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第2章 トロル集落の生活改善編
第47話 レッドドラゴンに集落を案内した
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「フレハル、お待たせ」
「何を話しておったのだ? ……話していたんですか?」
「リーヴァントにだけ事情を説明してきた、あの人だけはあなたたち三人がレッドドラゴンって理解してもらった」
「そこから村中に広がったりは大丈夫か? ……大丈夫ですか?」
「一応口止めはしておいたよ。口が堅い人だから大丈夫」
「では村の中を案内してもらおうか ……案内してください」
「じゃあ、まずこの場所、ここは避難所」
「何の避難所なのだ ……なんですか?」
「うっ……それは……私がやらかしてしまったことが原因の避難所です……」
「一体何をやらかしたんですか?」
「私の思惑違いで、集落自体を水没させてしまいました……」
「それはとんでもないやらかしですね!」
フレアハルトの口調に違和感があるな……敬語慣れしてない人が無理矢理敬語を使ってるみたいな、何かズレてるような感じ。
「ごめん、もうちょっと口調崩しても良いや、何か気持ち悪い」
「貴様が口調を改めろと言ったんだろうが」
「『貴様』は『お主』ぐらいに緩めてくれると嬉しいです」
「それは了承しよう」
「話を戻すね、ここは災害当時は避難所だったんだけど、今は役所みたいな機能も兼ねてるかな。集落のことはここで聞けば大体のことはわかると思う」
「もしここに住むことになったら、困ったことはここで聞けば良いのだな」
「ん? 今何かおかしいこと言わなかった? 住むとか」
「何でもない次を案内してくれ」
歩きながら集落の現状を説明する。
建築中の木の家が立ち並ぶ。建築の技術や知識が乏しいから、現状は木を適当に組んだ家しか作れないということ。強度もそれなりだから、大きい地震でもあればちょっと厳しいかもしれないこと。
ドワーフを探し出してスカウトしたいなどなど。ドワーフについては、レッドドラゴンなら高度な種族だから何か手がかりになりそうなことが引き出せるかと思って話題にしてみた。
レッドドラゴン族たちの猛火に耐えられる建築物を作ったのはドワーフらしい。
ビンゴ! と思ったが、今はもう全くと言って良いほど関わりが無いらしい。残念……
畑予定地へと歩を進める。
畑予定地……まだ作物は出来ていない。今はその前段階で土慣らしのためにみんなが一生懸命開墾してくれている。
「あ、アルトラ様、やっと捉まった。家行ってもいないからどうしようかと思いましたよ~」
「リーヴァントに川通すための調査に行ってくるって言ってあったはずだけど?」
「それ聞いたところで、私空間魔法使えないので追いかけられませんし……帰ってくる時間になるまで畑作業して待ってたんです。それで、本題なんですけど一昨日川の流域でいくつか食べ物になりそうなものを持って来たんですけど、美味しそうなものってありますか?」
一昨日のヨントス捜索の時に、樹魔法が使えるメイフィーに『集落で栽培したいから食べられそうな植物を採ってきてほしい』と密かに頼んでおいた。
「結構色々持って来たね。あれ? これって枝豆じゃないの? 良いの採って来たね~メイフィー! これ加工すると色んな食材になるのよ!」
「その豆がそんなに良いものなんですか?」
「うん、これは栄養価も高いし、味噌とか醤油とか、あと豆腐とか油揚げとか酒のつまみにもなるから絶対栽培するべきだね」
「私が聞いても何のことやらわかりませんけど、アルトラ様が言うなら期待してます!」
「あ、実も採って来たのね、キュウリとかナスとかに似てるもの、これはトマト? イチゴまで!? これらの実はまだ試食してないの?」
「食べましたよ、緑のは青臭いですけど瑞々しいですね、紫のは塩によく馴染みます。赤いのは両方酸っぱかったです。実の方はどれも毒は無いと思います。」
人間界のとほぼ変わらないって感じかな。全部似たような調理が可能ってわけね。
この世界なら樹魔法である程度の成長を促すことができるから、収穫まで人間界ほどの期間はかからない。生産自体も早くできそうね。
「他のは……私にはよくわからないね、見たことないものばかりだから」
「他にも緑色の大きいのがありましたけど、ちょっと重そうなので持ってくるのをやめました」
スイカかカボチャかな?
後で私が取りに行ってくるか。
「あの川の流域食材の宝庫じゃない? 今まで何で育てなかったの?」
「その理由はアルトラ様も知ってるんじゃないですか?」
「………………ああ……そういえば気温がめっちゃ高かったんだっけ……これらを集落に植えたとしても育つ前に枯れちゃってたのか。こう和な生活を送れてるとそんなことも忘れてきちゃうね」
集落と川では大体20kmくらいしか違わないけど、温度差がそんなにあったのか……もしくは、大地を冷やし、疑似太陽が出来た後に光合成が出来るようになったから、その後にたまたま成った作物かのどちらかかな。
「あ、そういえば見たことない人連れてますけど、そっちの人は誰なんですか?」
メイフィーにもレッドドラゴンであるということは伏せて出会った経緯を説明。
「へぇ~、火山地帯に住んでる亜人っていたんですね。私たちよりも熱に対する適応力が高いのかな?」
フレアハルトの方を見るとちょっとだけムッとした顔をしたけど、抑えてくれ。
「それで、ここは何をするところなのだ? 見たところ何も無いただっ広い丘のようだが……」
「ここは畑予定地よ。ここに種を撒いて、作物を育てようとしているの。今回キュウリとナスとトマト、あと枝豆が発見されたから、かなり種類が増えるね」
「野菜かぁ……我らの口には合わないだろうな……」
何だろうこの発言の違和感、この王子はなぜか自分が食べる前提で話をしてるように聞こえる。
「肉は育ててないのか?」
肉を育てるものだと思っているのだろうか? 私も屠畜しないで、畑から肉がそのままの形で収穫できるなら心が痛まないからそうしたいところだけど。
「フレハル、もしかして肉が育ったり、畑から肉が収穫できると思ってるわけじゃないよね?」
「何をバカな、そこまで知らないわけではないぞ? 『肉にする用の動物は飼っていないのか?』という意味で聞いたのだ」
ホッ……そりゃそうよね。
肉が出来る植物か……イメージすれば作れそうではあるけど……物凄く気持ち悪い気がする。
胃が成ってる木とか、心臓が成ってる木とか、腸が成ってる木とか……想像するにその光景は最早猟奇的ではないだろうか?
樹液も、血の滴るような樹液になりそうだ。
生物を殺害して木に吊るしてるような凄惨な光景になりそうなので、私はイメージすることを止めた。
「肉にする動物を育てたいと思うんだけど、この辺りには攻撃的な生物しかいないのよね。集落内で飼うってことになると大人しいのが最重要条件の一つだし」
「あの狼はどうなのだ? 美味かったぞ?」
「あれは比較的弱い部類の生物なんだけど気性が荒いから家畜にするのはちょっと厳しいかな。動きも速いし。あと場所を確保しなきゃいけない問題があるし」
そう、家畜を飼うには場所が要る。この集落の外壁を壊すか、もしくは、外壁の外に土地を拡大しなければならない。大がかりな改造が必要になってくる。それに灼熱の大地ではなくなったとは言え、まだ飼料となる草木もそれほど生えていない。
まあ、この辺りの問題は樹魔法である程度なんとかなりそうだけど……
「まだしばらく先になりそうかな」
「そうか……それは残念だな……」
いや、何であなたが残念がるの!?
まあ家畜は飼うことは出来ないけど、狩りをすれば肉もある程度食べることはできる。現状は家畜にしなければならないほど必要性が高いわけではない。
むしろやらなければいけないのは、調味料の取り揃えだ。
料理のさ・し・す・せ・そ、これが有るのと無いのでは食生活が大きく違ってくる。
現在、塩は手に入れた。砂糖は栽培段階で手に入りつつある。醤油と味噌はあの枝豆に似た植物の生育次第だ。残りは酢だけ。しかし、これはまず米を見つけないことには始まらない。あと、トマトが手に入ったからケチャップも作れそうだ。
以前の私なら飢餓状態を改善するために樹魔法で食べる物も作ろうと考えたが、村人全員の知性を引き上げたことによって、何もしなくても食べられる物を見つけ、生産してくれるようになった。
もう私が魔法で食べ物を作ろうなどと考えなくても良いだろう。ご飯やパンは恋しいけど、米や小麦などの主食が見つかるまで気長に待とう。
あとは料理の中でもかなりの重要度を誇る『牛乳』と『卵』。この二つもなるべく早く確保したい。
「……ル……トラ……、ア……トラ……、おいアルトラ!」
「はい!?」
「ボーっとして大丈夫か?」
しまった、大分自分の世界にダイブしていたみたいだ。
どうも食べ物のことになると自分の世界に入ってしまうみたいだ。
「次を案内していただけますか?」
「あ、はい」
「何を話しておったのだ? ……話していたんですか?」
「リーヴァントにだけ事情を説明してきた、あの人だけはあなたたち三人がレッドドラゴンって理解してもらった」
「そこから村中に広がったりは大丈夫か? ……大丈夫ですか?」
「一応口止めはしておいたよ。口が堅い人だから大丈夫」
「では村の中を案内してもらおうか ……案内してください」
「じゃあ、まずこの場所、ここは避難所」
「何の避難所なのだ ……なんですか?」
「うっ……それは……私がやらかしてしまったことが原因の避難所です……」
「一体何をやらかしたんですか?」
「私の思惑違いで、集落自体を水没させてしまいました……」
「それはとんでもないやらかしですね!」
フレアハルトの口調に違和感があるな……敬語慣れしてない人が無理矢理敬語を使ってるみたいな、何かズレてるような感じ。
「ごめん、もうちょっと口調崩しても良いや、何か気持ち悪い」
「貴様が口調を改めろと言ったんだろうが」
「『貴様』は『お主』ぐらいに緩めてくれると嬉しいです」
「それは了承しよう」
「話を戻すね、ここは災害当時は避難所だったんだけど、今は役所みたいな機能も兼ねてるかな。集落のことはここで聞けば大体のことはわかると思う」
「もしここに住むことになったら、困ったことはここで聞けば良いのだな」
「ん? 今何かおかしいこと言わなかった? 住むとか」
「何でもない次を案内してくれ」
歩きながら集落の現状を説明する。
建築中の木の家が立ち並ぶ。建築の技術や知識が乏しいから、現状は木を適当に組んだ家しか作れないということ。強度もそれなりだから、大きい地震でもあればちょっと厳しいかもしれないこと。
ドワーフを探し出してスカウトしたいなどなど。ドワーフについては、レッドドラゴンなら高度な種族だから何か手がかりになりそうなことが引き出せるかと思って話題にしてみた。
レッドドラゴン族たちの猛火に耐えられる建築物を作ったのはドワーフらしい。
ビンゴ! と思ったが、今はもう全くと言って良いほど関わりが無いらしい。残念……
畑予定地へと歩を進める。
畑予定地……まだ作物は出来ていない。今はその前段階で土慣らしのためにみんなが一生懸命開墾してくれている。
「あ、アルトラ様、やっと捉まった。家行ってもいないからどうしようかと思いましたよ~」
「リーヴァントに川通すための調査に行ってくるって言ってあったはずだけど?」
「それ聞いたところで、私空間魔法使えないので追いかけられませんし……帰ってくる時間になるまで畑作業して待ってたんです。それで、本題なんですけど一昨日川の流域でいくつか食べ物になりそうなものを持って来たんですけど、美味しそうなものってありますか?」
一昨日のヨントス捜索の時に、樹魔法が使えるメイフィーに『集落で栽培したいから食べられそうな植物を採ってきてほしい』と密かに頼んでおいた。
「結構色々持って来たね。あれ? これって枝豆じゃないの? 良いの採って来たね~メイフィー! これ加工すると色んな食材になるのよ!」
「その豆がそんなに良いものなんですか?」
「うん、これは栄養価も高いし、味噌とか醤油とか、あと豆腐とか油揚げとか酒のつまみにもなるから絶対栽培するべきだね」
「私が聞いても何のことやらわかりませんけど、アルトラ様が言うなら期待してます!」
「あ、実も採って来たのね、キュウリとかナスとかに似てるもの、これはトマト? イチゴまで!? これらの実はまだ試食してないの?」
「食べましたよ、緑のは青臭いですけど瑞々しいですね、紫のは塩によく馴染みます。赤いのは両方酸っぱかったです。実の方はどれも毒は無いと思います。」
人間界のとほぼ変わらないって感じかな。全部似たような調理が可能ってわけね。
この世界なら樹魔法である程度の成長を促すことができるから、収穫まで人間界ほどの期間はかからない。生産自体も早くできそうね。
「他のは……私にはよくわからないね、見たことないものばかりだから」
「他にも緑色の大きいのがありましたけど、ちょっと重そうなので持ってくるのをやめました」
スイカかカボチャかな?
後で私が取りに行ってくるか。
「あの川の流域食材の宝庫じゃない? 今まで何で育てなかったの?」
「その理由はアルトラ様も知ってるんじゃないですか?」
「………………ああ……そういえば気温がめっちゃ高かったんだっけ……これらを集落に植えたとしても育つ前に枯れちゃってたのか。こう和な生活を送れてるとそんなことも忘れてきちゃうね」
集落と川では大体20kmくらいしか違わないけど、温度差がそんなにあったのか……もしくは、大地を冷やし、疑似太陽が出来た後に光合成が出来るようになったから、その後にたまたま成った作物かのどちらかかな。
「あ、そういえば見たことない人連れてますけど、そっちの人は誰なんですか?」
メイフィーにもレッドドラゴンであるということは伏せて出会った経緯を説明。
「へぇ~、火山地帯に住んでる亜人っていたんですね。私たちよりも熱に対する適応力が高いのかな?」
フレアハルトの方を見るとちょっとだけムッとした顔をしたけど、抑えてくれ。
「それで、ここは何をするところなのだ? 見たところ何も無いただっ広い丘のようだが……」
「ここは畑予定地よ。ここに種を撒いて、作物を育てようとしているの。今回キュウリとナスとトマト、あと枝豆が発見されたから、かなり種類が増えるね」
「野菜かぁ……我らの口には合わないだろうな……」
何だろうこの発言の違和感、この王子はなぜか自分が食べる前提で話をしてるように聞こえる。
「肉は育ててないのか?」
肉を育てるものだと思っているのだろうか? 私も屠畜しないで、畑から肉がそのままの形で収穫できるなら心が痛まないからそうしたいところだけど。
「フレハル、もしかして肉が育ったり、畑から肉が収穫できると思ってるわけじゃないよね?」
「何をバカな、そこまで知らないわけではないぞ? 『肉にする用の動物は飼っていないのか?』という意味で聞いたのだ」
ホッ……そりゃそうよね。
肉が出来る植物か……イメージすれば作れそうではあるけど……物凄く気持ち悪い気がする。
胃が成ってる木とか、心臓が成ってる木とか、腸が成ってる木とか……想像するにその光景は最早猟奇的ではないだろうか?
樹液も、血の滴るような樹液になりそうだ。
生物を殺害して木に吊るしてるような凄惨な光景になりそうなので、私はイメージすることを止めた。
「肉にする動物を育てたいと思うんだけど、この辺りには攻撃的な生物しかいないのよね。集落内で飼うってことになると大人しいのが最重要条件の一つだし」
「あの狼はどうなのだ? 美味かったぞ?」
「あれは比較的弱い部類の生物なんだけど気性が荒いから家畜にするのはちょっと厳しいかな。動きも速いし。あと場所を確保しなきゃいけない問題があるし」
そう、家畜を飼うには場所が要る。この集落の外壁を壊すか、もしくは、外壁の外に土地を拡大しなければならない。大がかりな改造が必要になってくる。それに灼熱の大地ではなくなったとは言え、まだ飼料となる草木もそれほど生えていない。
まあ、この辺りの問題は樹魔法である程度なんとかなりそうだけど……
「まだしばらく先になりそうかな」
「そうか……それは残念だな……」
いや、何であなたが残念がるの!?
まあ家畜は飼うことは出来ないけど、狩りをすれば肉もある程度食べることはできる。現状は家畜にしなければならないほど必要性が高いわけではない。
むしろやらなければいけないのは、調味料の取り揃えだ。
料理のさ・し・す・せ・そ、これが有るのと無いのでは食生活が大きく違ってくる。
現在、塩は手に入れた。砂糖は栽培段階で手に入りつつある。醤油と味噌はあの枝豆に似た植物の生育次第だ。残りは酢だけ。しかし、これはまず米を見つけないことには始まらない。あと、トマトが手に入ったからケチャップも作れそうだ。
以前の私なら飢餓状態を改善するために樹魔法で食べる物も作ろうと考えたが、村人全員の知性を引き上げたことによって、何もしなくても食べられる物を見つけ、生産してくれるようになった。
もう私が魔法で食べ物を作ろうなどと考えなくても良いだろう。ご飯やパンは恋しいけど、米や小麦などの主食が見つかるまで気長に待とう。
あとは料理の中でもかなりの重要度を誇る『牛乳』と『卵』。この二つもなるべく早く確保したい。
「……ル……トラ……、ア……トラ……、おいアルトラ!」
「はい!?」
「ボーっとして大丈夫か?」
しまった、大分自分の世界にダイブしていたみたいだ。
どうも食べ物のことになると自分の世界に入ってしまうみたいだ。
「次を案内していただけますか?」
「あ、はい」
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