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▲お話△
僕の住むところ
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優真はベティとジャイールから様々なことを尋ねた。この世界のこと、村のこと、お金のことなど、思いつく限り尋ねた。その結果、もといた地球とはほぼ異なっていたことが判明した。簡単にまとめると、
・この世界はヘーゼリアと呼ばれていること
・人間以外に獣人やドワーフ、エルフ、精霊・妖精、魔人がいること
・魔法が存在すること
・魔物がたくさんいて身の周りには危険が多いこと
・村の住人は全員獣人であること
・この村ではものを得るとき、物物交換が基本だが、他の国では金貨や銀貨を使った硬貨による売買が行われているらしいこと
・精霊や神は信仰の対象になること
・身分制や奴隷、冒険者がいること
・かつて人族と獣人族が戦争を起こしていたこと
こんな感じになった。これじゃあまるでファンタジーの世界だ。
「色々ありがとうございました。何となく分かりました」
《なら良かった》
《それにしてもユーマ、その口調といい、その賢さといい……どこぞの貴族様か何かか?》
《ちょっとジャイール!》
ジャイールさんにはまだ僕が捨て子だと言ってない。まあ、これは仕方のないことだ。
「大丈夫ですよ。ペティさん」
『ユーマ、ジークスたちがこっちに来るよ』
何か話をしていたのだろうか。もしも僕がここにいられないことになれば、今後どうすればいいか考えないといけない……
《あっ、長様!》
《長、ユーマは……?》
《ん?ああ、小僧のことか。重役たちの許可も得た。問題無い》
ジークスの言葉にほっと安堵するペティとジャイール。
『良かったぁ』
すると、ジークスさんの後ろから男女様々な声が近づいてきた。
《長、皆を集めましたぞ》
《ああ、皆よく集まってくれた。今日から共に住むこととなった、ユーマだ》
僕の姿を見たのか周囲が騒めく。やはり、種族の偏見があるのだろうか。
《皆の言いたいことは分かる。ユーマは見ての通り人の子。戸惑うこともあるだろうが、よろしく頼む》
大分騒めきは収まったが、戸惑いの声は残っていた。
「ユ、ユーマです。今日からお世話になります……」
僕は頭を下げる。皆に出来ることは少ないかもしれないけど、信頼を得られるように頑張ろう。
《おっ、ガロスが戻って来たな》
獣の足音……ああ、あの時の。ガロスさんは人間を嫌っている。僕は仲良くなれるのだろうか。
《ガロス、今日から共に暮らすことになったユーマだ》
ガロスは遠目で優真を見つめる。
『すごく警戒してる……』
「よろしくお願い……します」
《……ふんっ》
ガロスはそのまま家に向かった。
『あ~、すごい嫌いよう……』
《すまないな、ユーマ》
「いえ、僕は大丈夫ですから」
いつもこれより酷かったし、これくらい何でもない。
《それで、長様。ユーマは誰の家に?》
村の住人はざわついた。やはり、子どもは負担になるのだろう。
《俺が連れてきたからな。俺の家の方がいいような気がするが……》
ペティ、ジャイール、ジークスはガロスの入った家の方を見る。
《……》
嫌がられる……だろうな。
「僕は、一人でも大丈夫ですよ」
《いや、そう言うわけにはいかない》
《んじゃあ、俺の家で預かろうか?》
ジャイールの言葉にペティが返す。
《でも、ジャイールの家って大家族じゃない》
《同世代の弟や妹たちがいるが別に一人増えても変わらねーよ。遊び相手にもなるし、こっちは全然問題ないぞ》
《では頼む。もしもの時は俺の所に。それから、ユーマの目のことは家族の皆にも言っておいた方が良いだろう》
しまった。まだジャイールさんには言っていない。
《目……?》
ジャイールは首をかしげる。
《まだ、お前たちには言っていなかったな》
《私はユーマ本人から聞きました》
《長様、ペティ。何のことだ?》
ペティはジークスを見る。ジークスは頷いた。
《実は、目が見えていないのよ》
《……ユーマが、か?》
《ああ、俺が目の前にいてもユーマは気づかなかったからな》
《普通に目が悪いとかではなく?》
《……ええ》
ペティが頷く。ジャイールはまだ信じ切れていないようだ。
《長もユーマも疑っているわけじゃないが……》
そう思うのも当たり前だろう。僕も、盲導犬や杖を持っていない目の不自由な人をすぐには健常者とはっきり見分けられないだろう。
《では、試してみるか》
と言うと、ジークスさんは僕を地面に立たせる。
「えっと……」
《大丈夫よ、ユーマ》
ペティがユーマを安心させる一方、ジークスはジャイールにどこからか持ってきた少し小さめの丸太を手渡した。
《ジャイール、これをどこかに置いてくれ》
《あ、ああ……じゃあここら辺か》
ジャイールはユーマより少し離れたところに置いた。ジークスはユーマと丸太の直線状に立った。
《ユーマ》
「は……はい」
《俺の声が聞こえる方に真っ直ぐ、歩いて来るんだ》
「はい……」
優真は戸惑いながらも歩き出した。デリーは見ているのかいないのか、全く反応が無い。
「(デリーが何も言ってくれなくなっただけで、ここまで不安になるなんて……)」
一方ずつ歩いてはいるが、真っ直ぐかどうかも分からない。
「あ、あの」
《大丈夫よ。そのまま、そのまま》
優真は止まっていた足を進めた。不安がまだ残っているのか段々と駆け足になる。案の定目の前にある丸太に気づかず、躓いてよろめく。
「!」
すぐに近くにいたジャイールが優真を腕で庇った。
《っと、マジだったのか》
優真は何が何だか分からない様子だったが、
「す、すみません!足に躓いてしまい……」
《いや、誰の足でもないな。ただの丸太だ》
「……え、丸太?」
ジークスは優真が躓いた丸太を持って来て優真に触らせる。丸太からは樹皮の感覚やほのかに香る木の匂いがしていた。
「丸太、ですね」
『これで、認められそうだね』
「(デリー、戻って来た……のかな)」
優真は安堵した。一方、ジャイールは俯きながらしかめた顔をし、ジークスと顔を合わせ、頷いた。
《皆もこれで分かったであろう》
その場にいた誰も疑う者はもういなかった。
《ジャイール。ユーマを頼む》
《ああ!》
「よ、よろしくお願いします」
△▲△▲△
あけおめです(*´ω`*)
・この世界はヘーゼリアと呼ばれていること
・人間以外に獣人やドワーフ、エルフ、精霊・妖精、魔人がいること
・魔法が存在すること
・魔物がたくさんいて身の周りには危険が多いこと
・村の住人は全員獣人であること
・この村ではものを得るとき、物物交換が基本だが、他の国では金貨や銀貨を使った硬貨による売買が行われているらしいこと
・精霊や神は信仰の対象になること
・身分制や奴隷、冒険者がいること
・かつて人族と獣人族が戦争を起こしていたこと
こんな感じになった。これじゃあまるでファンタジーの世界だ。
「色々ありがとうございました。何となく分かりました」
《なら良かった》
《それにしてもユーマ、その口調といい、その賢さといい……どこぞの貴族様か何かか?》
《ちょっとジャイール!》
ジャイールさんにはまだ僕が捨て子だと言ってない。まあ、これは仕方のないことだ。
「大丈夫ですよ。ペティさん」
『ユーマ、ジークスたちがこっちに来るよ』
何か話をしていたのだろうか。もしも僕がここにいられないことになれば、今後どうすればいいか考えないといけない……
《あっ、長様!》
《長、ユーマは……?》
《ん?ああ、小僧のことか。重役たちの許可も得た。問題無い》
ジークスの言葉にほっと安堵するペティとジャイール。
『良かったぁ』
すると、ジークスさんの後ろから男女様々な声が近づいてきた。
《長、皆を集めましたぞ》
《ああ、皆よく集まってくれた。今日から共に住むこととなった、ユーマだ》
僕の姿を見たのか周囲が騒めく。やはり、種族の偏見があるのだろうか。
《皆の言いたいことは分かる。ユーマは見ての通り人の子。戸惑うこともあるだろうが、よろしく頼む》
大分騒めきは収まったが、戸惑いの声は残っていた。
「ユ、ユーマです。今日からお世話になります……」
僕は頭を下げる。皆に出来ることは少ないかもしれないけど、信頼を得られるように頑張ろう。
《おっ、ガロスが戻って来たな》
獣の足音……ああ、あの時の。ガロスさんは人間を嫌っている。僕は仲良くなれるのだろうか。
《ガロス、今日から共に暮らすことになったユーマだ》
ガロスは遠目で優真を見つめる。
『すごく警戒してる……』
「よろしくお願い……します」
《……ふんっ》
ガロスはそのまま家に向かった。
『あ~、すごい嫌いよう……』
《すまないな、ユーマ》
「いえ、僕は大丈夫ですから」
いつもこれより酷かったし、これくらい何でもない。
《それで、長様。ユーマは誰の家に?》
村の住人はざわついた。やはり、子どもは負担になるのだろう。
《俺が連れてきたからな。俺の家の方がいいような気がするが……》
ペティ、ジャイール、ジークスはガロスの入った家の方を見る。
《……》
嫌がられる……だろうな。
「僕は、一人でも大丈夫ですよ」
《いや、そう言うわけにはいかない》
《んじゃあ、俺の家で預かろうか?》
ジャイールの言葉にペティが返す。
《でも、ジャイールの家って大家族じゃない》
《同世代の弟や妹たちがいるが別に一人増えても変わらねーよ。遊び相手にもなるし、こっちは全然問題ないぞ》
《では頼む。もしもの時は俺の所に。それから、ユーマの目のことは家族の皆にも言っておいた方が良いだろう》
しまった。まだジャイールさんには言っていない。
《目……?》
ジャイールは首をかしげる。
《まだ、お前たちには言っていなかったな》
《私はユーマ本人から聞きました》
《長様、ペティ。何のことだ?》
ペティはジークスを見る。ジークスは頷いた。
《実は、目が見えていないのよ》
《……ユーマが、か?》
《ああ、俺が目の前にいてもユーマは気づかなかったからな》
《普通に目が悪いとかではなく?》
《……ええ》
ペティが頷く。ジャイールはまだ信じ切れていないようだ。
《長もユーマも疑っているわけじゃないが……》
そう思うのも当たり前だろう。僕も、盲導犬や杖を持っていない目の不自由な人をすぐには健常者とはっきり見分けられないだろう。
《では、試してみるか》
と言うと、ジークスさんは僕を地面に立たせる。
「えっと……」
《大丈夫よ、ユーマ》
ペティがユーマを安心させる一方、ジークスはジャイールにどこからか持ってきた少し小さめの丸太を手渡した。
《ジャイール、これをどこかに置いてくれ》
《あ、ああ……じゃあここら辺か》
ジャイールはユーマより少し離れたところに置いた。ジークスはユーマと丸太の直線状に立った。
《ユーマ》
「は……はい」
《俺の声が聞こえる方に真っ直ぐ、歩いて来るんだ》
「はい……」
優真は戸惑いながらも歩き出した。デリーは見ているのかいないのか、全く反応が無い。
「(デリーが何も言ってくれなくなっただけで、ここまで不安になるなんて……)」
一方ずつ歩いてはいるが、真っ直ぐかどうかも分からない。
「あ、あの」
《大丈夫よ。そのまま、そのまま》
優真は止まっていた足を進めた。不安がまだ残っているのか段々と駆け足になる。案の定目の前にある丸太に気づかず、躓いてよろめく。
「!」
すぐに近くにいたジャイールが優真を腕で庇った。
《っと、マジだったのか》
優真は何が何だか分からない様子だったが、
「す、すみません!足に躓いてしまい……」
《いや、誰の足でもないな。ただの丸太だ》
「……え、丸太?」
ジークスは優真が躓いた丸太を持って来て優真に触らせる。丸太からは樹皮の感覚やほのかに香る木の匂いがしていた。
「丸太、ですね」
『これで、認められそうだね』
「(デリー、戻って来た……のかな)」
優真は安堵した。一方、ジャイールは俯きながらしかめた顔をし、ジークスと顔を合わせ、頷いた。
《皆もこれで分かったであろう》
その場にいた誰も疑う者はもういなかった。
《ジャイール。ユーマを頼む》
《ああ!》
「よ、よろしくお願いします」
△▲△▲△
あけおめです(*´ω`*)
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