建国のアルトラ ~魔界の天使 (?)の国造り奮闘譚~

ヒロノF

文字の大きさ
38 / 589
第2章 トロル集落の生活改善編

第37話 水着選び

しおりを挟む
 ゲートを通り川の流域に到着。
 みんなを集合させる。

「さて、今日は川底の捜索するわけだけど、みんな水中の捜索に適した服装は持って来た?」
「「「え?」」」
「え?」

 あれ? 持ってきてないのかな?

「まさか持ってきてないの?」
「言われませんでしたので……」
「というより僕はそれほど服を持ってません……」
「裸で水に入れば良いじゃないッスか!」
「バカ!」
「私はこのままの服装で水に入るのかと……」
「ええーー? そのままだとあとで寒くならない? じゃーん、私は持って来たよ! 今着てるのより少し露出度が高い服!」
「昨日そんなの準備しろなんて聞かされなかったけど……」
「みんな用意悪いなぁ……水の中の捜索なんだからそれなりの服だって考えなきゃ」

 しまった……昨日伝え忘れた……人間界にいる時の思考でいた……水中を捜索するんだから水に入るなりの格好が当然だと。
 それにまだ即席で水着用意できるほど物が豊富じゃないんだ。
 この中で対応できてたのはメイフィーとメリルだけだった。しかし、対応できてた二人ですら持って来たのは普段着と同じ素材の物凄く水を吸うやつ。ガルムの毛皮の毛を一定の長さに狩り揃えたもので出来てるものだから濡れたら多分かなり重い。縮んだりとかも心配だ。せめて毛を完全に刈ってあれば別かもしれないけど。

「残念だけど、その服だと重すぎて水中では使えないかな……」
「じゃあ、こんなのも用意したんですけど」
 メリルが出してきたのは葉っぱを編んで作られた水着だった。

「………………際どいね……」
「ダメですか?」
「ダメではないんだけどね……」
 まあ、本人が良いならありっちゃありなんだけど……所詮は葉っぱだから耐久度が心配だ。捜索してる最中にバラバラに分解する可能性は決して低くない。
 うーん……ここは私が用意するべきか。

「じゃあ私が水着を用意するから」

 とは言えどういうのが良いんだ?
 競技用? スク水? それとも普通にお店で売ってるオシャレなやつ?
 水着は何回かデザインしたことはあるけど、会社と家の往復しかしてなかった私には詳しくわからん。
 とりあえずいくつか作ってみて、その中から好きなものを選んでもらおう。

 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

「ふぅ……この中から選んでもらえるかな?」

 とりあえず用意した。
 私が知り得る限りの知識を総動員して用意した。
 レディース水着。
 まず上半身の水着。
 肩から釣るタイプ、首に巻き付けて後ろで縛るタイプ、首の前にクロスするタイプ、肩から釣るフリルのタイプ、お腹辺りまで隠れるタイプ。
 捜索のことを考えると、肩や首から釣っていた方が良いと思ってズレそうなチューブトップは除外した。

 で、下半身の水着。
 ビキニタイプ、ホットパンツタイプ、あとこれは要るかわからんけどTバックタイプ。
 あと全身水着。
 スク水、競泳用水着、ワンピースタイプ、レオタードタイプ、ウェットスーツ、あと顔だけ出るモヂモヂくんタイプ。
 名称? そんなの海に遊びにも行けなかった社畜の私に聞くな、知らん。

 次にメンズ水着。ブリーフタイプ、トランクスタイプ、ボクサーパンツタイプ、サーフパンツタイプ、ブーメランパンツ、ふんどし、ウェットスーツ。
 こんなもんか。男物は種類が少ないな。

「わぁ……これが水着というものなんですね~」
「私今まで服自体あまり着たことなかったから新鮮です!」
「男物って上は無いんスか?」
「男で上は要らないでしょ?」
「それって差別じゃないッスか?」

 魔界でまで人間界のようなこと言わないで……

「男が上要らないんなら女子も上無しにしないと!」

 魂胆はそっちか!!
 女子全員がナナトスを冷ややかな目で見ている……

「じょ、冗談ッスよ! あはは……」
「男物の中に直接穿けないものがあるのですが……あの白い布は何ですか?」
「一応用意してみただけだから選ばなくて良いよ。挑戦するんなら止めないけど、素人が着用しようとするときっとポロリするよ」

 イチトスは多分ふんどしのこと聞いてきたんだろうけど、私も付け方知らんし……
 知識を総動員した中に入ってただけだし。
 女子とナナトスがキャイキャイやっている間に、付いていけない人が二人。イチトスとルークだ。

「ぼ、僕はサーフパンツで良いかな」
 無難なやつね。

「では私はブーメランパンツで!」
 その筋肉からしてあなたはそれを選ぶと思ってたよ。ふんどしに興味ありそうにしてたけど、着け方もわからないし流石に諦めたか。
 土魔法で更衣室も作っておくか。

「更衣室を用意したから、水着決まったらあそこで着替えて。」

 至れり尽くせりだな、私!

 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

 全員着替えが終わった。
 胸のあるクリスティンはお腹まで隠れるタイプ、エルフィーレは首から巻き付けて縛るタイプ。
 私と胸の戦闘力がそれほど変わらないメイフィーとメリルは肩から釣るタイプ、ミリアンは肩から釣るフリルタイプ。
 少し背の高いリザはスタンダードなビキニだ。

「よし、全員選べたね!」
「まだですよ?」
「え?」

 参加者の方を見回す。全員水着着てるように見えるけど……

「誰か水着着てない人いる?」

 全員が顔を見合わせた後、私の方へ向かって指をさす。
 私の後ろ? 振り向くも誰もいない。

「誰もいないじゃない……」
「そうじゃなくてアルトラ様がまだ着替えてませんよ」
 メイフィーから意外な指摘が来た。自分が水着に着替えることなんて全く頭になかった。

「私!? 私はこのままで良いよ、どうせ水に入ったって濡れない服だし」
 私の着ている服は闇魔法で作られている魔力の塊だから水の中に入ったところで濡れることはない。
 汚れることすらないから夜寝る時以外は着替える必要が無いのだ。
 ちなみに寝る時は着ぐるみのようなパジャマ。

「ダメです! せっかくのこんな機会ですから!」
「いや、遊びに来てるんじゃないんだから……」
「一人だけ着ないは無しですよ! それに統一感無くて、私たちが気になりますから!」

 全員が無言で頷く。

「えぇ……マジで?」
 今までそんなの気にするような種族だったかなぁ……

「マジです!」
 結局着替えるハメに……
 強引に更衣室に連れていかれた。

「でも私が着られる水着は無いよ、サイズ的に」
 私が作った水着の中にこのちっちゃくて貧相な身体に合う水着は無い。
 着ない理由は十分! これは言い逃れできる!

「じゃあこれにしておきますか?」
 手に持って来たのはふんどし。
 ああ……確かにそれは体型を選ばないけど……そもそもそれは上が無いじゃないの。
 冗談で言ってるんだろうけど……私も冗談で用意したものがまさかこんなボケ方に使われるとは思わなかった。

「それは男物だよ! それに胸を隠すものが無いよ!」
「じゃあこんな方法どうでしょう、ふんどしこっちを胸に巻いて、下はアレにするとか」
 指さした先にあったのは……Tバック。

「いや、あれは流石に恥ずかしい……」
「えーー、自分で用意したものなのにぃー!」
 ごもっとも……半分ネタのようなものも作っちゃったしな……遊び気分だったのは私だったか……

「じゃあ、あと着られそうなのはアレですかね」
 残っていたスク水を指さした。
 確かにあれの小さいのならちょっとサイズ違ってても着れるけど……

「ホントに着替える必要あるかなぁ……」
 何とかはぐらかそうとするが――

「じゃあアレにしましょう! 決定!」

 結局この中でサイズが合うのはスク水くらいしかないということで、強引にそれに着替えさせられた……
 まさか27歳にもなってスク水着せられるとは思わんかった……用意しなきゃ良かったよ……
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

野生児少女の生存日記

花見酒
ファンタジー
とある村に住んでいた少女、とある鑑定式にて自身の適性が無属性だった事で危険な森に置き去りにされ、その森で生き延びた少女の物語

どうやらお前、死んだらしいぞ? ~変わり者令嬢は父親に報復する~

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「ビクティー・シークランドは、どうやら死んでしまったらしいぞ?」 「はぁ? 殿下、アンタついに頭沸いた?」  私は思わずそう言った。  だって仕方がないじゃない、普通にビックリしたんだから。  ***  私、ビクティー・シークランドは少し変わった令嬢だ。  お世辞にも淑女然としているとは言えず、男が好む政治事に興味を持ってる。  だから父からも煙たがられているのは自覚があった。  しかしある日、殺されそうになった事で彼女は決める。  「必ず仕返ししてやろう」って。  そんな令嬢の人望と理性に支えられた大勝負をご覧あれ。

【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革

うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。 優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。 家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。 主人公は、魔法・知識チートは持っていません。 加筆修正しました。 お手に取って頂けたら嬉しいです。

追放された聖女は旅をする

織人文
ファンタジー
聖女によって国の豊かさが守られる西方世界。 その中の一国、エーリカの聖女が「役立たず」として追放された。 国を出た聖女は、出身地である東方世界の国イーリスに向けて旅を始める――。

ひきこもり娘は前世の記憶を使って転生した世界で気ままな錬金術士として生きてきます!

966
ファンタジー
「錬金術士様だ!この村にも錬金術士様が来たぞ!」  最低ランク錬金術士エリセフィーナは錬金術士の学校、|王立錬金術学園《アカデミー》を卒業した次の日に最果ての村にある|工房《アトリエ》で一人生活することになる、Fランクという最低ランクで錬金術もまだまだ使えない、モンスター相手に戦闘もできないエリナは消えかけている前世の記憶を頼りに知り合いが一人もいない最果ての村で自分の夢『みんなを幸せにしたい』をかなえるために生活をはじめる。  この物語は、最果ての村『グリムホルン』に来てくれた若き錬金術士であるエリセフィーナを村人は一生懸命支えてサポートしていき、Fランクという最低ランクではあるものの、前世の記憶と|王立錬金術学園《アカデミー》で得た知識、離れて暮らす錬金術の師匠や村でできた新たな仲間たちと一緒に便利なアイテムを作ったり、モンスター盗伐の冒険などをしていく。 錬金術士エリセフィーナは日本からの転生者ではあるものの、記憶が消えかかっていることもあり錬金術や現代知識を使ってチート、無双するような物語ではなく、転生した世界で錬金術を使って1から成長し、仲間と冒険して成功したり、失敗したりしながらも楽しくスローライフをする話です。

愚かな者たちは国を滅ぼす【完結】

春の小径
ファンタジー
婚約破棄から始まる国の崩壊 『知らなかったから許される』なんて思わないでください。 それ自体、罪ですよ。 ⭐︎他社でも公開します

わたしにしか懐かない龍神の子供(?)を拾いました~可愛いんで育てたいと思います

あきた
ファンタジー
明治大正風味のファンタジー恋愛もの。 化物みたいな能力を持ったせいでいじめられていたキイロは、強引に知らない家へ嫁入りすることに。 所が嫁入り先は火事だし、なんか子供を拾ってしまうしで、友人宅へ一旦避難。 親もいなさそうだし子供は私が育てようかな、どうせすぐに離縁されるだろうし。 そう呑気に考えていたキイロ、ところが嫁ぎ先の夫はキイロが行方不明で発狂寸前。 実は夫になる『薄氷の君』と呼ばれる銀髪の軍人、やんごとなき御家柄のしかも軍でも出世頭。 おまけに超美形。その彼はキイロに夢中。どうやら過去になにかあったようなのだが。 そしてその彼は、怒ったらとんでもない存在になってしまって。 ※タイトルはそのうち変更するかもしれません※ ※お気に入り登録お願いします!※

処理中です...