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シヴァーディー・カテドラル辺境伯 1

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私の名前は、シヴァーだった。
双子で生まれ、兄は私で弟は病弱だが私より
頭は良く手先も器用なシヴィー。
身体つきも成長と共に、違いが出て
いつまで経っても弟は、女の子に
間違えられるくらい可愛い顔をしていた。

幸い私には、一般的より魔力があり、
平民だった俺の家には、高価な魔術書が
何冊かあった。
父と母で、高価な原本をどこからか借り
1日足らずで2冊以上仕上げ、また返し
また、新しい本を借り、良質の紙や羊皮紙に
書き写していた。
もう一冊は、何かの裏紙や、粗末な紙に
書き写し家用に置いていた。
僕らは、それらを使い文字の練習をしたり
自然と魔術やまじないを覚えていった。

気づいたら、10歳足らずで村の薬師並の
知識を持っていた。
父母は喜び褒めてくれていたが、
困っている者以外には、自分の力を
見せたらダメだと教えられていた。

私たちの身分は平民だった。
ちょっとした農作物は
田畑を耕して自分達が食べる分と
野山でかき集めた薬草を畑に植え育てていた。

薬師がいない村を選んで、1~2年か単位で
引越しを繰り返していた。
薬草を収穫すると引っ越していた。
薬草畑や農作物を作った畑には、
灰や枯れた草や葉、腐葉土、獣のフンなどを
混ぜていたので、僕達が立ち去った跡地は
農作物が、よく育つと知らない間に
噂がたっていた。
村人にも、畑の土作りを教えていたが
あまり受け入れてもらえなかった。


僕らが小さい時に国同士の小競り合いが
あったそうだが、転々とした村には
活気があった。両親がそういう場所を
選んでいた事を、僕たちは、両親が
亡くなってから知った。

とある村で住み着いてひと月足らず、
両親は殺された。
僕たちは、山に薬草や食べれる木のみを
摘みに行っていた時だった。

家に戻ると人盛りが出来ていていた。
山から降りてきた所で、異変に気づき
両親は頭から血を流し、もう助からない
状態なんだと分かった。
ある村人は、薬草畑を掘り起こしていた。
両親はのきざらしされ、
家の中にも何人もの人がいて
何かを探している感じだった。

果たしてあれは、人間だったのか
ただのケモノや悪魔だったかもしれない。

『家族に何かあった時には、
逃げて。必ず生き延びなさい。』
『隣国なら、魔術師なら身分関係なく
取り立ててくれるのに……。』
『覚えた内容の写本は燃やしたり、
木の根本に埋めなさい。』
と両親に言いきかされながら僕らは育った。

今は逃げる時だ。
そう思い、僕は病弱な弟の手を引っ張り
村人の顔と、両親の顔をしっかり焼き付けて
村から離れた。

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