9 / 26
一章 出会いと約束
豪雨の夜に
しおりを挟む
給湯室は、Theオフィスと言ったような、シンクにコンロにポットの至って普通のようなものだった。僕はポットの蓋を開け、中身の量を確認する。中には2人分+αくらいのカップ麺が出来そうなくらい入っていた。
「瑞稀、割り箸も持ってるよな?」
持っていると思うが、あえて僕は確認しておく。彼女はゴソゴソとカバンを漁り、割り箸を2本取りだして、
「もってる!」
と元気の良い返事が返ってきた。
「よし。では、今からカップ麺を作る!」
テンションがおかしいのは、かなりぶりの飯だからだ。
2人のカップにお湯を注ぎ、注ぎ終えるとカバンやらを持って、応接用テーブルのあった1階のエントランスに戻った。
そして、いい頃合を見計らって、カップ麺の蓋を開けて食べる。食べている時は、終始無言だった。
食べ終わっても、まだ時計は5時にも行っていなかった。
「とりあえず、先に寝る場所決めておこうか」
僕がそう言うと、瑞稀はきょろきょろと辺りを見渡して、
「ここがいいんじゃない?」
そう言って、大きめのソファが並べられているところを指さした。割と寝やすそうだった。
「まだ5時だが、明日のためにもう寝とくか?」
僕がそう問うと、
「いや、まだもうちょっと起きてる」
少し目を逸らしたまま、彼女はそう言った。それから、ソファに座る僕と、荷物を少し整理する瑞稀の間に、沈黙が走る。正直、この空気は嫌いなんだ。静かなのに、やけに重い、そんな空気が。
いったい、黙り込んでからどれくらい経っただろうか。荷物を片付け終えた彼女は、僕と正対するように座り、俯いている。僕は徐にスマホの電源を入れ、荒川さんからなにか来ていないかを確認する。見ると、個人チャットに
「わかりました。」
そう一言だけ返信が来ていた。時計を見るといつの間にか、5時を通り越して、6時になっていた。
僕がうとうとし始め、ソファに横たわろうとした時だった。目の前に座っていた瑞稀が唐突に立ち上がり、僕の横に座る。思いがけぬ事で、僕は目が覚めた。起き上がった僕の肩に彼女は頭を乗せて、とつとつと語り出した。
「私がいじめられてる時、君はずっと優しくしてくれた。いつも、いつも。君にいじめの飛び火が移ってもずっと。いつも優しくしてくれる君に、いつの間にか惹かれてたの。君のメンタルがギリギリになって、君が死のうと思うって言った時に思ったんだ。私って誠哉くんのことが好きなんじゃないかって。愛してる人を、失いたくないって。」
僕が呆気に取られていると、「はあ...」と軽くため息をついて、
「もし、無事に元の世界に戻れたら、ずっと一緒にいようね。」
そう、言った。これはれっきとした「愛の告白」である。もちろん、断る理由なんてないから
「よろしく。僕がしっかり君のことを元の世界に戻すからね」
そう言って、彼女を抱きしめた。彼女も、抱きついてきた。ここに、数奇な人生の一部を辿る異世界発祥カップルが誕生した。
「ところで、誠哉くん私のことどう思ってるの」
抱き合っている時、いきなり彼女がそう問うてきた。
「僕か~...実は、僕も君のこと、好きだったんだ。」
あははと、照れ隠しに笑う。抱きしめた彼女は、少し熱くなっていた。
「明日は、少し早く出るから、早く起きるぞ」
彼女は元の場所へ戻って、毛布を被っていた。いつの間にそんなもの手に入れたんだろうか。そんなことを疑問に思いつつ、もう寝そうな彼女に
「おやすみ。瑞稀」
そう一言かけて、僕は眠りに落ちた。
明日には、彼らの元へ行かねば。
「瑞稀、割り箸も持ってるよな?」
持っていると思うが、あえて僕は確認しておく。彼女はゴソゴソとカバンを漁り、割り箸を2本取りだして、
「もってる!」
と元気の良い返事が返ってきた。
「よし。では、今からカップ麺を作る!」
テンションがおかしいのは、かなりぶりの飯だからだ。
2人のカップにお湯を注ぎ、注ぎ終えるとカバンやらを持って、応接用テーブルのあった1階のエントランスに戻った。
そして、いい頃合を見計らって、カップ麺の蓋を開けて食べる。食べている時は、終始無言だった。
食べ終わっても、まだ時計は5時にも行っていなかった。
「とりあえず、先に寝る場所決めておこうか」
僕がそう言うと、瑞稀はきょろきょろと辺りを見渡して、
「ここがいいんじゃない?」
そう言って、大きめのソファが並べられているところを指さした。割と寝やすそうだった。
「まだ5時だが、明日のためにもう寝とくか?」
僕がそう問うと、
「いや、まだもうちょっと起きてる」
少し目を逸らしたまま、彼女はそう言った。それから、ソファに座る僕と、荷物を少し整理する瑞稀の間に、沈黙が走る。正直、この空気は嫌いなんだ。静かなのに、やけに重い、そんな空気が。
いったい、黙り込んでからどれくらい経っただろうか。荷物を片付け終えた彼女は、僕と正対するように座り、俯いている。僕は徐にスマホの電源を入れ、荒川さんからなにか来ていないかを確認する。見ると、個人チャットに
「わかりました。」
そう一言だけ返信が来ていた。時計を見るといつの間にか、5時を通り越して、6時になっていた。
僕がうとうとし始め、ソファに横たわろうとした時だった。目の前に座っていた瑞稀が唐突に立ち上がり、僕の横に座る。思いがけぬ事で、僕は目が覚めた。起き上がった僕の肩に彼女は頭を乗せて、とつとつと語り出した。
「私がいじめられてる時、君はずっと優しくしてくれた。いつも、いつも。君にいじめの飛び火が移ってもずっと。いつも優しくしてくれる君に、いつの間にか惹かれてたの。君のメンタルがギリギリになって、君が死のうと思うって言った時に思ったんだ。私って誠哉くんのことが好きなんじゃないかって。愛してる人を、失いたくないって。」
僕が呆気に取られていると、「はあ...」と軽くため息をついて、
「もし、無事に元の世界に戻れたら、ずっと一緒にいようね。」
そう、言った。これはれっきとした「愛の告白」である。もちろん、断る理由なんてないから
「よろしく。僕がしっかり君のことを元の世界に戻すからね」
そう言って、彼女を抱きしめた。彼女も、抱きついてきた。ここに、数奇な人生の一部を辿る異世界発祥カップルが誕生した。
「ところで、誠哉くん私のことどう思ってるの」
抱き合っている時、いきなり彼女がそう問うてきた。
「僕か~...実は、僕も君のこと、好きだったんだ。」
あははと、照れ隠しに笑う。抱きしめた彼女は、少し熱くなっていた。
「明日は、少し早く出るから、早く起きるぞ」
彼女は元の場所へ戻って、毛布を被っていた。いつの間にそんなもの手に入れたんだろうか。そんなことを疑問に思いつつ、もう寝そうな彼女に
「おやすみ。瑞稀」
そう一言かけて、僕は眠りに落ちた。
明日には、彼らの元へ行かねば。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
真夏の温泉物語
矢木羽研
青春
山奥の温泉にのんびり浸かっていた俺の前に現れた謎の少女は何者……?ちょっとエッチ(R15)で切ない、真夏の白昼夢。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
【R18】黒髪メガネのサラリーマンに監禁された話。
猫足02
恋愛
ある日、大学の帰り道に誘拐された美琴は、そのまま犯人のマンションに監禁されてしまう。
『ずっと君を見てたんだ。君だけを愛してる』
一度コンビニで見かけただけの、端正な顔立ちの男。一見犯罪とは無縁そうな彼は、狂っていた。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる