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命名式

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朝一番に、生後1週間の検診に来ました。
高ビリルビン血症、黄疸が出てました。
まずは6時間の、光線療法をしましょう。
と言われました。
オムツ姿で目を保護する為のガーゼが
付けられた状態で、青い光の中にいました。

2200グラムだった小さな赤ちゃん。
生まれて数日後には、一度体重が
減るからと言われたけど、
2000グラム位になった時には、
母乳がうまく与えれて、いなかったのも
あり焦っていました。

1週間経った今も、体重が戻ってない。
なんだか、涙がとまらなくなって
しまいました。

「黄疸は誰でもあるから、大丈夫ですよ。」
「たまたま強く出ただけなんで、
心配は要りませんよ。治療終われば、
退院ですよー。」

私、情緒不安定という事で、
仮退院中だったんだ。

「夕方四時に一旦、光線療法止めて、
診察しますから、また連絡しますよ。」
と先生に言われました。

6時間…。

治療室で泣いていた私を、ケンジさんは、
先生と看護師さんとで、私を
慰めてくれました。

「もうすぐ、オープンする産直食堂、
妊婦さんから産後のママさんに
優しいメニューがウリなんですって。」

「今、騒がれてる元社長、イケメンよねー。」
「まだ、独身らしいですって。」
「山ノ上さんのパパもさんも、かっこよくて
優しいパパさんですねー。」

「「……。」」
「あ、ありがとうございます。」
「ケンジさんは、優しいです。」

「あら、ごちそう様。」

その元社長さん、知ってます。
しかも毎日あって、ご飯食べてます。
畑仕事や牛の世話をしてます。

豚の世話は、ケンジさんと、
誠一さん、気まづいのでお兄さんの
所で働いてます。

お店オープンしたら、寝泊まりどうするんだろ?
チェーン店のオーナーって、何するんだろ?
色々な現地の農家やお肉屋さんと
契約しているって、言ってたけど、
誠一さん…。
私は…。


2200g
午前1時53分誕生
女の子
いちご


「2週間以内に提出しなきゃなかぁ。」
「山野いちご、山ノ上いちご、俺はさくらと
いちごを愛しょるし、これからも守って
大事にする。これはさくらが決めてほしい。」

出生届の用紙と婚姻届。
ケンジさんの名前は、
すでに書かれていました。

いちご。
生まれた時間から名前を付けてくれた
ケンジさん。
かわいい名前。
来年、いちご畑をたくさん作ろうとまで
言ってくれた、優しすぎるケンジさん。
このまま甘えていいの?


誠一さん…。
ある晩、私は洗濯物を畳んでいた。
視線を感じ振り向くと、誠一さんがいました。
「もうすぐ産直食堂がオープンする。」
「あっ。おめでとうございます。」
思いつめた表情の誠一さんが、
じっと立っていました。

「…さくら、俺たち、もう手遅れなのか?」
「……。」
「俺はさくらと出会って、俺は人間に
なれた気がする。…罪も償いたい。」
「罪?」

「君の両親を殺したのは、俺の
母だった人だ。」
「……。」

私が小さい頃、誠一さんのお母様が
運転していた車と、私たちが乗っていた
車がぶつかり、ひき逃げ死亡事故が起きた。

死亡したのは、わたしの両親。
私は手と足、そして顔にも傷が残った。

運転していたのは若い男性の運転手
と聞いていた。

誠一さんのお父様の指示で、罪をなすりつけられた
運転手は捕まり、出所後すぐに病死したらしい。

私の古傷が、痛んだ気がした。

「赤ちゃん、俺の子だよな?なんとなく
俺に似ている。子どもごと、俺は、
さくらと一緒になりたい。」

「父とも縁を切った、俺に色々の
初めてをくれたさくらを今度こそ
大切にしたい。」

赤ちゃんが泣いてくれなかったら、私…。

ケンジさんは、産気づいた豚の出産で、
たまたま誰もいなかった晩でした。

おっぱいを飲ませるときには、
誠一さんはもういなかった。

誠一さん…。
ケンジさん。私…。
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