トリップリップ☆パラディン

カヨワイさつき

文字の大きさ
上 下
2 / 19

1、免許取得

しおりを挟む
"カオル"
俺の親友で、身体の弱いカオルは
学校を休みがちで入退院を繰り返す様になった。
俺のグチや学校であった事をいつも
にこにこしながら聞いてくれていた。
帰るときには捨てられた子犬のように
目を潤ませながら「また、来てね!」
と言うから時間が許す限りそばにいた。
だが何のために、頑張ってきたのかわからなく
なってしまった。
目の前には、痩せこけた幼なじみで、
俺の親友がいる。
中学生の時、風邪の症状で受診した
"カオル"は、たびたび体調を崩していた。
近所のクリニックや、小さな診療所を
転々としたが、風邪とみなされ
一般的な風邪薬を処方されていた。
身体の弱いカオルと思っていた。

この地域では比較的大きな総合病院である
俺の祖父母や父母が働いてる病院に
"カオル"の両親は、紹介状を持ちやってきた。
その結果、白血病とわかった。

皮膚と骨の表面を局所麻酔を
するはずだったが、説明の段階で
カオルは顔色さらに青くし青白いを
通り越して気絶したくらいか弱くて、
怖がりだった。
結局は、全身麻酔になった。
骨の中に太い針を刺して骨髄液を吸引し、
薄く延ばした標本を色素で染色後に
顕微鏡で検査して診断。
白血病芽球が1個でもみつかれば
白血病と診断でき、白血病の芽球と
正常の芽球を細胞の形態だけで
鑑別することは容易ではないので
芽球が5%以上の時を白血病芽球と
みなしているらしい。
わりと裕福なカオルの両親は、
早々に見切りをつけたのか、次男を
跡取りとしたのか、入院中は
手続きの時だけとか、どちらかが
くる形になり、数年後には代理の者だけが
来る様になっていた。
カオルは入退院を繰り返していたが
淋しい部屋にポツンといるだけだった。

俺はカオルを治してあげたいと思い
医者になる事を決め猛勉強した。
カオルの病室で勉強する事もよくあり
「僕のお見舞いなの?それとも
勉強部屋がわりなの?」
とカオルは微妙な笑顔をしていた。
その時の俺はたぶん、「お見舞いだ!」
とか言ってた気がする。
ある意味、勉強出来る場所が良かったからか
カオルの主治医にも試験勉強でわからない所を
聞けたからか、俺は無事に
18歳で医学部に現役合格して、
6年間学んだ後の24歳で医師免許取得。
最短年齢でとり、そこから2年の
臨床研修(前期研修)を終え26歳
開業可能、勉強漬けの毎日のおかげで
最短年齢で小さな診療所を開業した。
それなのに……。
自分の診療所を開業した日、
カオルは静かに息をひきとったのだった。

何のために医者になったんだ?とか
カオルの為なのに…なぜ俺は
間に合わなかったのだろうか、とか
自分を責めてしまっていた。
開業した早々、俺は半年くらいふさぎこみ
その間、開業したばかりの小さな診療所は
引退した祖父母と、5人兄弟のうち俺は
3番目だが、兄たちが代わる代わる
医師をし、雇いの医師も派遣してくれた
お陰でなんとか体裁を保てたのだった。

やりきれない思いが残ったままの俺は
自問自答しながら、自分の診療所を
皆に助けられながらなんとか続けた。
小さな診療所は、一階は診療所、
2階は看護師などの休憩するためのスペース。
3階は自宅スペースとなっていた。

セミが、ジゲジゲ泣いてるように聞こえる。
ジゲジゲ、シクシク……。
地毛?地毛?と聞かれたあと泣いているようだ。
地毛が薄毛の人にはセミが憎く
思えるような暑い日。
幸いな事に30歳になる俺は
フサフサである。
まだ、たぶん大丈夫だ。
大丈夫なはず……。
一層のこと、スキンヘッドでもしたいと
思ったが、両親や兄弟なぜか祖父母までもが
その髪型はしないでくれと泣かれた。
懇願どころが、泣かれたのだ。
頭の形はゆがまないように親が
頑張ってくれたからかそこそこ
いい形だから、丸坊主でも
恥ずかしくないはず。
それなのに昔にスポーツ刈りにしただけでも、
顔をしかめられたのだった。
祖母、母譲りの女顔に童顔。
30歳なのに、20歳前半か下手すれば
学生に見られる。
髪の毛はそこそこ長いし、勉強や仕事に
没頭し油断すれば、肩甲骨より
下あたりまでの長さになっていた。
髪ゴムで一まとめにする毎日。
伸びたら伸びたで髪の毛を切るのも
ものぐさになってしまっていた。

夜の診療も終え、看護師も帰り診療所には
家主の俺1人がポツンとしていた。
暇つぶしに、診療所に来る乳幼児の
注射する時に頑張ったご褒美にあげる
シールや色々な形の消しゴムの在庫の
確認や、待合室の絵本など整頓した。
あとは、その日使用したぬいぐるみや
おもちゃなども消毒したり、洗濯機に
ほうりこんだ。
「今日も疲れたぁー。コンビニ弁当箱か
出前どちらにしようかな?」
運動不足な身体をひきずりながら
徒歩数分のコンビニに到着。
サンドイッチ、パン数個、お菓子、
麺類とサラダ、甘いカフェオレなどを
たくさん買い込んだ。
「こちらのクジを3回どうぞ。」
700円毎に引けるクジが3回分、
我ながら、夜と朝ご飯にしては
買いすぎてしまった。
ブラックコーヒー2本、
栄養ドリンク一本が当たった。
3枚とも当たり幸運なのだろうが、
俺はブラックコーヒーが飲めないというか
ニガテだった。
看護師にでもあげようかな?
休憩スペースに、兄たちが持ち込んだ
コーヒーメーカーやらラテを作る
機械はあるが、俺はほぼ使っていない。
俺は、甘いカフェオレで市販品の方が
美味しく感じるお子ちゃま舌だ。
コーヒーの香りは好きだが、
ほろ苦さ?コク?そういうのは
わからなかったのだ。

clauseの札がかかった診療所の前を通り
裏口に行くと、変わった服装の男性が
うずくまっていた。
「大丈夫ですか?どうされましたか?」
「………。」
「私はここの医者ですので、体調が
悪いのでしたら診れますので……。」
「……すまない、かくまっ…いや、すまない
迷惑をかけた。」
立ち上がろうとしたが、ふらついた彼は
再びうずくまった。
なんとか座れたら……。
診療所に戻り、折りたたみ式の車椅子に
彼を乗せた。
身長差がありすぎて、支えにあまり
ならなかったが、裏口を開けて診療所に
入り、強引に診察する事になったのだった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

さよならの合図は、

15
BL
君の声。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

そんなの真実じゃない

イヌノカニ
BL
引きこもって四年、生きていてもしょうがないと感じた主人公は身の周りの整理し始める。自分の部屋に溢れる幼馴染との思い出を見て、どんなパソコンやスマホよりも自分の事を知っているのは幼馴染だと気付く。どうにかして彼から自分に関する記憶を消したいと思った主人公は偶然見た広告の人を意のままに操れるというお香を手に幼馴染に会いに行くが———? 彼は本当に俺の知っている彼なのだろうか。 ============== 人の証言と記憶の曖昧さをテーマに書いたので、ハッキリとせずに終わります。

年越しチン玉蕎麦!!

ミクリ21
BL
チン玉……もちろん、ナニのことです。

囚われた元王は逃げ出せない

スノウ
BL
異世界からひょっこり召喚されてまさか国王!?でも人柄が良く周りに助けられながら10年もの間、国王に準じていた そうあの日までは 忠誠を誓ったはずの仲間に王位を剥奪され次々と手篭めに なんで俺にこんな事を 「国王でないならもう俺のものだ」 「僕をあなたの側にずっといさせて」 「君のいない人生は生きられない」 「私の国の王妃にならないか」 いやいや、みんな何いってんの?

処理中です...