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第2章 トロル集落の生活改善編
第29話 死者と生者を区別する門
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翌朝。
「「キャッキャ」」
子供の声で目が覚めた。
外に出てみると、子供数人と大人数人が来ている。
早速ゼロ距離ドアを使って、ケルベロスとコミュニケーションを取りに来ているみたいだ。
昨日は泣くほど恐がっていた子が、攻撃的じゃないのがわかったからか、もうすっかり懐いている。
案の定舐められてもいる。
「危なかった……」
昨日もし口内バクテリア殲滅作戦を「明日にしよう」なんて考えて後回しにしていたら、あそこに何人もの死体が転がっていたかもしれない……
「あ、アルトラ様おはようございます!」
「アルトラ様おはよう!」
「うん、おはよう。ケルベロスに懐かれるの早いね」
「昨日は恐がっていましたが、村に帰ったら気になってしまったみたいで、今日連れて行けとせがまれまして……」
グッバイ、私の穏やかな朝!
これからは色んな人がここを訪れるんだろうな。
散歩がてら来る人とかもいるかもしれない。
もしかしたら今後ケルベロスに餌を与える人も……何だかブクブク太っていくさまが想像できる。
「あ、一応釘を刺しておくけど、あの門の中には絶対に入らないようにね、命の保証は出来ないから」
「はい」
あ、そうだ村人を食べようとしたら、制止出来るようなシステムを作れば良いんだ。
これは私でも実験可能だから、首輪の形のものを作るか。
そうなると、システムに一人一人顔を覚えさせないといけないんだけど……写真のように対象を画像として残せるものを開発しないといけないという私の苦手とする機械の分野が出てきてしまう……
………………
いや、それよりも生者が地獄の門より先へ行けないような結界を作っておけば良いのか。
これなら魔法の分野だから機械よりは簡単に済みそうだ。
でも、死者だけ通れて、生者は通れない結界なんて創成魔法の範疇なのかしら?
物は試し、一応『死者だけ通れて、生者は通れない』のイメージで地獄の門の前に結界を張ってみた。
でも、ここでまたしてもあの問題が……
これ『死者は通れて、生者が通れない』って“誰が”実証するの?
万が一生者が通過できてしまった場合、戻って来て地獄の門から出ようとすればケルベロスの餌食になる可能性がある。
私自身で実験しようにも、多分私は死者の扱いだから問題無く通過できるはず。
そう思い、自分の身体で試してみる。
問題無く通過出来た。
門の外へ戻って来た時にケルベロスが私を食べようとする素振りを見せたが、私の顔を見て止めた。あ、顔を反らした。
私は問題無く通過できるようだ。散々死者だと思い知らされてるから、これはもう予想通りだ。
で、ここで新たな問題。
私は問題無く通れたけど、それは私が死者だから通れたのか、そもそも結界がちゃんと機能していなくて生者すら通れるようになっているのかが判断付かない。
ホントこの身体は実験向きじゃないな!
あ、そうだ、本人、もとい、本犬に通らせれば良いんだ!
ケルベロスは、多分生者サイドのはず。
「ケルベロス、ちょっとちょっと」
手招きして門の前に引き寄せる。
「あんた、ちょっとここ通ってみて」
「?」
門の先へ向かってケルベロスを進ませる。
途中でムギュという音を立てそうな感じで顔が少しだけ押し潰れた。
「ワゥ???」
何も見えないのにそれ以上先へ進めず、顔が押し潰れているにも関わらず、そのまま前進しようとしているが通過できない。
ケルベロスは通れないことに対して不思議そうにしている。
よし、成功ね! 生者が通れないことが証明できた。
これで後顧の憂いも無くなった!
と、思ったけど、亡者はちゃんと通れるのかしら?
そこで、また食材として狩ってあるガルムの死体の出番。ごめんね、後でスタッフ(私)が(以下略
結界へ向かってガルムの死体を投げ込んでみる。
「よっこら~~しょっと!」
ガルムの死体は結界を通過して門の向こう側に落ちた。
ちゃんと通過してるから死体は問題無く通れるみたいだ。
あとは、また地獄に亡者が歩いてくるのを待つか。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
今日は来なかったな……いつ来るかわからないし気長に待つか。
まあ今日のところは、生者が通れないって証明できただけでも良しとしよう。
翌日。
思惑通り亡者が来訪。
亡者の方一名様ごあんな~い!
さて、ちゃんと通過してくれるかな?
結界に近付くのを確認。これでもし弾き出されるようなら、ここは昨日ガルムの投げ込んだ通り、死体以外通れないことになる。
………………
問題無く通過して行った。
やった、これでホントのホントに後顧の憂いが無くなった。
猛毒の唾液問題は解決したし、地獄の門通過問題も解決できたから、ケルベロスはもうほぼ無害と言っても良いだろう。
それと同時に今日確定したことがある。今まで死んでいるのか生きているのか曖昧だったけど地獄の門を通過できた私は死者の扱いらしいということ。
それと言うのもスキル『疑似生者』って名前がややこしさに拍車をかけていると思う。
あとはこれを半永久的に維持するため、前に作ったゼロ距離ドア同様、魔道具として仕立てる。
地獄の門が立派なので、これの前に設置するのは心苦しい。
そのため、門から少し離れた門壁の前に、創成魔法で門柱を建て、『死者だけ通れて、生者は通れない』のイメージで結界を組み込む。
名前は『死生審判の門』とでもしておこうか。
これでトロルたち生者が間違ってここを通過してケルベロスに食べられる心配はしなくて良くなった。
「「キャッキャ」」
子供の声で目が覚めた。
外に出てみると、子供数人と大人数人が来ている。
早速ゼロ距離ドアを使って、ケルベロスとコミュニケーションを取りに来ているみたいだ。
昨日は泣くほど恐がっていた子が、攻撃的じゃないのがわかったからか、もうすっかり懐いている。
案の定舐められてもいる。
「危なかった……」
昨日もし口内バクテリア殲滅作戦を「明日にしよう」なんて考えて後回しにしていたら、あそこに何人もの死体が転がっていたかもしれない……
「あ、アルトラ様おはようございます!」
「アルトラ様おはよう!」
「うん、おはよう。ケルベロスに懐かれるの早いね」
「昨日は恐がっていましたが、村に帰ったら気になってしまったみたいで、今日連れて行けとせがまれまして……」
グッバイ、私の穏やかな朝!
これからは色んな人がここを訪れるんだろうな。
散歩がてら来る人とかもいるかもしれない。
もしかしたら今後ケルベロスに餌を与える人も……何だかブクブク太っていくさまが想像できる。
「あ、一応釘を刺しておくけど、あの門の中には絶対に入らないようにね、命の保証は出来ないから」
「はい」
あ、そうだ村人を食べようとしたら、制止出来るようなシステムを作れば良いんだ。
これは私でも実験可能だから、首輪の形のものを作るか。
そうなると、システムに一人一人顔を覚えさせないといけないんだけど……写真のように対象を画像として残せるものを開発しないといけないという私の苦手とする機械の分野が出てきてしまう……
………………
いや、それよりも生者が地獄の門より先へ行けないような結界を作っておけば良いのか。
これなら魔法の分野だから機械よりは簡単に済みそうだ。
でも、死者だけ通れて、生者は通れない結界なんて創成魔法の範疇なのかしら?
物は試し、一応『死者だけ通れて、生者は通れない』のイメージで地獄の門の前に結界を張ってみた。
でも、ここでまたしてもあの問題が……
これ『死者は通れて、生者が通れない』って“誰が”実証するの?
万が一生者が通過できてしまった場合、戻って来て地獄の門から出ようとすればケルベロスの餌食になる可能性がある。
私自身で実験しようにも、多分私は死者の扱いだから問題無く通過できるはず。
そう思い、自分の身体で試してみる。
問題無く通過出来た。
門の外へ戻って来た時にケルベロスが私を食べようとする素振りを見せたが、私の顔を見て止めた。あ、顔を反らした。
私は問題無く通過できるようだ。散々死者だと思い知らされてるから、これはもう予想通りだ。
で、ここで新たな問題。
私は問題無く通れたけど、それは私が死者だから通れたのか、そもそも結界がちゃんと機能していなくて生者すら通れるようになっているのかが判断付かない。
ホントこの身体は実験向きじゃないな!
あ、そうだ、本人、もとい、本犬に通らせれば良いんだ!
ケルベロスは、多分生者サイドのはず。
「ケルベロス、ちょっとちょっと」
手招きして門の前に引き寄せる。
「あんた、ちょっとここ通ってみて」
「?」
門の先へ向かってケルベロスを進ませる。
途中でムギュという音を立てそうな感じで顔が少しだけ押し潰れた。
「ワゥ???」
何も見えないのにそれ以上先へ進めず、顔が押し潰れているにも関わらず、そのまま前進しようとしているが通過できない。
ケルベロスは通れないことに対して不思議そうにしている。
よし、成功ね! 生者が通れないことが証明できた。
これで後顧の憂いも無くなった!
と、思ったけど、亡者はちゃんと通れるのかしら?
そこで、また食材として狩ってあるガルムの死体の出番。ごめんね、後でスタッフ(私)が(以下略
結界へ向かってガルムの死体を投げ込んでみる。
「よっこら~~しょっと!」
ガルムの死体は結界を通過して門の向こう側に落ちた。
ちゃんと通過してるから死体は問題無く通れるみたいだ。
あとは、また地獄に亡者が歩いてくるのを待つか。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
今日は来なかったな……いつ来るかわからないし気長に待つか。
まあ今日のところは、生者が通れないって証明できただけでも良しとしよう。
翌日。
思惑通り亡者が来訪。
亡者の方一名様ごあんな~い!
さて、ちゃんと通過してくれるかな?
結界に近付くのを確認。これでもし弾き出されるようなら、ここは昨日ガルムの投げ込んだ通り、死体以外通れないことになる。
………………
問題無く通過して行った。
やった、これでホントのホントに後顧の憂いが無くなった。
猛毒の唾液問題は解決したし、地獄の門通過問題も解決できたから、ケルベロスはもうほぼ無害と言っても良いだろう。
それと同時に今日確定したことがある。今まで死んでいるのか生きているのか曖昧だったけど地獄の門を通過できた私は死者の扱いらしいということ。
それと言うのもスキル『疑似生者』って名前がややこしさに拍車をかけていると思う。
あとはこれを半永久的に維持するため、前に作ったゼロ距離ドア同様、魔道具として仕立てる。
地獄の門が立派なので、これの前に設置するのは心苦しい。
そのため、門から少し離れた門壁の前に、創成魔法で門柱を建て、『死者だけ通れて、生者は通れない』のイメージで結界を組み込む。
名前は『死生審判の門』とでもしておこうか。
これでトロルたち生者が間違ってここを通過してケルベロスに食べられる心配はしなくて良くなった。
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