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第2章 トロル集落の生活改善編
第58話 寒さに震えるレッドドラゴンを燃やした
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さて、今日はもうゴロゴロしよう。ベッドから一歩も出ないぞ!
そう思っていたが、またトラブル発生。
「うっ……頭に何か伝わってくる……超音波?」
エコーロケーションを会得した影響か、言葉染みたものまで聞こえる。
『アルトラ! 何で作業しに来んのだ!』
え? 何これ? 誰だ? 作業って何だ? でもこの口調……
まさか……この超音波ってフレアハルトが発してるの? この豪雨の日に杭打ち行ってるの!?
ここから昨日作業中断したところまで40kmくらい離れてるのに、こんなところまで届くのか!
急いでゲートを開き、昨日中断したところへ様子見に行く。
「遅い!」
レッドドラゴン三人が雨ざらしで立っている。今日はドラゴンの姿だ。多分雨を喰らうことで下がる熱を逃がさないようにするためだろう。まあその代わり身体に当たる雨の量が多くなるけど……
フレアハルト以外の二人は、何だかぐったりして元気無く見える……特にレイアのテンション爆下がり。
「この豪雨の日にまさか作業しに来てるとは思わなかったから……」
なんだってこんな日に作業しに来てるんだろう……じゃあ改めて中止を言い渡そう。
「今日は雨が酷いから中止にする」
「それは困る!」
は? レッドドラゴンは雨に弱いはずだから、普通やりたがらないと思うんだけど……
「今日の夕飯に店を予約してあるのだから中止にされては困る!」
食への執念が凄い……そこまで気に入ったのか……
「そこまで言われると『料理人を見出した冥利に尽きる』けど……」
自分で言ってて思ったけど何言ってんだコレ?
「そうは言ってもこの豪雨じゃ地面もぬかるんでるから作業なんかできないよ」
「では夕食までどうやって時間を潰すのだ!」
「う~ん、とりあえずウチくる?」
我が家へのゲートを開く。
「ちょっとちょっと、その身体で通る気? ゲートは大きく開けるほど魔力消費が激しいから人型になってよ!」
「ムッ……仕方ないな」
でかい図体三つも並べて通るなよ。
全員我が家に招き入れる。
びしょ濡れで寒そうだ、震えている。何時間待ってたんだろう? 午前中起き抜けにレヴィアタンと話をして3時間くらいは経ってるはずだから、ずっとあそこに居たんなら3時間雨ざらしか。火山からの50km間、雨を凌げるような木とかも無いしな。
水魔法と火魔法で風呂にお湯を張る。
こんなことになるんなら水の国観光してこなくて正解だった……私が家に帰ってこなければずっとあの場に居たかもしれない。
見たところ、どう見てもお付き二人の方が元気が無い。フレアハルトには悪いけど、先に従者を入れよう。
「お風呂入れたから二人とも入っちゃって」
「我は?」
「レディファースト」
「何だその言葉は?」
「女性優先ってことよ」
「亜人の世界にはそんな言葉があるのか」
亜人の世界にあるかどうかは知らないけど、人の世界にはある。最近は平等平等で廃れつつあるが……
「しかし主君より先に入るわけには……」
「よい、早く入れ」
「しかし……」
「良いから早く入っちゃって!」
二人を強引に風呂場に押し込む。
「じゃあ先に入るね~」
「お言葉に甘えさせていただきます」
アリサとレイアは風呂へ入っていった。
「寒いな……」
ずっと雨ざらしだったから、さっきからずっと震えている。
「燃やす?」
「我をか!?」
自分で言っておいてなんだけど、人型の生物に対して「燃やす?」って頭イカレてるとしか思えない返答だ。
でも、
「熱バリア程度じゃ全然寒さ和らがないでしょ?」
「うむ、では燃やしてくれ」
フレアハルトの足首から上だけ炎が外に漏れないように防御魔法:火無効を内側に向かってかける。これをやっておかないともしかしたら家が燃える。
結界内に手を突っ込んで火魔法を使う。
「纏わりつく炎」
溶岩付近にいるから温度は500℃ぐらいで良いかな? 炎としては超低温だが、他の種族がこれを喰らったら多分極々短い時間で焼け死ぬ。
「おお! 温かいぞ!」
これで温かいって……風呂入った彼女らは風呂程度の温度では全然温まらないんじゃないかしら……?
「そういえば、さっきしばらく太陽が見えなくなったのだが……」
「あ~……奪われちゃった」
てへ☆
「どういうことだ!? あんなものどうやって奪うのだ!? 触れることすらできんのに!」
「以前一度我が家に来た魔王に持ってかれた、そういう能力らしい」
「……なるほど、レヴィアタンか」
「知ってるの!?」
「遠目に見たことしかないがそういう能力があるということぐらいは知っている」
一応ボカすような感じに言ったんだけど。
「まあ、我々ドラゴンの極致のような存在だしな」
「海蛇じゃないの?」
「海蛇も巨大になればドラゴンだ」
『竜頭蛇尾』って言葉があるし、鱗もあれば身体も長い。大きく含めれば蛇はドラゴンってこと……なのか?
『大林さんちのメイドラゴン』に登場していた『ケツァルコアトル』がドラゴンとして扱われてたけど、あれは蛇の姿した神だしな。
いやでも、『竜頭蛇尾』って日本の言葉だし、由来は中国辺りだったはずだ。東洋の竜と西洋のドラゴンじゃ全然形状違うしそれでもドラゴンなのか?
…………まあ私が疑問に思ったところで、当のレッドドラゴンが蛇をドラゴンと認めてるのだから海蛇も大きければドラゴンなのだろう。まあそんな問答はどうでも良いか。
「太陽はすぐ作り直したし、それほど寒くはならなかったでしょ?」
「雨ざらしだったから少し凍ったぞ」
雨ざらしは私の所為ではないが……
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
1時間くらいしてから二人がお風呂から出てきた。
「良いお湯でしたわ」
「フレハル様お待たせ~」
「お風呂冷たくなかった?」
「少しばかり温めさせていただきました」
風呂釜を覗きに行ってみる。予想通り泡と湯気が凄い。完全に沸騰してるわ……これ温めたってレベルじゃない……
湯量も最初の半分くらいに減ってる。どう考えても二人が入ったから流れたって量ではない。かなりの量蒸発したんだな……
「あの……先に言っておこうかと思うんだけど、もしトロル村のみんなとお風呂入る機会あっても、温めたりするのは禁止でお願いね」
三人してキョトンとしている。
「なんで?」
「これほど沸騰する温度のお湯に入ると、多くの生物は死に至るから……」
「なるほど、わたくしたちが熱に強過ぎるからというわけですね、了解致しました」
う~ん……この種族と共生していくのは中々骨が折れそうだ……
「では我も入らせてもらおうかな」
「…………ところでフレハル様、何で身体真っ黒なの?」
身体の周りを燃やしてたから、身体中煤だらけになってしまった……
「気にするな、我は汚れを落としてくる」
フレアハルトの煤については二人に説明しておいた。
二人とも爆笑。そんな温め方をされたことはないらしい。
その後、風呂場から「くっ、煤が中々落ちん!!」と嘆くような声が聞こえた。
そう思っていたが、またトラブル発生。
「うっ……頭に何か伝わってくる……超音波?」
エコーロケーションを会得した影響か、言葉染みたものまで聞こえる。
『アルトラ! 何で作業しに来んのだ!』
え? 何これ? 誰だ? 作業って何だ? でもこの口調……
まさか……この超音波ってフレアハルトが発してるの? この豪雨の日に杭打ち行ってるの!?
ここから昨日作業中断したところまで40kmくらい離れてるのに、こんなところまで届くのか!
急いでゲートを開き、昨日中断したところへ様子見に行く。
「遅い!」
レッドドラゴン三人が雨ざらしで立っている。今日はドラゴンの姿だ。多分雨を喰らうことで下がる熱を逃がさないようにするためだろう。まあその代わり身体に当たる雨の量が多くなるけど……
フレアハルト以外の二人は、何だかぐったりして元気無く見える……特にレイアのテンション爆下がり。
「この豪雨の日にまさか作業しに来てるとは思わなかったから……」
なんだってこんな日に作業しに来てるんだろう……じゃあ改めて中止を言い渡そう。
「今日は雨が酷いから中止にする」
「それは困る!」
は? レッドドラゴンは雨に弱いはずだから、普通やりたがらないと思うんだけど……
「今日の夕飯に店を予約してあるのだから中止にされては困る!」
食への執念が凄い……そこまで気に入ったのか……
「そこまで言われると『料理人を見出した冥利に尽きる』けど……」
自分で言ってて思ったけど何言ってんだコレ?
「そうは言ってもこの豪雨じゃ地面もぬかるんでるから作業なんかできないよ」
「では夕食までどうやって時間を潰すのだ!」
「う~ん、とりあえずウチくる?」
我が家へのゲートを開く。
「ちょっとちょっと、その身体で通る気? ゲートは大きく開けるほど魔力消費が激しいから人型になってよ!」
「ムッ……仕方ないな」
でかい図体三つも並べて通るなよ。
全員我が家に招き入れる。
びしょ濡れで寒そうだ、震えている。何時間待ってたんだろう? 午前中起き抜けにレヴィアタンと話をして3時間くらいは経ってるはずだから、ずっとあそこに居たんなら3時間雨ざらしか。火山からの50km間、雨を凌げるような木とかも無いしな。
水魔法と火魔法で風呂にお湯を張る。
こんなことになるんなら水の国観光してこなくて正解だった……私が家に帰ってこなければずっとあの場に居たかもしれない。
見たところ、どう見てもお付き二人の方が元気が無い。フレアハルトには悪いけど、先に従者を入れよう。
「お風呂入れたから二人とも入っちゃって」
「我は?」
「レディファースト」
「何だその言葉は?」
「女性優先ってことよ」
「亜人の世界にはそんな言葉があるのか」
亜人の世界にあるかどうかは知らないけど、人の世界にはある。最近は平等平等で廃れつつあるが……
「しかし主君より先に入るわけには……」
「よい、早く入れ」
「しかし……」
「良いから早く入っちゃって!」
二人を強引に風呂場に押し込む。
「じゃあ先に入るね~」
「お言葉に甘えさせていただきます」
アリサとレイアは風呂へ入っていった。
「寒いな……」
ずっと雨ざらしだったから、さっきからずっと震えている。
「燃やす?」
「我をか!?」
自分で言っておいてなんだけど、人型の生物に対して「燃やす?」って頭イカレてるとしか思えない返答だ。
でも、
「熱バリア程度じゃ全然寒さ和らがないでしょ?」
「うむ、では燃やしてくれ」
フレアハルトの足首から上だけ炎が外に漏れないように防御魔法:火無効を内側に向かってかける。これをやっておかないともしかしたら家が燃える。
結界内に手を突っ込んで火魔法を使う。
「纏わりつく炎」
溶岩付近にいるから温度は500℃ぐらいで良いかな? 炎としては超低温だが、他の種族がこれを喰らったら多分極々短い時間で焼け死ぬ。
「おお! 温かいぞ!」
これで温かいって……風呂入った彼女らは風呂程度の温度では全然温まらないんじゃないかしら……?
「そういえば、さっきしばらく太陽が見えなくなったのだが……」
「あ~……奪われちゃった」
てへ☆
「どういうことだ!? あんなものどうやって奪うのだ!? 触れることすらできんのに!」
「以前一度我が家に来た魔王に持ってかれた、そういう能力らしい」
「……なるほど、レヴィアタンか」
「知ってるの!?」
「遠目に見たことしかないがそういう能力があるということぐらいは知っている」
一応ボカすような感じに言ったんだけど。
「まあ、我々ドラゴンの極致のような存在だしな」
「海蛇じゃないの?」
「海蛇も巨大になればドラゴンだ」
『竜頭蛇尾』って言葉があるし、鱗もあれば身体も長い。大きく含めれば蛇はドラゴンってこと……なのか?
『大林さんちのメイドラゴン』に登場していた『ケツァルコアトル』がドラゴンとして扱われてたけど、あれは蛇の姿した神だしな。
いやでも、『竜頭蛇尾』って日本の言葉だし、由来は中国辺りだったはずだ。東洋の竜と西洋のドラゴンじゃ全然形状違うしそれでもドラゴンなのか?
…………まあ私が疑問に思ったところで、当のレッドドラゴンが蛇をドラゴンと認めてるのだから海蛇も大きければドラゴンなのだろう。まあそんな問答はどうでも良いか。
「太陽はすぐ作り直したし、それほど寒くはならなかったでしょ?」
「雨ざらしだったから少し凍ったぞ」
雨ざらしは私の所為ではないが……
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
1時間くらいしてから二人がお風呂から出てきた。
「良いお湯でしたわ」
「フレハル様お待たせ~」
「お風呂冷たくなかった?」
「少しばかり温めさせていただきました」
風呂釜を覗きに行ってみる。予想通り泡と湯気が凄い。完全に沸騰してるわ……これ温めたってレベルじゃない……
湯量も最初の半分くらいに減ってる。どう考えても二人が入ったから流れたって量ではない。かなりの量蒸発したんだな……
「あの……先に言っておこうかと思うんだけど、もしトロル村のみんなとお風呂入る機会あっても、温めたりするのは禁止でお願いね」
三人してキョトンとしている。
「なんで?」
「これほど沸騰する温度のお湯に入ると、多くの生物は死に至るから……」
「なるほど、わたくしたちが熱に強過ぎるからというわけですね、了解致しました」
う~ん……この種族と共生していくのは中々骨が折れそうだ……
「では我も入らせてもらおうかな」
「…………ところでフレハル様、何で身体真っ黒なの?」
身体の周りを燃やしてたから、身体中煤だらけになってしまった……
「気にするな、我は汚れを落としてくる」
フレアハルトの煤については二人に説明しておいた。
二人とも爆笑。そんな温め方をされたことはないらしい。
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