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第2章 トロル集落の生活改善編

第63話 代理で掘削してもらうリーダーを決め、水の国へ

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 翌日。
 キツイ仕事だし、人数が減るかと思いきや、少し増えて45人。昨日来てくれた人たちも全員参加だ。
 昨日ぐったりしてたナナトスとカンナーも来ている。私の予想ではマッチョになっているはずだったが……あまり変わってないな。
 以前ナナトスはガリッガリの餓鬼体型から、たった一夜にして普通の体型になってたからマッチョになるくらいの変化があるかと思ったけど……種族間でも個人差があるのかな?
 さて、川掘りの二日目だ。

 ………………
 そういえば、ここまで土魔法を使って掘ろうとしている人を見ていない。
 まさか……みんな律儀に道具で掘らないといけないと思っているのかしら?
 ちょっと聞いてみるか。

「この中に土魔法使える人いる?」
 それほど珍しい系統ではないし、45人もいれば何人かいるだろう。

 11人が手を上げる。
 ほぼ四分の一。結構いるな。
「じゃあ、その中で私が決めた三人にリーダーをやってもらおうと思います」

 というわけで、リーダーを三人決めた。
 全員土魔法が使えて、なおかつ屈強、そして人を使った経験があるということを基準に選んだ。
 一人目は口の周りに髭を蓄えたいかにも親方顔の『ダイクー』。大工みたいな名前だが、家も作ってたから本物の大工。老けて見えるが33歳。最近立ち上がったお役所仕事の建設課のトップ。まだ人手が足りないから自ら現場におもむく。リーヴァントの直属の部下。私の孫部下ね。

 二人目は髭は無いがイカツイ顔の『カペンタ』。こっちは英語の大工みたいな名前だ。31歳。普段はダイクーの補佐役をやっている。ちなみに、村にはもう一人補佐役の『トーリョ』がいるからあちらの建設は問題無い。この三人は何かもう……建造物を作るために生まれたような名前をしている。

 三人目はお馴染みの『イチトス』。もしかしたらこの集落随一の筋肉野郎かもしれない。前二人の大工さんに比べたら、人使いの面で少々不安だけど、以前数人従えて塩を採掘に行ってくれたらしい。でも土魔法が使えないから土を使える『ニートス』を副リーダーに据えた。こいつら最近ちょっと日に焼けてるから『サントス』との黒い三達星のロケットストリームアタックで掘り進めてもらいたい。
 それぞれ15人ずつに分かれてもらい、100mごとに担当エリアを振り分けた。

 あと特別パーティーとして、フレハル。
 彼はトロルに比べれば能力が格段に強いからアリサとレイアの三人で掘ってもらう。意外なことに土魔法も得意らしい。溶岩地帯で生まれ育っていることも関係していて、溶岩自体が火と土が混ざっているものであるため、火との親和性が高く、土魔法も使えるのだとか。
 種族特性なのか三人とも土魔法が使えるのでこの作業にはピッタリの人材だ。彼らが私と関わりを持ってくれたのは、まさに僥倖ぎょうこうだったかもしれない。
 試しに魔法を組み合わせた上で掘ってもらったところ、一瞬で10mの土が掘り起こされた。
 最初から魔法を組み合わせた上で掘ってれば、昨日50mしか進まないなんてことにはならなかったかもしれない……早めに気付いておけばヨカッタヨ……

 ただ……その時の他の村人の驚きようが気になる。すこぶる驚愕していたが、フレハルたちを恐れてなければ良いけど……
 逆にナナトスとカンナーの二人はなぜかニヤニヤして見ていた。事情を知ってる優越感ってやつかもしれない。
 まあ、他の村人にも「怪物にも対処できる」とは伝えてあるし、時間が経てばこれくらいの能力があると納得してくれるでしょ (希望的観測)

 四パーティーを組んで、それぞれ堀り進めてもらう。
 パーティーの数は四つもあれば十分でしょう。『船頭せんどう多くして船頭ふねやまに上る』なんて言葉があるくらいだからリーダーはそれほど多くしない方が良い。

 この中に私がリーダーとして入ってないことを疑問に思ったのか、ダイクーが質問してくる。

「アルトラ様はどうするんだ?」
「うん、やっぱり私の浅い知識では、進みが遅いと思うから水路作りの専門家に話を聞いてくる、欲を言えば連れて帰ってこれると良いんだけど」
「どこへ行くんだ?」
「以前水の国アクアリヴィアって国の女王様に招待されたことがあったから、そっちへ聞きに行ってみようかと思う」
「女王様!?」
「招待!?」
「いや、それよりアクアリヴィアってどこだ?」
 ああ……ここって外的な情報も知識も全く入ってこないものね……
 私もレヴィアタンに聞くまで主な国が七つあるって知らなかったし、そもそも魔界ここが地球の衛星の『冥球』だってことも知らなかった。この反応も無理もないか。

「こことは別に国があって、そこはここより随分発展しているから、そこへ行って聞いてくるよ。四人にはその間の現場の指示をお願いしたい。何のトラブルも無ければ多分二、三日で帰って来れると思う。総監督はダイクーがお願い。じゃあ、私は今からアクアリヴィアへ行ってくる」
「ちょっと待てくれ! あんたがいなくなったら俺たちはここからどうやって帰るんだ?」

 あっ……それもそうか、ゲートは私しか使えないから私がこの場からいなくなったら帰れないな。三日間ここに寝泊りってわけにはいかないし。
 じゃあ今回使うだけのために、ゼロ距離ドア二号を作るか。一度作っているから、それほど難しいことではない。ただ、この手の距離をゼロにするドアがあまり増え過ぎるのは喜ばしくないから、二号は後々壊すことにする。いや、どうせ潤いの木を管理しなければならないから、管理ドアとしてそのまま置いとくのもアリか。
 ということで、火山のふもととトロル集落を繋ぐゼロ距離ドア二号を作った。
 片方は私が集落まで持っていって、村の入口辺りに固定させておこう。
 火山側のドアは車輪のようなものを付けて、ゴロゴロと横に転がして運べるように作ってみた。これなら移動させられるから作業場所が移動しても、一緒に持って行けばその場からすぐに帰れる。
 名前も刻んでおこう。『トロル村』と。

「よし! これで帰宅問題についても大丈夫! じゃあ、私はこの後出張に行ってくるから、あとのことをお願いね!」
「わかった、任せてくれ!」
 ゲートで集落へ行き、持って来たゼロ距離ドアを固定させる。後々のことも見越して、『潤いの木』と名前を刻む。
 一度我が家へ帰宅。
 他国に行くのだからと、お風呂で土埃つちぼこりの付いた身体を洗い流した。
 改めて闇をまとい、出発準備OK!

「よし! いざ水の国アクアリヴィア!」
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