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年末
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中間考査、体育祭、文化祭、2度目の授業参観、避難訓練、期末試験を怒涛の勢いで走り切り、今までのことが夢であったかのように朧気な記憶を振り返りつつ、ルーの体にもたれ掛かり炬燵でぬくぬくゴロゴロと過ごす日々。
「1週間前まで7時に起床して学校へ行っていたことが嘘みたいだな。」
私と同じく程よい温もりに溶かされた界人お兄ちゃんが、呆れたような目をこちらに向ける。
「お兄ちゃんに言われたくありませーん。そのツリ目以外は完全offモードのくせして、
どの口が言うか!」
「鈴奈はいつまで経っても大人になれまちぇんね~」
やいやいとお互い言い返している時に、仲裁に入ってくれる人は現在ご不在だ。
仲裁役の2人、お父さんと浩成お兄ちゃんは、2人は年末年始の数日店が閉まる前に、正月分の食料や必需品を買い出しへ出かけた。
執事の近藤さんや料理人の米花さん辺りに頼めばいい気もするが、例年2人がこの時期に買い出しへ出かけるのは当たり前になっていた。数年前までは、私も2人について行こうとしていたのだが、父と息子2人きりで過ごす貴重な時間になっているのだと気づいてからは、もう一人のぶっきらぼうなお兄ちゃんと炬燵の民に甘んじてなることにしている。
正直な話。寒い外に出なくていいのは助かる。歳が一桁台だった頃は、まるで風の子であるかのように寒さなど大して気にもしてなかったのに……。
寒さに負けようとも、特にやることがないというのは退屈で。年末特番なんかも昼間の今はあまり面白くない。
仕方なしに、一読して面白かったシリーズも#の____#の小説に手を伸ばすもあまり興が乗らない。早々に続行不可能だとキッパリと諦め、閉じた。
何か非日常的なことは無いだろうか?なんでもいいから刺激が欲しい。ルーがいる時点でレア日ではあるんだけど…。
掘りごたつの中で足をバタつかせ、やることを考える。だ~特に思いつかない。そもそも前世と全く異なる世界で、今の生活そのものが非日常だというのに、いつの間にか今の世界が当たり前になっていた。
前世で、読んだ小説の中には、男女比がおかしくなった世界線を描いているものもあった。ある作品では、『男性が希少になってしまった世界で主人公がモテまくる』みたいなテーマだったが、今世では告白はもちろん、明白なアプローチさえ受けたことがない。所詮小説はフィクションだからかだろうけど、多少夢を観ていたこともあり恥ずかしくて誰にも「モテない!」とかそういう恋愛関係の話は自らしたことはない。少なくとも私がモテてない事実は確かである。相談された相手が言葉に詰まるのがオチだろう。
まぁ、目の前のこの意地悪な方のお#兄__・_様には、話さなければ一生結婚出来なくなるとしても話したくない。
そういえば、つい最近判明したのだが、紗江ちゃんも佐伯薔薇さんも婚約者がいるらしい。初めて聞いたときは、おっどろいた
ガチャ
「そういやー、休みあけじゃなかったっか?鈴奈の婚約者が交換留学してくるのって」
「お…おま……界人!」
界人お兄ちゃんの発言と同時に開いた扉の先には、出かけていたはずのお父さんと浩成兄ちゃんがいた。
シ──────ン
たった一言で部屋全体に走った。
「…こんやぁ…くしゃ?」
「婚約者な。なに?何かまずい事でも言ったか俺?」
「いや、その……」
「あいつが来るのは事実たろ?鈴奈もリアムおじさんにあったようだし、どこまで聞いた?」
「そうなのか鈴奈!リアムにいつどこで?!」
界人お兄ちゃんはなんで知ってるの?誰にも話してないのに
もしかしてさっきの脳内独り言を口に出してた?!
「夏休み明けに学校で…」
どうしてお父さんが興奮しているの?いや、憤慨の方が正しそうだ。確かあのとき
『君の家にも足を運んで、拓海や浩成君、界人君に久々に会おうかとも考えたのだが、アポが取れなくてね。』って言ってたような。
連絡は入れたけど会えませんでしたってことだろうから、あ~だから界人お兄ちゃんは知ってたのかな。お父さんはなんで知らなかったのかなぁ。
「鈴奈!!もうあのおっさんに会ったらダメだ。これまでもこれからもキャメロン家との接触は禁止だ。」
話の流れからして『キャメロン』はあの時あった従伯父『リアム』(?)さんの姓だと推測できるが、『これから』は一旦置いといて『これまで』とは?
「『これまでも』ってもしかして、あの日にリアム(?)おじさんに面会しなかったのってわざとなの?」
仕事の関係上の問題だと思ってたのに……ちょっと失望したよ
「ちっ違うよ!『あの日』がいつなのか分からないけど、もちろん会議や仕事が詰まっていてだな。わざとではないんだ。ほんとうだよ?」
「親父、9月1日だ。鈴奈勘違いするなよ。親父の言ってることは本当だ。親父のスケジュールは俺が把握してるが、その日はライバル会社が製品の価格を落としやがったせいで、その対応に追われていたんだ。もちろんリアムさんの面会を断ったのも俺だ。あの性悪おっさんの相手をする余裕はなかったからな。」
「ありがとう界人!だそうだ鈴奈、信じて?」
そんなにうるうるした瞳で上目遣いしないでよ!
目を擦ってもなぜか耳としっぽの幻覚が見える。
んーもう!
「 怒ってもないもん!勘違いしてごめんなさい!」
「1週間前まで7時に起床して学校へ行っていたことが嘘みたいだな。」
私と同じく程よい温もりに溶かされた界人お兄ちゃんが、呆れたような目をこちらに向ける。
「お兄ちゃんに言われたくありませーん。そのツリ目以外は完全offモードのくせして、
どの口が言うか!」
「鈴奈はいつまで経っても大人になれまちぇんね~」
やいやいとお互い言い返している時に、仲裁に入ってくれる人は現在ご不在だ。
仲裁役の2人、お父さんと浩成お兄ちゃんは、2人は年末年始の数日店が閉まる前に、正月分の食料や必需品を買い出しへ出かけた。
執事の近藤さんや料理人の米花さん辺りに頼めばいい気もするが、例年2人がこの時期に買い出しへ出かけるのは当たり前になっていた。数年前までは、私も2人について行こうとしていたのだが、父と息子2人きりで過ごす貴重な時間になっているのだと気づいてからは、もう一人のぶっきらぼうなお兄ちゃんと炬燵の民に甘んじてなることにしている。
正直な話。寒い外に出なくていいのは助かる。歳が一桁台だった頃は、まるで風の子であるかのように寒さなど大して気にもしてなかったのに……。
寒さに負けようとも、特にやることがないというのは退屈で。年末特番なんかも昼間の今はあまり面白くない。
仕方なしに、一読して面白かったシリーズも#の____#の小説に手を伸ばすもあまり興が乗らない。早々に続行不可能だとキッパリと諦め、閉じた。
何か非日常的なことは無いだろうか?なんでもいいから刺激が欲しい。ルーがいる時点でレア日ではあるんだけど…。
掘りごたつの中で足をバタつかせ、やることを考える。だ~特に思いつかない。そもそも前世と全く異なる世界で、今の生活そのものが非日常だというのに、いつの間にか今の世界が当たり前になっていた。
前世で、読んだ小説の中には、男女比がおかしくなった世界線を描いているものもあった。ある作品では、『男性が希少になってしまった世界で主人公がモテまくる』みたいなテーマだったが、今世では告白はもちろん、明白なアプローチさえ受けたことがない。所詮小説はフィクションだからかだろうけど、多少夢を観ていたこともあり恥ずかしくて誰にも「モテない!」とかそういう恋愛関係の話は自らしたことはない。少なくとも私がモテてない事実は確かである。相談された相手が言葉に詰まるのがオチだろう。
まぁ、目の前のこの意地悪な方のお#兄__・_様には、話さなければ一生結婚出来なくなるとしても話したくない。
そういえば、つい最近判明したのだが、紗江ちゃんも佐伯薔薇さんも婚約者がいるらしい。初めて聞いたときは、おっどろいた
ガチャ
「そういやー、休みあけじゃなかったっか?鈴奈の婚約者が交換留学してくるのって」
「お…おま……界人!」
界人お兄ちゃんの発言と同時に開いた扉の先には、出かけていたはずのお父さんと浩成兄ちゃんがいた。
シ──────ン
たった一言で部屋全体に走った。
「…こんやぁ…くしゃ?」
「婚約者な。なに?何かまずい事でも言ったか俺?」
「いや、その……」
「あいつが来るのは事実たろ?鈴奈もリアムおじさんにあったようだし、どこまで聞いた?」
「そうなのか鈴奈!リアムにいつどこで?!」
界人お兄ちゃんはなんで知ってるの?誰にも話してないのに
もしかしてさっきの脳内独り言を口に出してた?!
「夏休み明けに学校で…」
どうしてお父さんが興奮しているの?いや、憤慨の方が正しそうだ。確かあのとき
『君の家にも足を運んで、拓海や浩成君、界人君に久々に会おうかとも考えたのだが、アポが取れなくてね。』って言ってたような。
連絡は入れたけど会えませんでしたってことだろうから、あ~だから界人お兄ちゃんは知ってたのかな。お父さんはなんで知らなかったのかなぁ。
「鈴奈!!もうあのおっさんに会ったらダメだ。これまでもこれからもキャメロン家との接触は禁止だ。」
話の流れからして『キャメロン』はあの時あった従伯父『リアム』(?)さんの姓だと推測できるが、『これから』は一旦置いといて『これまで』とは?
「『これまでも』ってもしかして、あの日にリアム(?)おじさんに面会しなかったのってわざとなの?」
仕事の関係上の問題だと思ってたのに……ちょっと失望したよ
「ちっ違うよ!『あの日』がいつなのか分からないけど、もちろん会議や仕事が詰まっていてだな。わざとではないんだ。ほんとうだよ?」
「親父、9月1日だ。鈴奈勘違いするなよ。親父の言ってることは本当だ。親父のスケジュールは俺が把握してるが、その日はライバル会社が製品の価格を落としやがったせいで、その対応に追われていたんだ。もちろんリアムさんの面会を断ったのも俺だ。あの性悪おっさんの相手をする余裕はなかったからな。」
「ありがとう界人!だそうだ鈴奈、信じて?」
そんなにうるうるした瞳で上目遣いしないでよ!
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んーもう!
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