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第一章 2人の約束

19、夕食後に…

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ガッツリお姫様抱っこされた俺は、
マーチン…えーっと…あれっ?
とにかくこの国の国王様に視線を送ったのに、
助けられることなく今現在ここに…います…。
俺はガチガチに固まってます。
ナオクル・チロメドゥル総帥のお部屋に、
はい、食事前にいたお部屋にいます。
柔らかそうで、座り心地良さげな
ソファーに、ナオクルさんが座り
ナオクルさんの膝の上に俺が座っています。
会話、会話がないとつらい。
アベリアちゃんは、俺がお花摘みに
行ってる間に、部屋が整ったとの事で、
ナオクルさんの隣の部屋で寝ているらしい。
そわそわしていたら、アベリアちゃんの
所に連れて行ってくれたので、
寝顔をしばらく見たのだった。
本当は、抱っこをしたかったけど、
寝ているのを起こしたくはなかったので、
そのまま、そっと見ていたのだ。

「あとは、この者たちに任せる。」
乳母のミークさんとお世話係の
ハミラさん、カウビさん、ロイズさんが
一斉に、頭を下げていた。
ミークさんとハミラさんが、今夜
付き添ってくれるようで、よく見ると
アベリアちゃんが寝ているベッドの
後ろの方に、大きめのカゴがあった。
使い込まれたベビークーハン。
俺は、あまり見かけた事がなかったので
天然素材で作られているのか
しっかりした感じなのに、柔軟性ある
ベビークーハンを見つめた。その中に、
淡い水色の髪の赤ちゃんが寝ていたのだ。
俺の視線に気づいた乳母のミークさんは
「申し訳ございません。」
「えっ?」
なんで謝られたのかわからないまま、
そのベビークーハンの赤ちゃんを
さらに見たのだ。
「わぁー、可愛い。女の子かな?
すごくキレイな髪。」
「あ、ありがとうございます。
申し訳ございません。」
ミークさんは、また謝りなが
なぜか急に頭を下げてきたのだ。
「えっ?」
なんでまた謝られたの?
「気にするな。こちらが無理を言ったのだ。」
「は、はい。申し訳ございません総帥。
そして、ありがとうございます。」
ミークさんは、なぜか泣いていたのだ。
「えっ?ごめん、どうしたの?」
「ミークは産休中の騎士だ。」
「う、うん?へっ?えっっ?産休?えっ?
(女性)騎士…産休って事は、仕事が
お休み期間で、身体が…えーと
産んだばかりで……。」
俺の頭の中は、しばらく混乱した。
6週8週?出産前6週間と(双子や
多胎妊娠の場合は14週間)出産後8週間は
働いたらダメって言うか、母体と子どもの
為のお休み期間だから……。

「だ、ダメだよ。ミークさん、
早く身体を休めて!!今、大事な時期だから
働いちゃあダメだよ!無理したらダメ。
子どもの為にも身体も心も無理したら
ダメだよ。」
「……カズミ?」
「……カドゥミ様?」
ナオクルさんも、ミークさんたちも
驚いていたけど、託児所のママさん達の
産休制度を思い出しながら
俺なりにわかりやすく伝えたのだ。

「……だから産んだ後の母体が傷ついてる
状態だから、産後8週間は働いちゃあ
ダメって俺が住んでたとこはその法律って
いうのがあって産後の仕事を禁止してたの。
だからミークさんも無理したらダメ。」
「ふふっ。カドゥミ様は本当にお優しいですね。」
ミークさんは、泣き笑いしたような
表情を浮かべていた。
「……?」
「ご心配なく。この子は産んでから
約17週は経ちます。」
「えっ?」
生後17週だと約生後5ヶ月?だけど、小さい?
アベリアちゃんと同じ位?
「私、アベリア様の乳母になれて幸せです。
こうして我が子も、助けていただきました。
本当に感謝します。ありがとうございます。」
「…???」
涙を浮かべながらミークさんは、俺の
表情を読みとったのか、説明してくれたのだ。

主に人族の場合、髪の色や目の色の濃さは
魔力量により濃くなったり薄くなったりするそうだ。
ミークさんの赤ちゃん、ライトくんは
すごく薄い水色の髪に目も白に近かったそうだ。
魔力が弱く、長く生きれないと思って
いたらしい。
旦那さんも同じ騎士団で、ライトくんを
助けるために休み返上で働いているそうだ。
赤ちゃん用に微調整された魔石は
かなりの高額で、毎日、母乳にたくさんの
魔力を注ぐにも体力的にも疲れていたらしい。
産休をとっていたものの、魔力の弱い
ライトくんを最後まで…、看取るつもりで
ミークさんは騎士団を辞めようとしたらしい。
そんな時現れたのが、俺とアベリアちゃんだった。
乳母として働くかわりに、魔力は
総帥であるナオクルさんがミークさんと
ライトくん、そしてアベリアちゃんに
与えると約束したらしい。
そのおかげで魔力の高い母乳を与える事が
出来たらしくたった半日で、髪の色と、
目の色がほんのわずかに濃くなったらしい。
「総帥とカドゥミ様、そしてアベリア様は
私たち家族の命の恩人です。一生お仕えします。」
「……お、俺は何も…出来てない。
ナオクルさんが、全て…
してくれた事だから……。」
なぜか、涙が出てきたのだ。
助かった命、助からなかった命……。
今日は色々ありすぎて、正直
いっぱいいっぱいだった。
魔法がある異世界、騎士団、国王、
よくわからないけど、剣を当たり前のように
持っている世界になぜ来たんだろうと
考え込んでしまった。
結局、どうやってベッドに入ったのかとか
(たぶんナオクルさんだろうけど……。)
いつ眠ったのかわからないまま
目覚めたのは翌朝だったのだ。
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