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四章 この世界の正体
首相官邸は...
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官邸と公邸は一見したところ、破損箇所はなさそうだった。耐震構造がしっかりしていたことが大きいと思った。
「すごい...ガラスひとつ割れてない...」
瑞稀がガラス張りの壁面を見上げて言った。
「国交省、というより旧建築省自慢の建物だからな」
冬樹さんが応じた。
「発電設備が生きてたらいいですね」
「この分なら平気だろう。太陽電池は意外と頑丈だし、燃料電池もあると聞いたからな」
冬樹さんが僕の方を向いて答えた。
公邸一体を軽く見回した僕らは、この世界の真実を知るために官邸に向かった。
驚いたことに、官邸の玄関ホールには明かりがついていた。全員が歓喜の声を上げる。
「電気の光をこんなに懐かしく感じるなんて...」
感極まったように沙綾が言った。
「これで人間らしい生活が出来そうだな」
冬樹さんが当たりを見回し、
「それにしても、豪華な作りだな。大地震が来ても大丈夫そうだ。」
「さあ、ついてこい」と冬樹さんが指で僕らを呼び、階段を降りて地階へと向かった。
階段を下り、非常灯の点った廊下を進む。上質なカーペットのお陰で足音がほとんどしない。
冬樹さんが立ち止まったのは、「関係者以外立入禁止」と貼り紙がされたドアの前だった。
「この中に、この世界の真実がある。」
彼はドアを勢いよく打ち開く。
室内は真っ暗で、冬樹さんが壁のスイッチを入れると、白い蛍光灯の光が広がった。
そこは会議室のようなところで、細長い机が並べられていた。そして、奥には特大の液晶モニターが置かれていた。
「何だここは」
鰆さんが呟いた。
冬樹さんが机の上から冊子を取り、僕らの方に見せた。
「Incident-PX対策本部だ」
彼が示した冊子の表紙には、「Incident-PX対策マニュアル」と印字されていた。作成したのは内閣府らしい。
「なんですか...これ?」
僕は聞いた。
冬樹さんは沈痛な表情を浮かべた後、他の者たちを見回した。
「みなさんも、これを読んでください。机の上に並んでいるから。我々の大臣も読んだ資料だ。」
まず鰆さんが近づき、椅子を引いて腰を下ろした。そこに沙綾が続き、僕と瑞稀も席に着いた。
「全員、一旦目を通して見てくれ。後で説明する。」
よく見ると、僕は首相の席らしい。
小冊子のページを開いた。そこには一般的な高校生が理解できるようなものでは無い難解な言葉が並んでいた。意味を理解するためには、同じところを何度も読み返さなければ駄目だった。
やがて、8月の14日、午後14時丁度に何かが起きるということを政府の人間は理解しているということだけ理解できた。
「すごい...ガラスひとつ割れてない...」
瑞稀がガラス張りの壁面を見上げて言った。
「国交省、というより旧建築省自慢の建物だからな」
冬樹さんが応じた。
「発電設備が生きてたらいいですね」
「この分なら平気だろう。太陽電池は意外と頑丈だし、燃料電池もあると聞いたからな」
冬樹さんが僕の方を向いて答えた。
公邸一体を軽く見回した僕らは、この世界の真実を知るために官邸に向かった。
驚いたことに、官邸の玄関ホールには明かりがついていた。全員が歓喜の声を上げる。
「電気の光をこんなに懐かしく感じるなんて...」
感極まったように沙綾が言った。
「これで人間らしい生活が出来そうだな」
冬樹さんが当たりを見回し、
「それにしても、豪華な作りだな。大地震が来ても大丈夫そうだ。」
「さあ、ついてこい」と冬樹さんが指で僕らを呼び、階段を降りて地階へと向かった。
階段を下り、非常灯の点った廊下を進む。上質なカーペットのお陰で足音がほとんどしない。
冬樹さんが立ち止まったのは、「関係者以外立入禁止」と貼り紙がされたドアの前だった。
「この中に、この世界の真実がある。」
彼はドアを勢いよく打ち開く。
室内は真っ暗で、冬樹さんが壁のスイッチを入れると、白い蛍光灯の光が広がった。
そこは会議室のようなところで、細長い机が並べられていた。そして、奥には特大の液晶モニターが置かれていた。
「何だここは」
鰆さんが呟いた。
冬樹さんが机の上から冊子を取り、僕らの方に見せた。
「Incident-PX対策本部だ」
彼が示した冊子の表紙には、「Incident-PX対策マニュアル」と印字されていた。作成したのは内閣府らしい。
「なんですか...これ?」
僕は聞いた。
冬樹さんは沈痛な表情を浮かべた後、他の者たちを見回した。
「みなさんも、これを読んでください。机の上に並んでいるから。我々の大臣も読んだ資料だ。」
まず鰆さんが近づき、椅子を引いて腰を下ろした。そこに沙綾が続き、僕と瑞稀も席に着いた。
「全員、一旦目を通して見てくれ。後で説明する。」
よく見ると、僕は首相の席らしい。
小冊子のページを開いた。そこには一般的な高校生が理解できるようなものでは無い難解な言葉が並んでいた。意味を理解するためには、同じところを何度も読み返さなければ駄目だった。
やがて、8月の14日、午後14時丁度に何かが起きるということを政府の人間は理解しているということだけ理解できた。
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