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第一章 2人の約束
4、別れと出会い
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辺りはシーンと静まりかえっていた。
…俺の耳がおかしいのか?
重いまぶたを必死になって持ち上げると、
ぼやける視界に、乾いた土と、黒く濡れた土。
…土?なんで…濡れてるの?
におい…この匂い…ち、血の匂い?
指先に触れた柔らかな何かは、
温かいのに動かない。なんで……?
手を動かすけど、痺れるし、痛い。
更に動かしたら、柔らかかった何かは、
冷たくなっていく感覚がした。
…いやだ…ウソだ。ちがう!
こんなの…夢だよな?!
こんな悪夢は…早く…覚めてくれ。
目の前には頭から血を流している
キレイなリナリアさん。
リナリアさんの腕の中に守られる様に
アベリアちゃんがいた。
……うそっ。そんな…はずない。
お願い、無事でいてくれ。
俺は守れなかったのか…?
「リナリアさん。」
「……。」
「アベリアちゃん。」
「……。」
嫌だ、嫌だよ、こんなのって…ウソだ。
霞んで濡れる目を擦りながらも、
リナリアさんの名とアベリアちゃんに
呼びかけ続けた。
微かに動いた気がして、更に
注意深く見た。
アベリアちゃんからは、ちゃんと規則正しい
呼吸音がしていて暖かかった。
……だけど、リナリアさんは……。
泣いたらダメだ。ダメだ……。
呼吸してないだけで、まだ間に合うはず。
脈は……ない…。
体が更に冷えてきた?!
ウソだ、こんなのウソだ……。
お互い名前しかしらないけど、
"カナップ"っていう場所まで、
保育士として雇われたんだ。
言葉が通じる不思議な指輪も
貸してくれたし……。まだ……。
リナリアさんの頭から流れていた血は、
少し乾き気味になり、血を吸った大地の
範囲は広がっていた。
「リナリアさん……。」
しばらく俺は呆けていたかもしれない。
俺はズキズキ痛む身体をゆっくり起こし
アベリアちゃんを抱っこした。
抱き上げるとき、ふわぁと何かに
包まれた気がした。
赤ちゃん独特の柔らかさに
守らなきゃとか、色々な感情が吹き出し
俺のほっぺたはまた濡れたのだ。
誰か助けを呼ばなきゃ。
だけど…何これ?っていうくらい潰れた馬車、
そびえ立つ大きな崖、なぎ倒された木、
あきらかに死んだ人と馬……。
手や足が変な方に曲がっていた。
見るのが辛くて、上を向いたら
見えなかった空が…寒々とした
青い空が見えていた。
身体が冷え切ったような感覚がした。
止まらない涙。
小さな身体のアベリアちゃんが
暖かくて呼吸している事に、
いるかどうかわからない神に感謝しながら
俺はこれからの事を考えていた。
どれくらい時間が経ったのかわからないが、
立ち上がろうとしたが、痺れと痛みが走った。
これは現実なんだよな……。
ストレッチ素材のジーパン。
バーゲンだった時ウニクロで買った
ジーパンだが、こんなに伸びるんだと
思うくらい、足が倍位の太さに腫れていた。
骨折か捻挫でもしたのかもしれない。
でも、誰かに助けを求めなきゃ。
「こんな崖の下、誰も来れないよな。」
だけど、この子だけでも…守らなきゃ。
ガサッ。
「……。」
助けが来たのか?
淡い期待を込めて音のする方に視線を向けた。
「……ンなっ。」
グルルル……。
見た事のない動物!!動物?!って言うと
可愛い気ありそうだが、大型の狼だろうか?
どう見ても、血の匂いに寄ってきた
大型の狼っぽい何かで、あれは、
あの目は獲物を狙う目だよね?!
狼?犬や猫は、動きあるものを鋭い爪や
牙で獲物を狙うんだったかな?
じわじわ距離が狭まっている。
こ、怖い……。
俺の足は腫れてるし、走れない。
俺は寝ているアベリアちゃんを
片手抱きし、狼っぽい何かから
目線だけは外さないようにした。
狼っぽいのからは一定の距離をとられながら
俺は手をゆっくり慎重に動かし、
馬車の帆に使われていた、
細長い木を拾った。
ウウゥゥ……。
池底から響くような唸り声。
怖い。怖いけど、守らなきゃ。
「ハルト先生みたいに、力があればいいのに。
来るな!!来ないでくれ!!」
グガァァァ。
「来るな!!どっか行けよ!!」
1匹目に襲い掛かられ、反射的に
細長い木を突き出した。
バキッ。
当たった瞬間折れてしまい、一瞬
怯んだ様にみえた。
その隙に、今度は少し手頃な角材っぽいのを
拾い構えた。
2匹同時に襲い掛かってきたのだ。
ガゥゥゥ。グガァァ。
「来るなぁぁぁ!!」
角材っぽいのを振り回し、座り込んだまま
無意識にアベリアちゃんをウニクロで買った
パーカーの中に、(お腹辺りに)入れたのだ。
そして、角材っぽいのを両手で持ち
1匹だけでも殴れたらと目を閉じながら構えた。
「今、助ける。」
助けて!!
…俺の耳がおかしいのか?
重いまぶたを必死になって持ち上げると、
ぼやける視界に、乾いた土と、黒く濡れた土。
…土?なんで…濡れてるの?
におい…この匂い…ち、血の匂い?
指先に触れた柔らかな何かは、
温かいのに動かない。なんで……?
手を動かすけど、痺れるし、痛い。
更に動かしたら、柔らかかった何かは、
冷たくなっていく感覚がした。
…いやだ…ウソだ。ちがう!
こんなの…夢だよな?!
こんな悪夢は…早く…覚めてくれ。
目の前には頭から血を流している
キレイなリナリアさん。
リナリアさんの腕の中に守られる様に
アベリアちゃんがいた。
……うそっ。そんな…はずない。
お願い、無事でいてくれ。
俺は守れなかったのか…?
「リナリアさん。」
「……。」
「アベリアちゃん。」
「……。」
嫌だ、嫌だよ、こんなのって…ウソだ。
霞んで濡れる目を擦りながらも、
リナリアさんの名とアベリアちゃんに
呼びかけ続けた。
微かに動いた気がして、更に
注意深く見た。
アベリアちゃんからは、ちゃんと規則正しい
呼吸音がしていて暖かかった。
……だけど、リナリアさんは……。
泣いたらダメだ。ダメだ……。
呼吸してないだけで、まだ間に合うはず。
脈は……ない…。
体が更に冷えてきた?!
ウソだ、こんなのウソだ……。
お互い名前しかしらないけど、
"カナップ"っていう場所まで、
保育士として雇われたんだ。
言葉が通じる不思議な指輪も
貸してくれたし……。まだ……。
リナリアさんの頭から流れていた血は、
少し乾き気味になり、血を吸った大地の
範囲は広がっていた。
「リナリアさん……。」
しばらく俺は呆けていたかもしれない。
俺はズキズキ痛む身体をゆっくり起こし
アベリアちゃんを抱っこした。
抱き上げるとき、ふわぁと何かに
包まれた気がした。
赤ちゃん独特の柔らかさに
守らなきゃとか、色々な感情が吹き出し
俺のほっぺたはまた濡れたのだ。
誰か助けを呼ばなきゃ。
だけど…何これ?っていうくらい潰れた馬車、
そびえ立つ大きな崖、なぎ倒された木、
あきらかに死んだ人と馬……。
手や足が変な方に曲がっていた。
見るのが辛くて、上を向いたら
見えなかった空が…寒々とした
青い空が見えていた。
身体が冷え切ったような感覚がした。
止まらない涙。
小さな身体のアベリアちゃんが
暖かくて呼吸している事に、
いるかどうかわからない神に感謝しながら
俺はこれからの事を考えていた。
どれくらい時間が経ったのかわからないが、
立ち上がろうとしたが、痺れと痛みが走った。
これは現実なんだよな……。
ストレッチ素材のジーパン。
バーゲンだった時ウニクロで買った
ジーパンだが、こんなに伸びるんだと
思うくらい、足が倍位の太さに腫れていた。
骨折か捻挫でもしたのかもしれない。
でも、誰かに助けを求めなきゃ。
「こんな崖の下、誰も来れないよな。」
だけど、この子だけでも…守らなきゃ。
ガサッ。
「……。」
助けが来たのか?
淡い期待を込めて音のする方に視線を向けた。
「……ンなっ。」
グルルル……。
見た事のない動物!!動物?!って言うと
可愛い気ありそうだが、大型の狼だろうか?
どう見ても、血の匂いに寄ってきた
大型の狼っぽい何かで、あれは、
あの目は獲物を狙う目だよね?!
狼?犬や猫は、動きあるものを鋭い爪や
牙で獲物を狙うんだったかな?
じわじわ距離が狭まっている。
こ、怖い……。
俺の足は腫れてるし、走れない。
俺は寝ているアベリアちゃんを
片手抱きし、狼っぽい何かから
目線だけは外さないようにした。
狼っぽいのからは一定の距離をとられながら
俺は手をゆっくり慎重に動かし、
馬車の帆に使われていた、
細長い木を拾った。
ウウゥゥ……。
池底から響くような唸り声。
怖い。怖いけど、守らなきゃ。
「ハルト先生みたいに、力があればいいのに。
来るな!!来ないでくれ!!」
グガァァァ。
「来るな!!どっか行けよ!!」
1匹目に襲い掛かられ、反射的に
細長い木を突き出した。
バキッ。
当たった瞬間折れてしまい、一瞬
怯んだ様にみえた。
その隙に、今度は少し手頃な角材っぽいのを
拾い構えた。
2匹同時に襲い掛かってきたのだ。
ガゥゥゥ。グガァァ。
「来るなぁぁぁ!!」
角材っぽいのを振り回し、座り込んだまま
無意識にアベリアちゃんをウニクロで買った
パーカーの中に、(お腹辺りに)入れたのだ。
そして、角材っぽいのを両手で持ち
1匹だけでも殴れたらと目を閉じながら構えた。
「今、助ける。」
助けて!!
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