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さくら、きばれ #出産

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ケンジ目線

手を消毒し、手術着か割烹着のようなものを
着るように言われ、俺は素直に着た。
後ろを止めれなんだ(止めれなかった)。

これが一番大きなXLサイズ だったらしいが、
ないよりマッシっということだろうか?
止めなくても、別に何も言われなんだ。
(言われなかった。)

たださくらは、俺を見て
「パツパツ…。ケンジさん、ごめんなさい。」
「…謝らんでええ。着れんこともながぁ。」

さくらは何かを言いかけたが、首を
振ったあと、苦しんでいた。
「うっ、んっうぅ…。」
はあ。はあ。はあ。はあ。

「痛っ…んんっ…ン。」
ハア~、フゥ~、ハァ~。

短くなった陣痛の合間にしゃべろうと
したのか間隔が短く、もう間もなく、
生まれるだろう。

助産師がちょくちょく、さくらの
子宮口を確認しながら、
「今8センチです。」と報告してくれちょった。

病院に着いたばかりの時には、
子宮口は5センチだった。
軽い脱水症状も起こしていたので、
看護師さん達に注意を受けてしもぉーた。

水分補給もしたが、さくらは口から
あまり摂れなかった。
産む前の点滴とは別に、入院とほぼ同時に
点滴をされちょったさくら。

滑り落ちて傷ついた足も消毒され、
綺麗になっちょったが、点滴のせいなのか、
さらに弱々しい雰囲気になっちょった。

お腹の中など心配だったが、特に
異常はなくホッとしていた。

「ふぅうっ…あっはぁ~。あっぁぁ。」
グチュ~。
ビシャ~。
生暖かいものが、さくらの下半身を
濡らした。
「な、何?んっ…。」

さくらもビックリしたようだった。
「破水ですねー。もうすぐ、赤ちゃんに
あえますよ。」

「痛み逃しで、ママさんが痛がったら、
拳でここを押してあげてください。」

「ケンジさぁぁ~ん。ごめん…なさっ…んんっ。」
「さくら、大丈夫じゃけ謝らんでえぇがぁ。
心配すっなっ。」

「ふぁっ…あっあぁ~。」
「はーい、パパさんはココぐっと抑える。
はい、ママさんは、きばらない。手は
グーにしちょらんと、パーにして。
力を抜く。きばらない、きばらない。」

「あっあぁー。あっあぁ。」

俺はベテラン助産師の言う通り、
さくらの子宮口にガーゼをあてた上から
拳で押し返していた。
「あっ。はぁ。はぁ。はぁ。んっ~。」

赤ちゃんが出てくぅはずなのに、
押し返してえぇのが?
という心の声が、伝わっちょったのか、
「まだ、開ききっちょらん子宮口だしぃ、
いきみ逃しちゅうて、ママさんの
痛みを逃しちゃる役目もあんよ~。」

「はい、ママさんは呼吸を意識する。」
「はいっ。吸って、吸って、吸ってぇ。
はいっ。ゆっくり吐く。ゆっくりよ~。」

「あーっ、ヒュ、ヒュ、あっ…」

「はい、もう少し、はい、ママさん呼吸呼吸。」
「はい、小刻みに吸って、吸って。はいてぇ。」
「はーい上手よ。」

「パパさん、今グゥーと、はい、押して。」
この助産師さん、がっつい(すごい)
指示が的確じゃった。

グニっ、「おっ?」

「はい、パパさんは、こちらきてねー。」
おお?
「はい。頭見えてきたから、もうすぐよ。」
グニュ。
「あーっ。あっあぁ。」
ハア、ハア、ハァ。

「赤ちゃんも、回転しながら、きばっちょるよ。」
「んんっ、あっ~。」
ぐにゅーん。
「はい、吸って吸って吸って、ゆっくり
はいて~、はい、パパさんも一緒に。」

さくらの小さな手紙、俺の手を力一杯
握っていた。
さくらはこんなに握力があったんだと、
ケンジは密かに思った。

しかもしばらく手と手首が痛かった。
捻ったのかもしれない。

ここからは早かった。
あたまが出た赤ちゃんは、グニョンと
開店しながら、ツルルンっと出てきた。

口の中の羊水を取っているのか、
青紫色の赤ちゃんは、横向きになり
綺麗にしてもらっていた。

きばれ(がんばれ)
きばって呼吸せぇ。

ふにゃーふにゃーふにゃー。

良かった。泣いた。
「おめでとうございます。午前1時53分です。
かわいい女の子です。」

「おやっとぉさぁ(お疲れ様)ようきばったなぁ
(よくがんばったなぁ)」
「ごめんなさい、ありがとう。」
俺は、さくらの頭を撫でていた。

「2200gですね。」
産湯から上がった赤ちゃんは、赤紫色から、
赤みが強い肌色になっていた。
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