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34、ざんげ?

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リアンジュことオレは緊張していた。
中身32歳と今頃15歳、合わせて47歳の
童貞はもうすぐ卒業。
それにしても初夜の衣装ってなんで
こんなに色っぽいんだ?
紐パンはいつもだけど、誰が編んでくれた
レースなのかはわからないが
向こう側が透けるくらいの繊細な代物だった。
繊細なレースをこれまた繊細な重ね具合で
作られたパンツ、いや
これはパンティー様?だ。
実際、こんないやらしいパンティー様を
高貴なお方は履くのだろうか?
んっ?オレが履いてるから需要は
あったんだろうけど、ディオ様の趣味なのか?
上に着ているのはどう見ても
レースをたくさん使われた、やばい代物。
ベビードールっていう物か?
こんなぬたくさんのレース編み
どれだけ時間かかってるんだろう?
数ヶ月単位でかかってそうだ。
オレは小さなハンカチぐるり一周、
数ミリ幅を編むのに4ヶ月、つまり一辺を
ひと月かかって編み上げたのだ。
一つ間違えば全部解けたり、絡まったりして
糸が引きつったり、その逆緩んだりするたび
クロエも協力してくれて糸を解いて
またやり直していた。
そんな辿々しい未熟な作品を見たくないと
引き出しの奥深くに封印したはずが
いつのまにかなくなっていた。
気にはしなかったが、あんなにも
時間がかかった下手くそなレースあみの
ハンカチ、無くなったのは残念だが
ゴミに間違えられ捨てられたかも、と
思うとなんだかかなしくなる。
あの時はそう思っていた。
今日までオレが編んだレースのハンカチを
忘れてたけど、本日発見しました。
ディオ様の婚礼の衣装すごく
似合いすぎて眩しいと思ったが
1箇所似つかわしくない物が存在した。
胸元のポケットからチラ見せするかの様に
オレの無様なレース編みのハンカチが
使われていた。
あの衣装にオレのハンカチはヤバすぎる。
たしかにハンカチの色も素材も
高級な物とわかるんだけど、不揃いな
編み目のレースとは言えないレースは
無理だ。こんな事なら、もっともっと
頑張るんだった。
レース編みなんかクソくらいだとか
手が疲れるし、オレには不向きだ
こんな事やめたいとか心の中で
文句タラタラで編み上げた一品だ。
ディオ様ごめんなさい。
それ、返してぇぇぇ!!
結婚の儀式の間、ディオ様の胸元の
オレのハンカチから目が離せなかった。
気づいたら儀式は終わっていた。

     ***
話がズレてしまった。
レース編みは大変だと言いたかっただけ。
数センチ幅のレースなんてどう編んだら
こんな繊細な模様になるんだよ。
これ、パンティー様になってるんだよ、
額縁に入れても良いレベルのレース編みだよ。
同じくベビードールのレースもヤバいよ。
これ、隠す気ないよな、って代物。
危険なものに仕上がってるよ?!
下着の機能を果たしてない、危ない
思考を持つ物が楽しむ一品なのかもしれない。
高級なレースをこんな事に惜しみなく
使うなんて、レース様に謝れ!!

パンツはヘソの上、お腹を冷やすな?!
下半身冷やしたら病気になりやすい?!
身体は冷やしたらダメ!!
と不動産屋のおばさんが言っていた。
下着も服も夏は涼しく冬は暖かい素材がいい。
レース編みは高級すぎる。

不動産屋のおじさんとおばさんオレが
すぐ成長するからと言って大きめの
パンツや、初めてパジャマって言うのを
買ってもらった時、この世には
こんなにも温かな服があるんだと
知ったなぁ。懐かしい。
こんな下着やベビードールみたら
おばさん、倒れるかもな。
冬前に腹巻き付きのズボンとか、
くれた時あったなぁ。
「………クスッ。」
思われ思い出し笑いをしてしまった。
「リアンジュ?」
「!!!」
うぉ~い!!めっちゃビビったよ!!
ってなんやねんコレ、いや…この言葉使い。
関西弁って、この世界にあるわけないやんけぇ!
じゃなかった。
音もなくディオ様が寝室にご来店?
ご入室されましたとさ。
めでたし、めでたし。さあ寝よう。
「………。」
「……っ。」
じわじわシーツをめくり、ベットに
潜り込もうとしたが失敗。
視線だけははずさなかった。
お互い目を逸らさず見つめていたが
初めてディオ様に勝ったかもしれない。
「風邪をひく。」
沈黙を破ったのはディオ様だった。
沈黙もキツイ。
「あ、ありがとうございます?」
ディオ様は自分が着ていたガウンを
オレ(リアンジュ)の肩にかけてくれた。
オレはそれをベットから降りてガウンを
羽織ってみた。ディオ様のふくらはぎ辺りまで
あったガウンのスソは、オレが羽織ると
オレのくるぶしどころか、床に余裕で
ついていてまるで着物のの上掛けの様に見えた。
時代劇に出てくる身分ある姫さまとかが
着物を引きずりながら歩く感じに似てる。
「………クスッ。」
「機嫌が良さそうだな?」
ディオ様の眉毛がぴくっと動いた。
「はい、ディオ様に包まれてる様で
まるでお姫様になった気分です。」
「以前から姫であり、私の妻だ。」
「あっ、はい。だ、旦那様?!」
「ゴフッ!!!」
「だ、旦那様?」
「!!!」
珍しい、ディオ様が政略結婚とはいえ
夫なんだから、"旦那様"だよな?
"ご主人様"は、なんだか違うきがするし、
"あなた"はなんだか、他人行儀っぽく
感じるし、ダーリン?オレがダメージ
受けそうだ。1番しっくりしたものが旦那様だ
それともディオ様のままでいいのかな?
あっ、初夜の挨拶はした方がいいのかな?
旦那様に任せるってクロエは言っていたが
閨教育は恥ずかしくて、さらっと
聞いていただけだった。
挨拶した方がいいよな。しかも今日
結婚の儀式したし、挨拶は大切。
ここはビシッときめよう。
「旦那様、ふつつか者ですが
よろしくお願いいたします。
(オレも)いた、至らないかものもしれませんが
精いっぱい頑張りますので、優しく?
してください。お願いします?」
「………。」
オレは知らなかった。
この世界で、土下座して三つ指ついて
お願いする意味。
何らかの罪を犯し自ら相手に赦(ゆる)しを
請(こ)う、という意味。
両手を突き出し、無抵抗な意志を
貫(つらぬ)くという意味もあった。
それを知らないリアンジュであるオレと
意味を知っているディオは、戸惑っていた。

*ディオ目線*

リアンジュは15歳2ヶ月15日、
私は27歳0ヶ月0日、私の誕生日と
結婚の儀式を一緒にしたのだった。
リアンジュの誕生日にしようとしたが
ドレスなどの都合上、余裕を持ち
私の誕生日の日にした。
儀式を3回にした方がいいとの
意見もあったが、わざわざお金がかかる
事に、遠方からの貴族等を3回も呼ぶほど
酷な事はしたくない。
それでなくとも、収穫期や水害などの
爪痕が残るこの時に費用がかかる事は
したくなかった。
来年あたりまで婚姻を伸ばそう言う案も
あったが、来年まで婚約者を不安定な
身分にしたくはなかった。
確実に自分の妻であると言う儀式を
したかった。
魔物狩りのあと気持ちが昂ぶり
娼館に行く者や同じく戦った仲間同士で
慰め合うという場面を何度か見た事があるが、
魔物狩りの遠征では、魔物を倒すと
スッキリするだけでそちらの方面は
ないに等しかった。
淡白どころか興味がなかった。
私のリアンジュが人形のようだと
うわさされているが、人形のようなのは
私とて一緒だ。感情がないわけではないが
リアンジュが、可愛いとか、心配だとか
色々あるが見守りたいという気持ちが
1番しっくりきた。
だが、事故があり1週間近く目覚めない
と聞いたときには犯人に対して
怒りを感じたし、やせ細ったリアンジュを
この部屋に連れてきた時には、
何者からも守る事で精いっぱいで
リアンジュの数少ない言葉一つ一つに
じっくり考え、本心からなのか
見極めてきたつもりだった。
だが今回のベットの上で土下座に
三つ指、まるで赦しを乞う罪人のように
私に何を訴えたいのか………。
「………。」
12歳の歳の差、感情が出にくいこの顔
冷酷非情とうわさされる私に
抱かれたくないとの意志なのか?

「旦那様、ふつつか者ですが
よろしくお願いいたします。
(オレも)いた、至らないかものもしれませんが
精いっぱい頑張りますので、優しく?
してください。お願いします?」

私に対して好きではないから
されても、いたらない、イク事は
ないとのことか?それでも
精いっぱい頑張る?
しかも、私に優しくしてくれだと?
好きではない男に抱かれたくないが
大貴族として頑張るからという事か?
幼げな顔立ちに、花の妖精の様であり
私はあった事はないが、淫魔という
魔物がいたらこんな感じなのかと思った。
可愛いのに妖艶。
私の下半身が反応した気がした。
リアンジュを見ただけでこうなるなんて。
目に毒だと思い、私のガウンを
羽織らせたが逆効果だった。
「………クスッ。」
ベットからふんわり降り立ち
うれしそうに先程まで私が着ていた
ガウンをリアンジュが羽織っている。
襟元を手繰り寄せ、妖艶なリアンジュは
なりをひそめ、可愛いリアンジュが
クスッと笑っている。
「機嫌が良さそうだな?」
可愛いと、素直に言えばいいのに
なぜ私の口はこんな事しか言えないのだろうか。
知識を深めるためにあらゆるジャンルや
歯が浮くどころか溶けそうなほど甘い言葉が
のっている本も見たが、好みの者に
ここまで飾りたてた言葉を言わないと
いけないのかと恋愛するのは
面倒だと感じていた。
だが、好みの者に素直に言葉が
出ない場合、今の私の様に言葉に詰まって
しまった時、あの様な飾り立てた
言葉が必要なのかもしれない。

「はい、ディオ様に包まれてる様で
まるでお姫様になった気分です。」
お姫様って、君はずっと私の可愛い
祐逸のお姫様だ。
「以前から姫であり、私の妻だ。」
「あっ、はい。だ、旦那様?!」
「ゴフッ!!!」
リ、リアンジュ?なぜ、そんな呼び方をする?
全くの他人行儀どころか主従関係の様だ……。
確かに私と君は政略結婚だが、私を
名前で呼ぶのも嫌になってしまったのか?!
「だ、旦那様?」
「!!!」
小首を傾げたリアンジュに、私は
抱きしめたい衝動に駆られると同時に
あまりの距離感に悲しくなった。

"旦那様、ふつつか者ですが
よろしくお願いいたします。
(オレも)いた、至らないかものもしれませんが
精いっぱい頑張りますので、優しく?
してください。お願いします?"
「………。」
リアンジュの言葉が、頭の中を何度も
何度も繰り返していた。
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