53 / 531
第2章 トロル集落の生活改善編
第52話 我が家の増設
しおりを挟む
「………………これはダメそうね……」
嫌な予感は的中。
雨のタイミングで沢山の人たちが食堂に流れ込んできたらしく、厨房の人たち大わらわ。
ハンバームちゃん、わざわざ断りに出てきてくれた。
「申し訳ありません、今日は雨が降ってきてしまって、みなさん作業を中断して食堂で雨宿りされているので……料理をお出しできるのが大分後になってしまいますが……」
「え~と、どれくらいかかりそう?」
「今日は沢山いらっしゃいますので、1時間半~2時間くらいでしょうか」
これ、フレアハルトが聞いたらどういう反応をするだろう? 怒られそうだ……
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
「……ってわけだけどフレハルどうする?」
「2時間!? そんなに待っていられん! 我はすぐに食べたいのだ!」
「フレハル様落ち着いて……」
「ごめんねぇ……順番を守らなきゃ秩序が保てないから。予約しておけば別なんだけど」
「では明日のこの時間に予約しておけ!」
案の定怒られた……よほど楽しみにしてたんだな……
じゃあ明日の予約を入れておくか。
「ハンバームちゃんのと比べれば大分グレードダウンしちゃうんだけど、私の手料理で良ければ用意できるけど……」
「………………ちゃんと美味いのであろうな?」
「まあ……自炊してたくらいには……」
両親早くに亡くなってるし、ずっと一人暮らしだったから少しくらいは料理をしてきた。まあ6~7割がコンビニ弁当だったのは否めないけど……ハンバーグぐらいなら作れる。あれも肉だし、肉好き野菜嫌いのこの男には問題無いだろう。
ただ……問題があるとすれば、まだ小麦粉や卵の繋ぎが無い。タマネギも無い。ただただ肉をミンチにして焼くだけになってしまうけど……
あ、そうだハンバームちゃんに昨日ステーキにかかってたタレを分けてもらおう。あれがあるのと無いのでは雲泥の差だ。ハンバームちゃんの力にあやかろう。
と言うわけでちょっと分けてもらいに行こう。
「ちょっと待ってて」
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
「お待たせ。じゃあ、我が家へ招待するよ」
ハッ! ゼロ距離ドアを使って我が家に行くと必然的に犬小屋の前を通る!
絶対あの質問が来るはずだ! 毎回初訪問客に説明するのが面倒だしゲートで直接我が家へ行こう。
「じゃ、じゃあ我が家へ行こうか」
「アルトラ、お主この村の領主なのにゲートで帰るのか? ここから歩いて帰れば良いのではないか?」
とんでもない……ここから歩いて帰ったら私の足で12時間かかるよ……
私の家からはこの集落より、むしろあなたたちの棲む山の方が近いから。
そういうわけでゲートで我が家へ。
しかし、この作戦も初訪問客にはダメでした……
「アルトラ様、あちらはお隣様の家ですか?」
「あっちの家の方がでかいな。お主の家よりでかい家に住んでいる者がいるって、お主本当にここの領主か?」
やっぱりツッコミが入ってしまったか……
「いえ、あっちは犬小屋です」
「犬小屋!? 貴様の飼ってる犬か!? 主人の方が小さい家に住むなどおかしいではないか!?」
「まあ、うちの犬はあなたたちみたいに小さく変身したりとか出来ないから……大きく作らざるを得なかったってわけよ」
「それほどの巨大な犬とは一体どんな犬なのだ?」
「あなたたちより少しだけ小さい犬よ、首が三つある」
「ケルベロスか! 強力な魔物だと思ってたが、まさか亜人に飼われているとはな」
まあ、大分骨抜きにしたけどね。
三つ全部の首が眠ることはないって伝説だったけど今では夜は犬小屋内で爆睡だし、超高温に耐えられる身体は普通の気温に下がったら寒さに震えてるし、何でも溶かすトリカブトが発生した伝説のある唾液はもはや無害化しているし、噛みつき攻撃は地獄の門をくぐらなければやらないし。
躾けされている範囲で言えば、完全なる無害。
もし有事の際があったら、敵対者に対抗できるかどうかもわからないくらい骨抜きにしてしまった気がする。
「さあ我が家に着いた」
とは言え、この家に客間などない。あるのは玄関、寝室兼リビングとキッチン、トイレだけだ。
仕方ないから客間を増設するか。
土魔法と樹魔法で寝室兼リビングの奥に部屋を一つ作った。
「おぉ!?」
私の 寝室兼リビングは奥に作った部屋へ移動しよう。
元々の寝室兼リビングは、キッチンと直結してるし、客間兼ダイニングにでも変更するか。
次にテーブルと椅子四脚を樹魔法で作る。
「わぁ!」
「凄い早さの土魔法と樹魔法ですね!」
「これもうお主が全部一人でやれば良いのではないか? 一瞬で部屋を作って、テーブルと椅子を設えるなど並大抵の術士ではあり得ぬことだぞ?」
「そうすると、もし私がいなくなった場合……例えば不慮の事故や病気で死んだりした場合、何にも出来ない人たちだけで溢れてしまうでしょ? 集落の人たちには生活するための技術を付けてもらわないと。あとあらゆることを私一人でやろうとすると、流石に魔力が持たないよ」
「我のブレスで死ななかったのに、お主が不慮の事故で死ぬところが想像できないのだが……」
最近の私は自分のテリトリー (地獄の門前広場)だけは、存分に魔法を使おうと思っている。
尤も集落の発展状況を見て考慮しているから、突然豪華絢爛な屋敷が出現するなんてことは無い。それに、家の構造を理解していない私がそんな大きな家を作ったら、多分数日も経たずに重みで潰れるからどちらにしても作れない。
今の発展状況なら部屋一つ増えて、テーブルと椅子が増えるくらいなら問題無いだろう。
毎朝ケルベロスと戯れに来てる子がいるから、いきなり家の形状が変わっててビックリするかもしれないけど。
嫌な予感は的中。
雨のタイミングで沢山の人たちが食堂に流れ込んできたらしく、厨房の人たち大わらわ。
ハンバームちゃん、わざわざ断りに出てきてくれた。
「申し訳ありません、今日は雨が降ってきてしまって、みなさん作業を中断して食堂で雨宿りされているので……料理をお出しできるのが大分後になってしまいますが……」
「え~と、どれくらいかかりそう?」
「今日は沢山いらっしゃいますので、1時間半~2時間くらいでしょうか」
これ、フレアハルトが聞いたらどういう反応をするだろう? 怒られそうだ……
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
「……ってわけだけどフレハルどうする?」
「2時間!? そんなに待っていられん! 我はすぐに食べたいのだ!」
「フレハル様落ち着いて……」
「ごめんねぇ……順番を守らなきゃ秩序が保てないから。予約しておけば別なんだけど」
「では明日のこの時間に予約しておけ!」
案の定怒られた……よほど楽しみにしてたんだな……
じゃあ明日の予約を入れておくか。
「ハンバームちゃんのと比べれば大分グレードダウンしちゃうんだけど、私の手料理で良ければ用意できるけど……」
「………………ちゃんと美味いのであろうな?」
「まあ……自炊してたくらいには……」
両親早くに亡くなってるし、ずっと一人暮らしだったから少しくらいは料理をしてきた。まあ6~7割がコンビニ弁当だったのは否めないけど……ハンバーグぐらいなら作れる。あれも肉だし、肉好き野菜嫌いのこの男には問題無いだろう。
ただ……問題があるとすれば、まだ小麦粉や卵の繋ぎが無い。タマネギも無い。ただただ肉をミンチにして焼くだけになってしまうけど……
あ、そうだハンバームちゃんに昨日ステーキにかかってたタレを分けてもらおう。あれがあるのと無いのでは雲泥の差だ。ハンバームちゃんの力にあやかろう。
と言うわけでちょっと分けてもらいに行こう。
「ちょっと待ってて」
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
「お待たせ。じゃあ、我が家へ招待するよ」
ハッ! ゼロ距離ドアを使って我が家に行くと必然的に犬小屋の前を通る!
絶対あの質問が来るはずだ! 毎回初訪問客に説明するのが面倒だしゲートで直接我が家へ行こう。
「じゃ、じゃあ我が家へ行こうか」
「アルトラ、お主この村の領主なのにゲートで帰るのか? ここから歩いて帰れば良いのではないか?」
とんでもない……ここから歩いて帰ったら私の足で12時間かかるよ……
私の家からはこの集落より、むしろあなたたちの棲む山の方が近いから。
そういうわけでゲートで我が家へ。
しかし、この作戦も初訪問客にはダメでした……
「アルトラ様、あちらはお隣様の家ですか?」
「あっちの家の方がでかいな。お主の家よりでかい家に住んでいる者がいるって、お主本当にここの領主か?」
やっぱりツッコミが入ってしまったか……
「いえ、あっちは犬小屋です」
「犬小屋!? 貴様の飼ってる犬か!? 主人の方が小さい家に住むなどおかしいではないか!?」
「まあ、うちの犬はあなたたちみたいに小さく変身したりとか出来ないから……大きく作らざるを得なかったってわけよ」
「それほどの巨大な犬とは一体どんな犬なのだ?」
「あなたたちより少しだけ小さい犬よ、首が三つある」
「ケルベロスか! 強力な魔物だと思ってたが、まさか亜人に飼われているとはな」
まあ、大分骨抜きにしたけどね。
三つ全部の首が眠ることはないって伝説だったけど今では夜は犬小屋内で爆睡だし、超高温に耐えられる身体は普通の気温に下がったら寒さに震えてるし、何でも溶かすトリカブトが発生した伝説のある唾液はもはや無害化しているし、噛みつき攻撃は地獄の門をくぐらなければやらないし。
躾けされている範囲で言えば、完全なる無害。
もし有事の際があったら、敵対者に対抗できるかどうかもわからないくらい骨抜きにしてしまった気がする。
「さあ我が家に着いた」
とは言え、この家に客間などない。あるのは玄関、寝室兼リビングとキッチン、トイレだけだ。
仕方ないから客間を増設するか。
土魔法と樹魔法で寝室兼リビングの奥に部屋を一つ作った。
「おぉ!?」
私の 寝室兼リビングは奥に作った部屋へ移動しよう。
元々の寝室兼リビングは、キッチンと直結してるし、客間兼ダイニングにでも変更するか。
次にテーブルと椅子四脚を樹魔法で作る。
「わぁ!」
「凄い早さの土魔法と樹魔法ですね!」
「これもうお主が全部一人でやれば良いのではないか? 一瞬で部屋を作って、テーブルと椅子を設えるなど並大抵の術士ではあり得ぬことだぞ?」
「そうすると、もし私がいなくなった場合……例えば不慮の事故や病気で死んだりした場合、何にも出来ない人たちだけで溢れてしまうでしょ? 集落の人たちには生活するための技術を付けてもらわないと。あとあらゆることを私一人でやろうとすると、流石に魔力が持たないよ」
「我のブレスで死ななかったのに、お主が不慮の事故で死ぬところが想像できないのだが……」
最近の私は自分のテリトリー (地獄の門前広場)だけは、存分に魔法を使おうと思っている。
尤も集落の発展状況を見て考慮しているから、突然豪華絢爛な屋敷が出現するなんてことは無い。それに、家の構造を理解していない私がそんな大きな家を作ったら、多分数日も経たずに重みで潰れるからどちらにしても作れない。
今の発展状況なら部屋一つ増えて、テーブルと椅子が増えるくらいなら問題無いだろう。
毎朝ケルベロスと戯れに来てる子がいるから、いきなり家の形状が変わっててビックリするかもしれないけど。
1
お気に入りに追加
66
あなたにおすすめの小説
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】
小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。
他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。
それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。
友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。
レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。
そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。
レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
私が死んだあとの世界で
もちもち太郎
恋愛
婚約破棄をされ断罪された公爵令嬢のマリーが死んだ。
初めはみんな喜んでいたが、時が経つにつれマリーの重要さに気づいて後悔する。
だが、もう遅い。なんてったって、私を断罪したのはあなた達なのですから。
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
夫から国外追放を言い渡されました
杉本凪咲
恋愛
夫は冷淡に私を国外追放に処した。
どうやら、私が使用人をいじめたことが原因らしい。
抵抗虚しく兵士によって連れていかれてしまう私。
そんな私に、被害者である使用人は笑いかけていた……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる