建国のアルトラ ~魔界の天使 (?)の国造り奮闘譚~

ヒロノF

文字の大きさ
上 下
54 / 548
第2章 トロル集落の生活改善編

第53話 レッドドラゴンの魔力感知の高さ

しおりを挟む
「じゃあ夕食用意するから少し待ってて」

 もしものことを考えて、食材は少し分けてもらってある。塩と砂糖もある、タレも貰って来た。今回は肉しか使わないから特に問題無いだろう。
 さて調理開始だ。
 まず亜空間収納ポケット内にあるカトブレパス肉の一部を切り取って取り出す。
 それにしてもこの肉……私がどんどん消費してしまうな……まあ元々私が獲ってきたものだし許容の範囲か。それにまだ親一頭、子一頭で併せて6000人前分くらいの量あるから少し食べるくらい大丈夫だ、多分。
 次に切り取った肉をミンチにする。本来ならひき肉作る機械できたいところだけど、そんなものは無いので風魔法で小型の竜巻のような真空の刃が飛び交う渦を作りその中に投入。このままだと飛び散るから物質魔法で作った箱で囲う。
 風耐性の低い普通の生物がこの中に入ろうものなら文字通りミンチになってしまう魔法なので、周りに誰もいない時に使わないといけない。さあ、まな板の上にミンチ肉が出来た。

 次にフライパン (物質魔法製)に油を引いて火にかけ、ミンチ肉に塩味を付け少しの砂糖を混ぜ固めた上で投入。私はこんがり焼けてるのが好きだから焦げ目がつくまで焼く。
 あとはハンバームちゃん特製のタレをかけて完成! 繋ぎが全く入ってないから『カトブレパス肉のハンバーグもどき』ってところかな。
 皿と食器類、ナイフ、フォークは三人分だけ借りてきた。

「さあ、どうぞ召し上がれ」
「では――」
「「「いただきます」」」

 よほどお腹が空いていたのか、三人とも一斉に食べ始めた。

「これは……美味しいですね!」
「こんな柔らかいお肉食べたことないよ!」
「確かに美味いな」
「一度粉々にして固めたお肉だからね。普通のお肉よりも弾力は少ないはずよ。ハンバームちゃんには及ばないと思うけど中々のものでしょ?」
「ここまで美味いとは侮っておったわ、お主は肉体労働だけの女と」
「おかしいな……見た目は少女のはずだけど、なぜフレハルの私のイメージは肉体労働に結びついたのだろう?」
「我は肉体労働しておるアルトラしか知らんしな。ドラゴンより強い女のどこが少女だ。少女なのは見た目だけで、中身は別のナニカだな」
「そんなことないよね~レイア」
「わたし、ドラゴンの炎を素手でかき消す女の子には初めて会いましたよ」
「アリサは?」
「何とも答え辛いですが……素敵だと思います」
 必死に言葉を絞り出してくれたようだ。

 しばらくガチャガチャと食事していたが、ある時フレアハルトの様子が変わった。

「!? アルトラ! 今まで空腹で気付かなかったが……この家お主以外に誰かおるのか?」
「えぇ? 誰もいないはずだけど……」
「屋根の上に微弱ながら魔力を感じる」
「この雨の中、屋根の上に居るの?」

 屋根の上? 誰かに見張られている?
 ………………
 あっ! 違う、見張られてるわけじゃないわ……
 ヤバイ……屋根の上には、私以外の誰かが来た時に『見つかる前に屋根の上に逃走する機能』を与えたオルシンジテンがいる。あれが見つかったら非常にまずい……

「わたくしがちょっと見てきましょう」
「いや、行かなくて良いよ、雨脚も強くなってきちゃったしびしょ濡れになっちゃうよ」
 アリサをさりげなくつ必死に止める。
 もしもの時のために『風雨を弾く機能』を付けておいて良かった……

「しかし、誰かに見張られているということも……」

 あれ? アリサと話していたら……レイアがいない!?

「屋根の上見てきたけど、何もいなかったよ」
 いつの間に屋根の上を見に行ったらしい……止める間も無かった……
 でも、『透明になる機能』も付けておいたから、光の屈折まで認識できなければ見えないはず。

「そうか、今も微力ながら魔力を感じられるのだがな……」
「ネ……ネズミとかは?」
「我らはそこにどんな生物がいるか、おおよその形くらいは感じられる。屋根にいるのはもっと……う~ん……表現ができぬが異質なものだ。生物の形をしているような感じがしない」

 当たり……本の形してるからね。

「害意は無さそうではあるが……」
「じゃあ、別にそのままでも良いかな」
「しかし気にならんか? 何がいるのかもわからんのだぞ?」
「あなたたちが帰った後によ~く調べておくよ」
「そうか。まあ、お主は我よりも強いし襲撃されたところで全く問題にもせんのだろうな。では我々は帰る、ごちそうさま」

 こういう「お主」とか「我」とかのしゃべり方する人が最後に「ごちそうさま」って言うと違和感満載ね……こういうしゃべり方の人は「馳走になった」って言うのが似合うと思う。まあ、私が集落のマナーって教えたから仕方ないけど。

「ごちそうさまでした、良いお味でした」
「ごちそうさま! 美味しかったよ!」
「では、申し訳ありませんが、ゲートで火山まで送っていただけますか?」

 ゲートで火山と繋げる。

「あ、あなたたち水に弱いでしょ、今雨脚も強いからゲートくぐる前に水を弾くバリアを張っておくね」
「ありがとうございます」
「助かるよー」
「すまぬな。ああ、見送りはここで良いぞ、わざわざあっちまで行くのは面倒であろう」
「そう? じゃあそうさせてもらうね、それじゃおやすみ」
「おやすみなさいませ」

 みんなが完全に通り抜けたのを確認してからゲートを閉じる。
 ふぅ……何とか私の料理でも満足して帰ってくれた。

 さて……
 オルシンジテンにまた新しい機能を追加しなければならない。
 『屋根まで追いかけられた時に更に上空へ逃げる機能』と『オルシンジテンが自然漏出ろうしゅつする魔力を隠匿いんとくする機能』。
 あと、もしものために『熱知覚に引っ掛からない機能』を付けよう。今回はドラゴンだったから気付かれなかったけど、蛇みたいに相手の熱や体温を知覚できる能力持ってる亜人ならもしかしたら気付くかもしれないしね。
 これだけ付加すればもう見つからないだろう。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

1人生活なので自由な生き方を謳歌する

さっちさん
ファンタジー
大商会の娘。 出来損ないと家族から追い出された。 唯一の救いは祖父母が家族に内緒で譲ってくれた小さな町のお店だけ。 これからはひとりで生きていかなくては。 そんな少女も実は、、、 1人の方が気楽に出来るしラッキー これ幸いと実家と絶縁。1人生活を満喫する。

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシャリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

ある平民生徒のお話

よもぎ
ファンタジー
とある国立学園のサロンにて、王族と平民生徒は相対していた。 伝えられたのはとある平民生徒が死んだということ。その顛末。 それを黙って聞いていた平民生徒は訥々と語りだす――

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

婚約破棄?一体何のお話ですか?

リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。 エルバルド学園卒業記念パーティー。 それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる… ※エブリスタさんでも投稿しています

【完結】聖女ディアの処刑

大盛★無料
ファンタジー
平民のディアは、聖女の力を持っていた。 枯れた草木を蘇らせ、結界を張って魔獣を防ぎ、人々の病や傷を癒し、教会で朝から晩まで働いていた。 「怪我をしても、鍛錬しなくても、きちんと作物を育てなくても大丈夫。あの平民の聖女がなんとかしてくれる」 聖女に助けてもらうのが当たり前になり、みんな感謝を忘れていく。「ありがとう」の一言さえもらえないのに、無垢で心優しいディアは奇跡を起こし続ける。 そんななか、イルミテラという公爵令嬢に、聖女の印が現れた。 ディアは偽物と糾弾され、国民の前で処刑されることになるのだが―― ※ざまあちょっぴり!←ちょっぴりじゃなくなってきました(;´・ω・) ※サクッとかる~くお楽しみくださいませ!(*´ω`*)←ちょっと重くなってきました(;´・ω・) ★追記 ※残酷なシーンがちょっぴりありますが、週刊少年ジャンプレベルなので特に年齢制限は設けておりません。 ※乳児が地面に落っこちる、運河の氾濫など災害の描写が数行あります。ご留意くださいませ。 ※ちょこちょこ書き直しています。セリフをカッコ良くしたり、状況を補足したりする程度なので、本筋には大きく影響なくお楽しみ頂けると思います。

処理中です...