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14、公爵邸
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*家令マシュー目線*
クロート国は国自体大きすぎず小さめすぎない大きさ、つまり平均的な大きさの国であります。
だが、偶然発見された鉱山により他国に狙われてしまう事になりました。
他国と小競り合いが続く中即位された前国王、協定を結ぶ為の政略結婚をしたがなかなか子どもには恵まれず、周りから勧められるがまま媚薬など薬を盛られ寝室に閉じ込められた国王夫妻に待望の子どもが授かった。
1人目の王子をお産みになられ、その一年後にも子どもを授かった。
後継問題も無くなったと皆安心したのだった。
だがお二人目の出産後、落胆する事となった。
"色なし"
頭にはほぼ毛は生えておらず、目の色は水色。
国王夫妻のどちらの色も受け継がれず、不義の子ではないのかという愚かなウワサまでたってしまった。
前王妃は、薬を盛られた事や呪いだとかおっしゃられ、育児をするどころか始末するよう命じようとされました。
黒は尊く神に愛された色。
白は神に見放された色。
誰が言い出したのかはわからないものの数十年?100年以上前からから、色の濃い者が好まれ白に近い色の者は"色なし"と呼ばれ、差別の対象となってしまっていた。
身体の大きさも性別関係なく小柄な者が好まれる様になり、色が濃く小柄な者が愛されると同時に狙われる事となりました。
小柄に育つ様に、わざと生命維持に必要最低限の食事しか与えない者も続出し年々出生率も減り、女児の産まれる数も極端に減りました。
女児が生まれると身分に関係なく求婚が殺到し、貴族に至っては養子縁組しようと画策する者もいました。
なんとかしようとしていた国王は、第二子を授かったのをきっかけに色々とお悩みになられながらも、 リアム・ノア・クロート様を信頼できる者たちに託し離宮で育てられました。
リアム様がお産まれになられた時、私はまだ未成年であり見習いの執事でありました。
父がリアム様専属の執事に抜擢(ばってき)されました。
私も父について行く形で離宮で生活する事になりました。
成長とともに、髪の色はキラキラ輝く銀色になられ、水色の目も透き通るような輝きを増しました。
ですが、王宮に行くたびに表情もなくなるリアム様に、どうお声をかけていいのかわからないままでした。
リアム様が8歳になられた頃、流行り病が国内のあちこちで発生し前王妃様も残念ながらお亡くなりになられました。
葬儀が執り行われたものの、表向きは流行り病を気にしたという感じでしたが、リアム様をお産みになられらてからの前王妃の振る舞いや言動などに眉をひそめる者も多く、参加を見合わせたり代理の者をよこしたりでした。
幼き頃から勉学に励み護衛の者から、剣を習われたリアム様は特別に家庭教師がつけられたわけでもないのに、素晴らしい才能を発揮していきました。
身体の成長もグングン大きくなり、"色なし"に嫌われ要素である高い身長にたくましい筋肉をつけられた身体になられました。
神に愛された色と好まれる小柄な身体とは真逆の身体。
前王妃が亡くなられてからは、更に身体を鍛えた事により第二王子でありながら学園生活兼、13歳から見習いとして騎士団となり下積み生活として寮生活をされました。
私はその頃離宮の管理兼執事として勤めてさせていただきながら、リアム様がいつお戻りになられてもいい様に整えておりました。
ですがリアム様は離宮に帰る事はなく、成人となりしばらく騎士団で寮生活をされていました。
時折、陰ながら成長を拝見しておりましたが、周りからの差別的な視線や嫌味、陰口などをけ散らかすかのように努力し成長されました。
第一王子が王太子になられリアム様は騎士団で実力で副隊長にまでなられました。
まだまだ差別的な者は多く、前国王にお子様が出来る前から取り組んでこられていた"色なし"の保護政策や奴隷解放、人身売買禁止も根付いて来たと思った時でした。
保護地などの施設完成の視察に訪れた前国王は、刺客に襲われてしまった。
同時に川の氾濫や他国からの侵略もほぼ同時におこり、多くの命が奪われてしまいました。
前国王の葬儀と喪に服したあと、第一王子が国王になりリアム様は臣下におりました。
そして一番被害が大きかった地域を兄である国王に領地として賜(たまわ)り、クロート公爵となりました。
離宮にいたメンバーは散り散りになっていたものの、連絡がつく者に伝え呼びかけたり、新たに有志を募りました。
離宮にいたほとんどの者がリアム様に再び仕える事に喜び、再度新天地で力を合わせる事となりました。
残念ながら亡くなられた者も少なくはなかったですが、新たに加わった者たちと一緒に身分に拘らず、ほぼ何もない場所から次々と建物や田畑を耕しました。
たった1年でゼロから人口200人程の町が出来上がり年々人口は増えていきました。
さまざまな事情で他の領から逃げて来た者もいましたが、戦乱からたった3年の間に、最低限のルールを作りそれに従わない者はクロート公爵領に出入り、又は滞在する事は禁止した。
このクロート公爵領は、まだまだ個人の家などは少ないですが、ギルド系や共同経営の宿、店なども共同にしたものを作り、生活面でもまるで学生寮の様な個室に似た住居を作られました。
まだ使えそうな家などは手直ししたり改装しました。
リアム様は皆の家を優先的に建てられる予定でしたが、皆の意見は一致し公爵邸を作ったあと皆の生活場所を作られました。
この公爵邸は前の持ち主が、流行り病や戦乱などに巻き込まれて亡くなられたそうで、半壊していましたが、大きな穴などを利用し地下室などを作り、部屋も大胆に増築し複雑なところも少々あるお部屋も改装されました。
公爵なられたと同時に惜しまれながら副団長にまでなられた騎士団を辞められました。
公爵邸のすぐ近くに自警団、そしてその裏手には鉱山もあり鉱山からとれる資源で領地と国を建て直す資金源となっております。
鉱夫として主に犯罪者奴隷を使っておりますが、過酷な労働条件ではなく三交代制で、食事も質素ながら3度の食事があります。
冒険者ギルドと提携し、常時採取の薬草や魔物肉など、食材となるものを格安でおろしてもらい賄っております。
犯罪といっても殺人を犯した犯罪者と軽い犯罪、生活困窮で食べ物を盗んだりした者などの作業場所はわけています。
食事内容も少し変え、改心した物には食事量が少し増えたり差をつけています。
長時間働かせていた時より三交代制にしたり、食事内容に差をつけただけで犯罪者奴隷たちの意欲や改心する者も多く出ました。
これほどの効果が出るとは思いませんでしたが、クロート国の犯罪者たちが王都ではなくクロート公爵領に集められているので更生率も高く、国も潤う仕組みになっております。
更生・改心した者の中には、クロート公爵領内での冒険者として契約した者もいます。
主に魔物肉を得る為の働き手です。
残念ながら未成年の軽犯罪も少なからずおりますが、仕事内容は多義にわたりありますので、罪の重さによりさまざまで決して無理のない罪の償いをしています。
犯罪者奴隷から特例の契約奴隷となった者たちは、冒険者としてのランクも上がり、給金を得る事が出来るので、犯罪者奴隷にとって希望が持てるものとなっております。契約が終わった後も冒険者ランクはそのまま引き継げるので、ギルドカードには犯罪履歴は残りますが、見た目にはわかりません。
かなりの昔には焼き印とか入れ墨など身体のわかりやすい場所に犯罪者として奴隷印をつけていましたが、今では技術が発達したおかげで、クロート国の国民一人一人にカードやプレートを持っています。
他の国でも多く取り入れられている仕組みで、産まれた瞬間、血の契約をしカードやプレートをつくるのですが、マリ様はクロート国民ではないからか、カードもプレートもお待ちではありませんでした。
リアム様の1日は、公爵家直属の自警団で常に有志を募っているせいか、リアム様と手合わせしたがる挑戦者がいます。午前中は挑戦を受けたり、実力重視で個別指導や自身の鍛錬(たんれん)などしながら公爵としてのお仕事をされています。
前国王の政策も取り入れたリアム様の兄上である国王は、主要都市に身分や"色"に関係ない擁護(ようご)施設を作る様、要請(ようせい)されたました。
そしてクロート公爵領に立派な擁護施設を作られました。
ほとんど"色なし"と呼ばれる子ばかりで、迫害、差別された者たちが集まる様になったのは言うまでもなく、他の領から嫌味や陰口は止まりませんでした。
そんな中、公爵邸に突如(とつじょ)現れたのが、マリクロサワ様おっしゃられる"女性"でした。
年のころは10歳前後にしか見えない19歳だとおっしゃる彼女は、小柄な身体に黒目黒髪。
正しく神に愛された色と小柄な身体だった。
出会ったばかりのリアム様は、彼女を刺客だと思い拘束したり、勘違いから少々酷い出会いでしたが、最近2人の様子が変わった様な気がします。
お互いが名前で呼び合う様になられ、まだご一緒には寝られてはいませんが、マリ様のお部屋は本来妻となるお部屋を使われております。
旦那様も2人の寝室はほぼ使われず個室の寝室を使われておりますが、夫婦の為のベットをお使いになる日も近いかと思います。
騎士団で鍛えられたからか、小さな頃の気弱な旦那様はなりを潜めハキハキとした話し方、的確な指示、実力主義で自警団も来るもの拒まず去る者追わずで、たまに冒険者ギルドから、なぜか冒険者の指導の依頼も来る旦那様。
腕試しに、自警団に入ろうとする冒険者など様々。
マリ様に関しては、あらゆるものが狭いのかお勉強に関してもですが、服を作る時でさえも、片時も離れようとしない始末。
どうしても離れなければならない時には、私か離宮からの仕事仲間であるメアリーかのどちらかがマリ様に付いて、マリ様が眠っておられる時に報告しています。
リアム様も幼少の頃から勉学もすごい勢いで吸収されていましたが、この国の方ではないのに、マリ様も計算や読み書き、他国の本でさえも読まれています。
試しに違う国で話されている言葉でいくつか話しましたが、それぞれの国の言語でお返事された時には驚きました。
マリ様もリアム様のような素晴らしい方なのだと思いました。貴重な女性、更に黒目に黒髪。
神に愛され過ぎたお方だとしか思えません。
この方が町に出ると大変だと思うと同時に、奪い合いどころか、ゆくゆくは戦乱になると思ってしまいました。
恐ろしい考えを頭の中から消そうと努力しましたが、何やら胸騒ぎがおさまるどころか強くなってきました。
「内々で、彼女の歓迎会をしたいんだが?」
「旦那様?マリ様にお気持ちをお伝えしたのですか?」
「な、な、なんの気持ちだ?」
思わずため息をつきかけ……いや、私はついつい、ため息をついてしまいました。
「マリ様も少なからず旦那様の事好ましく思われていらっしゃるご様子ですし、旦那様もマリ様がお好きでしょうから、お気持ちをはっきりとお伝えした方がいいかと思います。
「……そ、そんな事。」
「おそらく彼女は、間違いなく狙われます。この公爵邸に不届き者はいないと思っていますが、外部のものはわかりかねます。」
「たしかに、彼女は小柄で可愛いし、神秘的な黒髪に濡れた様なうるうるした美しいとしか言えない瞳に、思わず抱きしめて頬ずりして守りたくなるし、折れそうな身体だから力加減が難しい。可憐な声。小さな手。私の頬を叩いただけで、指の骨が折れてしまったくらいか弱い女性だ!!常に腕の中に閉じ込め、食事も私の膝の上であの小さな口に、彼女が好む食べ物を入れてあげたい!!彼女が、公爵邸から一歩でも出るだなんで、そんな恐ろしい事考えられないし、彼女が私のそばを離れるだなんて今更ながら考えれない!!公爵邸内の皆に私のマリを紹介するだけだ。ここに来てくれて感謝していると気持ちを込めた歓迎会をしたいだけだ。」
「……。」
旦那様の長々したお言葉に、そこまで思っているのになぜ彼女に言葉で伝えないのか、と問い詰めたい気持ちでいっぱいだった。
言葉なしだと、あのマリ様にはわからないだろう。
マリ様も旦那様同様、極端な言葉足らずです。
「き、気持ちは……。」
「言葉で伝えないと態度だけでは理解されないかと思います。」
「……マシュー。」
「旦那様からお伝えください。」
「……うっ。」
「今日の報告ですが、マリ様は貴族年鑑を覚えようと頑張られております。」
そして、思わず笑ってしまったマリ様のメモ書きを旦那様に見せました。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
茶色の目に紫色の髪
ジョニー・ウィー・アーザゴ
なすび色のジョニー、ちょっとザビエル気味
目が悪人っぽい三白眼、ちょび髭
青い目にぴんくの髪
サバーナ・ティラ・コッテ
サバンナにケーキ?ぴんくのひげヅラオヤジ
ザビエル予備軍
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「ぷふっ、なすび色?悪人っぽい三白眼、ちょび髭、ぶはっ、こっちは…ひげヅラオヤジって、まだ、28歳なのに、ひげヅラオヤジ……。年齢的に私もオヤジに見られてるのか?」
声を抑えながらも笑っていたリアム様は、年齢を気にされた途端、笑顔が消えてしまった。
「この、ザビエルって誰だ?ザビエル風?」
「このメモは、マリ様自身隠すように仕舞われていましたので、本人にもお聞き出来ないのが残念です。」
旦那様は29歳、マリ様は19歳(見た目は未成年)。
見た目からしたら、旦那様にマリ様(見た目未成年)位のお子様がいても違和感はないご年齢であります。
15歳で成人で婚姻する者が多いですし、リアム様のお兄様であられる国王様には3人のお子様がいらっしゃいます。
国王様のお子様に黒髪黒目のマリ様をお召しになられる場合もあり、王子様方がご成人になられ次第……ご成婚という事になられるかもしれません。
国にバレては厄介な事になるかもしれません。
もし、バレてしまえばリアム様は、どおされるかはわかりかねます。
なんとしても守り通さねば、マリ様を失ったリアム様は……壊れてしまうかもしれません。
神様、どうかこれ以上リアム様から奪うのはおやめ下さい。どうかリアム様からマリ様を取り上げないで下さいませ。
クロート国は国自体大きすぎず小さめすぎない大きさ、つまり平均的な大きさの国であります。
だが、偶然発見された鉱山により他国に狙われてしまう事になりました。
他国と小競り合いが続く中即位された前国王、協定を結ぶ為の政略結婚をしたがなかなか子どもには恵まれず、周りから勧められるがまま媚薬など薬を盛られ寝室に閉じ込められた国王夫妻に待望の子どもが授かった。
1人目の王子をお産みになられ、その一年後にも子どもを授かった。
後継問題も無くなったと皆安心したのだった。
だがお二人目の出産後、落胆する事となった。
"色なし"
頭にはほぼ毛は生えておらず、目の色は水色。
国王夫妻のどちらの色も受け継がれず、不義の子ではないのかという愚かなウワサまでたってしまった。
前王妃は、薬を盛られた事や呪いだとかおっしゃられ、育児をするどころか始末するよう命じようとされました。
黒は尊く神に愛された色。
白は神に見放された色。
誰が言い出したのかはわからないものの数十年?100年以上前からから、色の濃い者が好まれ白に近い色の者は"色なし"と呼ばれ、差別の対象となってしまっていた。
身体の大きさも性別関係なく小柄な者が好まれる様になり、色が濃く小柄な者が愛されると同時に狙われる事となりました。
小柄に育つ様に、わざと生命維持に必要最低限の食事しか与えない者も続出し年々出生率も減り、女児の産まれる数も極端に減りました。
女児が生まれると身分に関係なく求婚が殺到し、貴族に至っては養子縁組しようと画策する者もいました。
なんとかしようとしていた国王は、第二子を授かったのをきっかけに色々とお悩みになられながらも、 リアム・ノア・クロート様を信頼できる者たちに託し離宮で育てられました。
リアム様がお産まれになられた時、私はまだ未成年であり見習いの執事でありました。
父がリアム様専属の執事に抜擢(ばってき)されました。
私も父について行く形で離宮で生活する事になりました。
成長とともに、髪の色はキラキラ輝く銀色になられ、水色の目も透き通るような輝きを増しました。
ですが、王宮に行くたびに表情もなくなるリアム様に、どうお声をかけていいのかわからないままでした。
リアム様が8歳になられた頃、流行り病が国内のあちこちで発生し前王妃様も残念ながらお亡くなりになられました。
葬儀が執り行われたものの、表向きは流行り病を気にしたという感じでしたが、リアム様をお産みになられらてからの前王妃の振る舞いや言動などに眉をひそめる者も多く、参加を見合わせたり代理の者をよこしたりでした。
幼き頃から勉学に励み護衛の者から、剣を習われたリアム様は特別に家庭教師がつけられたわけでもないのに、素晴らしい才能を発揮していきました。
身体の成長もグングン大きくなり、"色なし"に嫌われ要素である高い身長にたくましい筋肉をつけられた身体になられました。
神に愛された色と好まれる小柄な身体とは真逆の身体。
前王妃が亡くなられてからは、更に身体を鍛えた事により第二王子でありながら学園生活兼、13歳から見習いとして騎士団となり下積み生活として寮生活をされました。
私はその頃離宮の管理兼執事として勤めてさせていただきながら、リアム様がいつお戻りになられてもいい様に整えておりました。
ですがリアム様は離宮に帰る事はなく、成人となりしばらく騎士団で寮生活をされていました。
時折、陰ながら成長を拝見しておりましたが、周りからの差別的な視線や嫌味、陰口などをけ散らかすかのように努力し成長されました。
第一王子が王太子になられリアム様は騎士団で実力で副隊長にまでなられました。
まだまだ差別的な者は多く、前国王にお子様が出来る前から取り組んでこられていた"色なし"の保護政策や奴隷解放、人身売買禁止も根付いて来たと思った時でした。
保護地などの施設完成の視察に訪れた前国王は、刺客に襲われてしまった。
同時に川の氾濫や他国からの侵略もほぼ同時におこり、多くの命が奪われてしまいました。
前国王の葬儀と喪に服したあと、第一王子が国王になりリアム様は臣下におりました。
そして一番被害が大きかった地域を兄である国王に領地として賜(たまわ)り、クロート公爵となりました。
離宮にいたメンバーは散り散りになっていたものの、連絡がつく者に伝え呼びかけたり、新たに有志を募りました。
離宮にいたほとんどの者がリアム様に再び仕える事に喜び、再度新天地で力を合わせる事となりました。
残念ながら亡くなられた者も少なくはなかったですが、新たに加わった者たちと一緒に身分に拘らず、ほぼ何もない場所から次々と建物や田畑を耕しました。
たった1年でゼロから人口200人程の町が出来上がり年々人口は増えていきました。
さまざまな事情で他の領から逃げて来た者もいましたが、戦乱からたった3年の間に、最低限のルールを作りそれに従わない者はクロート公爵領に出入り、又は滞在する事は禁止した。
このクロート公爵領は、まだまだ個人の家などは少ないですが、ギルド系や共同経営の宿、店なども共同にしたものを作り、生活面でもまるで学生寮の様な個室に似た住居を作られました。
まだ使えそうな家などは手直ししたり改装しました。
リアム様は皆の家を優先的に建てられる予定でしたが、皆の意見は一致し公爵邸を作ったあと皆の生活場所を作られました。
この公爵邸は前の持ち主が、流行り病や戦乱などに巻き込まれて亡くなられたそうで、半壊していましたが、大きな穴などを利用し地下室などを作り、部屋も大胆に増築し複雑なところも少々あるお部屋も改装されました。
公爵なられたと同時に惜しまれながら副団長にまでなられた騎士団を辞められました。
公爵邸のすぐ近くに自警団、そしてその裏手には鉱山もあり鉱山からとれる資源で領地と国を建て直す資金源となっております。
鉱夫として主に犯罪者奴隷を使っておりますが、過酷な労働条件ではなく三交代制で、食事も質素ながら3度の食事があります。
冒険者ギルドと提携し、常時採取の薬草や魔物肉など、食材となるものを格安でおろしてもらい賄っております。
犯罪といっても殺人を犯した犯罪者と軽い犯罪、生活困窮で食べ物を盗んだりした者などの作業場所はわけています。
食事内容も少し変え、改心した物には食事量が少し増えたり差をつけています。
長時間働かせていた時より三交代制にしたり、食事内容に差をつけただけで犯罪者奴隷たちの意欲や改心する者も多く出ました。
これほどの効果が出るとは思いませんでしたが、クロート国の犯罪者たちが王都ではなくクロート公爵領に集められているので更生率も高く、国も潤う仕組みになっております。
更生・改心した者の中には、クロート公爵領内での冒険者として契約した者もいます。
主に魔物肉を得る為の働き手です。
残念ながら未成年の軽犯罪も少なからずおりますが、仕事内容は多義にわたりありますので、罪の重さによりさまざまで決して無理のない罪の償いをしています。
犯罪者奴隷から特例の契約奴隷となった者たちは、冒険者としてのランクも上がり、給金を得る事が出来るので、犯罪者奴隷にとって希望が持てるものとなっております。契約が終わった後も冒険者ランクはそのまま引き継げるので、ギルドカードには犯罪履歴は残りますが、見た目にはわかりません。
かなりの昔には焼き印とか入れ墨など身体のわかりやすい場所に犯罪者として奴隷印をつけていましたが、今では技術が発達したおかげで、クロート国の国民一人一人にカードやプレートを持っています。
他の国でも多く取り入れられている仕組みで、産まれた瞬間、血の契約をしカードやプレートをつくるのですが、マリ様はクロート国民ではないからか、カードもプレートもお待ちではありませんでした。
リアム様の1日は、公爵家直属の自警団で常に有志を募っているせいか、リアム様と手合わせしたがる挑戦者がいます。午前中は挑戦を受けたり、実力重視で個別指導や自身の鍛錬(たんれん)などしながら公爵としてのお仕事をされています。
前国王の政策も取り入れたリアム様の兄上である国王は、主要都市に身分や"色"に関係ない擁護(ようご)施設を作る様、要請(ようせい)されたました。
そしてクロート公爵領に立派な擁護施設を作られました。
ほとんど"色なし"と呼ばれる子ばかりで、迫害、差別された者たちが集まる様になったのは言うまでもなく、他の領から嫌味や陰口は止まりませんでした。
そんな中、公爵邸に突如(とつじょ)現れたのが、マリクロサワ様おっしゃられる"女性"でした。
年のころは10歳前後にしか見えない19歳だとおっしゃる彼女は、小柄な身体に黒目黒髪。
正しく神に愛された色と小柄な身体だった。
出会ったばかりのリアム様は、彼女を刺客だと思い拘束したり、勘違いから少々酷い出会いでしたが、最近2人の様子が変わった様な気がします。
お互いが名前で呼び合う様になられ、まだご一緒には寝られてはいませんが、マリ様のお部屋は本来妻となるお部屋を使われております。
旦那様も2人の寝室はほぼ使われず個室の寝室を使われておりますが、夫婦の為のベットをお使いになる日も近いかと思います。
騎士団で鍛えられたからか、小さな頃の気弱な旦那様はなりを潜めハキハキとした話し方、的確な指示、実力主義で自警団も来るもの拒まず去る者追わずで、たまに冒険者ギルドから、なぜか冒険者の指導の依頼も来る旦那様。
腕試しに、自警団に入ろうとする冒険者など様々。
マリ様に関しては、あらゆるものが狭いのかお勉強に関してもですが、服を作る時でさえも、片時も離れようとしない始末。
どうしても離れなければならない時には、私か離宮からの仕事仲間であるメアリーかのどちらかがマリ様に付いて、マリ様が眠っておられる時に報告しています。
リアム様も幼少の頃から勉学もすごい勢いで吸収されていましたが、この国の方ではないのに、マリ様も計算や読み書き、他国の本でさえも読まれています。
試しに違う国で話されている言葉でいくつか話しましたが、それぞれの国の言語でお返事された時には驚きました。
マリ様もリアム様のような素晴らしい方なのだと思いました。貴重な女性、更に黒目に黒髪。
神に愛され過ぎたお方だとしか思えません。
この方が町に出ると大変だと思うと同時に、奪い合いどころか、ゆくゆくは戦乱になると思ってしまいました。
恐ろしい考えを頭の中から消そうと努力しましたが、何やら胸騒ぎがおさまるどころか強くなってきました。
「内々で、彼女の歓迎会をしたいんだが?」
「旦那様?マリ様にお気持ちをお伝えしたのですか?」
「な、な、なんの気持ちだ?」
思わずため息をつきかけ……いや、私はついつい、ため息をついてしまいました。
「マリ様も少なからず旦那様の事好ましく思われていらっしゃるご様子ですし、旦那様もマリ様がお好きでしょうから、お気持ちをはっきりとお伝えした方がいいかと思います。
「……そ、そんな事。」
「おそらく彼女は、間違いなく狙われます。この公爵邸に不届き者はいないと思っていますが、外部のものはわかりかねます。」
「たしかに、彼女は小柄で可愛いし、神秘的な黒髪に濡れた様なうるうるした美しいとしか言えない瞳に、思わず抱きしめて頬ずりして守りたくなるし、折れそうな身体だから力加減が難しい。可憐な声。小さな手。私の頬を叩いただけで、指の骨が折れてしまったくらいか弱い女性だ!!常に腕の中に閉じ込め、食事も私の膝の上であの小さな口に、彼女が好む食べ物を入れてあげたい!!彼女が、公爵邸から一歩でも出るだなんで、そんな恐ろしい事考えられないし、彼女が私のそばを離れるだなんて今更ながら考えれない!!公爵邸内の皆に私のマリを紹介するだけだ。ここに来てくれて感謝していると気持ちを込めた歓迎会をしたいだけだ。」
「……。」
旦那様の長々したお言葉に、そこまで思っているのになぜ彼女に言葉で伝えないのか、と問い詰めたい気持ちでいっぱいだった。
言葉なしだと、あのマリ様にはわからないだろう。
マリ様も旦那様同様、極端な言葉足らずです。
「き、気持ちは……。」
「言葉で伝えないと態度だけでは理解されないかと思います。」
「……マシュー。」
「旦那様からお伝えください。」
「……うっ。」
「今日の報告ですが、マリ様は貴族年鑑を覚えようと頑張られております。」
そして、思わず笑ってしまったマリ様のメモ書きを旦那様に見せました。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
茶色の目に紫色の髪
ジョニー・ウィー・アーザゴ
なすび色のジョニー、ちょっとザビエル気味
目が悪人っぽい三白眼、ちょび髭
青い目にぴんくの髪
サバーナ・ティラ・コッテ
サバンナにケーキ?ぴんくのひげヅラオヤジ
ザビエル予備軍
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「ぷふっ、なすび色?悪人っぽい三白眼、ちょび髭、ぶはっ、こっちは…ひげヅラオヤジって、まだ、28歳なのに、ひげヅラオヤジ……。年齢的に私もオヤジに見られてるのか?」
声を抑えながらも笑っていたリアム様は、年齢を気にされた途端、笑顔が消えてしまった。
「この、ザビエルって誰だ?ザビエル風?」
「このメモは、マリ様自身隠すように仕舞われていましたので、本人にもお聞き出来ないのが残念です。」
旦那様は29歳、マリ様は19歳(見た目は未成年)。
見た目からしたら、旦那様にマリ様(見た目未成年)位のお子様がいても違和感はないご年齢であります。
15歳で成人で婚姻する者が多いですし、リアム様のお兄様であられる国王様には3人のお子様がいらっしゃいます。
国王様のお子様に黒髪黒目のマリ様をお召しになられる場合もあり、王子様方がご成人になられ次第……ご成婚という事になられるかもしれません。
国にバレては厄介な事になるかもしれません。
もし、バレてしまえばリアム様は、どおされるかはわかりかねます。
なんとしても守り通さねば、マリ様を失ったリアム様は……壊れてしまうかもしれません。
神様、どうかこれ以上リアム様から奪うのはおやめ下さい。どうかリアム様からマリ様を取り上げないで下さいませ。
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