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第3章 水の国アクアリヴィア探訪編
第67話 水の国散策
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「じゃあ、私は夜まで街を散策してきますね」
「あ、お待ちください、また怪しまれることがあるかもしれませんので、騎士を一人付けます」
「そんな、騎士団の手を煩わせてしまいますし……」
「構いません、大事なお客人ですので。宿泊するホテルにもその騎士に送らせます」
「それじゃお言葉に甘えさせていただきます」
という建前なのだろうが、またスパイ容疑で戻ってくることも防ぎたいのだろう。
何せ私の格好は真っ黒だからこの街では目立つらしい。思い返してみれば、街の人たち見ても、全身黒一色の服を着てたのは私くらいだった気がする。
怪しまれて再び通報されれば、それだけで騎士団の仕事が増えてしまう。
その点、騎士を一人付けておくだけで、外国からの要人警護と同時に通報されることを未然に防げるわけだ (私が要人扱いされてるのが信じられないが……)。
あと、もう少し邪推すれば、私に対する監視。レヴィアタンが私をベルゼビュートと認めたとは言え、以前のベルゼビュートとは見た目が全く違うから警戒しておくことに越したことはない。これは多分ルーファスさん独自の判断だろう。ここまで全部私の邪推だが。
宮殿入り口付近で待つ。
しばらくして、一人の騎士が走って来た。
「貴女がベルゼビュート様でありますか?」
「はい」
あれ? 女の人だ。騎士って言うから男の騎士を付けられるのかと思った。気を遣ってくれたのかな?
「わたくし、ルーファス団長閣下のご命令によりベルゼビュート様の護衛兼ご案内をさせていただきます、リナ・ウォルタ・ブラウンと申します」
「ウォルタ・ブラウンってもしかして?」
「はい、トーマスはわたくしの兄です、この度は数々の無礼を働いたにも関わらず、兄に生きるチャンスをお与えいただきありがとう存じます」
深々とお辞儀をされる。
「いえ、トーマスさんは業務に忠実だっただけで、特に失礼なことはされていません」
そう、散々失礼なことをしたのはリッチの方であって、トーマスさんではない。
「急な訪問にも関わらず騎士を護衛に付けるなど、応対していただきありがとうございます、本日はよろしくお願いします」
こちらも深くお辞儀する。
「しかし、不問にすることは密約だったはずですけど……」
「兄も真面目な方なので、私がベルゼビュート様の護衛に付くことになったと聞いて黙っていられなかったのでしょう」
まあ、別に話されたところで、私に不利益があるわけではないし特に問題無いか。
むしろそれを話したことによって不利益を被るのはトーマスさんの方だけど、そういうことも話してしまうところが真面目だってことなのかな。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
リナさんを連れて散策を開始する。
水の国というだけあり水路が多く、船が多く行き交う。地球で言うところのヴェネツィアのような感じの街だ。
水は澄んで綺麗、すくってそのまま飲めそうな気すらする。
水辺は船だけかと思いきや、水棲の亜人が多いためか、水の中を泳いでいる者も多くいる。よく目に付くのは人魚や半魚人のような人たち。
ただ、人間界の常識では、人魚は足が尾ヒレになっているため、陸で歩くことができないが、この世界の人魚は陸に上がったら、普通の足に変化した。あれが魔法で変化させたのか、陸に上がった時の身体的な特性なのかは聞いてみないとわからないが。
「夜まではいかが致しましょうか?」
「この街の様子を見てみたいから、繁華街でも連れていってくれると嬉しいです」
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
「ショッピングモールだ!」
人間界で言うところのショッピングモールのようなところへ連れて来てくれた。
ショーウィンドに服が並んでいる。ガラス張りのショーケースを見るのは久しぶりだ。
魔界へ来て早数ヵ月経つけど、この光景を見るのは久しぶりだ。
とは言え、生前の私は仕事漬けの毎日を送っていたから、ショッピングモールなどテレビで見たくらいで生で見るのは数年振りにすらなるかもしれないが。
「何かお買い物されますか?」
それを聞いて、ショッピングでもしていこうか……とも思ったが、一応私は今仕事で来ているのだ。
村の人たちだけあくせく働かせておいて、自分だけ買い物を楽しむというわけにはいかない。
街に来たから自分が普段使いで着る服一着だけでも買おうか……とも思ったが、やっぱり一番最初は自分の村で作られたものを着たい。というわけでエルフィーレ製の服が出来るまで私の普段着は保留。
食べ物くらいなら買っていってあげようか。特に川の掘削がんばってる彼らには激励の意味でも。
ショーケースに並べられたお菓子って手もあるけど、いきなりこのレベルのお菓子を最初に食べてしまうと村で作られたものを口に出来なくなってしまうかもしれない。
ここは果物程度に抑えておこう。
「じゃあ、青果店にでも連れて行ってもらえるかしら?」
ショッピングモール内にある青果店に連れて来てもらった。
ここで何か美味しそうな果物をみんなに買って行ってあげよう。
………………
ああ……そうだった……私お金持ってないから買い物できないんだった……
ホテルに直行するか……
「ごめんなさい、私この国の通貨持ってないから買い物できないんだった。そのままホテルに直行します」
「買い物に使うお金はこちらで出すようにと言付かっております」
ん? 何だって? 聞き違えたかな? 買ってくれるって聞こえたけど……
「ごめんなさい、よく聞き取れなかったので、もう一度お願いします」
「『家買って』と言われない限りは、全てこちらでお出しするよう言われています」
聞き違いじゃなかった!
「ホントに良いんですか!?」
「はい、ベルゼビュート様には疑似太陽の恩があるからと仰っておりました、実際あの太陽が無ければこの街は未だに電気や火などの人工的な光で照らすしかありませんでしたので。国民みんなが喜んでおりますよ」
疑似太陽様様ね!
ホントは勝手に持ってかれたものだけど、一応恩義に感じてくれてはいるのね。
お言葉に甘えて果物を大量に購入。
この際だからお米と小麦の苗も買って行こうか。わざわざ野生で見つけなくてもここで買って行けば育てることができる。これだけ大きい街なのだからきっとあるはず。
その他、村で育てられそうな野菜果物の種苗も買って行こう。
あと現場の男と言えば酒。彼らは酒をまだ口にしたことがないはずだ。買って行ってやろう。
大量に食べ物や種苗を買い込んだ。
「そ……そんなに買い込んで大丈夫ですか? 傷んでしまいますよ?」
「大丈夫、ここに入れておくから」
亜空間収納ポケットを出す。
「空間魔法ですか?」
「そう、この中に入れておくと腐らないし傷まないの」
「へぇ~、そんな使い方が出来るんですね! 我が国の空間術士にも教えておきます!」
その後、紙やペンなどの文房具を買う。紙は特に大量に買っておく。
これからの村の運営には必要不可欠だろう。
あと、その他いろいろな物、道具、村の運営に役立ちそうなものを大量に買って行く。
「ホントにこんなに買って良いの?」
心配になってきて一応確認する。
「『家』までは大丈夫です」
じゃあ、遠慮無く色々買わせてもらう。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
ホクホク気分でホテルへの道に付いた。
その道中。
何かあの水路変な気がする……
見た目は何もなってないし、流れている水も綺麗だ。しかし、何か微かに黒いものを感じる。
「ねぇ、リナさん」
「はい?」
「最近何かおかしいことない? 例えば街の人複数が同時にお腹壊したとか、皮膚になんらかの異常が見られるとか」
「いいえ? そんな話は今のところは聞いていませんが……どうかされたのですか?」
「ううん、それなら良いの。気のせいかもしれない」
ホントに気のせいかもしれないし、確定的でないことを言って、わざわざ不安にさせることもないだろう。
私の魔力感知は多少優れてるくらいで、フレアハルトほどの力は無い。気のせいは十分あり得る。
私は気になりつつも、今日宿泊予定のホテルへと歩を進めた。
「あ、お待ちください、また怪しまれることがあるかもしれませんので、騎士を一人付けます」
「そんな、騎士団の手を煩わせてしまいますし……」
「構いません、大事なお客人ですので。宿泊するホテルにもその騎士に送らせます」
「それじゃお言葉に甘えさせていただきます」
という建前なのだろうが、またスパイ容疑で戻ってくることも防ぎたいのだろう。
何せ私の格好は真っ黒だからこの街では目立つらしい。思い返してみれば、街の人たち見ても、全身黒一色の服を着てたのは私くらいだった気がする。
怪しまれて再び通報されれば、それだけで騎士団の仕事が増えてしまう。
その点、騎士を一人付けておくだけで、外国からの要人警護と同時に通報されることを未然に防げるわけだ (私が要人扱いされてるのが信じられないが……)。
あと、もう少し邪推すれば、私に対する監視。レヴィアタンが私をベルゼビュートと認めたとは言え、以前のベルゼビュートとは見た目が全く違うから警戒しておくことに越したことはない。これは多分ルーファスさん独自の判断だろう。ここまで全部私の邪推だが。
宮殿入り口付近で待つ。
しばらくして、一人の騎士が走って来た。
「貴女がベルゼビュート様でありますか?」
「はい」
あれ? 女の人だ。騎士って言うから男の騎士を付けられるのかと思った。気を遣ってくれたのかな?
「わたくし、ルーファス団長閣下のご命令によりベルゼビュート様の護衛兼ご案内をさせていただきます、リナ・ウォルタ・ブラウンと申します」
「ウォルタ・ブラウンってもしかして?」
「はい、トーマスはわたくしの兄です、この度は数々の無礼を働いたにも関わらず、兄に生きるチャンスをお与えいただきありがとう存じます」
深々とお辞儀をされる。
「いえ、トーマスさんは業務に忠実だっただけで、特に失礼なことはされていません」
そう、散々失礼なことをしたのはリッチの方であって、トーマスさんではない。
「急な訪問にも関わらず騎士を護衛に付けるなど、応対していただきありがとうございます、本日はよろしくお願いします」
こちらも深くお辞儀する。
「しかし、不問にすることは密約だったはずですけど……」
「兄も真面目な方なので、私がベルゼビュート様の護衛に付くことになったと聞いて黙っていられなかったのでしょう」
まあ、別に話されたところで、私に不利益があるわけではないし特に問題無いか。
むしろそれを話したことによって不利益を被るのはトーマスさんの方だけど、そういうことも話してしまうところが真面目だってことなのかな。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
リナさんを連れて散策を開始する。
水の国というだけあり水路が多く、船が多く行き交う。地球で言うところのヴェネツィアのような感じの街だ。
水は澄んで綺麗、すくってそのまま飲めそうな気すらする。
水辺は船だけかと思いきや、水棲の亜人が多いためか、水の中を泳いでいる者も多くいる。よく目に付くのは人魚や半魚人のような人たち。
ただ、人間界の常識では、人魚は足が尾ヒレになっているため、陸で歩くことができないが、この世界の人魚は陸に上がったら、普通の足に変化した。あれが魔法で変化させたのか、陸に上がった時の身体的な特性なのかは聞いてみないとわからないが。
「夜まではいかが致しましょうか?」
「この街の様子を見てみたいから、繁華街でも連れていってくれると嬉しいです」
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
「ショッピングモールだ!」
人間界で言うところのショッピングモールのようなところへ連れて来てくれた。
ショーウィンドに服が並んでいる。ガラス張りのショーケースを見るのは久しぶりだ。
魔界へ来て早数ヵ月経つけど、この光景を見るのは久しぶりだ。
とは言え、生前の私は仕事漬けの毎日を送っていたから、ショッピングモールなどテレビで見たくらいで生で見るのは数年振りにすらなるかもしれないが。
「何かお買い物されますか?」
それを聞いて、ショッピングでもしていこうか……とも思ったが、一応私は今仕事で来ているのだ。
村の人たちだけあくせく働かせておいて、自分だけ買い物を楽しむというわけにはいかない。
街に来たから自分が普段使いで着る服一着だけでも買おうか……とも思ったが、やっぱり一番最初は自分の村で作られたものを着たい。というわけでエルフィーレ製の服が出来るまで私の普段着は保留。
食べ物くらいなら買っていってあげようか。特に川の掘削がんばってる彼らには激励の意味でも。
ショーケースに並べられたお菓子って手もあるけど、いきなりこのレベルのお菓子を最初に食べてしまうと村で作られたものを口に出来なくなってしまうかもしれない。
ここは果物程度に抑えておこう。
「じゃあ、青果店にでも連れて行ってもらえるかしら?」
ショッピングモール内にある青果店に連れて来てもらった。
ここで何か美味しそうな果物をみんなに買って行ってあげよう。
………………
ああ……そうだった……私お金持ってないから買い物できないんだった……
ホテルに直行するか……
「ごめんなさい、私この国の通貨持ってないから買い物できないんだった。そのままホテルに直行します」
「買い物に使うお金はこちらで出すようにと言付かっております」
ん? 何だって? 聞き違えたかな? 買ってくれるって聞こえたけど……
「ごめんなさい、よく聞き取れなかったので、もう一度お願いします」
「『家買って』と言われない限りは、全てこちらでお出しするよう言われています」
聞き違いじゃなかった!
「ホントに良いんですか!?」
「はい、ベルゼビュート様には疑似太陽の恩があるからと仰っておりました、実際あの太陽が無ければこの街は未だに電気や火などの人工的な光で照らすしかありませんでしたので。国民みんなが喜んでおりますよ」
疑似太陽様様ね!
ホントは勝手に持ってかれたものだけど、一応恩義に感じてくれてはいるのね。
お言葉に甘えて果物を大量に購入。
この際だからお米と小麦の苗も買って行こうか。わざわざ野生で見つけなくてもここで買って行けば育てることができる。これだけ大きい街なのだからきっとあるはず。
その他、村で育てられそうな野菜果物の種苗も買って行こう。
あと現場の男と言えば酒。彼らは酒をまだ口にしたことがないはずだ。買って行ってやろう。
大量に食べ物や種苗を買い込んだ。
「そ……そんなに買い込んで大丈夫ですか? 傷んでしまいますよ?」
「大丈夫、ここに入れておくから」
亜空間収納ポケットを出す。
「空間魔法ですか?」
「そう、この中に入れておくと腐らないし傷まないの」
「へぇ~、そんな使い方が出来るんですね! 我が国の空間術士にも教えておきます!」
その後、紙やペンなどの文房具を買う。紙は特に大量に買っておく。
これからの村の運営には必要不可欠だろう。
あと、その他いろいろな物、道具、村の運営に役立ちそうなものを大量に買って行く。
「ホントにこんなに買って良いの?」
心配になってきて一応確認する。
「『家』までは大丈夫です」
じゃあ、遠慮無く色々買わせてもらう。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
ホクホク気分でホテルへの道に付いた。
その道中。
何かあの水路変な気がする……
見た目は何もなってないし、流れている水も綺麗だ。しかし、何か微かに黒いものを感じる。
「ねぇ、リナさん」
「はい?」
「最近何かおかしいことない? 例えば街の人複数が同時にお腹壊したとか、皮膚になんらかの異常が見られるとか」
「いいえ? そんな話は今のところは聞いていませんが……どうかされたのですか?」
「ううん、それなら良いの。気のせいかもしれない」
ホントに気のせいかもしれないし、確定的でないことを言って、わざわざ不安にさせることもないだろう。
私の魔力感知は多少優れてるくらいで、フレアハルトほどの力は無い。気のせいは十分あり得る。
私は気になりつつも、今日宿泊予定のホテルへと歩を進めた。
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