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ハルトは、この世界に来て初めてと
言っても過言では無いほどの怒りを
あらわにした。

「ヒューゴ、どうしよう。俺…この国の
国王と第1王子が、どうしようもなく
許せないし…腹が立つ…。お、俺
アイツらが….アイツらのせいで…。」
ハルトから、魔力の渦が湧き出ていた。

「寒い…怖い…痛い…な、何コレ…。
ヒュー…。嫌だ…ここに来て…!
気持ち悪い…。来ないで…。」
「ハルト、ここにいる。俺はハルトの
そばにずっといるぞ、だから泣くな。」
「……。」
ハルトはヒューゴに抱きしめられ、
キスや背中をなでられていた。

「ヒュー…俺も…この世界に来た時…
あ、あいつ…。」
部屋の温度は下がり、まだ朝方なのに
暗くなり曇天になってきた。
「ハルト?!」
「…モノ扱い…?死ぬ事が、幸せ?
死を望むほど…つらい事…なんで…?
何の為に…。なんで?」
「ハルト、この者達は、ここへ来て
助かったんだ。しっかりしろ。ハルトが
治したんだから、大丈夫だ。」

「…なんで…あんな…いやだ…怖い…。
…やめて……。近寄るな…。」
「……ハルト?」
明らかに様子のおかしいハルトに、
声をかけてても声が届いていないのか
身体がこぎざみに揺れ、涙を流していた。
「ハルト?俺だ。ヒューゴだ。しっかりしろ…。」
何度も呼びかけるが、反応はなくただ怯えて
泣いているばかりだった。


ヒューゴは、マジックバックから
取り出した物を口に含んだ。
「ハルト、愛してる。…すまん。」
ヒューゴは泣いてるハルトに、睡眠薬を
口移しで飲み込ませた。
泣いて暴れていたが、やがて薬が効いたのか
力なく崩れ落ちるように眠ってしまった。

無理矢理、眠らせてしまったハルトを
ヒューゴは、強く抱きしめた。

先程の暗雲は散らばり、やがて空には
寒々しい青空が広がっていた。
「ハルト…。」
「……。」
「この首輪、やはり大昔に使われていた
隷属の首輪だったのか…。ハルト様は、
真っ先に解除して、同時に嫌な感じが
消えたと思ったんですが……。」
ギーニは、魔石がはまっていた、
壊れた首輪を二本拾いあげた。

「古代文字の首輪…負の感情を高め、精神的に
追い詰める…罪人用…。瘴気に似ていた…。」
ヒューゴは、ギーニが持つ首輪を見ていた。
「国王と第一王子は、この件でさらに
退いてもらいやすくなったが、第二王子は
いまいちどんな人物かわからない…。」
「確かプーエルが、近衛だったはず…。」
「はぁ~。」
ギーニとヒューゴは深いため息をついた。

「ハルトには、絶対に合わせない。
これ以上、辛い思いはさせない。
この世界に召喚したのも、国王と
第一王子だが……。ハルトに出逢えた俺は
幸せだが…この世界に誘拐され、あいつらに
犯され…追い出された…。
この国の腐った奴らは要らない。
ギーニ、リーム、キュイ、力を貸してくれ。
ハルトの為に……。」
「ああ。」
「了解。」
「キュクゥ。」
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