異世界に来ちゃったよ!?

いがむり

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第3章

(57)インクレメントム①

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「スフィンクさん達、良くなるといいな……」

さっきまでの慌ただしい出来事も一区切りついてソフィア達は門のところまで戻ってきた。エリックさんは「職務があるから」って凄く悲しそうな顔で王城へ戻っちゃったの。ダグラスさんもギルド職員さんに呼ばれて寂しそうな顔で行っちゃった。

「おっ、やっと戻ってきたな。待ちくたびれたぞ?」

手を振ってやってきたのはレイブンさん。その後ろには4人の冒険者さん達。

「お久しぶりです!レイブンさん。それから皆さん初めまして、ソフィアです。今日はよろしくお願いします」

私はぺこりと頭を下げる。すると、後ろにいた2人の女性冒険者さんにレイブンさん引っ張られちゃった。もう作戦会議かな?

 

 

 

「痛てててっ!何だ?」

「何だじゃないわよ!アーノルド、あんたソフィア様と知り合いなの!?」

ツインテールの女性冒険者、ネイリスがぐっと顔を近づけて問いただす。

「ま、まあな」

「それ先に言いなさいよ!」

上品そうな女性冒険者、レジーヌも腕を組んで言う。

「何で言う必要があるんだ?」

「コネだろ?コネ」

大剣を持った男性冒険者のナギトは揚げ足を取る。

「「違うわよ」」

「僕も怪しいと思ってたんだ。アーノルドが珍しくこういう試験を受けるとか、何かあるだろうと思って一緒に受けてみたが……なるほど」

ローブ姿の男性冒険者、ミシェルもなぜだか納得している様子。

「まあいいじゃねえか!もし受かれば、世界を回れるんだぞ?それに各地の旨いもんだってあるし、珍しい武器だってわんさか……」

ミシェルとナギトはアーノルドの肩にそれぞれ手を置く。

「隠さなくてもいいよ。知り合いなんでしょう?」

「誰もリーダーを責めてないだろ」

「ほら、行くわよリーダー」

「置いてくわよー」

すでにネイリスとレジーヌがソフィアの元に戻ろうとしていた。

「おい、一体何だったんだよ~?」

男性陣は後を追いかけた。このパーティ「インクレメントム」は、ほとんどパーティ全体で依頼を受けることはない。1人または2人で行動することの方が多い。何故か?それは1人で受けたとしても“完璧に”依頼をこなしてくるからである。そう、このパーティ全体が他のパーティと格段に強さが違うのだ。

そしてもう1つ、彼らが驚いた理由。それは、彼らもまたソフィアの圧倒的な魔力の多さに気づいたからである。そして、ソフィアが攫われた例の一件は、当初世間からフェアリーデイが誘拐されたのではないかと噂が広まっていたが、国から“ソフィアではなく、ハンネという少女が被害に遭った”と発表した。しかし、パーティそれぞれが違和感を持ち、調べた結果ソフィア自身が攫われていたことにまで辿り着いた。そのこともあって、ソフィアへの信仰心と不憫さから守ってやりたいというところに発展し現在に至っている。

 

 

 

「今度はこっちが待たせたな、ソフィア」

レイブンさんが戻って来たよ。

「作戦会議?」

「う~ん、俺にもさっぱり」

「あれ?そうなんだ」

「ソフィア様、初めまして。今日はよろしくお願いいたします」

全員がソフィアに頭を下げる。ソフィアは慌てて、

「あ、頭を上げてください!そんな、私はただ守られるだけですから。こちらこそよろしくお願いします」

「ソフィア様、皆様。準備が整いました」

リーリエさんが戻って来たよ。

「スフィンクさん達大丈夫ですか?」

「はい。ソフィア様のお陰で全員が回復しました。こちらからもお礼を申し上げます」

「い、いいですよぅ!全然!はい!」

何とかリーリエさんが頭を上げてくれたところで、

「では、今回皆さんには午前中同様、ブラックパンサーを10体討伐していただきます。期限は夕刻までです」

「皆様のお食事も用意しております。試験中ではありますが、どうぞ」

ベラさんが大きなかごを持ってきたよ。

「え、いいんですか」

大剣を持った冒険者さんが質問する。

「皆様なら簡単でしょう。ですから」

「「「「「ありがとうございます!」」」」」

レイブンさん達嬉しそう。

 

 

 

またまたベラさんが馬車を先導するみたいで、馬が動き出したところで私はリーリエさんに手を振る。

「いってきまーす!」

門の所でリーリエさんが手を振ってる。見えなくなったところで元に戻る。

「そう言えば、自己紹介がまだだったわね」

ツインテールの女性の冒険者さんが私の前に来る。

「私はネイリス。ネイリス・ハーギナス。基本的に近接タイプね。武器は細身だけど剣、あと投擲かしら」

武器まで教えてくれるんだ。使う武器は一つとは限らないんだね。

「今度は私ね」

上品そうな女性冒険者が少し前に出る。

「私はレジーヌ・ティリエ。弓矢を使う遠距離戦闘が基本。だからと言って近接戦が出来ないわけではないわよ?」

「次は俺か。ナギト。ナギト・ゲオルク。戦い方は、このデカい剣をぶん回すだけだな!」

「大雑把すぎ。この大剣とっても重くて、僕たちの誰も持てないんだよ。でもナギトはこんな小さいのに軽々と持って使っているんだ」

隣にいたローブ姿の冒険者さんが説明してくれた。

「ああ、紹介がまだだったね」

冒険者さんがフードを取る。すると、犬みたいなたれ耳が!

「僕はミシェル・ルーセ。この通り、犬の獣人族だよ。戦闘は魔法を使うよ」

「あ、俺は……」

「「「「あんたはいい!」」」」

「……はい」

レイブンさん自己紹介出来なかったね。

「あはは……あ、皆さんありがとうございます。えっと、私はソフィアです。私も魔法を使います」

「っていうか、ソフィア」

ナギトさんが私を呼ぶと、ベラさんがナギトさんに視線を送ってたような気がしたけど……

「俺たちに敬語は……なあ?」

「そうね。私達も基本使わないし、いらないわ」

「そーよ!」

「でも、私皆さんよりずっと年下ですし」

「そういうの全然気にしないよ」

「そーだぞ?ソフィア」

レイブンさんがそういうなら、いいかな……

「わか……うん」

「「可愛い~‼」」

ネイリスさんとレジーヌさんは私の隣に来て両側から抱きつかれる。さっきの雰囲気とは違って結構ゆるゆるなんだけど、それが安心するかも。

 

 

 

しばらくして、ベラさんが馬車を止めたの。

「やっと現れたな」

レイブンがそう言うと、ナギトがニヤッと笑う。

「敵は3体。俺が行く!」

「あ、ずるい!」

レジーヌさんが文句を言う間に出て行っちゃった。

「こんなの肩慣らしにもなんねーよ!」

様子は見えないけど、そう言った途端に魔物の気配が無くなったの。

「もう倒したの⁉」

「あら?見ないで分かっちゃったの?」

「凄いね。魔物の気配が分かるなんて」

え、見透かされてる!

「((この人たち本当にベテラン冒険者だね))」

『((ええ。恐らく私達のことも気づいてるんじゃないかしら))』

『((そうね……今は隠れてるけど、よく視線が合うもの。今までの人間の中で数えるほど末恐ろしいわ))』

ひぇぇ……


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