転生少女は溺愛に気付かない

たぬ

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父帰宅

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 コチ、コチ、コチ、カチ

 19時…そろそろ降りてもいいのかな?

 界人お兄ちゃんにリビングから追い出され言われた通り自室待機中だ。明確にいつまでここにいたらいいのかは言われてないため、どうしたらいいのか困る。話し中だったら嫌だけど、ぼちぼちお腹が減ってきた。

 ぅーん、よし!降りよう!

 お話し中だったら、部屋を移動してもらえばいいのだ。リビングはなんせわんフロアある。何か問題があっても応接室が別フロアにある。

 ごはん!ごはん!

 がちゃ

 寒?!

 ここは外だったかと問いたくなるほどに、部屋の温度が下がっており腕に鳥肌が立つ。廊下やエレベーターは暖かく適温だったのに、この一室だけが異様に寒い。

 現環境を生み出しているであろう冷却器こと界人お兄ちゃんが、私に目線だけ寄越し、時計に目をやった。

「もうこんな時間か。飯にするか。妹は腹がすいたみたいだ。ラファエル、今晩は食ってけ」

「ありがとうさん、スズナと食事だなんて夢みたいだ。もちろん界人さんとってのも嬉しいよ?」

 目の錯覚かしら?

 目を擦り、一瞬掠めたラファエルさんの黒い笑顔を確認しようとするが、今日よく見た爽やかな表情。

 気のせいね

 食卓へ佐藤さんが夕食を並べていくのを目で追う。スープからは鶏ガラの濃厚な香りが湯気にのって鼻をかすめる。メインの肉料理も美味しそう!
 早く食べよっと机に近づくと椅子と私の間にラファエルさんが立ちはだかった。?と首を傾げると、椅子を引いてくれる。

 紳士だ!

 前世含め、女性扱いなどされたことがないのに、どうしたらいいのか。

「鈴奈ちゃっちゃと座れ、お前もうちでそんなことしなくていい。座れ、冷める」

 すっ座ります!

 紳士様ラファエルさんに比べて界人お兄ちゃんは、残念だ。顔はいいのに

「失礼なこと考えてんじゃねぇよ。コンソメ好きだろ。早く食え!親父が帰って来たら話がある。ぼちぼちだろうからそれまでに完食しろよ。」

 家のルールの確認とかだろうか?自己紹介かも。話すことは色々あるだろう。

 最近、界人お兄ちゃんとお父さんは、仕事が忙しいらしく、帰宅時間が遅くなっていた。
 朝はリビングでまったりしている印象があるが、夜中に帰宅し、その車が車庫に入る音で起きるなんてのがたまにある。ちなみに直近は朝5時である。その日リビングで、ブラックコーヒー片手に新聞を読んでいるお父さんと遭遇した。いつ寝てるの?

 食べ方が汚くならないように気をつけながら可能な限り最短で食べ終えると、頃合を見計らったかのようなベストタイミングでお父さんと浩成お兄ちゃんがリビングに入ってきた。

「たっだいま~、愛しのわが子よ!それと久しぶりだね、ラファエル君。3年前貴国で会って以来かな?お父上は元気だろうか?」

 部屋に飛び込んできたお父さんは、勢いのままに私に飛びつき腕に抱え、顔の向きのみラファエルさんへやり話し始めた。

「お久しぶりです、拓海さん。父は健康そのものです。最近は仕事も落ち着いたようで、趣味にかける時間が増えているほどです。」

「それは残念だ。彼に押し付けられた仕事の処理で私は忙しい身でね。まともに眠れてないというのに、新たな問題が目の前に発生したのも彼が原因なんじゃないかと思うと頭の血管が数本きれそうだよ。」

「さすが立花会長!素晴らしいお眼鏡ですね。主導は僕ですが、父も一噛みしています。」

 お父さんの口から皮肉(?)を聞いたのは初めてかもしれない。いつも穏やかなお父さんの新たな一面に驚きもするが、少し安心もした。怒らない人だと思ってたよ。

 予想通り門限やらなんやらの家庭内ルールを決めるとお父さんたちが帰宅してからもうすぐ1時間が経とうとしていた。

「すーちゃん、今日の宿題は終わってるの?まだなら上でしておいで」

 終わってないけど、戻ってもいいのだろうか?

「そうだな、鈴奈は上に上がっておいで。ここから先は久しぶりにあったラファエル君にパパ達からすこーしお話があるから」

「課題が済んだら、早く寝ろよ。久々の登校で気づかないうちに疲労が溜まってるかもしれねぇし。」

 お言葉に甘えようかな?お父さん達にお休みを告げ、部屋を後にする。





 布団に入り寝付こうとした時、閉じる扉の隙間から見えた界人お兄ちゃんの顔がフラッシュバックした。

 久々に見たな黒い顔



 

 
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