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ミリ

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「私……。実は……。」
話してくれそうだか、かなり
いいにくいのか、言葉になっていなかった。
「……。」
「言える時でいい。無理するな。」
「ち、違うんです……。」
「んっ?」
何が違うんだ?
あー、ミリは男の子っぽいが、女の子だし、
泣いてる……。
こんな時、どうするんだ?
優しい言葉か?
泣くな。っとか言ってなぐさめる?
それとも、大人の余裕って感じで
じっくり話を聞く体制にした方がいいのか?
俺には無理だ。どうしたらいいかわからない。
シヴァーディーなら、上手く話を
聞いてくれるかもな。

「私…こことは違う世界から…来たんだと
思います。」
「そうか。馴染みのない世界にきて、
不便だっただろ…大丈夫か?」

ミリはさらに、泣いてしまった。
「や、やっぱり、信じて貰えない……。
私なんか、私……。」

「信じる。今の君には、信じるって
言っても、聞き入れてくれるか不安だがな。」
彼女は、キョトンとして涙目で
俺を見上げていた。

「信じる、信じないは、簡単に
言える事じゃないが、別の世界、
異世界が存在するのは、なんとなく
わかる。現に俺が、異質で、
誰にも言ってないが、前世の自分が
違う世界にいたって言う、記憶がある。」

「王子さ、まが…。」

「信じてくれなくていいし、他の者より
魔力が多く、破壊王子とか、魔力暴走も
よく起こしていたから、皆からは
忌み嫌われている。」
「そ、そんな、ヴィル王子様は、かっこいいし
素敵だし、安心感あるし……。それに、
優しいと思います。」

うわぁ、なんだ、これ。
オリービアに言われたら、即抱きしめ、
即キス、即ベット…ってなりそうな
破壊力ある褒め言葉ばかりだ。

「あ、ありがとう。照れる。」
「い、いえ。こちらこそ。」
お互い頭を下げていた。

「ミリは、どんな世界から来たんだ?」
「私は…。小さい頃、神社でお友達と
隠れんぼして遊んでたの……。」
「……。」
「絶対見つからない場所と思って、
お堂って言うのかな?格子がある扉を
開けて、御神体……。いつもは、
先生に入ったらダメって言われてたところに
入っちゃったの……。」
「先生?御神体……。」
「あっ、私……。両親がいないの。先生は
保護施設って言うのかな?18歳までの
子どもを集めた施設で、私は幼児クラス
だったの。敷地内に、小さな鳥居があって
私たちは、神社って言ってたの。」
ミリは、懐かしそうに話してくれていた。
俺はそれを、静かに聞いていた。

「隠れんぼしてたら、眠くなってきて
いつのまにか、寝て起きたら、鳥居も
格子もない、草を敷き詰めた布のベットに
寝ていたの。」
「起きたら、ここの世界か……。」
「確かハルルーン王国とか、スラムとか
言ってたから、私はそこで魔術師さんみたいな
方に出会って、あとは…。」
「シヴァーディーに、出会ったのか?」
「似てるようだけど、小さかったから
私3歳位の記憶なの。懐かしいって
魔術師様からは…なんだか、そう感じはしたわ。」

行方不明になった幼児の1人がミリ?

「それから、立派な建物に連れられて、
立派なお屋敷で、生活してたんだけど
追い出されてからは、冒険者登録して
生活してたのよ。」
「か、髪の毛は?」
「あっ、これ?伸び放題だったんだけど、
髪切り魔?にあったから、長さそろえたの。」
「辛かっただろー…。」
「長かったら、長いで邪魔だったけど、
短くなったら、なんだかスッキリかな?
切られたときは、ショックだったけど
命があっただけ、マッシって思ったわ。」

俺は、ミリの頭をポンポンしていた。
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