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第1章 灼熱の火山地帯冷却編
第10話 コミュニケーションのためのトロル集落の視察
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今日は、先日中に十二時間歩いて見つけたトロルの集落へ行ってみようと思う。
今回は背中の羽を使って、飛んでいくことにする。
ここに来て六日が経つため、ある程度自由自在に飛ぶことができるようになってきた。それにどんな高度から落下したところで、痛くも痒くもないしね。
◇
一時間でトロルの集落上空に着いた。
この間行き帰りで二十四時間歩き続けたのは何だったんや!
上空からトロルたちの生活を覗き見る。
集落の中では、松明の明かりで集落内を照らしている。
「やっぱり炎の明かりだけじゃ暗いね……」
炎の赤い光が集落内を照らす。
自然光と違って、炎の光は強い光だから影も強くできる。松明周りやそこに近いところは良いが、そこから少し離れただけでほとんど見えなくなる。
地球で生活していた頃と比べて、見えないところが多いというのはかなり不便だ。電気が無い時代はよくこれに耐えられたなと昔の人を思うと改めて関心する。
そして、ここに生活するトロルは、というと。
人を食おうとするってところだけ考えると、もっと気性が荒く野蛮な種族かと思ってたけど、思っていたよりも普通の暮らしをしている。見る限りは殺伐としたところは無いように思う。トロル同士の諍いとかは無いのかな?
子供が駆け回ってるのは人間と大して変わらない。何だか微笑ましい光景だ。ただ、暗がりに行ってしまえば途端に見なくなる。これでは鬼ごっこは出来そうもない。逆にかくれんぼだと見つからなさ過ぎて行方不明扱いされてもおかしくない暗さだ。
家の外で焚火? というか料理してるのかもしれない。何人かのトロルが火を囲んで骨付きの肉を焼いてるのが見える。
あ、何か争いを始めた。さっきは諍いが無いのかと思ったけど、やっぱり食が足りないからこういう状況では小競り合いが起こるみたいだ。
少し見ていたけど、殺すまでは至らず、喧嘩した後に忘れたかのように全員どこかへ行ってしまった。食べ物の取り合いで喧嘩していたんじゃないのか?
あ、思い出したように小走りで肉を取りに来た。
やっぱりあまり知性が高いようには見えないなぁ……
四人で喧嘩してたけど、他の三人は来ないからアイツ総取り? と思ったら肉の一部分だけ引っぺがして持って行った。全部取らないのは優しさ?
喧嘩してたかと思えば、全部は持って行かない。
う~ん……生態がわけわからない……
「松明や焚火に使ってる木はどこから? 火はどうやって点けてるのかしら?」
私が襲われた時のトロルは木製の棍棒を持っていたし、どこかに木があるようだけど、周囲には見当たらない。
火種については、近くで松明が燃えているからそこから取ってるらしい。点ける方法については今回確認できなかった。
家は多分土で作られた簡素なもの。ここは雨が降らないから雨に耐えられるようには作られていないように見える。
ホントにな~んにも無い村、戦国時代の極貧の村を更に貧しくしたような感じだ。村民は恐らくその日暮らしなんだろう。
生物にとって一番重要な水は……
バケツや水瓶、水桶のような水が貯めてありそうなものは見当たらない。何かで膨らんだ皮の袋の口を縛ってあるものがあるから、恐らくあれが水なのではないかと思う。
水も木もどこかへ調達に行っているのかな?
川は近くには無さそうだから洗濯とかもしてないみたいだ。
「そういえばケルベロスの唾液ほどじゃないけど、アイツ臭かったな……」
唯一手違いで殺してしまったトロルを思い出す…… (第2話参照)
ごめんね。
心の中で再度冥福を祈る。
周辺に火山が沢山あるから、時折灰の雨が降る。灰を手で掴んで掃除しているやつがいる。
あれ? 一人消えた。
「あ! あそこの壁、穴が開いてる!!」
この間は素通りしたから気付かなかったけど、壁に一部穴が開いていて、外に出られるようになっている。
なるほど、あそこから出入りしてたのか。
あそこから外へ出て、水とか木とか食料とか手に入れてきてるのかな?
そう考えると、この囲われた壁って必要なんだろうか? 一部からしか出入りしないことを考えると、不便としか思えない。何か壁にしなければならない理由があるのだろうけど……
通路には狼もいたし、他にもどこかに穴があって、そこから侵入しているのかもしれない。暗くてよく見えないからかなり見落としてる気がする……
住民は……人間とは生態が違うのかもしれないが、あばら骨が浮かび、腹だけ太っていくという飢餓状態になった時に出る特徴が出ているように思う。栄養状態も良いようには見えない。
「『人間 (の亡者)を食べる』ってところには同意しかねるけど、彼らも結構大変な生活を送っているのね」
『衣食足りて礼を知る』って言葉があるけど。
まずは食か……
私なら食べ物を創成魔法で作り出すことが出来そうだけど、それでは意味が無い。彼ら自身に生産してもらわねば。何よりも毎食創成魔法で作っていたら、MPがいくらあっても足りない。
オルシンジテンによると、創成魔法で肉は作れるけど生命体として成り立たないから、肉という選択肢は排除かな。肉が子供産んで増えていってくれるならまた別の話になってくるけど……
となると作物ね。
とりあえず今日のところは上空からの視察だけにして、我が家へ戻ることにする。
今回は背中の羽を使って、飛んでいくことにする。
ここに来て六日が経つため、ある程度自由自在に飛ぶことができるようになってきた。それにどんな高度から落下したところで、痛くも痒くもないしね。
◇
一時間でトロルの集落上空に着いた。
この間行き帰りで二十四時間歩き続けたのは何だったんや!
上空からトロルたちの生活を覗き見る。
集落の中では、松明の明かりで集落内を照らしている。
「やっぱり炎の明かりだけじゃ暗いね……」
炎の赤い光が集落内を照らす。
自然光と違って、炎の光は強い光だから影も強くできる。松明周りやそこに近いところは良いが、そこから少し離れただけでほとんど見えなくなる。
地球で生活していた頃と比べて、見えないところが多いというのはかなり不便だ。電気が無い時代はよくこれに耐えられたなと昔の人を思うと改めて関心する。
そして、ここに生活するトロルは、というと。
人を食おうとするってところだけ考えると、もっと気性が荒く野蛮な種族かと思ってたけど、思っていたよりも普通の暮らしをしている。見る限りは殺伐としたところは無いように思う。トロル同士の諍いとかは無いのかな?
子供が駆け回ってるのは人間と大して変わらない。何だか微笑ましい光景だ。ただ、暗がりに行ってしまえば途端に見なくなる。これでは鬼ごっこは出来そうもない。逆にかくれんぼだと見つからなさ過ぎて行方不明扱いされてもおかしくない暗さだ。
家の外で焚火? というか料理してるのかもしれない。何人かのトロルが火を囲んで骨付きの肉を焼いてるのが見える。
あ、何か争いを始めた。さっきは諍いが無いのかと思ったけど、やっぱり食が足りないからこういう状況では小競り合いが起こるみたいだ。
少し見ていたけど、殺すまでは至らず、喧嘩した後に忘れたかのように全員どこかへ行ってしまった。食べ物の取り合いで喧嘩していたんじゃないのか?
あ、思い出したように小走りで肉を取りに来た。
やっぱりあまり知性が高いようには見えないなぁ……
四人で喧嘩してたけど、他の三人は来ないからアイツ総取り? と思ったら肉の一部分だけ引っぺがして持って行った。全部取らないのは優しさ?
喧嘩してたかと思えば、全部は持って行かない。
う~ん……生態がわけわからない……
「松明や焚火に使ってる木はどこから? 火はどうやって点けてるのかしら?」
私が襲われた時のトロルは木製の棍棒を持っていたし、どこかに木があるようだけど、周囲には見当たらない。
火種については、近くで松明が燃えているからそこから取ってるらしい。点ける方法については今回確認できなかった。
家は多分土で作られた簡素なもの。ここは雨が降らないから雨に耐えられるようには作られていないように見える。
ホントにな~んにも無い村、戦国時代の極貧の村を更に貧しくしたような感じだ。村民は恐らくその日暮らしなんだろう。
生物にとって一番重要な水は……
バケツや水瓶、水桶のような水が貯めてありそうなものは見当たらない。何かで膨らんだ皮の袋の口を縛ってあるものがあるから、恐らくあれが水なのではないかと思う。
水も木もどこかへ調達に行っているのかな?
川は近くには無さそうだから洗濯とかもしてないみたいだ。
「そういえばケルベロスの唾液ほどじゃないけど、アイツ臭かったな……」
唯一手違いで殺してしまったトロルを思い出す…… (第2話参照)
ごめんね。
心の中で再度冥福を祈る。
周辺に火山が沢山あるから、時折灰の雨が降る。灰を手で掴んで掃除しているやつがいる。
あれ? 一人消えた。
「あ! あそこの壁、穴が開いてる!!」
この間は素通りしたから気付かなかったけど、壁に一部穴が開いていて、外に出られるようになっている。
なるほど、あそこから出入りしてたのか。
あそこから外へ出て、水とか木とか食料とか手に入れてきてるのかな?
そう考えると、この囲われた壁って必要なんだろうか? 一部からしか出入りしないことを考えると、不便としか思えない。何か壁にしなければならない理由があるのだろうけど……
通路には狼もいたし、他にもどこかに穴があって、そこから侵入しているのかもしれない。暗くてよく見えないからかなり見落としてる気がする……
住民は……人間とは生態が違うのかもしれないが、あばら骨が浮かび、腹だけ太っていくという飢餓状態になった時に出る特徴が出ているように思う。栄養状態も良いようには見えない。
「『人間 (の亡者)を食べる』ってところには同意しかねるけど、彼らも結構大変な生活を送っているのね」
『衣食足りて礼を知る』って言葉があるけど。
まずは食か……
私なら食べ物を創成魔法で作り出すことが出来そうだけど、それでは意味が無い。彼ら自身に生産してもらわねば。何よりも毎食創成魔法で作っていたら、MPがいくらあっても足りない。
オルシンジテンによると、創成魔法で肉は作れるけど生命体として成り立たないから、肉という選択肢は排除かな。肉が子供産んで増えていってくれるならまた別の話になってくるけど……
となると作物ね。
とりあえず今日のところは上空からの視察だけにして、我が家へ戻ることにする。
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