【本編完結】異世界で政略結婚したオレ?!

カヨワイさつき

文字の大きさ
上 下
14 / 46

12、外出準備

しおりを挟む
*ディオと乳兄弟であるリアムとの会話*

ディオは柳眉(りゅうび)をピクッと動かし
何かを考えた後、言葉を発した。
「まことか?」
「はい。本人みずから申していました。」
リアムの瞳を鋭い目つきで見るディオに
リアムは慣れているとはいえ、内心
冷や汗をかき続けていた。
「誰かにそそのかされた可能性は?」
それはないと思うよ。かごのトリのように
毎日毎日部屋に閉じこもっているし
この俺が思うのも変だけど
何だかリアンジュ様が可哀想に思えるよ。
もっと、お日様の光を浴びて
元気になって欲しいよ。
「念の為、私がお伺いしましたが
ハッキリと仰られていました。」
「……。」
ディオの乳兄弟として育ったリアムは
ディオの声のトーンで混乱している事を
知るが口には出さなかった。
しばらく2人は沈黙した後、リアムは
静かに部屋を出たのだった。
城下町散策、ダメかもな……。

                        ***

*リアムとリアンジュの侍女頭との会話*

「リアンジュ様が、他の者と接触したか?」
「お部屋にいらっしゃる方以外でですか?」
侍女頭はいつもはおったりした性格で
いつも温かな笑顔だが、仕事に関しては
キビキビと年齢を感じさせない動きをし
他の侍女はもちろん使用人どころか
ディオ様から信頼を得ているうちの一人である。
年齢的には自分から見て親の親、
つまり祖母位の年齢だった。
後任を決め引退するはずだった彼女を
引き止めたのはディオだった。
監督的立場でいいし、リアンジュの
話し相手になってくれと頼んだらしい。
肩書きはリアンジュ様の相談役兼侍女頭。
「そうだ。んっ、リアンジュ様の乳母殿や
乳母御一家が何のものかと接触し
何か吹き込まれた可能性は?」
侍女頭はリアムが何を言いたいのか
わかったと同時に、乳母のクロエ一家が
リアンジュ様に不利になる事を
するはずがないと憤りをリアムに
ほんのわずかにみせた。
「影のものもついてるでしょうから
ご存じだと思いますが、リアンジュ様同様
クロエ一家にあやしい言動や暗号など
みうけられませんでした。」
リアンジュと乳母一家を娘と孫の様に
可愛がっている侍女頭にとって
乳母一家に疑いがかかったことに
リアムに対して語尾を鋭く言い放つ
結果となってしまったのだった。
「では、本当に本人自らの提案なのだな。」
「はい。」
侍女頭のいつものほんわかした雰囲気は
どこにもなかった。
「……心得た。殿下にお伝えする。」
リアムは役職ながら人から睨まれたり
恨まれるのはよくある事だったが
ディオの元侍女頭であった人物を
リアンジュを守る為リアンジュの
侍女頭にしたディオ。
イタズラをして怒られるのはいつも
乳兄弟たちだったが、
「大きくなった時自分の側近になり得る
者たちだから、やっていい事と
やってはいけない事をちゃんと
学びなさい。」とディオまでとばっちりで
叱りつける侍女頭だった。
そんな侍女頭にいまでも
頭が上がらないリアムだった。

       ***

「………以上、侍女頭や他の主要メンバーに
聞き取りしましたが、接触及び会話など
していないとの事でした。」
内心ため息をつきながら、確認
してきたんだから褒めて欲しいって
思ったリアムだった。
「手紙やメモは?」
「こちらです。」
「……これは、なんだ?」
「さあ?顔がにっこりしてますね。」
「……ここにも。」
「舌を出してますね。何だかかわいい絵ですね。」
毎回の食事にお城のディオ専属のシェフの
メニュー表に、一品ずつ例の謎の顔が
書かれていた。

「ここに来られてから1週間後、
そしてこちらがそのまた1週間後です。
お花や星でしょうか?
かわいい絵が増えましたね。」
シェフが大切に保管していた物だった。
魔法の鍵がかかる入れ物にいれていたから
シェフも相当大切な手紙なんだと思い
借りてきた物だった。
「……。」
ディオ専属のシェフはそれぞれの王子専属の
シェフとは違い、ディオの側近や
使用人用にも料理を作っていた。
王子専属のシェフは基本、王子1人だけの為に
食事を作るのだが、第一王子である
ディオが軍で使われている携帯食、
非常食を主食としている為、作った食事は
ほぼ食べられる事がなく、毎回
ディオ以外の者に下げ渡されていたのだった。
腕が悪いわけではなく、むしろこの国で
2番目に腕のいい料理人であった。
この国1番は、国王専用の料理人で
あとは第一王子、第二王子、第三王子と
2番手、3番手と続くのであった。
その2番手の料理人とリアンジュとの
やりとりは侍女頭やリアンジュ専用の
キッチンメイドを通じやりとりされていた。
ディオ専属のシェフは料理の具体的な
感想を貰えてすごく喜んでいた。
いつも食べられる事がない食事に悩み
今までに何度かディオの側近や使用人に
食事の感想をもらっていたが、皆口裏を
合わせた様な感想や、当たり障りない
感想ばかりだったので、感想を
求めるのをやめていた。
そんな時、リアンジュからの返信を
見た時、顔マークの意味はわからなかったが
なんだか心の中がぽかぽかしたシェフだった。
最近でのやりとりでは、料理の
メニュー表の最後に、総合的な食事の
感想とお礼が書かれていた。
それからは、以前にも増して料理人として
研究熱心になっていった。
リアンジュの料理感想の御礼に返礼の
言葉をのせメニューを書くシェフは
料理を作ったあと、どんな感想がくるのか
毎回の楽しみになっていた。

全体的に脂っこいのでさっぱりした物も
欲しい…とか、逆に、さっぱりしすぎだとか
味が物足りない、ピリッとした調味料や
ハーブ、ワインを入れてみてはどうか?
焦げ目の付け方や、挿し絵付きで
食材の切り方などの具体的な事まで
提案しており、まるで料理人同士の
やりとりのようであった。
自分専用のキッチンを欲しがる訳だと
ディオとディオの乳兄弟リアムは思った。
「感想書くのが、めんどうになったのかな?」
「……。」
普段から無表情だったディオが
リアンジュの事に関して思案する時
ディオの表情がわずかながらに動く事に、
リアムは良い傾向だと思っていた。
感想を超えた感想だと思うよ。
美味しい、まずいの感想とは違って
具体的すぎる内容だし、シェフが
大切にするのもうなずけるよ。
リアムは、リアンジュへの見方を
人形から人に変化中の人形姫と
改めたのだった。

      ***

「貴族がよく行くお店中心に、うちの団が
よく立ち寄る店、あと時間が合えば
3日前から今月末まで滞在許可している
サーカス団を見学出来ます。」
「……。」
ディオの目の前に第二王子である
オリヴァーお手製の地図を広げ
指さししながら説明していた。
「その他は、こことここもオススメだが
もうちょい大人になってからの方が
いいなあと思うけど……。」
「……必要ない。」
ディオは、第二王子のオリヴァーをにらんだ。
「ち、違う。変な意味はない。
ここは飯が美味いから食事だけでも
いいんだが、調味料とか
ピリ辛で酒のアテになる味付けなんだよ。
女将に話を聞いたら小分けで
調味料も売ってくれるみたいなんだ。
料理好きなら珍しい調味料とか
妃殿下が興味もつかと……。」
連れ込み宿を兼ねた、冒険者にも人気の
安宿だった。
ディオのきれいな額に青筋が浮かべ
悩んでいるようだった。
「……。」

「お前が指揮をとり必ず守れ。」
「はい。安心してまち歩きデートしていいよ。」
ディオはにこにことしている第二王子である
オリヴァーをギロっと音がしそうなくらい
にら見つめたがオリヴァーはニコッと
した後肩をすくめただけだった。

当初リアンジュの要望である外出は
ディオが忙しい為許可が降りなかったが
ディオの乳兄弟と第二王子、第三王子たちの
協力で貴族の謁見や地方からの報告書
陳述書などさばき、ディオとリアンジュとの
時間を作る事に成功したのだった。
第二王子と第三王子やその側近たちは
ほぼ徹夜続きで仕事をこなしたのだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

涯(はて)の楽園

栗木 妙
BL
平民の自分が、この身一つで栄達を望むのであれば、軍に入るのが最も手っ取り早い方法だった。ようやく軍の最高峰である近衛騎士団への入団が叶った矢先に左遷させられてしまった俺の、飛ばされた先は、『軍人の墓場』と名高いカンザリア要塞島。そして、そこを治める総督は、男嫌いと有名な、とんでもない色男で―――。  [架空の世界を舞台にした物語。あくまで恋愛が主軸ですが、シリアス&ダークな要素も有。苦手な方はご注意ください。全体を通して一人称で語られますが、章ごとに視点が変わります。]   ※同一世界を舞台にした他関連作品もございます。  https://www.alphapolis.co.jp/novel/index?tag_id=17966   ※当作品は別サイトでも公開しております。 (以後、更新ある場合は↓こちら↓にてさせていただきます)   https://novel18.syosetu.com/n5766bg/

不憫王子に転生したら、獣人王太子の番になりました

織緒こん
BL
日本の大学生だった前世の記憶を持つクラフトクリフは異世界の王子に転生したものの、母親の身分が低く、同母の姉と共に継母である王妃に虐げられていた。そんなある日、父王が獣人族の国へ戦争を仕掛け、あっという間に負けてしまう。戦勝国の代表として乗り込んできたのは、なんと獅子獣人の王太子のリカルデロ! 彼は臣下にクラフトクリフを戦利品として側妃にしたらどうかとすすめられるが、王子があまりに痩せて見すぼらしいせいか、きっぱり「いらない」と断る。それでもクラフトクリフの処遇を決めかねた臣下たちは、彼をリカルデロの後宮に入れた。そこで、しばらく世話をされたクラフトクリフはやがて健康を取り戻し、再び、リカルデロと会う。すると、何故か、リカルデロは突然、クラフトクリフを溺愛し始めた。リカルデロの態度に心当たりのないクラフトクリフは情熱的な彼に戸惑うばかりで――!?

【完結】婚約破棄したのに幼馴染の執着がちょっと尋常じゃなかった。

天城
BL
子供の頃、天使のように可愛かった第三王子のハロルド。しかし今は令嬢達に熱い視線を向けられる美青年に成長していた。 成績優秀、眉目秀麗、騎士団の演習では負けなしの完璧な王子の姿が今のハロルドの現実だった。 まだ少女のように可愛かったころに求婚され、婚約した幼馴染のギルバートに申し訳なくなったハロルドは、婚約破棄を決意する。 黒髪黒目の無口な幼馴染(攻め)×金髪青瞳美形第三王子(受け)。前後編の2話完結。番外編を不定期更新中。

Switch!〜僕とイケメンな地獄の裁判官様の溺愛異世界冒険記〜

天咲 琴葉
BL
幼い頃から精霊や神々の姿が見えていた悠理。 彼は美しい神社で、家族や仲間達に愛され、幸せに暮らしていた。 しかし、ある日、『燃える様な真紅の瞳』をした男と出逢ったことで、彼の運命は大きく変化していく。 幾重にも襲い掛かる運命の荒波の果て、悠理は一度解けてしまった絆を結び直せるのか――。 運命に翻弄されても尚、出逢い続ける――宿命と絆の和風ファンタジー。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

【本編完結】最強S級冒険者が俺にだけ過保護すぎる!

天宮叶
BL
前世の世界で亡くなった主人公は、突然知らない世界で知らない人物、クリスの身体へと転生してしまう。クリスが眠っていた屋敷の主であるダリウスに、思い切って事情を説明した主人公。しかし事情を聞いたダリウスは突然「結婚しようか」と主人公に求婚してくる。 なんとかその求婚を断り、ダリウスと共に屋敷の外へと出た主人公は、自分が転生した世界が魔法やモンスターの存在するファンタジー世界だと気がつき冒険者を目指すことにするが____ 過保護すぎる大型犬系最強S級冒険者攻めに振り回されていると思いきや、自由奔放で強気な性格を発揮して無自覚に振り回し返す元気な受けのドタバタオメガバースラブコメディの予定 要所要所シリアスが入ります。

異世界転移で、俺と僕とのほっこり溺愛スローライフ~間に挟まる・もふもふ神の言うこと聞いて珍道中~

兎森りんこ
BL
主人公のアユムは料理や家事が好きな、地味な平凡男子だ。 そんな彼が突然、半年前に異世界に転移した。 そこで出逢った美青年エイシオに助けられ、同居生活をしている。 あまりにモテすぎ、トラブルばかりで、人間不信になっていたエイシオ。 自分に自信が全く無くて、自己肯定感の低いアユム。 エイシオは優しいアユムの料理や家事に癒やされ、アユムもエイシオの包容力で癒やされる。 お互いがかけがえのない存在になっていくが……ある日、エイシオが怪我をして!? 無自覚両片思いのほっこりBL。 前半~当て馬女の出現 後半~もふもふ神を連れたおもしろ珍道中とエイシオの実家話 予想できないクスッと笑える、ほっこりBLです。 サンドイッチ、じゃがいも、トマト、コーヒーなんでもでてきますので許せる方のみお読みください。 アユム視点、エイシオ視点と、交互に視点が変わります。 完結保証! このお話は、小説家になろう様、エブリスタ様でも掲載中です。 ※表紙絵はミドリ/緑虫様(@cklEIJx82utuuqd)からのいただきものです。

タチですが異世界ではじめて奪われました

BL
「異世界ではじめて奪われました」の続編となります! 読まなくてもわかるようにはなっていますが気になった方は前作も読んで頂けると嬉しいです! 俺は桐生樹。21歳。平凡な大学3年生。 2年前に兄が死んでから少し荒れた生活を送っている。 丁度2年前の同じ場所で黙祷を捧げていたとき、俺の世界は一変した。 「異世界ではじめて奪われました」の主人公の弟が主役です! もちろんハルトのその後なんかも出てきます! ちょっと捻くれた性格の弟が溺愛される王道ストーリー。

処理中です...