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翌日

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翌日、ミリは使用人部屋から客室の
ふかふかベットで目を覚ました。
料理人見習いの為、早朝に目覚め
仕事場にいつものお仕着せを着て
行くと、ヴィル王子預りでミリは
とうぶん厨房で働かなくていい事に
なっていた。
驚いたミリだったが、忙しく働く
同僚や、先輩、上司の姿……。
忙しい朝の厨房……。
つい見かねて、いつも通り野菜などを
洗い皮むき。それが終われば、
調理器具を洗うミリ。
料理人見習いの仕事というより、
雑用が主な仕事だった。

洗い物が終わりかけた頃、盛り付けが
終わった数々の料理が、部屋ごとの
ワゴンに乗せられ、部屋付きメイド、
専属メイド、その他の使用人がワゴンを
引きながら、料理人からの料理説明を
聞いていた。
それぞれの主人に、料理内容を
聞かれてもいいようにメモをとる者もいた。

「ここに居た。」
「……。」
「ヴィル王子、ミリを発見しました。」
「……えっ?」
ミリは引きった表情で、シヴァーディーを
見上げていた。

「伝え忘れてたね。ごめんね、ミリちゃん。」
「総料理長、またまたミリちゃんを
さらっていくけど、ごめんなさいね。
ついでに、朝ごはんも3人分
もらいたいんだけど、いいかな?」
総料理長は、親指をたててOKを出した。

「ありがとう。総料理長、そして皆さんも
お騒がせしましたー。」
厨房にいた皆は、忙しいはずの作業の
手を止めてシヴァーディーに頭を下げていた。

「……。」
「さっ、ミリちゃんは私とヴィル様の所に
行こうね。」
「えっ?は、はい。」

長い入り組んだ廊下をシヴァーディーは、
ミリの手を握りゆっくり歩いていた。
「手……。」
「んっ?手がどうしたの?」
「なんだか懐かしい……。」
「そう、私もなんだか懐かしいわ。」
シヴァーディーは、ミリに優しく
笑いかけていた。
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