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数週間後

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シヴァーディー・カテドラルが領地に
戻り、数週間が経っていた。

ヴィル王子は、毎日オリービアの部屋に
行き魔力を吸いとってもらっていた。
オリービアは、ヴィル王子に出逢う前まで
悪夢にうなされ、夢と現実の狭間で
1日の大半をベッドで過ごしていた。

今では、起き上がって食事をとることも
出来るようになり、食事量も増えていた。
身体の筋力を上げるために、ヴィル王子と
少しずつ城の中や、庭の散歩を長くし
回復していった。

オリービアの、艶やかな黒髪は更に伸びて
今では腰まである。

「オ、オリービア、今度一緒にどこか
出かけないか?」
「まぁ、嬉しい。でも、ヴィル王子
お仕事忙しくないですか?」
「大丈夫だよ。最近、書類整理ばかりで
肩がこるし、腰も痛いよ。たまには
オリービアの傍にずっといたいんだ。」
オリービアは、顔を赤く染め
下を向いてしまった。

俺は、オリービアのそんな仕草の
ひとつひとつが可愛く思え、
この子を守りたいって
強く思っていた。

「オリービアは、どんなところに
行ってみたい。」
「家から出た事がなかったから、
私よく分からないの。」
「そっか。俺も、あまり出ないから
分からないけど……。近場から一緒に、
色々体験していこうか?」
「は、はい。お願いします。」
2人は微笑みあいながら、
部屋にもどった。

こんな気持ちは初めてだ。
心の中がポカポカするけど
もし、彼女がいなくなってしまったら…
って考えると、すごく不安で怖い。

初めて出逢ったときなのか、いつなのかは
よくわからないけれども……。
俺はいつのまにか、オリービアに
惹かれていた。
可愛らしいと思い始めたときにはもう、
誰にも止められないほど、オリービアに
逢うのは自分だけでいいって思えるほどの
狂気が見え隠れしていた。

「オリービア、可愛いすぎだろう。」
俺はニヤケきった顔をしているのは
確実だと、自覚していた。
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