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第2章 トロル集落の生活改善編
第53話 レッドドラゴンの魔力感知の高さ
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「じゃあ夕食用意するから少し待ってて」
もしものことを考えて、食材は少し分けてもらってある。塩と砂糖もある、タレも貰って来た。今回は肉しか使わないから特に問題無いだろう。
さて調理開始だ。
まず亜空間収納ポケット内にあるカトブレパス肉の一部を切り取って取り出す。
それにしてもこの肉……私がどんどん消費してしまうな……まあ元々私が獲ってきたものだし許容の範囲か。それにまだ親一頭、子一頭で併せて6000人前分くらいの量あるから少し食べるくらい大丈夫だ、多分。
次に切り取った肉をミンチにする。本来ならひき肉作る機械で挽きたいところだけど、そんなものは無いので風魔法で小型の竜巻のような真空の刃が飛び交う渦を作りその中に投入。このままだと飛び散るから物質魔法で作った箱で囲う。
風耐性の低い普通の生物がこの中に入ろうものなら文字通りミンチになってしまう魔法なので、周りに誰もいない時に使わないといけない。さあ、まな板の上にミンチ肉が出来た。
次にフライパン (物質魔法製)に油を引いて火にかけ、ミンチ肉に塩味を付け少しの砂糖を混ぜ固めた上で投入。私はこんがり焼けてるのが好きだから焦げ目がつくまで焼く。
あとはハンバームちゃん特製のタレをかけて完成! 繋ぎが全く入ってないから『カトブレパス肉のハンバーグもどき』ってところかな。
皿と食器類、ナイフ、フォークは三人分だけ借りてきた。
「さあ、どうぞ召し上がれ」
「では――」
「「「いただきます」」」
よほどお腹が空いていたのか、三人とも一斉に食べ始めた。
「これは……美味しいですね!」
「こんな柔らかいお肉食べたことないよ!」
「確かに美味いな」
「一度粉々にして固めたお肉だからね。普通のお肉よりも弾力は少ないはずよ。ハンバームちゃんには及ばないと思うけど中々のものでしょ?」
「ここまで美味いとは侮っておったわ、お主は肉体労働だけの女と」
「おかしいな……見た目は少女のはずだけど、なぜフレハルの私のイメージは肉体労働に結びついたのだろう?」
「我は肉体労働しておるアルトラしか知らんしな。ドラゴンより強い女のどこが少女だ。少女なのは見た目だけで、中身は別のナニカだな」
「そんなことないよね~レイア」
「わたし、ドラゴンの炎を素手でかき消す女の子には初めて会いましたよ」
「アリサは?」
「何とも答え辛いですが……素敵だと思います」
必死に言葉を絞り出してくれたようだ。
しばらくガチャガチャと食事していたが、ある時フレアハルトの様子が変わった。
「!? アルトラ! 今まで空腹で気付かなかったが……この家お主以外に誰かおるのか?」
「えぇ? 誰もいないはずだけど……」
「屋根の上に微弱ながら魔力を感じる」
「この雨の中、屋根の上に居るの?」
屋根の上? 誰かに見張られている?
………………
あっ! 違う、見張られてるわけじゃないわ……
ヤバイ……屋根の上には、私以外の誰かが来た時に『見つかる前に屋根の上に逃走する機能』を与えたオルシンジテンがいる。あれが見つかったら非常にまずい……
「わたくしがちょっと見てきましょう」
「いや、行かなくて良いよ、雨脚も強くなってきちゃったしびしょ濡れになっちゃうよ」
アリサをさりげなく且つ必死に止める。
もしもの時のために『風雨を弾く機能』を付けておいて良かった……
「しかし、誰かに見張られているということも……」
あれ? アリサと話していたら……レイアがいない!?
「屋根の上見てきたけど、何もいなかったよ」
いつの間に屋根の上を見に行ったらしい……止める間も無かった……
でも、『透明になる機能』も付けておいたから、光の屈折まで認識できなければ見えないはず。
「そうか、今も微力ながら魔力を感じられるのだがな……」
「ネ……ネズミとかは?」
「我らはそこにどんな生物がいるか、おおよその形くらいは感じられる。屋根にいるのはもっと……う~ん……表現ができぬが異質なものだ。生物の形をしているような感じがしない」
当たり……本の形してるからね。
「害意は無さそうではあるが……」
「じゃあ、別にそのままでも良いかな」
「しかし気にならんか? 何がいるのかもわからんのだぞ?」
「あなたたちが帰った後によ~く調べておくよ」
「そうか。まあ、お主は我よりも強いし襲撃されたところで全く問題にもせんのだろうな。では我々は帰る、ごちそうさま」
こういう「お主」とか「我」とかのしゃべり方する人が最後に「ごちそうさま」って言うと違和感満載ね……こういうしゃべり方の人は「馳走になった」って言うのが似合うと思う。まあ、私が集落のマナーって教えたから仕方ないけど。
「ごちそうさまでした、良いお味でした」
「ごちそうさま! 美味しかったよ!」
「では、申し訳ありませんが、ゲートで火山まで送っていただけますか?」
ゲートで火山と繋げる。
「あ、あなたたち水に弱いでしょ、今雨脚も強いからゲートくぐる前に水を弾くバリアを張っておくね」
「ありがとうございます」
「助かるよー」
「すまぬな。ああ、見送りはここで良いぞ、わざわざあっちまで行くのは面倒であろう」
「そう? じゃあそうさせてもらうね、それじゃおやすみ」
「おやすみなさいませ」
みんなが完全に通り抜けたのを確認してからゲートを閉じる。
ふぅ……何とか私の料理でも満足して帰ってくれた。
さて……
オルシンジテンにまた新しい機能を追加しなければならない。
『屋根まで追いかけられた時に更に上空へ逃げる機能』と『オルシンジテンが自然漏出する魔力を隠匿する機能』。
あと、もしものために『熱知覚に引っ掛からない機能』を付けよう。今回はドラゴンだったから気付かれなかったけど、蛇みたいに相手の熱や体温を知覚できる能力持ってる亜人ならもしかしたら気付くかもしれないしね。
これだけ付加すればもう見つからないだろう。
もしものことを考えて、食材は少し分けてもらってある。塩と砂糖もある、タレも貰って来た。今回は肉しか使わないから特に問題無いだろう。
さて調理開始だ。
まず亜空間収納ポケット内にあるカトブレパス肉の一部を切り取って取り出す。
それにしてもこの肉……私がどんどん消費してしまうな……まあ元々私が獲ってきたものだし許容の範囲か。それにまだ親一頭、子一頭で併せて6000人前分くらいの量あるから少し食べるくらい大丈夫だ、多分。
次に切り取った肉をミンチにする。本来ならひき肉作る機械で挽きたいところだけど、そんなものは無いので風魔法で小型の竜巻のような真空の刃が飛び交う渦を作りその中に投入。このままだと飛び散るから物質魔法で作った箱で囲う。
風耐性の低い普通の生物がこの中に入ろうものなら文字通りミンチになってしまう魔法なので、周りに誰もいない時に使わないといけない。さあ、まな板の上にミンチ肉が出来た。
次にフライパン (物質魔法製)に油を引いて火にかけ、ミンチ肉に塩味を付け少しの砂糖を混ぜ固めた上で投入。私はこんがり焼けてるのが好きだから焦げ目がつくまで焼く。
あとはハンバームちゃん特製のタレをかけて完成! 繋ぎが全く入ってないから『カトブレパス肉のハンバーグもどき』ってところかな。
皿と食器類、ナイフ、フォークは三人分だけ借りてきた。
「さあ、どうぞ召し上がれ」
「では――」
「「「いただきます」」」
よほどお腹が空いていたのか、三人とも一斉に食べ始めた。
「これは……美味しいですね!」
「こんな柔らかいお肉食べたことないよ!」
「確かに美味いな」
「一度粉々にして固めたお肉だからね。普通のお肉よりも弾力は少ないはずよ。ハンバームちゃんには及ばないと思うけど中々のものでしょ?」
「ここまで美味いとは侮っておったわ、お主は肉体労働だけの女と」
「おかしいな……見た目は少女のはずだけど、なぜフレハルの私のイメージは肉体労働に結びついたのだろう?」
「我は肉体労働しておるアルトラしか知らんしな。ドラゴンより強い女のどこが少女だ。少女なのは見た目だけで、中身は別のナニカだな」
「そんなことないよね~レイア」
「わたし、ドラゴンの炎を素手でかき消す女の子には初めて会いましたよ」
「アリサは?」
「何とも答え辛いですが……素敵だと思います」
必死に言葉を絞り出してくれたようだ。
しばらくガチャガチャと食事していたが、ある時フレアハルトの様子が変わった。
「!? アルトラ! 今まで空腹で気付かなかったが……この家お主以外に誰かおるのか?」
「えぇ? 誰もいないはずだけど……」
「屋根の上に微弱ながら魔力を感じる」
「この雨の中、屋根の上に居るの?」
屋根の上? 誰かに見張られている?
………………
あっ! 違う、見張られてるわけじゃないわ……
ヤバイ……屋根の上には、私以外の誰かが来た時に『見つかる前に屋根の上に逃走する機能』を与えたオルシンジテンがいる。あれが見つかったら非常にまずい……
「わたくしがちょっと見てきましょう」
「いや、行かなくて良いよ、雨脚も強くなってきちゃったしびしょ濡れになっちゃうよ」
アリサをさりげなく且つ必死に止める。
もしもの時のために『風雨を弾く機能』を付けておいて良かった……
「しかし、誰かに見張られているということも……」
あれ? アリサと話していたら……レイアがいない!?
「屋根の上見てきたけど、何もいなかったよ」
いつの間に屋根の上を見に行ったらしい……止める間も無かった……
でも、『透明になる機能』も付けておいたから、光の屈折まで認識できなければ見えないはず。
「そうか、今も微力ながら魔力を感じられるのだがな……」
「ネ……ネズミとかは?」
「我らはそこにどんな生物がいるか、おおよその形くらいは感じられる。屋根にいるのはもっと……う~ん……表現ができぬが異質なものだ。生物の形をしているような感じがしない」
当たり……本の形してるからね。
「害意は無さそうではあるが……」
「じゃあ、別にそのままでも良いかな」
「しかし気にならんか? 何がいるのかもわからんのだぞ?」
「あなたたちが帰った後によ~く調べておくよ」
「そうか。まあ、お主は我よりも強いし襲撃されたところで全く問題にもせんのだろうな。では我々は帰る、ごちそうさま」
こういう「お主」とか「我」とかのしゃべり方する人が最後に「ごちそうさま」って言うと違和感満載ね……こういうしゃべり方の人は「馳走になった」って言うのが似合うと思う。まあ、私が集落のマナーって教えたから仕方ないけど。
「ごちそうさまでした、良いお味でした」
「ごちそうさま! 美味しかったよ!」
「では、申し訳ありませんが、ゲートで火山まで送っていただけますか?」
ゲートで火山と繋げる。
「あ、あなたたち水に弱いでしょ、今雨脚も強いからゲートくぐる前に水を弾くバリアを張っておくね」
「ありがとうございます」
「助かるよー」
「すまぬな。ああ、見送りはここで良いぞ、わざわざあっちまで行くのは面倒であろう」
「そう? じゃあそうさせてもらうね、それじゃおやすみ」
「おやすみなさいませ」
みんなが完全に通り抜けたのを確認してからゲートを閉じる。
ふぅ……何とか私の料理でも満足して帰ってくれた。
さて……
オルシンジテンにまた新しい機能を追加しなければならない。
『屋根まで追いかけられた時に更に上空へ逃げる機能』と『オルシンジテンが自然漏出する魔力を隠匿する機能』。
あと、もしものために『熱知覚に引っ掛からない機能』を付けよう。今回はドラゴンだったから気付かれなかったけど、蛇みたいに相手の熱や体温を知覚できる能力持ってる亜人ならもしかしたら気付くかもしれないしね。
これだけ付加すればもう見つからないだろう。
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