トリップリップ☆パラディン

カヨワイさつき

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プロローグ

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「け、結婚して欲しい。」
「いっ?えっ?!いや、それは出来ない。」
「い、いつならいいんだ?」
「……だ、だから、無理です。」
「す、好きだから頼む。」
「むっ、無理です!!」
「す、好きなだけじゃなく愛してる。」
「る、るぅ…る、ルビーの指輪。」
「わ、わかった。すぐに準備する。」
「る、る、るるるるるぅ………ちがうっんっ!!」
パラディン(聖騎士)は口角をわずかに上げ
焦っている相手に近づきそっと口付けをおとした。

この2人は魔法の練習をしていたはず。
初級の魔法、お互いそれぞれに
火の玉を出しながらの"しりとり"という
言葉遊びをしていた。
騎士団の団長からパラディン(聖騎士)
となった彼が、火の玉を片手に
ひ弱な男性を脅してるようにも見えた。
「今日も平和だねぇー。」
と王子は呟いた。

     ***

時は遡(さかのぼ)ること数百年前。
ルコニー王国の魔力持ちの減少と
少子化は深刻化していた。
魔力を持つ子どもどころか、子どもの
出生率も悪くなっていったのだった。
危機を感じた者たちは、魔力のある者同士の
交わりを強要していた。
魔力の強い子を得ようと王族を始め
貴族たちは魔力持ちの者に強制的に
交わらせた。そして当たり前のように
拐(さら)い、そして当たり前のように犯した。
拒否からくる魔力暴発を起こし、魔力持ちは
さらに数を減らしていた。
知恵を絞り出した者たちは魔獣などを
討伐する為に魔道具の開発が進んでいた。
しかし高い魔力を持つ人が少ない上に、
高齢化は進みさらに自然災害や
魔獣による作物被害も重なり
人口が減っていったのだった。
時とともに滅びるのを待つばかりとなった時
とある遺跡から一冊の古びた魔術書が発見された。
それは異なる世界から魔力あるものを
召喚出来ると記された古語で書かれた
魔術書だった。
解読するのに時を取られながらも
わずかな希望をもとに解読されていった。
そして異なる遺跡やダンジョンから
説明の付かない魔法具までもが発見された。
それを元に研究者たちの長年の成果、
魔法具と魔術書の解読が次々と
されていったのだった。

     ***

「エドリック、頼みがある。」
「はっ。なんなりとお申し付け下さい。」
この時、俺はこんな事になるなんて
考えもしなかった。
「俺のタメになる者をみつけてきてくれ。」
「はっ?」
片膝を付き王子に敬意を表していたが
思がけぬ王子のお言葉に、理解が
追いつかなかった。
「準備は出来ている。期間は長くとも
7日が限度だ。言葉や読み書きも
補正があるからたぶん…大丈夫なはずだ。」
「……たぶん、ですか?」
「エドリックだから頼める事だし
見る目がある。お前なら任せれる。」

王子が産まれる前から異なる世界から
魔力のあるモノが何度か召喚されていた。
魔力が少ない者同士が補い合って
約10年程貯めた魔力を使い召喚していたのだった。
幼い王子のずば抜けた魔力と頭脳で
開発、改良を重ねた召喚の為のいくつかの
魔道具を王子の護衛であるエドリックに手渡した。
研究熱心な王子は言葉たらず…説明不足
だったかもしれない。
王子には長年思っている相手がいた。
出来ればその相手が幸せかどうか
見てきてほしい、願わくばその人を
連れてきて欲しいと思いながら、
思入れあるとある場所にエドリックの
転送先を設定した。
そう思っている間に、色々な必要な物を
エドリックに手渡しものの数分で
エドリックにとっては見知らぬ場所に
放り出したのだった。

近年の魔道具に改良を重ねた事により
新たな魔道具を実践する事も兼ねていた。
アーロン王子の大量の魔力を使いながら
近年発見された魔法陣を使い異世界に
送り出されたのだった。
異世界に渡ることにより帰って来た時には
魔力が数倍にもなれるらしい。
異世界の者たちも、ルコニー王国に
到着した時、魔力などやさまざまな
特定の何かが付与されるそうだ。

ここはなんだ?
視界がブレたと思ったら長いのか
短いのかわからないが、酷く酔ったような
感覚に陥(おちい)ってしまった。
まるで魔力酔いや魔力をごっそり
使った後の気だるさもあった。
もうここは異世界なんだと自覚はあった。
先程まで着ていた着慣れたいつもの服は
見慣れない形の黒っぽい服になっている。
首元には見慣れないヒモの様なもので
キッチリとしめられていた。
この服装でいいのか?と疑問に思ったが
それは杞憂(きゆう)に終わった。
人がすれちがえれる程度の暗くて細い道。
空気は澱(よど)んでいるように感じていた。
高い建物に、なんの素材で出来ているのかは
全く分からないが地面は固かった。
暗い場所から明るい場所に目を向けた。
なんという人の数だ。
同じような服装や、色とりどりの見慣れない服。
驚愕するような服装。
あの様に短いスカート!!あっ、ありえない。
なんとも破廉恥な!!
若い娘どころか、それなりの年代の者も
短いスカートや肌を露出した服装が多かった。
長い見慣れたドレスを着た貴婦人は
どこにもいなかった。
忙しく歩く者の中に、見慣れない乗り物や
高速で動く箱型の何か……。
賑やかな音と、色とりどりの街。
馬車とは違うが、魔道具なのか?
しばらく動けずに観察していたが
やるべき事をやらなければならないと
思い出し未知なる場所へと
恐る恐る重い一歩を踏み出したのだった。
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