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第2章 トロル集落の生活改善編
第21話 突然の領主就任
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「みんなにご相談です!!」
リーヴァントが突然大声で話し出した。
「アルトラ様にこの村の領主になっていただくというのはどうでしょうか?」
なぬ!?
私!?
「ちょ、待っ……私は領主なんて――」
「おお~それは良い考えだ!」
「アルトラ様に領主になってもらえば何も心配無い! 何せ我々が頭良くなったのはアルトラ様のお蔭だ!」
「アルトラ様ステキです!」
「ちょ、いや、私は領主なんて――」
「「「アルトラ様! アルトラ様! アルトラ様! アルトラ様!」」」
突然領主に祀り上げられてしまった!
私の声は村一丸となった声にかき消される!
今まで係長くらいしかやったことないのに、突然の領主!? そんな重い仕事やれる自信などまるで無い。
それに、そんな重要なこと軽々に決めて良いんだろうか? 私は部外者も部外者、しかもついこの間まであなたたちの捕食の対象だった生物よ?
この村があまりに極貧に見えたからちょっと手助けしてやって、「あとは村人たちで自主的にリーダーを決めて、勝手に進歩していってくれ」、「私はその進歩していく様を外から傍観させてもらうよ」とでも思っていたくらいで……
まさか村の多くの者が、よそ者の私が領主になるのを賛成する構図になるとは……
ひとしきり騒いだ後、その声が止み、この場の全員の目が私に集まる。
シンとする静けさ。今しがた大声出してたとは思えない。
「………………」
でもまあ、ここで快適に暮らすと決めた以上、他の部分も快適でなければならないわけで、領主になって考えを通しやすくなるなら、それもありなのかもしれない。
「………………わかりました、領主を拝命します」
「「「おおぉ~~~」」」
「「「領主様! 領主様! 領主様! 領主様!」」」
この集落の人たち、盛り上がるの好きだな。
知性を上げる前はあまり覇気のある生活ではなかったように思うけど……
「さて、私は目的を果たしたので、今日はこれで帰ります」
「もうお帰りになるのですか? よろしければ食事でもいかがですか?」
リーヴァントに呼び止められる。
う~ん……まだまだ未発展だしなぁ……偏見かもしれないけど、食事はきっと……美味しくない。
それでも好意を向けてくれてるし……領主になったばかりだし、無下に断るのも悪いか。
「じゃあ、お言葉に甘えていただきます。それよりも……リーヴァント、あなたそんな見た目だったっけ?」
「知性が上がったことによって、恥をという感情が芽生えたので身だしなみを整えることを覚えました。何と言ってもリーダーに任命されましたので!」
ドヤ顔で話す。
最初に遭った時は恐いとしか感じなかったけど、スマートになってイケメン……とまではいかないけどそれでもハンサムガイになった。
まだ建築中の公会堂のような広間に通された。
振舞われた食事は、予想した通りガルムの肉でした。
まあ、そうでしょうね、私まだ食に関して何にもしてないしね。今日はただ水持って来ただけだし。
あ、でもちゃんと塩味効いてて美味しい。こっちはさっき干してあった干し肉かな? この土地かなり乾燥してるし、干し肉を作るには最適な環境ね。
何か食べたことない肉もある。
「この肉は? この辺りでは食べたことない肉みたいだけど……」
と言うか、私は魔界に来て、肉はガルムの肉しか食べたことがない。
「それはこの壁の外にいる、狼より強い魔物の肉です。狼の倍ほどの大きさで、『豚』と言う特徴的な鼻をしている生物です。元々ここから大分離れたところに生息しておりましたが、最近熱さが和らいだので、この辺りにも流入してくるようになりました」
もし地球の豚に似てるなら養豚出来るかも?
「以前は単身で挑んでいたので簡単には勝てなかったのですが、アルトラ様に覚醒させてもらってからは共同で狩りを行うという戦法を編み出したので、難なく狩ることができるようになりました」
連携するようになったってことか。
ここに来て知性引き上げたのがすぐに役立ったのかも。
我ながら凄い力だな、知性上昇の強化魔法。
「肉ばかりだから野菜と主食が欲しいわね」
「それは……この辺りにはありませんので、どうかご勘弁を……」
「あ、責めてるわけじゃないの、ごめんね」
「でも、この塩味美味しい。よく塩なんて手に入ったね」
その話を聞いていたのか、三人の男たちが突然やってきた。
「ハイ!! それは我々が頑張って作りました!!」
「サントスです!」
「ニートスです!!」
「そして私がイチトスです!!!」
満を持したように登場のトロル三兄弟。
多分『イチトス』が長男なんだろうな。
何と言うか……『サントス』ありきの名前な気がする……『イチトス』とか『ニートス』とか人間界で聞いたことないし。
他の人たちと比べると筋肉質だ。四日前はまだあんなに栄養失調気味だったのに、トロルの生態って凄いな。
「作ったってどうやって……?」
ハッ!
何か嫌な予感……
「ハイ!! 一生懸命汗を流しました!」
「掘っては汗を流し! 砕いては汗を流し、そして塩が完成しました!」
「ってことは……この塩味……トロルの汗……か?……」
うわぁっ……聞かない方が良かった……
私の顔がよほどしかめっ面に見えたのか、すかさずリーヴァントがフォローを入れてくれる。
「何か勘違いされているようですが、塩で出来た岩を砕いたものですよ?」
「塩で出来た岩? この世界にも岩塩があるの?」
ホッ……完全にトロルの汗と勘違いした……
ていうか、三兄弟、言葉が全然足りてないよ!
イチトスが塩について説明してくれた。
「少し遠出になりますが、塩の採れる場所があるのです。知性が低い頃には、ただ白い岩が多い場所としか思っておりませんでしたが、知性を得てからは食事に使えるかなと。知性を引き上げてもらった恩がありますので、次にアルトラ様がいらっしゃる時までに採りに行ってこようと思った次第です!」
「あ、ありがと……」
塩の製造が出来るなんて朗報ね!
今まではほとんど味のしない肉を食べてたから。
「さて、外も暗くなってきたしこの辺りでお暇させてもらうね」
「もうお帰りですか?」
「うん、ご飯ごちそうさま、美味しかったよ」
「それはそれは良うございました」
「私はケルベロスがいる地獄の門前広場に家を建てて住んでいますので、何かあれば呼びに来てください」
こう言っておけば、何か不都合があった時に連絡してくれるだろう。
まあ、ここからだと我が家まで歩いて何時間もかかかる道のりだけど……
「あ、最後に言っておかないといけないことがあります」
「何でしょうか?」
「今後は人間 (の亡者)を食べることを禁じます。地獄に送られるような人間なので、恐らく重罪人なのでしょうが、迷っているのを見つけたら食べずに地獄の門へ送ってあげてください。ここに来てすぐの人間はみんな表情が虚ろなので、多分抵抗されることも無いと思います。また、今後人間を食べた者には罰を与えます。集落のみんなに伝達しておいてください」
「わかりました」
これで私の溜飲が下がる。元々私が人間だった所為か、弱肉強食とは言え、彼らが人間を食べるという部分にはモヤモヤしていた。これでこの人たちに人間 (の亡者)が食べられることはなくなると思う。
さて、この村に必要だった水も確保出来たことだし、今後は彼らの生命が脅かされる可能性はぐっと減ると思う。
ここで生活する以上、彼らの生命を守ることに尽力しよう。
しかし、私はこの時にまだ気付いていなかった……
この後あんなことが起こることになるとは……
リーヴァントが突然大声で話し出した。
「アルトラ様にこの村の領主になっていただくというのはどうでしょうか?」
なぬ!?
私!?
「ちょ、待っ……私は領主なんて――」
「おお~それは良い考えだ!」
「アルトラ様に領主になってもらえば何も心配無い! 何せ我々が頭良くなったのはアルトラ様のお蔭だ!」
「アルトラ様ステキです!」
「ちょ、いや、私は領主なんて――」
「「「アルトラ様! アルトラ様! アルトラ様! アルトラ様!」」」
突然領主に祀り上げられてしまった!
私の声は村一丸となった声にかき消される!
今まで係長くらいしかやったことないのに、突然の領主!? そんな重い仕事やれる自信などまるで無い。
それに、そんな重要なこと軽々に決めて良いんだろうか? 私は部外者も部外者、しかもついこの間まであなたたちの捕食の対象だった生物よ?
この村があまりに極貧に見えたからちょっと手助けしてやって、「あとは村人たちで自主的にリーダーを決めて、勝手に進歩していってくれ」、「私はその進歩していく様を外から傍観させてもらうよ」とでも思っていたくらいで……
まさか村の多くの者が、よそ者の私が領主になるのを賛成する構図になるとは……
ひとしきり騒いだ後、その声が止み、この場の全員の目が私に集まる。
シンとする静けさ。今しがた大声出してたとは思えない。
「………………」
でもまあ、ここで快適に暮らすと決めた以上、他の部分も快適でなければならないわけで、領主になって考えを通しやすくなるなら、それもありなのかもしれない。
「………………わかりました、領主を拝命します」
「「「おおぉ~~~」」」
「「「領主様! 領主様! 領主様! 領主様!」」」
この集落の人たち、盛り上がるの好きだな。
知性を上げる前はあまり覇気のある生活ではなかったように思うけど……
「さて、私は目的を果たしたので、今日はこれで帰ります」
「もうお帰りになるのですか? よろしければ食事でもいかがですか?」
リーヴァントに呼び止められる。
う~ん……まだまだ未発展だしなぁ……偏見かもしれないけど、食事はきっと……美味しくない。
それでも好意を向けてくれてるし……領主になったばかりだし、無下に断るのも悪いか。
「じゃあ、お言葉に甘えていただきます。それよりも……リーヴァント、あなたそんな見た目だったっけ?」
「知性が上がったことによって、恥をという感情が芽生えたので身だしなみを整えることを覚えました。何と言ってもリーダーに任命されましたので!」
ドヤ顔で話す。
最初に遭った時は恐いとしか感じなかったけど、スマートになってイケメン……とまではいかないけどそれでもハンサムガイになった。
まだ建築中の公会堂のような広間に通された。
振舞われた食事は、予想した通りガルムの肉でした。
まあ、そうでしょうね、私まだ食に関して何にもしてないしね。今日はただ水持って来ただけだし。
あ、でもちゃんと塩味効いてて美味しい。こっちはさっき干してあった干し肉かな? この土地かなり乾燥してるし、干し肉を作るには最適な環境ね。
何か食べたことない肉もある。
「この肉は? この辺りでは食べたことない肉みたいだけど……」
と言うか、私は魔界に来て、肉はガルムの肉しか食べたことがない。
「それはこの壁の外にいる、狼より強い魔物の肉です。狼の倍ほどの大きさで、『豚』と言う特徴的な鼻をしている生物です。元々ここから大分離れたところに生息しておりましたが、最近熱さが和らいだので、この辺りにも流入してくるようになりました」
もし地球の豚に似てるなら養豚出来るかも?
「以前は単身で挑んでいたので簡単には勝てなかったのですが、アルトラ様に覚醒させてもらってからは共同で狩りを行うという戦法を編み出したので、難なく狩ることができるようになりました」
連携するようになったってことか。
ここに来て知性引き上げたのがすぐに役立ったのかも。
我ながら凄い力だな、知性上昇の強化魔法。
「肉ばかりだから野菜と主食が欲しいわね」
「それは……この辺りにはありませんので、どうかご勘弁を……」
「あ、責めてるわけじゃないの、ごめんね」
「でも、この塩味美味しい。よく塩なんて手に入ったね」
その話を聞いていたのか、三人の男たちが突然やってきた。
「ハイ!! それは我々が頑張って作りました!!」
「サントスです!」
「ニートスです!!」
「そして私がイチトスです!!!」
満を持したように登場のトロル三兄弟。
多分『イチトス』が長男なんだろうな。
何と言うか……『サントス』ありきの名前な気がする……『イチトス』とか『ニートス』とか人間界で聞いたことないし。
他の人たちと比べると筋肉質だ。四日前はまだあんなに栄養失調気味だったのに、トロルの生態って凄いな。
「作ったってどうやって……?」
ハッ!
何か嫌な予感……
「ハイ!! 一生懸命汗を流しました!」
「掘っては汗を流し! 砕いては汗を流し、そして塩が完成しました!」
「ってことは……この塩味……トロルの汗……か?……」
うわぁっ……聞かない方が良かった……
私の顔がよほどしかめっ面に見えたのか、すかさずリーヴァントがフォローを入れてくれる。
「何か勘違いされているようですが、塩で出来た岩を砕いたものですよ?」
「塩で出来た岩? この世界にも岩塩があるの?」
ホッ……完全にトロルの汗と勘違いした……
ていうか、三兄弟、言葉が全然足りてないよ!
イチトスが塩について説明してくれた。
「少し遠出になりますが、塩の採れる場所があるのです。知性が低い頃には、ただ白い岩が多い場所としか思っておりませんでしたが、知性を得てからは食事に使えるかなと。知性を引き上げてもらった恩がありますので、次にアルトラ様がいらっしゃる時までに採りに行ってこようと思った次第です!」
「あ、ありがと……」
塩の製造が出来るなんて朗報ね!
今まではほとんど味のしない肉を食べてたから。
「さて、外も暗くなってきたしこの辺りでお暇させてもらうね」
「もうお帰りですか?」
「うん、ご飯ごちそうさま、美味しかったよ」
「それはそれは良うございました」
「私はケルベロスがいる地獄の門前広場に家を建てて住んでいますので、何かあれば呼びに来てください」
こう言っておけば、何か不都合があった時に連絡してくれるだろう。
まあ、ここからだと我が家まで歩いて何時間もかかかる道のりだけど……
「あ、最後に言っておかないといけないことがあります」
「何でしょうか?」
「今後は人間 (の亡者)を食べることを禁じます。地獄に送られるような人間なので、恐らく重罪人なのでしょうが、迷っているのを見つけたら食べずに地獄の門へ送ってあげてください。ここに来てすぐの人間はみんな表情が虚ろなので、多分抵抗されることも無いと思います。また、今後人間を食べた者には罰を与えます。集落のみんなに伝達しておいてください」
「わかりました」
これで私の溜飲が下がる。元々私が人間だった所為か、弱肉強食とは言え、彼らが人間を食べるという部分にはモヤモヤしていた。これでこの人たちに人間 (の亡者)が食べられることはなくなると思う。
さて、この村に必要だった水も確保出来たことだし、今後は彼らの生命が脅かされる可能性はぐっと減ると思う。
ここで生活する以上、彼らの生命を守ることに尽力しよう。
しかし、私はこの時にまだ気付いていなかった……
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