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パーティー

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パーティーに参加する場合、
移動手段として馬車が基本だった。
あとは……。
パートナーを伴うのが暗黙のルール。

魔力暴走を起こし、周りを破壊する為
俺は、恐れられていた。
第4王子には、誰もパートナーに
なりたがらなかった。

どうしても出席しなければならない
パーティーには、俺のパートナー代わりに
姉に頼んでいたが、今回は、姉が身重で
時期も悪いので、俺は1人で
参加しなければならなかった。

成人の儀式を、貴族達と一緒に済ませた
ヴィル。
なぜか行く事になってしまった、明日の
貴族の館での成人のお祝いパーティー。
考えただけで、億劫だった。

スール公爵の2番目の息子の成人。
親しげに挨拶をされたが、やはり
面識はないはずだ。
自分自身、成人になりたてだから
社交界にも、ほぼ出ていない。
違和感があったが、愛想笑いをしながら、
表面上当たり障りのない話をしていた。

なんの面白味もない平凡な貴族。
第一印象がそうだった。
顔の印象も、何故かぼやけるような
なんとも言えない、印象だった。
それなのに、違和感と何故か引き寄せられる
何かがあった。

       ☆☆

俺は今現在、パーティー用の服装をしている。
一応王子の端くれだから、
生地や縫製もしっかりとしたものばかり。
兄や姉が率先して、誰も寄り付かない
俺の部屋に来て服や靴をオーダー
してくれていた。

怯える服職人を俺の部屋に
半ば強制的にひっぱり出して
サイズなどを計り作られたものばかり。

本来なら、試着を重ねたうえで
仮縫いをし調整するのだが……。
俺の服などは、ほぼほぼ一度の
サイズを測って数日後には、
完成していた。

色や生地は、姉や兄が決めている。
俺は無頓着だが、姉と兄たちのおかげで
なんとか身なりは整っていた。

黒に近い紅の生地に、俺の髪色に似た
濃い赤が入ったパーティー用の
豪華な服だった。

「楽しんでおいで。」
「可愛いパートナーが見つかると
いいわね。」
「…ごめん。こんな俺には、
誰も…相手にされない。」

「いつか、運命の相手に出会うわよ。」
「こちらのパーティーは、心配しないで
たまには、ハメをはずしておいで。」
「ワシも、ハルに出逢ったのは、
成人の儀式後のパーティーだったぞ。」
「そうよ。年齢差は、あったけど
それ以上に、ショーオは
優しくて素敵だったわ。」
「ハ~ル。」
「ショ~オ。」
このあと、何度も聞かされた父王と
18歳歳下の実の母、
王妃との馴れ初めを数分間
聞くこととなってしまった。

その会話を切ってくれたのが、
「馬車のご準備が出来ました。」
という声掛けだった。

内心助かったと思うと同時に、
パーティーに出る時の、いつもの
憂鬱さが自分を襲った。

「すぐ戻ります。では、失礼します。」

父王と母、王妃は、何か言いたげに
していたが、なぜか、自分自身が
惨めな気分になるようで、
振り切るように、馬車に乗り込んだ。

俺を見た、馬車の御者は
一瞬、顔を強ばらせた。
いつも通りの、周りの反応だった。
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