか鉄骨とかのゴミが刺さって消化し切れていない。
身体の色もさっき倒した薄茶色のやつとは全然違う。完全に黒ずみが入った真っ茶色でより不潔な感じがする。
この大広間から四方向へ水路が延びていて、巨大スライムからの触手が今私たちが来た方向を含めて四方向全ての水路へ伸びている。今しがた一体は私が倒して来たから、多分他の三方向に少なくともあと三体の分体がいるんだろう。
大きさから考えてコイツは多分本体で間違いないと思う。
自分では動くことができる大きさじゃないから、獲物を分体に捕らえさせて、そいつらから養分を吸い摂ってるってところかな。
「さっきは焦ってて忘れてましたが、スライムには核があるのでそれを壊せば倒せるはずです!」
巨大スライムの方を見ると――
「私、スライムってこれまで実物を見たことがなかったんだけど、核ってどんな形してるの?」
「丸い球体のような形ですよ」
「どれくらいの大きさ?」
「ちょうど人の目玉くらいで、手に収まるくらいの大きさだと思います」
「それで、アレのどこに核があるかわかる?」
「いえ……」
「あれだけ濁ってても見分ける方法ってあるのかな?」
「……わ、わかりません……」
「そうだよね……」
あまりにも茶色に濁り過ぎていて、どこに核があるのやら……
さっき倒したスライム、核なんかあったかな……?
さっきのやつも目の前にいるコイツほどじゃないけど、かなり濁ってたから核に気付かなかったのか、それとも子供達の影に隠れて見えてなかったか。
身体も大きいから、ピンポイントで核だけ狙うのも、もう運頼みでしかない。あの身体の大きさでは普通の運の持ち主じゃ当てることはできないな。『とっても!ラッキーメン』くらい運が良ければ一発で当たるかもしれないが……
まあ、私にはあまり関係無いな、『カトブレパスの瞳』で石化させてしまえば終わる話だ。
と、その前に――
「久しぶりの『スキルドレイン』」
モンスターを見つけたらとりあえず使ってみる。
『分身体』ってのを会得したらしい。
遂に分身の術が!? これは名前からして便利そうだ。
「何をされたのですか?」
「後々のお楽しみ」
まあ、これは後で試してみるとして、まずは巨大スライムの方を処理してしまおう。
「あ、気が付いた?」
意識を失っていたリナさんが目を覚ました。
「子供達は!?」
「大丈夫、もう助け出したから」
「良かった……私どれくらい気絶してました?」
「2~3分ってところじゃないかな」
「スライムはどうなりました?」
無言で指し示す。
「巨大な石? 何でこんなところに? さっきあんなものありましたっけ?」
「それがさっきスライムだったものだよ」
「あれが!? どういう原理ですか?」
「私の会得した能力の一つで石化させた。でも、あのままだとまだ生きてるから、あとで粉々に砕いておく」
「良かった、もう終わったんですね……」
「いや、まだ終わってないみたいね、多分今倒したのは分体だよ、この奥に少なくとももう一体いる」
「え!? あんな巨大なのがまだいるんですか!?」
「いや、もしかしたらさっきのの数倍大きいかも……そこに石化させたやつに繋がってた触手がまだ残ってる、奥へ続いてるよ」
「ホントだ……あんなのが何体もいるのでは、街の人たちの安全が脅かされてしまいますね」
「スライムはエコーロケーションに引っ掛からないから、あとどれくらいいるのかわからないね……とりあえず出来る限り駆除しておこうか」
早めに駆除しておかないと、もしかしたら手を着けられなくなるかもしれない。
あのスライムには、以前私が作った魔界全土を喰い尽くしかねない失敗作のバクテリアと同じく、危険な匂いを感じる。
「子供達はどうしましょうか?」
「ここに置いて行く、ここから先もっと危ない気がするから」
「しかし、子供達だけを置いていくのも危険なのでは?」
「防御結界をかけておく。スライム程度の攻撃ならびくともしないから大丈夫」
子供達も五人中、三人が目を覚ましている。
救出時、全員裸だったから、今は創成魔法で布を作って巻いてある。
皮膚を溶かされる段階まで進んでなかったのは幸いだった。
五人のうち男の子二人は肌が浅青いから多分サハギンかな? 女の子二人ともう一人男の子がいるけど、この三人は何だろう……見た目は人間に見えるけど……魔界に人間の子供っているのかしら? これも何かの亜人なのかな? 人魚は陸に上がると足に変化するのを見たし、人魚の可能性も?
しゃがんで子供達に話しかける。
「ごめんね、もう少しだけ待ってて、この奥にもう一体いるみたいだから、それを倒しておかないと、この街の人が食べられちゃうかもしれないから」
余程恐かったのだろう、一言も発しようとしない。何度も素早く頷いている。
危険が無いように子供達の周りに防御結界を張っておく。
「その中にいれば大丈夫だから何があっても絶対にそこから動かないで。奥の魔物を倒したら迎えに来るから、もう少しだけ待っててね」
この部屋に残っていた触手を手掛かりに、奥へと向かう。
「スライムは、元々はそれほど害の無いどころか、水路を掃除してくれる有益なモンスターなのですが……」
「有害物質を食べてるうちに、亜人の死体を一緒に食べて味を覚えてしまったって感じかしらね? この奥に何かよくわからない物体を感知してたからそれが巨大スライムの可能性が高いね。最初は大き目のゴミか何かかと思ったんだけど、もしかしたら未消化のゴミに超音波が当たってエコーロケーションに引っ掛かったのかもしれない」
進む度に臭いが酷くなる。
「この臭いはキツイわね……」
「身体に染み付いてしまいそうですね……」
ホントキツイわ……ウプッ……吐き気が込み上げてくる……
今日は忙しく動いてたから、ご飯食べてなくて良かった……
隣のリナさんを見ると、もうちょっとグロッキー状態だ。
口と鼻を押えつつ、しばらく進んだところ、大広間に出た。
この水路でもっとも臭いの強い場所みたいだ。
空気も淀んでいるのがよくわかる。何だか生暖かい。
「居たね……」
「居ましたね……」
さっきのとは比べ物にならない大きさのスライムがいる。見た目だけで考えると五倍以上ありそうだ。高さだけでも2~3倍ある。天井に身体の一部が張り付いている。木とか鉄クズとか鉄骨とかのゴミが刺さって消化し切れていない。
身体の色もさっき倒した薄茶色のやつとは全然違う。完全に黒ずみが入った真っ茶色でより不潔な感じがする。
この大広間から四方向へ水路が延びていて、巨大スライムからの触手が今私たちが来た方向を含めて四方向全ての水路へ伸びている。今しがた一体は私が倒して来たから、多分他の三方向に少なくともあと三体の分体がいるんだろう。
大きさから考えてコイツは多分本体で間違いないと思う。
自分では動くことができる大きさじゃないから、獲物を分体に捕らえさせて、そいつらから養分を吸い摂ってるってところかな。
「さっきは焦ってて忘れてましたが、スライムには核があるのでそれを壊せば倒せるはずです!」
巨大スライムの方を見ると――
「私、スライムってこれまで実物を見たことがなかったんだけど、核ってどんな形してるの?」
「丸い球体のような形ですよ」
「どれくらいの大きさ?」
「ちょうど人の目玉くらいで、手に収まるくらいの大きさだと思います」
「それで、アレのどこに核があるかわかる?」
「いえ……」
「あれだけ濁ってても見分ける方法ってあるのかな?」
「……わ、わかりません……」
「そうだよね……」
あまりにも茶色に濁り過ぎていて、どこに核があるのやら……
さっき倒したスライム、核なんかあったかな……?
さっきのやつも目の前にいるコイツほどじゃないけど、かなり濁ってたから核に気付かなかったのか、それとも子供達の影に隠れて見えてなかったか。
身体も大きいから、ピンポイントで核だけ狙うのも、もう運頼みでしかない。あの身体の大きさでは普通の運の持ち主じゃ当てることはできないな。『とっても!ラッキーメン』くらい運が良ければ一発で当たるかもしれないが……
まあ、私にはあまり関係無いな、『カトブレパスの瞳』で石化させてしまえば終わる話だ。
と、その前に――
「久しぶりの『スキルドレイン』」
モンスターを見つけたらとりあえず使ってみる。
『分身体』ってのを会得したらしい。
遂に分身の術が!? これは名前からして便利そうだ。
「何をされたのですか?」
「後々のお楽しみ」
まあ、これは後で試してみるとして、まずは巨大スライムの方を処理してしまおう。
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