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5、エドリックの異世界(日本)初日

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エドリックは戸惑っていた。
普段から表情筋をあまり使わずにいたせいか
無表情に近く、周りから怖がられていた?ハズ。
なのに、この世界ではかなりモテモテ?だった。
(世間知らずの外国人という感じで
カモにされそうになっていた。)

異世界に来た当日、エドリックは
しばらくの間街並みを見て驚いていた。
すでに日暮れ時だった事もあり
帰宅ラッシュと重なり大きな道は、
エドリックにとっては見慣れない
箱型の物(バス)にぎっしり人がひしめき合い
小さな箱型の物は、馬車より
はるかに早いスピードで行き交っていた。
しばらく巨大な街?を探索していると
あたりは暗くなるんだとばかり思っていたが
そこかしらいい匂いが立ち込めたり
魔道具なのか、かなり明るい灯りが
街中に広がっていた。
異世界の文字も王子の魔道具のおかげで
読み書き出来るようになっていた。
小さなメモに色々書き込みながら街を眺めていた。
王子に言われた事を思い出しながら
王子が作った魔道具たちを確認していた。

今日の宿を探すのをすっかり忘れていたが
それと同時にこの周辺の探索を続けていた。
"俺のタメになる者をみつけてきてくれ。"
ため?使える者?遣える?
それとも小間使いとかの意味で役立つ者?
よくわからないが、向こうに戻れば
魔力が多くなりそうな者ということか?
ふと見上げれば、黒い空にはうっすらと
星がぼやけて見えた。
これほどのあふれるような魔道具の灯りを
たくさん使用し、様々な色合いで
昼間のような明るさのこの世界、
空の星まで霞(かす)ませるとは
すごい所まできたんだなぁとしみじみ思っていた。

「あらァァ~、やだぁ~。すっごく
いいオトコだわぁ。」
「……!!」
油断していたのもあるが後ろをとられたと
思っているうちに、素早い行動で間合いに
入られていた。
此奴(こやつ)なかなかの者!!
思わず腰の剣に手を伸ばしたが……。
ない!!そうだ、ここに来たからには
服装も形を変えて、腰にいつもあった
愛剣もなくなっていた。
どうやって攻撃すればいいか不安だったが
いざとなれば体術で大丈夫だと思っていた。
そして声をかけてきた者からの
悪意や殺意は感じなかったからか
油断してしまったのだった。
つい自分自身の情けなさに相手をにらんでしまった。
「あらぁぁ。すっごいイケメン!!
よろしければぁ、私たちのお店にぃ
来てくれないかしらぁ?」
「……お店?」
俺のにらみをものともせず
すごいパワーある人物だ。
コレなら向こうに行っても大丈夫かもしれない。
「今ならぁ、ヨーロッパ風の貴婦人ってぇ
コンセプトのぉ企画してるのよぉ。」
「ヨ、ヨーロッパ?」
「そうそう、中世の中性によるチュウセイ
ヨーロッパ風のぉよぉ~!!しかもぉ
かっわいい貴婦人が勢ぞろいよぉ!!」
「ちゅうせいのチュウセイ?」
「そそっ。しかもぉ特別キャンペーン中でぇ
2時間ワンドリンク付きなんと、
3000円なのよぉ。イケメンのお兄さんっ、
私たちとぉ、お店でお話ししましょう。」
飲み屋?バーのような感じなのか?
値段はこの世界の相場はわからないが
市場調査も兼ねて1件目は、ここにしよう。
よく見たら、男性だが少し露出はあるが
女性のドレスをきて化粧もしている。
我が国にもこういった男性はいるが
自分より…自分と同格のガッチリ男性
「……君のお店に案内してくれ。」
「まっ、お兄さんうれしい。案内
しちゃうしちゃう。サービスしちゃうわねぇ。」

案内された場所は地下一階。
清潔そうな階段には手すりがついており
魔道具の灯りで照らされ、夜とは
思えないほどの明るさだった。
お店の入り口には、看板があり
その文字を読んだ瞬間、
"こんなところに!!"と思ってしまった。
正装ではないがいいのだろうか?と
思わず服装はこれでいいのか聞いてしまったが
「おしのびですかぁ?ノリがいいですねぇ。
服装はあなた様にお似合いですし
お気軽にどうぞ!!」
と笑顔で腕を絡めながら言ってくれたのだった。
少々、絡められる腕がたくましいとか
声色が作られた高い声だとしても
目をつぶってれる範囲だ。
我が国にもこういった思考のものも
かなりいるから、別段なんとも思わなかった。
エドリックは、ここなら大丈夫だと
思ってしまったのだった。
あとは交渉のみだ。
「新規のお客様ですねぇ。初めましてぇ
ママのリリーですわぁ。"王侯貴族の
隠れ家"のお店にようこそ!!」
「あぁ。」
「お飲み物はどうなされますかぁ?
ただいま中世の中性によるチュウセイ
ヨーロッパ風キャンペーンをしています。
こちらからお選び下さい。こちらは、
キャンペーン外ですので、その都度
料金がかかります。あと10分ほどで
当店自慢の子のちょっとしたショーが
始まりますので、ショーが終わり次第
お気に入りの子とおしゃべりも
可能ですので、ごゆっくりお楽しみくださいませ。」
「あぁ。」
メニュー表にはしっかりとした
料金や料理説明があった。
わかりやすい。
温かな"おしぼり"というものを
手渡されにっこり笑ってくれた。
これは何をすればいいのかわからず
ぼうぜんとしてしまったが、それに
ついても丁寧に教えてくれた。
ニホン独自の"おもてなし"らしく
まだ頼んでもないのに、冷たいお水と
おしぼり、そして"つきだし"と呼ばれる
イッピン料理が小鉢に盛られ出てきた。
"オハシ"と呼ばれるものがうまく
使えなかったが、さりげなく
「ごめんなさい。うっかりしてしまったわぁ。」
とフォークを差し出してくれたのだった。
このお店の料理も美味しくいただき
ショーも、結果的にすごいとしか言えなかった。
際どいハレンチな下着や服を身につけた
男性たちが大音量な音に合わせながら
見たこともない踊りを見せてくれた。
思わず魅入ってしまったかもしれない。
王子のタメになる人物なのかもしれない。
そう思いも込め、異世界に興味はあるのか
意思確認した後、その3日後
再度会う約束をした。
その店のママと声をかけてきた者が
異世界に興味があるとの事で話をした。
そして3日後の今日、あらゆる魔道具の中の一つ
玉を2つ取り出して発動した。
大荷物を抱えた2人は、「先に行っとくわね。」と
たくましい腕を振っていた。
そして2人の希望者を元の世界、
俺がいた世界へと送ったのだった。

店の外に出ると外は暗いと思っていたが
眩しいほどの光を出す魔道具なのだろうか?
あちこちに所狭しにあふれていた。

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