4 / 24
2、見知らぬ者
しおりを挟む
*リアム・ノア・クロート目線
仕事が思いのほか早く片付き、夕刻ではあったが久しぶりに庭に出てみた。
庭師が整えた名も知らない花がちらほら咲く季節。
草花に興味はないが、荒れ地だったこの場所にこれだけの青々とした緑が復活した時には皆に感謝しかなかった。
少しずつ暖かくなり、剣を振っていると花の香りが強くなった気がした。
こんな小さな花から香りがするのか?
それとも向こう側に新しい何かを植えたのか?
庭の奥にシンプルなベンチをいくつか置いてあるうちの一つに頭巾?フードを被った小さな者がいた。
誰だ?
なぜここに入れた?!
顔はベンチの背もたれの方を向いていた。
気配を消し近づいた。
甘い花の香りがした。
なんの香りだ?もしや、毒系の香り……刺客か?!
口元を抑えながら、足早に近づいた。
「何者だ?!」
「……。」
「さっさと答えろ!!女子どもだとしても容赦はしないぞ!!」
首あたりに剣を当てた。
小さな子どもだろうが刺客は刺客。
「頭巾をかぶるあやしいやつ、動くな!!」
手足をほぼ無抵抗で拘束した。
違和感を感じたが、手慣れた刺客かもしれない。
油断は禁物だ。
「殺されるの?」
!!!
「……お前次第だ。何が目的だ?」
思わず息をのんでしまった。
魅力的な黒い瞳に、子ども独特の高い声。
目を見てしまったから魅了されてしまったかもしれない。魅了の解き方を思い出しながら、とりあえず目をそらし、深呼吸……。
花の香り!!
深呼吸もダメだ!!
落ち着け、落ち着くんだ。
魅了に花の香りの毒?!
まだまだ死ねない。
落ち着け。
この子の言葉を思い出した。
"殺されるの?"
任務に失敗したということか?
何かの任務……これだけ幼いなら初仕事なのか?
「夢?ここはどこ?私は……(眠い)死ぬ……。」
死ぬな!!
「……仕事。」
仕事?やはり仕事で失敗したのか?
私を殺しにきたのか?
意識を失った刺客を抱き上げたその時、頭巾がずれ髪が見えた。
サラサラとした黒髪。
「美しい。」
もう魅了にかかってしまったのだろう。
この国、クロート王国では髪や目の色が濃ければ濃いほどいいとされている。
身体的に小柄な者が好まれ美人とか美形とされている。
兄は藍色の髪に青い瞳、華奢で小柄な身体。
色的にも濃く小柄で魔力も多く美形。
それに対して私は身長も高く、髪の色や目の色も淡いい色。
10歳を過ぎた辺りから身長はグングン伸び始めたと同時に、兄と私の派閥争いが激しくなった。
色素は薄いが魔力は同等か少し私の方が、魔力コントロールなどが上手く出せた。
王になるつもりはなかったので、この国の騎士として兄の臣下となる為身体を鍛えた。
騎士団は、栄養ある仕事だが華奢(きゃしゃ)で小柄が美しいとされている事から、かけ離れた存在。
だが、なくてはならない仕事。
身体が大きく筋肉質は当たり前の騎士団。
嫌われ者の集団。
魔物の討伐あとは血や汗の匂いなどでかなり汚れているので、臭い。
見た目の体格だけでも嫌われているのに、そこに臭いまで加わるのだから更に嫌われるのは当たり前。
騎士団が必要だとわかってはいても、よほどの変わり者かお金に困ってる者、兄弟が多い者が仕方がなく就く仕事。
それなりに給料もよく、寮もあり食事もつくから生活に困った者などが騎士見習いとして雇われる場合もある。
そんな騎士団のトップであり、公爵である私が、この小柄で神聖な黒をまとう方に触れてしまった。
しかも刃物を向けながら威圧的に……。
嫌われた!!
怯(おび)えさせてしまった。
髪の短い"少年"の愛らしさに私はもうやられてしまった。
服に付いている見た事がない形状の服。
ボタンもないが、分厚く丈夫なのに柔らかい布地。
ズボンは少し硬めだがしっかりとした生地。
どちらも何の素材かわわからない。
ましてや靴の素材もわからない。
特殊な魔物の皮なのか?紐で結ぶタイプだが、靴を脱がした時靴の軽さに驚いた。
付与付きの靴?
もしや高位貴族?
使用人に湯を用意させた。
生活魔法で綺麗にする事が出来るが、武器を隠し持ってるかもしれないと言い聞かせ身体検査だと自分を納得させた。
「旦那様、代わります。」
家令のマシューは、滅多に表情を崩さないのだが、手足を拘束した怪しい者を私が抱えてるのを見て怪訝(けげん)な表現を一瞬だけ浮かべた。
マシューの申し出を断り、夜着でもいいから飾り気が少ない服を準備させた。
なぜ、あの時、"夜着"でもいいと言ってしまったのだろうか!
後悔する事となった。
仕事が思いのほか早く片付き、夕刻ではあったが久しぶりに庭に出てみた。
庭師が整えた名も知らない花がちらほら咲く季節。
草花に興味はないが、荒れ地だったこの場所にこれだけの青々とした緑が復活した時には皆に感謝しかなかった。
少しずつ暖かくなり、剣を振っていると花の香りが強くなった気がした。
こんな小さな花から香りがするのか?
それとも向こう側に新しい何かを植えたのか?
庭の奥にシンプルなベンチをいくつか置いてあるうちの一つに頭巾?フードを被った小さな者がいた。
誰だ?
なぜここに入れた?!
顔はベンチの背もたれの方を向いていた。
気配を消し近づいた。
甘い花の香りがした。
なんの香りだ?もしや、毒系の香り……刺客か?!
口元を抑えながら、足早に近づいた。
「何者だ?!」
「……。」
「さっさと答えろ!!女子どもだとしても容赦はしないぞ!!」
首あたりに剣を当てた。
小さな子どもだろうが刺客は刺客。
「頭巾をかぶるあやしいやつ、動くな!!」
手足をほぼ無抵抗で拘束した。
違和感を感じたが、手慣れた刺客かもしれない。
油断は禁物だ。
「殺されるの?」
!!!
「……お前次第だ。何が目的だ?」
思わず息をのんでしまった。
魅力的な黒い瞳に、子ども独特の高い声。
目を見てしまったから魅了されてしまったかもしれない。魅了の解き方を思い出しながら、とりあえず目をそらし、深呼吸……。
花の香り!!
深呼吸もダメだ!!
落ち着け、落ち着くんだ。
魅了に花の香りの毒?!
まだまだ死ねない。
落ち着け。
この子の言葉を思い出した。
"殺されるの?"
任務に失敗したということか?
何かの任務……これだけ幼いなら初仕事なのか?
「夢?ここはどこ?私は……(眠い)死ぬ……。」
死ぬな!!
「……仕事。」
仕事?やはり仕事で失敗したのか?
私を殺しにきたのか?
意識を失った刺客を抱き上げたその時、頭巾がずれ髪が見えた。
サラサラとした黒髪。
「美しい。」
もう魅了にかかってしまったのだろう。
この国、クロート王国では髪や目の色が濃ければ濃いほどいいとされている。
身体的に小柄な者が好まれ美人とか美形とされている。
兄は藍色の髪に青い瞳、華奢で小柄な身体。
色的にも濃く小柄で魔力も多く美形。
それに対して私は身長も高く、髪の色や目の色も淡いい色。
10歳を過ぎた辺りから身長はグングン伸び始めたと同時に、兄と私の派閥争いが激しくなった。
色素は薄いが魔力は同等か少し私の方が、魔力コントロールなどが上手く出せた。
王になるつもりはなかったので、この国の騎士として兄の臣下となる為身体を鍛えた。
騎士団は、栄養ある仕事だが華奢(きゃしゃ)で小柄が美しいとされている事から、かけ離れた存在。
だが、なくてはならない仕事。
身体が大きく筋肉質は当たり前の騎士団。
嫌われ者の集団。
魔物の討伐あとは血や汗の匂いなどでかなり汚れているので、臭い。
見た目の体格だけでも嫌われているのに、そこに臭いまで加わるのだから更に嫌われるのは当たり前。
騎士団が必要だとわかってはいても、よほどの変わり者かお金に困ってる者、兄弟が多い者が仕方がなく就く仕事。
それなりに給料もよく、寮もあり食事もつくから生活に困った者などが騎士見習いとして雇われる場合もある。
そんな騎士団のトップであり、公爵である私が、この小柄で神聖な黒をまとう方に触れてしまった。
しかも刃物を向けながら威圧的に……。
嫌われた!!
怯(おび)えさせてしまった。
髪の短い"少年"の愛らしさに私はもうやられてしまった。
服に付いている見た事がない形状の服。
ボタンもないが、分厚く丈夫なのに柔らかい布地。
ズボンは少し硬めだがしっかりとした生地。
どちらも何の素材かわわからない。
ましてや靴の素材もわからない。
特殊な魔物の皮なのか?紐で結ぶタイプだが、靴を脱がした時靴の軽さに驚いた。
付与付きの靴?
もしや高位貴族?
使用人に湯を用意させた。
生活魔法で綺麗にする事が出来るが、武器を隠し持ってるかもしれないと言い聞かせ身体検査だと自分を納得させた。
「旦那様、代わります。」
家令のマシューは、滅多に表情を崩さないのだが、手足を拘束した怪しい者を私が抱えてるのを見て怪訝(けげん)な表現を一瞬だけ浮かべた。
マシューの申し出を断り、夜着でもいいから飾り気が少ない服を準備させた。
なぜ、あの時、"夜着"でもいいと言ってしまったのだろうか!
後悔する事となった。
1
お気に入りに追加
330
あなたにおすすめの小説
ただ貴方の傍にいたい〜醜いイケメン騎士と異世界の稀人
花野はる
恋愛
日本で暮らす相川花純は、成人の思い出として、振袖姿を残そうと写真館へやって来た。
そこで着飾り、いざ撮影室へ足を踏み入れたら異世界へ転移した。
森の中で困っていると、仮面の騎士が助けてくれた。その騎士は騎士団の団長様で、すごく素敵なのに醜くて仮面を被っていると言う。
孤独な騎士と異世界でひとりぼっちになった花純の一途な恋愛ストーリー。
初投稿です。よろしくお願いします。
面倒くさがりやの異世界人〜微妙な美醜逆転世界で〜
波間柏
恋愛
仕事帰り電車で寝ていた雅は、目が覚めたら満天の夜空が広がる場所にいた。目の前には、やたら美形な青年が騒いでいる。どうしたもんか。面倒くさいが口癖の主人公の異世界生活。
短編ではありませんが短めです。
別視点あり
目が覚めたら異世界でした!~病弱だけど、心優しい人達に出会えました。なので現代の知識で恩返ししながら元気に頑張って生きていきます!〜
楠ノ木雫
恋愛
病院に入院中だった私、奥村菖は知らず知らずに異世界へ続く穴に落っこちていたらしく、目が覚めたら知らない屋敷のベッドにいた。倒れていた菖を保護してくれたのはこの国の公爵家。彼女達からは、地球には帰れないと言われてしまった。
病気を患っている私はこのままでは死んでしまうのではないだろうかと悟ってしまったその時、いきなり目の前に〝妖精〟が現れた。その妖精達が持っていたものは幻の薬草と呼ばれるもので、自分の病気が治る事が発覚。治療を始めてどんどん元気になった。
元気になり、この国の公爵家にも歓迎されて。だから、恩返しの為に現代の知識をフル活用して頑張って元気に生きたいと思います!
でも、あれ? この世界には私の知る食材はないはずなのに、どうして食事にこの四角くて白い〝コレ〟が出てきたの……!?
※他の投稿サイトにも掲載しています。
【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!
桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。
「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。
異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。
初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!
永遠の隣で ~皇帝と妃の物語~
ゆる
恋愛
「15歳差の婚約者、魔女と揶揄される妃、そして帝国を支える皇帝の物語」
アルセリオス皇帝とその婚約者レフィリア――彼らの出会いは、運命のいたずらだった。
生まれたばかりの皇太子アルと婚約を強いられた公爵令嬢レフィリア。幼い彼の乳母として、時には母として、彼女は彼を支え続ける。しかし、魔法の力で若さを保つレフィリアは、宮廷内外で「魔女」と噂され、婚約破棄の陰謀に巻き込まれる。
それでもアルは成長し、15歳の若き皇帝として即位。彼は堂々と宣言する。
「魔女だろうと何だろうと、彼女は俺の妃だ!」
皇帝として、夫として、アルはレフィリアを守り抜き、共に帝国の未来を築いていく。
子どもたちの誕生、新たな改革、そして帝国の安定と繁栄――二人が歩む道のりは困難に満ちているが、その先には揺るぎない絆と希望があった。
恋愛・政治・陰謀が交錯する、壮大な愛と絆の物語!
運命に翻弄されながらも未来を切り開く二人の姿に、きっと胸を打たれるはずです。
---
獣人の世界に落ちたら最底辺の弱者で、生きるの大変だけど保護者がイケオジで最強っぽい。
真麻一花
恋愛
私は十歳の時、獣が支配する世界へと落ちてきた。
狼の群れに襲われたところに現れたのは、一頭の巨大な狼。そのとき私は、殺されるのを覚悟した。
私を拾ったのは、獣人らしくないのに町を支配する最強の獣人だった。
なんとか生きてる。
でも、この世界で、私は最低辺の弱者。
騎士団寮のシングルマザー
古森きり
恋愛
夫と離婚し、実家へ帰る駅への道。
突然突っ込んできた車に死を覚悟した歩美。
しかし、目を覚ますとそこは森の中。
異世界に聖女として召喚された幼い娘、真美の為に、歩美の奮闘が今、始まる!
……と、意気込んだものの全く家事が出来ない歩美の明日はどっちだ!?
※ノベルアップ+様(読み直し改稿ナッシング先行公開)にも掲載しましたが、カクヨムさん(は改稿・完結済みです)、小説家になろうさん、アルファポリスさんは改稿したものを掲載しています。
※割と鬱展開多いのでご注意ください。作者はあんまり鬱展開だと思ってませんけども。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる