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イライラとフラフラ

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少女は、なぜ目覚めないんだ?
あんなにも儚くか弱い少女を
診せたくはなかったが、医療行為だと
自分に言い聞かせて、医師に少女の
治療をしてもらった。

栄養失調に、軽い捻挫、擦り傷、
打撲、擦過傷などだった。
こんなも…なぜ、この少女は…。
俺が、もう少し早ければ
こんな目に合わなかったのか?
守ってやりたい。

少女の柔らかで、すぐにでも
折れてしまいそうな手足の傷は
数日で目立たなくなっていた。
打撲痕も色が変わり、
若干薄くなっていた。

それでも目を覚さない少女。
医師の腕が悪いのか?
誤診だといけないので
俺はかなり我慢して、
よりすぐりの医師たちに
少女を診てもらった。

今日で10日目。
「おはよう。出会って今日は10日目だ。」
ゆりは眠り続けていた。
「お前…君の目は何色なんだろうな。
髪色と同じ、綺麗な茶色なのか?」
淡々と話しかけていた。
「いつ起きるんだ?食事をまともに
食べてないが、本当に大丈夫なのか?」

「早く目を合わしながら
お前…じゃなくて、君と会話がしたい。
頼む、早く起きてくれ。」

少女を連れ帰ってから俺は、
なるべく一緒にいた。
書類などの仕事も、少女の様子が
よく見える位置に机を置き
仕事をさばいていた。
俺は、食事もここで摂っていた。
少女には、口を濡らす程度の水分や
スープを与えようとしていたが、
ほとんどこぼれ落ちていた。

少女の身体を綺麗にしたり、
服を交換する時だけ
当たり前だが、女性の使用人に任せて
俺は渋々、席を外していた。
初めのうちは使用人たちに、
呆れられていたが
今では諦めたのか、ゼルン以外
何かを言う者はいない。
まぁ、身分的に俺に直接言う者はほぼ
いないが、まわりにわまわって…
遠回しに伝わる事は、
たまにあった気がする。
簡易ベッドももちろん運び済みだ。


コンコン。
「旦那様、長官が到着しました。」
「あぁ。」
一通りの挨拶を交わしたあと、早速
少女を診てくれていた。

「意識…魂の核…不安定。」
ポツポツこぼす長官にイライラする。
ついつい殺気が出てしまったのか、
「力を弱めて下さい。彼女が、怯えて
こちらに来れません。ついでに
顔つきが険しいです。」
俺は、すぐに殺気をひっこめた。
最後の言葉は余計だ。

「か、彼女は無事なのか?」
「まだ、捜索中です。」
「はぁ?どうゆう事だ。」

「彼女と私、同じ感じがします。」
「はあ?意味がわからん。魔法省と
魔術省の長官だろ。わかりやすく説明しろ。」

「言葉そのままなんですが、
わかりやすくですか?長くなりますよ。」
「わかりやすく簡潔にしろ。」

「魔法と魔術の違いは、科学、化学の力で
実現できるかどうかです。」

「魔術では一瞬で出来て、科学や化学では
凄まじい時間がかかるとしても、
科学や化学で可能なら魔術と言われます。
なので、魔術と魔法は本質的には
同じもので、現在では魔術と言われるものも
昔はひっくるめて魔法と言われていましたが
二代前、あなたの祖父の代で
魔法省と魔術省に分けられ、
皆が戸惑い、2つの違いを
理解する者が少なく、
運悪く現れたワタクシ、マキ・ジンノが
兼任する事になり、ワタクシは
毎日毎日毎日毎日毎日毎日、あぁ~。
…はあ~、すっごく、かなり忙しいです。
寝る間も惜しむくらい、
ハイハイって感じで無理をしてます。
もうふらふらです。ええ加減、
誰か代わって欲しいのよ。」

「…あっ、あぁ。」
長い。最後あたりは愚痴だよな?
「彼女は…どうなんだ?」
俺は恐る恐る聞いた。
「…意識というか、魂の核がこの世界に
ありません。手繰り寄せるため、私の
助手を呼びましたので、しばらく……。
あっ、来ました。」

核がない?彼女は大丈夫なのか?
色々質問をぶつけたいが、なんとなく
邪魔出来ない雰囲気だ。

「では、よろしくお願いします。」
光の球と闇の球?が浮いていたのが、
長官の声に応じて、彼女に近づくと
吸い込まれるように、スーッと消えた。

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