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友人のありがたみって
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お昼休みに入り話の続きを今か今かと待っていた鈴奈は、号令後素早く壮馬の席に移動する。
目の前に現れた鈴奈に壮馬は瞠目しつつも、鈴奈にお昼を一緒にするかと尋ね、隣の席が昼食は学食でとるからとその席を勧める。
「それで、休暇についてだったよね。キャメロン家の次男と婚約したことは耳にしたけど、それは事実かい」
「その通りよ。誰かに聴いたの?」
校門前にむかえにきてもらったのが噂になっているなら恥ずかしいことこの上ない。
鈴奈は祖父母に持たしてもらった弁当箱の蓋を開き、壮馬は紙袋からアルミに包まれたサンドイッチを取り出す手を止めた。
壮馬はなぜそんな質問をされるのか壮馬は分からなそうな困惑を一瞬で消し、一滴の疑問より知りたい質問を優先する。
「ニュース。で、本当なのか」
「婚約は多分してないと思うよ。」
「そうなんだ。」
「婚約は知らないけど。少し前から付き合うことになったの。」
ガタッ ガンッ!
椅子か机が倒れる音が複数近くから鳴り、鈴奈が音の発生源に振り返ろうと身体を傾けると壮馬の片手に阻止された。壮馬の目を見ると泳ぎ右往左往しているが、必死に注意をひこうとしてるのか言葉を矢継ぎ早に発する。
「そっかぁ、そうなんだ。うん、うん、おめでとう。素晴らしいことだね。鈴奈、後ろはダメ。向かないであげて。」
「ん?ありがとう」
「聴いてほしい話ってもしや、その惚気かな?」
「へへ、…実は、」
「ok任せとけ、ききましょうとも」
「『聴く』じゃくて『聞く』?」
「よく違いに気付いたね」
「正解なんかい!」
壮馬くんは宣言とは違い、休み時間を跨ぎしっかりと最後まで『聴』いてくれた。
「つまり、第二の彼氏を持たず、今後もラファエルさん一筋の予定ってこと?」
「そうなの。その方がいいって言ってくれたの。それが嬉しくてね。もちろんラファエルさんの彼女は私だけよ。」
「ああ、キャメロンさんの反応は当然というか、当たり前なんだけどさ。そうかぁ、たぶんだけどあんまりこの話は、ご家族と僕以外に言わない方がいいと思うよ。危ないから。」
「危ない?」
「そう、危ない。渡邊家の意向が分からないからなぁ。鈴奈、護衛に話しかけてもいい?」
「私の許可なんていらないよ。ニックさん、ちょっと来てくれる?」
ニックさんは壮馬くんと二言三言交わした後、どこかに電話を入れ、通話後壮馬くんに一言「大丈夫です」と答えた。
「そうかぁ、いいんだぁ。渡邊家と立花家、あとキャメロン家もだからかな……。凄い人達だね。」
「壮馬くんは何を心配しているの?」
彼が何を危険だと言い、何を警戒して助言してくれているのか検討もつかないうちに、壮馬くんは勝手に納得している。なんで分からないのって困った子を見る目を向けられても困る。本気で分かりません。
鈴奈は片掌を頬に当て首を傾げる。祖母直伝、存じませんの教えてくださるポーズ。祖母の前で両掌を方と同じ高さで上向きにして分からないと言うと品がないから祖母の技を使うのを勧められた。鈴奈はここぞとばかりに技を炸裂させた。
「世の一般女性が複数人と結婚したり、交際する理由の1つに、保護してもらう目的があるんだ。わざわざ学校で教えられることじゃないから知らないんだろうね。君の母さんは父さんだけを夫にして彼氏も据えなかったって以前話してたよね。それなら尚更知らなくて当然さ。」
この話どかで聞いたことがあるような………………これ系は大体界人お兄ちゃんが………、知ってた。界人お兄ちゃんがパーティーから帰った日によく聞かされてたはずなのに、話半分で聞き流していたからすっかり忘れていた。近藤さん(執事)の奥様との話でも、奥様には他に相手がいるって言われてたのに、……つくづく自分に嫌気がさすよ。
反応がかえってこないことを不思議に思った壮馬は知らないなら知れば大丈夫だよと繰り返した。鈴奈はやっと壮馬の言葉に肯首する。
「とにかく、君のお祖父様やお父様級に財も権力もある人は稀なんだ。女の子のいる家庭には国が資金的援助してくれるけど、それはあくまで援助であって完全に危険を取り除けはしないんだ。
例えば、僕らが生まれる少し前に起きた事件。実家で眠っていた女性が、不法侵入者に暴漢されたのち絞殺された。他にも、男が移動中の車の前に飛び出し、車を止めさせ、乗車してる女性を殺害。公園で散歩中の女性を刺殺。誘拐された女性の話は後を絶たないよね。」
「私共がおりますから鈴奈様にそのような機会は後にも先にも連れません。」
「さすがだと思います。鈴奈にはいらぬ心配だったわけか。」
家から一歩も出ずに15歳まで過ごしたのに、そんなことすっかり忘れてた。なんで引きこもってるのか原因を忘れて、10歳を超えたあたりからニート生活を楽しんでたもんなぁ。
壮馬くんが上げた一例はお母さんのことだった。あの頃おじいちゃんたちに会ってなかったとはいえ、きっとお母さんの保護におじいちゃんたちも関わっていただろう。
渡邊家と立花家の2家では守りきれなかったってこと。私危険なのでは?この状況下でかつ現在進行形でストーカー被害を受けてるおばあちゃんはもっと危険なのでは?
「私学校に居ちゃダメなんじゃ...」
ガタッガタッガタッガタッ
「施設の安全対策には、渡邊と立花両家が世界一の厳しい目を持って確認済みらしいよ。学校にいる方が家にいるときより安全かもね。」
「この変なシステムお父さんたちのせいだったの?」
「変ww」
「監獄みたいだと思うでしょ。息苦しいことこの上ないもの。変よ。それ以上ではあれど以下はない。最悪。学校利用者すべての人に土下座したい気分。」
「土下座って?」
「頭を床につけて自分の精神的あらゆるものを底辺に落とす最高礼の謝罪だよ。」
ガタッガタッガタッガタッ
「まさかしないよね?」
「しないわよ。される側が困るでしょ。」
「するように求められても絶対にしちゃだめだ!鈴奈は女の子なんだから女の子の自覚を持って。もっと持って。男娼がするような行為だよ、それ。」
「土下座が?」
「ドゲザは知らないけど、似た行為にそういうのがあるんだよ。覚えなくていいからドゲザ禁止!」
知らなくていいことを壮馬くんは何故知ってるのか気になるんだけども、聞くのは野暮かな。
壮馬は目を見開き、血管が浮かび上がり、彼の言葉に鈴奈が承諾しなきゃ今にも死にそうな表相だ。
「なら謝るときはどうするの?」
「ごめんの一言で十分なんじゃないかな。僕の知る一般女性ならね。でも、君は納得しないんだろうね。なら両手を合わせたり、頭を少し下げればいいんじゃない?床は汚いからダメ。」
「わかったって」
「そもそも女性が謝るなんて聞いたことないから必要ないと思うよ。本当に、口で『ごめん』て言うだけで十分だと思うんだけどな。周りの精神的にもそれが限度だよ。」
なるほど、謝罪一つにもジェネレーションギャップ(?)が
「何の話をしていたんだっけ?謝罪云々って事じゃなかったよね。」
「キャメロン家の次男と相思相愛って話」
ガンッガンッガンッ
「さっきから変な音が」
他者を気にしない方の鈴奈でも、さすがに口を開く度に大きな音がするんじゃ無視は難しい。
「気にしちゃだめだ。横は見ないで絶対に。可哀そうな生き物たちが、自身の誤った選択によって起きてしまった現実を唐突に突きつけられておかしくなってるんだ。鈴奈はただ見ず聞かず興味を持たないであげればいい。それが僕らのためだ。」
気にしないにも限度がある。その上で、そうしないといけないだなんて。人生初かも。成長とは道を知ること。これも経験だと思うしかないか。
「壮馬くんも選択を間違えたの?」
「僕今『僕ら』って言った?『彼ら』の間違い。」
「そう……。壮馬くんが何か失敗する姿なんて思い浮かばないし、そうよね。」
「いや失敗はするよ。...犬神に勉強を叩き込むのに僕一人じゃ無理だったでしょ?」
「そうだったね。新学期早々にあった試験は大丈夫だったのかな、犬神くん」
「あ~,忘れてた。」
「ふふ、忘れてたの?」
「四六時中あいつの面倒を見てるわけじゃないからさ。健介の父さんに頼まれたけど、さすがに無理。」
壮馬くんと犬神健介くんは実家がご近所にあり、保育園児からの幼馴染らしい。友人の親御さんに頼まれる
だなんて壮馬くんは昔から優等生タイプだったんだろう。学級委員長系園児。人気者間違いなし。きっとそうだろう。
「スポーツ推薦になってくれたから、体力が健介同様あり余る友人を他に作ってくれて僕は涙が出そうだよ。」
「そんなに大変なの?」
「大変なんてものじゃない。昔なんて勉強を教える度に椅子に縛り付けてたし、小さい時から身体能力に差があったから、体を使う遊びは勝てない上に永遠に付き合わされる魔のループだったんだ。」
体力はクラスが異なり体育が別なので比べられないが、2人が並んでた場面を思い出すと確かに身長差があった。
「今何cm差?」
「僕が163で、健介は170後半だったはず。この前そろそろ180だって言ってたから。」
「理想の身長差だったりして」
「何それ?」
「聞いたことない?カップルの身長差は15cmが理想だって。もうすぐ180cmなら16cm前後くらいでしょ?」
「身長差はね。色々聞きたいとこだけど、なんで15cmが理想なの。」
「キスやハグがストレスなくできるかららしいよ。」
ガンッガタッ
「鈴奈、身長は?」
「秋に測った時は158cmだったよ。」
「理想は173cm」
「そうなるね」
ウォーーーーー
アオゥーーーン
ガタンッ
クッソ~~~~
「ダメだ。見るなよ。」
「絶対?」
「絶対」
「さすがに気になるよ。」
「気持ちはわかるが、振り返ったら後悔するよ。」
「絶対?」
「絶対」
鈴奈は浮かびかけた腰を椅子にトスッと下ろす。
「壮馬くんと私ってそんなに身長差ないよね。」
「やっぱり男の人は背が高い方がいいと思う?」
「別に?父兄が高身長だからいつも見上げてて正直首が凝るんだ。弟が入れば背の低い人ならって比べれるんだけど、残念ながらいないから高い方がいいって断言はできないわね。」
鈴奈は首をコキッと鳴らしてみせる。
「世間的に15cmが理想だと言われているだけで、個人間の好みは別だし。」
ウッシャーーーー
ヨシヨシヨシヨシ
ガタンッ
「はぐらかそうとしても無駄だよ。理想を聞いてもいい?」
「バレたか。強いて言うなら、私の理想の身長差はハグしやすい高さかな。」
わっショーイわっショーイ
「身長差以外にも理想の恋人像って条件あるよね。」
「有名なのは、性格、年齢、収入、顔、筋肉、それと」
「そんなもんじゃない?
こちら星稜学園2年Jクラスよりお送りしております。生徒の鈴奈さんに質問です。好みの性格は?」
「ふふ、リポーターさんごっこ?性格はね、……………
「なるほどなるほど。御協力ありがとうございます。以上朝倉でした。カメラをスタジオに戻します。」
色々答えたけど、結局一途に愛してくれる人だったな。
「では、この辺で……」
「いやいや、終わらせないって。根掘り葉掘り聞いたんだから次は壮馬くんの番だよ。」
「いや僕はいいよ。需要ないし」
そーだ そーだ
「わたしが話したんだから、壮馬くんには話してもらいます。それでwinwinよ。」
「winではなくない?」
「なら、平等、あいこ、引き分け、」
「わかったって話すよ。人にいつも優しくて笑顔が可愛く、少し抜けてる子。背は僕より低い子がいい。セルリナ王国(鈴奈の祖母セレナの故郷)系の容姿の女の子。これで満足?」
「胸派?尻派?」
ブフーーーー
おっ俺は……お前は?おれは……
「鈴奈様、失礼ながら申し上げると、そのような言葉をみだりに口外してはいけません。」
「ニックさん、何がダメだった?」
「女性が秘すべき体の名称を人前で声外すべきではありませんよ。」
「でも、」
「でも、ではありません。人前での発言にはもう少し慎重さが必要です。周りが驚いてしまいますから。」
男子生徒が好みの女性について話すならこれは欠かせないと思ったのに
「僕は」
若干壮馬くんと目が合いそうで合わない。あっそういうことね。
「上派ね。」
「鈴奈様!」
「ごめんって。もうしないわよ。」
目の前に現れた鈴奈に壮馬は瞠目しつつも、鈴奈にお昼を一緒にするかと尋ね、隣の席が昼食は学食でとるからとその席を勧める。
「それで、休暇についてだったよね。キャメロン家の次男と婚約したことは耳にしたけど、それは事実かい」
「その通りよ。誰かに聴いたの?」
校門前にむかえにきてもらったのが噂になっているなら恥ずかしいことこの上ない。
鈴奈は祖父母に持たしてもらった弁当箱の蓋を開き、壮馬は紙袋からアルミに包まれたサンドイッチを取り出す手を止めた。
壮馬はなぜそんな質問をされるのか壮馬は分からなそうな困惑を一瞬で消し、一滴の疑問より知りたい質問を優先する。
「ニュース。で、本当なのか」
「婚約は多分してないと思うよ。」
「そうなんだ。」
「婚約は知らないけど。少し前から付き合うことになったの。」
ガタッ ガンッ!
椅子か机が倒れる音が複数近くから鳴り、鈴奈が音の発生源に振り返ろうと身体を傾けると壮馬の片手に阻止された。壮馬の目を見ると泳ぎ右往左往しているが、必死に注意をひこうとしてるのか言葉を矢継ぎ早に発する。
「そっかぁ、そうなんだ。うん、うん、おめでとう。素晴らしいことだね。鈴奈、後ろはダメ。向かないであげて。」
「ん?ありがとう」
「聴いてほしい話ってもしや、その惚気かな?」
「へへ、…実は、」
「ok任せとけ、ききましょうとも」
「『聴く』じゃくて『聞く』?」
「よく違いに気付いたね」
「正解なんかい!」
壮馬くんは宣言とは違い、休み時間を跨ぎしっかりと最後まで『聴』いてくれた。
「つまり、第二の彼氏を持たず、今後もラファエルさん一筋の予定ってこと?」
「そうなの。その方がいいって言ってくれたの。それが嬉しくてね。もちろんラファエルさんの彼女は私だけよ。」
「ああ、キャメロンさんの反応は当然というか、当たり前なんだけどさ。そうかぁ、たぶんだけどあんまりこの話は、ご家族と僕以外に言わない方がいいと思うよ。危ないから。」
「危ない?」
「そう、危ない。渡邊家の意向が分からないからなぁ。鈴奈、護衛に話しかけてもいい?」
「私の許可なんていらないよ。ニックさん、ちょっと来てくれる?」
ニックさんは壮馬くんと二言三言交わした後、どこかに電話を入れ、通話後壮馬くんに一言「大丈夫です」と答えた。
「そうかぁ、いいんだぁ。渡邊家と立花家、あとキャメロン家もだからかな……。凄い人達だね。」
「壮馬くんは何を心配しているの?」
彼が何を危険だと言い、何を警戒して助言してくれているのか検討もつかないうちに、壮馬くんは勝手に納得している。なんで分からないのって困った子を見る目を向けられても困る。本気で分かりません。
鈴奈は片掌を頬に当て首を傾げる。祖母直伝、存じませんの教えてくださるポーズ。祖母の前で両掌を方と同じ高さで上向きにして分からないと言うと品がないから祖母の技を使うのを勧められた。鈴奈はここぞとばかりに技を炸裂させた。
「世の一般女性が複数人と結婚したり、交際する理由の1つに、保護してもらう目的があるんだ。わざわざ学校で教えられることじゃないから知らないんだろうね。君の母さんは父さんだけを夫にして彼氏も据えなかったって以前話してたよね。それなら尚更知らなくて当然さ。」
この話どかで聞いたことがあるような………………これ系は大体界人お兄ちゃんが………、知ってた。界人お兄ちゃんがパーティーから帰った日によく聞かされてたはずなのに、話半分で聞き流していたからすっかり忘れていた。近藤さん(執事)の奥様との話でも、奥様には他に相手がいるって言われてたのに、……つくづく自分に嫌気がさすよ。
反応がかえってこないことを不思議に思った壮馬は知らないなら知れば大丈夫だよと繰り返した。鈴奈はやっと壮馬の言葉に肯首する。
「とにかく、君のお祖父様やお父様級に財も権力もある人は稀なんだ。女の子のいる家庭には国が資金的援助してくれるけど、それはあくまで援助であって完全に危険を取り除けはしないんだ。
例えば、僕らが生まれる少し前に起きた事件。実家で眠っていた女性が、不法侵入者に暴漢されたのち絞殺された。他にも、男が移動中の車の前に飛び出し、車を止めさせ、乗車してる女性を殺害。公園で散歩中の女性を刺殺。誘拐された女性の話は後を絶たないよね。」
「私共がおりますから鈴奈様にそのような機会は後にも先にも連れません。」
「さすがだと思います。鈴奈にはいらぬ心配だったわけか。」
家から一歩も出ずに15歳まで過ごしたのに、そんなことすっかり忘れてた。なんで引きこもってるのか原因を忘れて、10歳を超えたあたりからニート生活を楽しんでたもんなぁ。
壮馬くんが上げた一例はお母さんのことだった。あの頃おじいちゃんたちに会ってなかったとはいえ、きっとお母さんの保護におじいちゃんたちも関わっていただろう。
渡邊家と立花家の2家では守りきれなかったってこと。私危険なのでは?この状況下でかつ現在進行形でストーカー被害を受けてるおばあちゃんはもっと危険なのでは?
「私学校に居ちゃダメなんじゃ...」
ガタッガタッガタッガタッ
「施設の安全対策には、渡邊と立花両家が世界一の厳しい目を持って確認済みらしいよ。学校にいる方が家にいるときより安全かもね。」
「この変なシステムお父さんたちのせいだったの?」
「変ww」
「監獄みたいだと思うでしょ。息苦しいことこの上ないもの。変よ。それ以上ではあれど以下はない。最悪。学校利用者すべての人に土下座したい気分。」
「土下座って?」
「頭を床につけて自分の精神的あらゆるものを底辺に落とす最高礼の謝罪だよ。」
ガタッガタッガタッガタッ
「まさかしないよね?」
「しないわよ。される側が困るでしょ。」
「するように求められても絶対にしちゃだめだ!鈴奈は女の子なんだから女の子の自覚を持って。もっと持って。男娼がするような行為だよ、それ。」
「土下座が?」
「ドゲザは知らないけど、似た行為にそういうのがあるんだよ。覚えなくていいからドゲザ禁止!」
知らなくていいことを壮馬くんは何故知ってるのか気になるんだけども、聞くのは野暮かな。
壮馬は目を見開き、血管が浮かび上がり、彼の言葉に鈴奈が承諾しなきゃ今にも死にそうな表相だ。
「なら謝るときはどうするの?」
「ごめんの一言で十分なんじゃないかな。僕の知る一般女性ならね。でも、君は納得しないんだろうね。なら両手を合わせたり、頭を少し下げればいいんじゃない?床は汚いからダメ。」
「わかったって」
「そもそも女性が謝るなんて聞いたことないから必要ないと思うよ。本当に、口で『ごめん』て言うだけで十分だと思うんだけどな。周りの精神的にもそれが限度だよ。」
なるほど、謝罪一つにもジェネレーションギャップ(?)が
「何の話をしていたんだっけ?謝罪云々って事じゃなかったよね。」
「キャメロン家の次男と相思相愛って話」
ガンッガンッガンッ
「さっきから変な音が」
他者を気にしない方の鈴奈でも、さすがに口を開く度に大きな音がするんじゃ無視は難しい。
「気にしちゃだめだ。横は見ないで絶対に。可哀そうな生き物たちが、自身の誤った選択によって起きてしまった現実を唐突に突きつけられておかしくなってるんだ。鈴奈はただ見ず聞かず興味を持たないであげればいい。それが僕らのためだ。」
気にしないにも限度がある。その上で、そうしないといけないだなんて。人生初かも。成長とは道を知ること。これも経験だと思うしかないか。
「壮馬くんも選択を間違えたの?」
「僕今『僕ら』って言った?『彼ら』の間違い。」
「そう……。壮馬くんが何か失敗する姿なんて思い浮かばないし、そうよね。」
「いや失敗はするよ。...犬神に勉強を叩き込むのに僕一人じゃ無理だったでしょ?」
「そうだったね。新学期早々にあった試験は大丈夫だったのかな、犬神くん」
「あ~,忘れてた。」
「ふふ、忘れてたの?」
「四六時中あいつの面倒を見てるわけじゃないからさ。健介の父さんに頼まれたけど、さすがに無理。」
壮馬くんと犬神健介くんは実家がご近所にあり、保育園児からの幼馴染らしい。友人の親御さんに頼まれる
だなんて壮馬くんは昔から優等生タイプだったんだろう。学級委員長系園児。人気者間違いなし。きっとそうだろう。
「スポーツ推薦になってくれたから、体力が健介同様あり余る友人を他に作ってくれて僕は涙が出そうだよ。」
「そんなに大変なの?」
「大変なんてものじゃない。昔なんて勉強を教える度に椅子に縛り付けてたし、小さい時から身体能力に差があったから、体を使う遊びは勝てない上に永遠に付き合わされる魔のループだったんだ。」
体力はクラスが異なり体育が別なので比べられないが、2人が並んでた場面を思い出すと確かに身長差があった。
「今何cm差?」
「僕が163で、健介は170後半だったはず。この前そろそろ180だって言ってたから。」
「理想の身長差だったりして」
「何それ?」
「聞いたことない?カップルの身長差は15cmが理想だって。もうすぐ180cmなら16cm前後くらいでしょ?」
「身長差はね。色々聞きたいとこだけど、なんで15cmが理想なの。」
「キスやハグがストレスなくできるかららしいよ。」
ガンッガタッ
「鈴奈、身長は?」
「秋に測った時は158cmだったよ。」
「理想は173cm」
「そうなるね」
ウォーーーーー
アオゥーーーン
ガタンッ
クッソ~~~~
「ダメだ。見るなよ。」
「絶対?」
「絶対」
「さすがに気になるよ。」
「気持ちはわかるが、振り返ったら後悔するよ。」
「絶対?」
「絶対」
鈴奈は浮かびかけた腰を椅子にトスッと下ろす。
「壮馬くんと私ってそんなに身長差ないよね。」
「やっぱり男の人は背が高い方がいいと思う?」
「別に?父兄が高身長だからいつも見上げてて正直首が凝るんだ。弟が入れば背の低い人ならって比べれるんだけど、残念ながらいないから高い方がいいって断言はできないわね。」
鈴奈は首をコキッと鳴らしてみせる。
「世間的に15cmが理想だと言われているだけで、個人間の好みは別だし。」
ウッシャーーーー
ヨシヨシヨシヨシ
ガタンッ
「はぐらかそうとしても無駄だよ。理想を聞いてもいい?」
「バレたか。強いて言うなら、私の理想の身長差はハグしやすい高さかな。」
わっショーイわっショーイ
「身長差以外にも理想の恋人像って条件あるよね。」
「有名なのは、性格、年齢、収入、顔、筋肉、それと」
「そんなもんじゃない?
こちら星稜学園2年Jクラスよりお送りしております。生徒の鈴奈さんに質問です。好みの性格は?」
「ふふ、リポーターさんごっこ?性格はね、……………
「なるほどなるほど。御協力ありがとうございます。以上朝倉でした。カメラをスタジオに戻します。」
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「では、この辺で……」
「いやいや、終わらせないって。根掘り葉掘り聞いたんだから次は壮馬くんの番だよ。」
「いや僕はいいよ。需要ないし」
そーだ そーだ
「わたしが話したんだから、壮馬くんには話してもらいます。それでwinwinよ。」
「winではなくない?」
「なら、平等、あいこ、引き分け、」
「わかったって話すよ。人にいつも優しくて笑顔が可愛く、少し抜けてる子。背は僕より低い子がいい。セルリナ王国(鈴奈の祖母セレナの故郷)系の容姿の女の子。これで満足?」
「胸派?尻派?」
ブフーーーー
おっ俺は……お前は?おれは……
「鈴奈様、失礼ながら申し上げると、そのような言葉をみだりに口外してはいけません。」
「ニックさん、何がダメだった?」
「女性が秘すべき体の名称を人前で声外すべきではありませんよ。」
「でも、」
「でも、ではありません。人前での発言にはもう少し慎重さが必要です。周りが驚いてしまいますから。」
男子生徒が好みの女性について話すならこれは欠かせないと思ったのに
「僕は」
若干壮馬くんと目が合いそうで合わない。あっそういうことね。
「上派ね。」
「鈴奈様!」
「ごめんって。もうしないわよ。」
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