【完結】テルの異世界転換紀?!転がり落ちたら世界が変わっていた。

カヨワイさつき

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32、顔色が……。

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*オレオール目線

討伐遠征で私は斥候役(せっこうやく)
をかって出ていたついでに、先陣を切り
同じ小隊のメンバーの輪からはずれ
ほぼ1人で魔物を狩っていた、
その方が、早く討伐も終わるし
同じ期間内で効率よく討伐を
こなせると思っていた。それに、私は
皆から嫌われている、身分、肩書き
たまたま貴族階級に生まれただけ、
もし平民として生まれていたならば
皆の輪に入れてもらえていたのだろうか?
なぜか、そんな事を思ってしまったが
私は自分1人でも大丈夫だと言い聞かせ
自惚れていたんだ。
団長たちは"何を焦ってるんだ?"と問われた
気がするが、何に焦っていたのかわからない。
本当に私は焦っていたのか?
記憶がないみたいな事をフェニーチェ兄上に
言われたが家族や使用人たちの名前、
親戚などちゃんと覚えている。
「……。」
それなのになぜ?
フェニーチェ兄上のお客人かと思ったが
父上と母上のお客人だそうだ。
捜査協力してもらうため、マモノのお店
ハキダメから半ば強制的に、公爵邸に
泊めたそうだ。同じ人族とは思えない…
いや、あの3人は獣人族なのか?
獣人族は魔力持ちが少ないと聞くが
3人からはかなり高い魔力を感じるのはなぜだ?
混じり者か?

黒髪に黒い瞳、なぜだか胸が締めつけられるように
息苦しい。なぜだ?
私の顔を見た時、驚きとなぜだか
うれしそうにしていた。
「オ、オレオールさんなの?」
「いかにも…私がハーフン公爵家の3男
オレオール・ノア・ハーフンだ。あなたは?」
「!!!」
名乗りをしただけなのに、なぜか急に
顔がくもり今にも泣き出しそうになっていた。
テル?テルちゃん、テル様?

公爵邸の自分の部屋なのに落ち着かない。
黒い髪と黒い瞳の"テル"の悲しそうな
顔が頭にこびりついて離れなかった。
公爵邸に戻り、私とすれ違いの形で
マモノのお店ハキダメの3人は
自分たちのお店に戻った。
まるで私が客人を追い出しだかのように
フェニーチェ兄上は冷ややかな目で
見ていた。フェニーチェ兄上と
マリー義姉上との子レイラは
ずいぶんと"テル"に懐いていた。
驚いた事に、わずか一歳半で誰からも
教わっていないのに"テル"に魔力を
分け与えた上、そばにいるだけで
魔道具なしでレイラは過ごせるくらい
レイラの魔力がおちついていたそうだ。
レイラの魔法属性は闇と火と風?に
似た属性だそうだ。
ご先祖様が作ったらしい魔道具で
生まれたばかりのレイラの魔力と
属性を調べたらしい。
"闇"属性、国の魔法省とは名ばかりの監禁部屋。
魔道具や魔法、魔法陣などの研究室も
あるが、ほぼ自室を与えられ研究に
没頭しているらしいが、本当の事はわからない。
国が保護した闇属性の者たちも
含まれるそうだが、保護された者は
皆が皆、研究好きでもないだろう。
フェニーチェ兄上の友人であり
デトロワ兄上の部下である
商人・商業ギルド副長のドゥペールのように
仕事のかたわら趣味で魔道具を作るとかでも
いいと思うのだが。
姪っ子になるレイラは、闇属性がありから
国にとられてしまうのだろうか?
フェニーチェ兄上は、属性をなくす事は
出来ないのかと色々調べている様だが……。

相性の良い属性または、同じ属性同士なら
魔力の譲渡、交換が出来る場合がある。
危険が伴うので、緊急の場合を除き
成人である15歳以上推奨。
学生時代に習ったごく当たり前こと。
学生時代は成人前だったので、実技はなく
サラッとなぞる程度の知識だけだったが、
まさか!!"テル"とレイラは同じ属性を
持っているのか?!
だが、"テル"は国預かりではなく
マモノのお店ハキダメにいる?なぜだ?
わからない事だらけで、頭が痛くなりそうだ。
フェニーチェ兄上と少し話をしてみようと
思ったその時、
コンコン
「オレオール、今いいか?」
「フェニーチェ兄上、はい。ちょうど
私もフェニーチェ兄上と話を
しようと思ってました。」

    ***

ほんの少し前、騎士団と王都行きを
希望した冒険者たちは無事に、王都に
たどり着いた。
活躍したのはもちろん、ハゲミママと
ウサミと同系列のお店のオネェ様方だった。
まさしく、マモノの様に好みのタイプの
殿方にくっつき防御魔法を展開しながら
騎士団と冒険者たちをそれぞれの
オネェ様方がお姫様抱っこしながら
飛行魔法や足に風魔法と筋力強化など使い
馬以上のスピードで走ったのだった。
中には気を失う者もいたが、王都に
着いたほとんどの者は、顔色が
白から青になり無表情になっていた。
テルは、ドワーフ族の洞窟の畑と
マモノのお店ハキダメの裏庭の畑から
いくつかの回復薬を作り出していた。
一部はギルドに売り、一部は騎士団たちと
オレオールに渡る様手配してもらったのだった。

魔物の討伐を終えた騎士団から
3公爵、各ギルド、そして宰相宛てに
ドワーフ族の秘蔵っ子"テル様"
マモノのお店ハキダメの秘蔵っ子
さらわれ行方知れずの"テル様"は
無事である事、そしてさらわれてもおらず
ドワーフ族ではない事。
ドワーフ族のマルチダ族長とマモノのお店
ハキダメのハゲミママは仲が良いとの事が
報告されたのだった。

     ***

ハーフン公爵邸のとある一室に、
盗聴防止魔法などの結界魔法が
施(ほどこ)された。
ハーフン公爵、フェニーチェ、デトロワ
そしてオレオールがいた。
"テル"が公爵邸を去ってからレイラの
落ち着いていた魔力が暴発し、一部屋を
吹き飛ばすほどの魔力暴走が起きたのだ。
使用人と乳母、そしてフェニーチェの妻であり
レイラの母であるマリーもまた
怪我を負ってしまったのだった。
      ・
                  ・
                  ・
魔力暴走が起きる少し前、騎士団の
使いの者が"テル"の情報とオレオール宛てに
回復薬が届けられたのだった。
表面上キズ一つないオレオールだったが
少し前までは、骨折と打撲や深い刺し傷も
あったのだ。身体の中の痛みはまだ
癒えてはおらず、数日間の療養を
強制されていたのだった。
色々な考えを巡らせていたオレオールは
フェニーチェ兄上に話そうと思い  
部屋を出ようとしたちょうどその時
フェニーチェもオレオールに用事があり
オレオールの部屋を訪ねてきたのだった。
コンコン
「オレオール、今いいか?」
「フェニーチェ兄上、はい。ちょうど
私もフェニーチェ兄上と話を
しようと思ってました。」
質実剛健(しつじつごうけん)を表した
オレオールの部屋もまた、部屋主の様に
木目調で落ち着いた色使い、そして
シンプルで実用性の高い家具がある部屋だった。
あまり使っていないソファに
フェニーチェ兄上を案内した。

「オレオール宛てだって、"テル"君
お手製の回復薬だって。」
フェニーチェ兄上はにっこり笑いながら
オレオールに届いた一本の回復薬を手渡した。
「……?!」
薬師じゃない素人が作る回復薬なんて
きっと、やたらと苦くて甘ったるいだろうと
思い、香りの良い紅茶を準備した。
そして、テルお手製の回復薬を飲んだ。
「!!!」
「どうした?そんなに味が、ヤバかったのか?」
オレオールは、回復薬を飲みほすと
涙を流していた。
「ニホン……エイヨウ…ドリンク…
テル タナベ。ニホンは家名と名前が逆の国……。」
「……オレオール?!」
フェニーチェ兄上は腰を浮かせながら
静かに涙を流すオレオールを心配気に、
見つめていた。
「テル、タナベ 。テルは、ニホンと言う国で
自分の食べ物を削ってでも不思議な
着心地の服も買ってくれたり、色々
私を助けてくれました。」
オレオールは、数年前討伐中に起きた事
日本でテルと出会い、体験した事など
思い出した事をフェニーチェに話したのだった。
仕事おわりに飲んだ栄養ドリンクの味と
テルが作った回復薬の味が、この国では
あり得ない味で、しかも身体の痛みも
なくなったのだった。

話終わった後、凄まじい爆発音と
悲鳴がハーフン公爵邸に響いたのだった。
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