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その頃

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一斉に送信を受け取った曾祖父母。

「ケンジから、電報きちょたぞぉ。」
~~~~~~~~~~~~~~~
さくら、無事。
陣痛きた。
病院向かう。
                     ケンジ。
~~~~~~~~~~~~~~~
老人会の日帰りバスツアーの
帰りであった。


田舎のバスは本数も少なく、
最終バスの時間まで早かった。

タクシーは残念ながら出払っていて、
数時間待ちだった。

レンタカーにすれば良かったと
男は悔やんだが、お店が閉まるのも早く
気づいた時には、既に
閉まっていた。
今更もとに戻るのも勿体ないので
男は歩き続けた。

キャンセル待ちの合間に買った、
パンと飲み物が非常食になっていた。

夕方遅くに山道の様な所にあるバス停近くを
歩くスーツ姿の男がいた。

あまりの不自然な顔が整っている男。
曾祖父母は声をかけた。

「おまんさぁ、どないしとっとどぉ?」
「とっと?あぁ、バスもタクシーもないので、
歩いてました。」
「どこまでいきよっとぉ?」

おじいちゃん、おばあちゃんがわらわらと
バスから降りてきました。

「これがぁ、いけめーっ面構えかぁ。」
「あんさぁ、いけめんちゃながろっかぁ?」

バラバラな方言を使う 高齢者の方に、
取り囲まれた男は、思わず後ずさりして
しまいました。
とんっ。
軽く誰かに当たってしまった。

「兄さんどこさ行くにも、こげんなぁ時間さぁ
どっこも、あいちょらんけぇ。」
「んだんだぁ。どこさー行くぅ~?」
「よかぁ~うちくんけぇ。泊まるとこあんかぁ?」

「お恥ずかしながら、泊まるとこは、
まだ決まってないです。」
「ほなら、うちんち来なぁ。」
「ありがとうございます。でも、
先に畜産農家っていう所に、
行こうと思ってたんです。」

「そげんなら、通り道やけー乗ってけぇ。」

バスの運転手さんが、言ってくれました。
男は喜びました。
あとで調べると約20キロ強の距離でした。

「乗ってけぇ、乗ってけぇ、ええ若っいもんがぁ、
ひっさかぶい(久しぶり)にみたわぃ。」

「おーい、このイケメンの兄ちゃん、山ノ上さんちの
お客っさんじゃってよー。」
「あじゃまー、こげんなぁとこまで、来ちょって、
ありがとうさげもしたぁ。」
「来んね、来んね。まっちょれ、娘さぁ、
電話すっわぁ。」

「あんでまぁ~ひいひい孫から電報
きちょったわ~。」

「ケンジから、電報きちょたぞぉ。」
~~~~~~~~~~~~~~~
さくら、無事。
陣痛きた。
病院向かう。
                     ケンジ。
~~~~~~~~~~~~~~~

バスの運転手の機転で、現時点で市内だったからか
市内の病院に曽祖父母と男は、送ってくれました。

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