転生少女は溺愛に気付かない

たぬ

文字の大きさ
上 下
13 / 56

オリエンテーション1日目 そのⅡ

しおりを挟む
朝からやらかしてしまった。

どうすれば高校デビューをやり直せるのか頭を捻り考えながら会議室に向かうと、紗江ちゃんを含む他のクラスが既に席へ着いていた。
紗江ちゃんと一緒に座りたいが、残念ながらクラスごとに出席番号順で座らないといけないらしい。

自分のクラス席を確認していると二年生はまだ会場に来ていないことに気づいた。
二年生は、主任が説明する間暇になるために、その時間を使って春季考査を受けるそうだ。

ご愁傷さまです。南無南無




主任の話がようやっと終わり、各クラス担任の紹介も済んだ。

正直な話、10クラスもあるし、全クラスに副担任も就くので覚えきれない。
早々に覚えるのは放棄して、先生の話を右から左へ流していると、

「二年生が来たようなので、学校案内のペアを発表します。Jクラスから出席番号順に呼ぶので、名前を呼ばれたら返事とともに前に来てください。それじゃ、二年生に入ってもらって」

二年生の担任だろう人に続いて生徒たちが入ってきた。わかっていたことだが、女生徒が一人もいない。

「Jクラス 出席番号一番蒼井優太郎あおいゆうたろう。二番大島海おおしまかい。…十八番立花鈴奈。」

「はい!」

担任のもとに行く

「立花のペアわっと…五十嵐いがらしくんだな。あとがつっかえるといけないから、教室を出てから話してはしてくれな。」

先生の言うとおりにペアの五十嵐先輩について部屋を出て、階段の前まで移動した。

「立花さんはじめまして、五十嵐とおるといいます。今日から二日間ガイドを務めさせていただくので、質問があれば聞いてください。あれ…立花さん?」

私はフリーズした。脳が機能しなくなったのだ。まさか前世で推していた声優さんと同じ声を持つ人が存在するとは…ってことは、学校の音声ガ…げふんげふん……案内をしてくれるだなんて。

「……ここに神は居られた。」

推しが私に向かって語りかけてくれる。これでここが天国じゃないなら天国はどんなところですか?

「……立花さん。立花さん!………鈴奈…」

「はっ!いま…」

「ごめんなさい、勝手に名前呼んで。でも何回呼んでも反応がなくて…」

すみません。完全にトリップしてました。

「いえ、私が悪いんです。本当にすみませんでした。五十嵐先輩の声があまりに素敵すぎて…」

「え…ありがとうございます。そんなこと初めての言われたよ。とりあえず、集合場所と時間を決めて昼食にしようか。13時15分に一年のJクラスに迎えに行くのでいいかな?」

「そんな先輩に迎えに来ていただくなんて恐れ多いです。私が二年生の教室に行きます。」

本音は勿論、『神にわざわざ足を運んでいただくなどおこがましいにも程がある!』である。

「いいや、女の子が一人でよく知らないところを動くのはやめた方がいいよ。でも、気を使ってくれてありがとう。」

「そんな滅相もない。それでは、お手数をおかけしますがよろしくお願いします!」

「それじゃあ、一年の教室まで一緒に行きますか?」

「えっと、Gクラスに友人がいるのでその子を待ってから戻ろうと思います。もしよろしければ、一緒に待ってもらってもいいですか?」

「ええもちろん。それじゃあ、主任が説明したであろう校則についてでも説明しましょうか。大体どの生徒も話が長すぎて聞いてないので。」

「うっ、お願いします。」





そうこう話していたら、紗江ちゃんが出てきた。紗江ちゃんたちの話が終わるまで待ってから話しかける。

「紗江ちゃん!」

「鈴奈ちゃん、待っていてくれたの?」

「うん、一緒にお昼食べたくて。」

「彼女が立花さんが待っていたご友人ですね。それじゃあ移動しましょうか?注目を集めてしまっていることですし。」

言われて初めて気が付いたが、かなりの人に見られていた。

なぜか拝んでいる人がちらほらいるのはどういうことなのだろうか?



五十嵐先輩たちと分かれた後、紗江ちゃんに昼食を持ってきてもらいJクラスで食べた。

「この後クラブ紹介があるけど、すでに希望の部活ってあるの?」

「ん~~、まったく決まってないなぁ。」

「鈴奈ちゃんも…。本当は帰宅部が良かったんだけど、この学校は全員部活に所属しなきゃいけないし?」

「帰宅部ないの?」

「さっき軽くだけど、学年主任の先生が言ってたよ?」

「ごめん。あまりに長くて聞いてなかった。」

「確かに…二時間以上も休憩なしで話し続けるなんて思わなかったもんね。」

「二時間三十分はしゃべりすぎだよ…というか、最初の十五分くらいであきらめたんだけどね。」

「私は最初の一時間くらいまで…。ちゃんと最後まで聞いてた人って居たのかな?」

「たぶん居ないんじゃないかな?五十嵐先輩が言ってたんだけど、毎年二年生の先輩が学校を案内しながら主任の話を説明する伝統があるみたいなの。」

「そうなの?それなら安心だね。って、鈴奈ちゃんストロー逆だよ。」

「え!?」





そうこうしていると、約束の時間五分前なのにご飯を食べきれていなかったので、その後五分間は二人とも黙々と食べ、なんとか間に合った。

先輩たちは時間ぴったりにやってきて、二班合同で回ることを提案された。答えはもちろんYesだ。

体育館に向かうまでの間に部活の話をさっくり教えてくれた。
なんと一番人気なのは生徒会と写真部だそうだ。
生徒会は年中忙しく部活をする暇がないので、加入すれば、ほかの部活に特例で入らなくていいらしい。何より星陵学園の生徒会所属は一生自慢できるステータスになるらしいので、名声目的のものが多いそうだ。
写真部は活動がもともと少なく。最低入部してから卒業するまで顔を出さないものもいるらしい。つまり、幽霊部員であふれかえっている部活らしい。




部活動紹介は、体育館のステージに代表者が上がり、一分以内に部活のいいところを紹介したり、実践する。何組か観客席を見て倒れるネタ被りを起こしていたが、笑いをとろうとするところが多く楽しかった。

「入りたい部活はありましたか?」

「図書部がよさそうに思いました。」

「興味をもったところすみませんが、図書部は活動時間が多く、重労働も多いので、おすすめは出来ません。」

「そうなんですね。あまりきつ過ぎず女子でも邪魔にならないところってありますか?」

「どこも邪魔にはなりませんよ。でも心配なら私が所属している演劇部はどうですか?人数もある程度いるので、一人にかかる負担は適度に軽いはずです。大道具係や演者、脚本家、監督などは忙しいのですが、広報担当や劇当日の売り子ならば拘束時間も少ないですよ。まあ、明日校内案内中に部活動も一通り見学してから決めても遅くないですよ。」

「いいですね!演劇部に惹かれて気持ちが傾いてますが、明日見て自分に合いそうなところを決めたいと思います。」


---------------------------------------------------------------

 図書部一同:おまえ余計なこというなよ!

 演劇部:よっしゃー!よくやった五十嵐!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

女尊男卑 ~女性ばかりが強いこの世界で、持たざる男が天を穿つ~

イノセス
ファンタジー
手から炎を出すパイロキネシス。一瞬で長距離を移動するテレポート。人や物の記憶を読むサイコメトリー。 そんな超能力と呼ばれる能力を、誰しも1つだけ授かった現代。その日本の片田舎に、主人公は転生しました。 転生してすぐに、この世界の異常さに驚きます。それは、女性ばかりが強力な超能力を授かり、男性は性能も威力も弱かったからです。 男の子として生まれた主人公も、授かった超能力は最低最弱と呼ばれる物でした。 しかし、彼は諦めません。最弱の能力と呼ばれようと、何とか使いこなそうと努力します。努力して工夫して、時に負けて、彼は己の能力をひたすら磨き続けます。 全ては、この世界の異常を直すため。 彼は己の限界すら突破して、この世界の壁を貫くため、今日も盾を回し続けます。 ※小説家になろう にも投稿しています。

逃げて、追われて、捕まって

あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。 この世界で王妃として生きてきた記憶。 過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。 人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。 だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。 2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ 2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。 **********お知らせ*********** 2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。 それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。 ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。

男女比世界は大変らしい。(ただしイケメンに限る)

@aozora
ファンタジー
ひろし君は狂喜した。「俺ってこの世界の主役じゃね?」 このお話は、男女比が狂った世界で女性に優しくハーレムを目指して邁進する男の物語…ではなく、そんな彼を端から見ながら「頑張れ~」と気のない声援を送る男の物語である。 「第一章 男女比世界へようこそ」完結しました。 男女比世界での脇役少年の日常が描かれています。 「第二章 中二病には罹りませんー中学校編ー」完結しました。 青年になって行く佐々木君、いろんな人との交流が彼を成長させていきます。 ここから何故かあやかし現代ファンタジーに・・・。どうしてこうなった。 「カクヨム」さんが先行投稿になります。

男女比の狂った世界で愛を振りまく

キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。 その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。 直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。 生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。 デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。 本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました

市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。 私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?! しかも婚約者達との関係も最悪で…… まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺

マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。 その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。 彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。 そして....彼の身体は大丈夫なのか!?

処理中です...