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驚き

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「私は、身体は男だけど心は女なんです。
そして……。」
シヴァーディーは、大きな深呼吸をした。

「私、ヴィル王子が大好きなんですっ。」
「……。」
うっ。それは、男友達としてか?
恋人としてなのか?
恋人としては、無理だ。
こういう場合、どう答えたらいいんだ?
俺は、周りから恐れられてるし、
ここまで親しくしてくれる人は、
ぶっちゃけ初めてだった。
ぽんぽん言いあえるやりとりは、
楽しい。
今更ながら、女性としては見れない。
名前は、どう呼ぼうか?
シヴァーディー・カテドラル辺境伯?
長いよな?こう呼ぶと、俺もフルネームで
呼ばれるのか?

ヴィル・フォレス・デルラン王子…。
なんだか嫌だなぁ。
「まぁ。」
一瞬、周りが静かになってしまった。
何か言わないと……。
俺は必死に言葉を探した。
「すまない。シヴァディー。俺は
心も身体も女が好きなんだ。」

再び、周りが静かになってしまった。
言葉選び間違えたのか?
どうしよう?

「シヴァーディー、君は……。」
「いや~ん。私のヴィル王子様。私の事は
シンディーって呼んで!!」
「あっあぁ……。」
話題を逸らすことを、必死に考えていた。

「シンディーは、スラム育ちって以前
話してたけど、あれは偽りだったのか?」

なんだか、好きって言われたが
その好きの種類が何かはわからない。
友達とも言われてない相手だが、
女だと思っていた?思い込もうとしていた俺、
シンディー相手になぜだか、なんとも言えない
感情が湧き上がってきた。
イライラする感情。
騙されたっていう悲しいような、
悔しいような、ぐちゃぐちゃな感情。

「ヴィ…ヴィル…王子…?」
気づいた時には、俺を見て怯える
使用人たちがいた。
そして、俺の身体にまとわりつくような
薄い黒いモヤが渦巻いていた。
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