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「危ない!!」

俺はシンディーを半ば突き飛ばすように
後ろに下がらせたあと、防御魔法を使った。
念の為、音を遮断した。

黒いモヤの様な物体は、防御膜に弾かれながら
小さくなり、やがて消えていった。

な、なんだあれ?

「ス、ステキ。さすが、私の…。」
「お前の…シンディーのじゃない。俺は俺だ。」
「私、ヴィル様についていきますわ。もう
国には帰りません。」

シンディーは、この国の者ではないって
確か言ってたなぁ。

「シンディーは、どこの国なんだ?」
「いやぁ~ん。ヴィル様ったら。
私の事に、興味を持ってくれたのね。うふっ。」

なんだか、さっきまで軽かった身体が
シンディーの男っぽい声により、
疲れてきた気がする。

「わたくしは、ハルルーン王国出身の
スラムで育ったの。で、色々して、私の
魔法が他より使えるって思って!!
なんかの、役に立つて思って!!
私は色々、頑張ってたのよ!!」
クネクネしていたシンディーは、
拳をつくりながら、力強く話していた。

「少しだけ、いい所で働いていたんだけど
短期のお約束だったから、残念だったわ~。」
「そっ、そっかー、残念だな、それは。」
「ヴィル様ぁぁぁ…。棒読みですぅぅぅ…。」
「ハア~。」

疲れた俺は、これだけ騒がしいにもかかわらず
スヤスヤと眠る彼女を見つめた。
「……。」
「あらぁ、あらあら?なんだか、髪も
お肌も艶々になった?すごいわ。
私には、無理だったけど、魔力が
満たされたのかなぁ?」

「ヴィル王子?ありがとうございます。」
彼女の母親がまた、お礼を言ってきた。

「あっ、あの~、彼女の名前は
なんというんだ?」

なんでだろう?
なぜ、こんなにも緊張するんだ?
俺はおかしいのか?
名前を聞いただけで、今までにない感覚だ。

「「……。」」
シンディーとスール公爵の妻は、
ポカンとした表情をしていた。

あっ、自分の名前を名乗るのを
忘れてしまった。

「私はデルラン国第4王子、
ヴィル・フォレス・デルラン王子だ。
か、彼女の名前を教えて…欲しい。」
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